山姥切国広

主従としての好意

性格備考

霊剣『山姥切』の写しとして造られた堀川派きっての傑作は、その身に溢れんばかりの鬱屈さと確かな矜持を宿している。全ては本科・山姥切長義に対する強烈なまでの劣等感からなるものであり、人の身を得た今となっては賛辞も批判もすべからく拒絶するかの如く、襤褸布を纏うことで繊細な心のバランスを維持している。俺は俺だ、と宣言する一方で、俺なんか、と卑下する。その在り方はどこまでも矛盾した極めて因循な刀だ。何かにつけて写しであることを口にしながらも、顕現されたからにはと己が力を揮い続けること幾星霜――いつしか修行の旅に出ることすら思案する程に力を付けた打刀が此処にひと振り。強さには一端の自信を付けていながら、尚も陰鬱たる雰囲気は変わることが無い。ただし、此処に至るまで己を重宝した主という存在は大きく、心の壁も幾許か取り除かれている様子。時には兄弟のように、親のように、恋人のように。寄り添いながら叱咤する、その行動原理は紛れも無い“忠愛”そのもの。それが恋というものに繋がるか否かは、まさに神のみぞ知るというところだろう。

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(山姥切の写しとして存在を与えられ、早数百年。まさか自分が人の身を与えられるとは思ってもみなかったが、所詮は写しの身。その実は何も変わりはしない。たった一つの変わり事と言えば、写しの身を傍に置きたがる変わった主が出来たことである。そして数多の刀剣男士たちと生活を共にするようになり、もう暫くの時が流れていた。)……そら、次が上がったぞ。(あるよく晴れた日、庭では兄弟こと堀川国広が洗濯物を干している。その背に声を掛ける男の頭上には、ある筈の襤褸布が無かった。所在無さげな態度の腕の中には「今日はよく乾くからもう一度洗濯するよ。兄弟の布もね!」の一言により追加で洗われた洗濯物たちと見慣れた襤褸布が入った籠。一度は激しく抵抗したものの、笑顔の圧に負けて剥ぎ取られた情けない経緯がそこにはあった。誤魔化すように「手伝う」と一言告げ、横に並び立ち洗濯物の皺を伸ばす。パン、と小気味の良い破裂音が庭に響く。――確かに良い天気だ。そう内心で呟く隣から、いつの間にか青い双眸が此方を覗いていた。そして「兄弟の顔がよく見えるなんて、貴重だね!」なんて言うものだから、つい布で顔を隠そうとして片手が空を切る始末。)……そ、そんなにじろじろ見るな。(視線を逸らしバツの悪さを誤魔化せば、アハハと笑う声が上がる。短い溜息を吐き出し再度手を動かす頃には、きっと他の刀剣男士たちの姿もちらほらと見えてくる筈。見上げた太陽からは燦燦と光が降り注ぎ、碧眼をそっと細めながら手を翳す。こんな日も悪くはない。今日も本丸は平和だ。)