性格備考
わたしなんて、と自分を卑下してばかりいた。物の心を励起させる力、即ち、審神者の資質があると知るまでは。幼少の折からどうにも気がちいさく、今だって特別何かに秀でているわけじゃない。されど仰せつかったお役目を糧に、そして未熟を自覚すればこそ勤勉かつ懸命に。務めを果たし続けたおよそ六年の歳月には、心持ちを変化させるに足る経験と想い出たちが詰まっている。力不足を痛感し、幾度もへこたれ、ひと知れず涙を拭った日も少なくなかった。それでもけっして折れはしない根性こそがおのれの取り柄なのかもしれないとは、本丸の主として刀剣たちと過ごすうちに気づけたことだ。付喪神たる彼らに力を貸してもらっている、という敬意を常に忘れず、親しみを抱くことはあれ分は弁えているつもり。だというのに意識してしまうようになったひと振りの存在は、元よりキャパの少ない心をかき乱すのにじゅうぶん過ぎた。まだ胸を張って一人前とは言えないのだから、うつつを抜かしてはいられない。そもそも神さまに恋だなんて恐れ多い。まじめな性根でそんな葛藤を繰り返しつつも、結局膨らむばかりの“好き”は、それでもなんとか隠し通せている――はずだった。
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(しじまが夜闇を満たす寅の刻。どうやら眠りが浅く目が覚めてしまったらしいと気づけば、水でも飲みに行こうかと私室を出る。ひたひたと廊下を歩むさなか、ひとつだけ灯りのついている部屋を前に足が止まったのは自然なことだったろう。中に気配はある。だのに一切の物音がしない。)あの、こんな時間までどうされましたか……?(声をかけてみても無反応だ。不思議に思うと同時、ノミの心臓がちょっぴり騒ぎだす。いいや、でも、中は明るいのだから。怖いことなんてないと言い聞かせ、そろりと障子戸を開けた瞬間。)お、お酒くさ……!(反射でまろび出てしまった一声に、はっと口を押さえる。部屋中に漂う酒気。足許まで視線を移ろわせれば、すっかり酔いつぶれている我が本丸の飲兵衛たち。ほ、と胸を撫で下ろした。)皆さま、こんなになるまで飲まれて……深酒にはお気をつけてと言ったのに。……でも、気持ちよさそう。(いくさとあらば勇ましく凛としている神さまも、こうして穏やかに眠っているとどこかあどけなくさえ映る。あちこちに転がる酒瓶を避けて押し入れまで近づくと、引っ張りだした薄手の毛布をそうっとひと振りずつへ掛けてゆく。ほほえみ混じりのささめきは、やわく溶け落ちるように。)いつもありがとうございます、……おやすみなさい。(そうして部屋の灯りを落としたなら、月光を道しるべにこそりと部屋を抜け出そう。今度こそたどり着いた厨にて、水を注いだ湯呑みを傾けつつ、ふと。)……あの方とご一緒するお酒は、どんな味だろうなあ。(お酒は嫌いじゃないけれど。記念日や付き合い以外ではあまり口にしないものだから、思えばふたりで飲む機会もなかった。そんなひとときを夢見るくらいは許されたくて、心に浮かべるたったひと振り――じんわりと熱をはらむ胸の奥は、まるで酔いが回ったかのよう。このままでは眠れなくなってしまいそうだと、足早に私室へ戻るのだった。)