【前半】あなたとお酒と、ひとつ編む夜話

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……ふぅ。やぁっと、終わった~~!(ここしばらく根を詰めていた任務を終え、報告書をすべて仕上げて提出した夜。ありていに言えば、その審神者は久方振りの解放感に包まれて少なからず気が大きくなっていた。忙しさを増す日々のうちでも癒やしをくれた、床の間に飾られた花瓶の元までにじり寄ると、いまだ瑞々しさを失わぬその花びらをちょいと突く。やがて立ち上がり、伸びをして固まった節々をほぐしたなら障子戸を開け、縁側のほうを回ってから厨へと歩を進めよう。疾うに夕餉や湯浴みの刻も過ぎ、なかにはちらほらと床に就きはじめる刀剣も居るだろう頃合い。丁寧に磨き上げられた板張りが素足にも心地よく、柔い夜風が露わな肩をくすぐり吹き抜けていった。──かの薙刀とたまさか行き合ったのは、そんな折。不意の出会い頭に、ぱちくりと両目は瞠られて。)ともえちゃん。(げに涼やかな立ち姿に、ぽうっと見惚れるように呟いていた。)うふふ。こんばんは。ちょうどいまさっき、仕事が片付いたの。今回はそこそこ骨が折れたけど、がんばったわ。それでね、今夜くらいはぱあっと、打ち上げに飲んじゃおうと思って……そうだ。よかったら、一緒にどう?(夜も更けて、なりとしては男と女。常なればからがら踏みとどまるだろう境界を、このときばかりは後先考えず飛び越えて、ほほ笑みを浮かべて首をかしげる。かりに渋られたとて、すっかり大きくなった気は相手から頷きが返るまで粘る気でいた。さすれば後はお酒とおつまみを用意して、執務室の続き間である審神者の私室へとお招きしよう。道中、床の間の花に目を遣って。)お花。生けてくれて、ありがとう。おかげさまでいつも心が潤ってます。……さ、座って座って!(日本酒と葡萄酒、双方をちゃぶ台に並べて。はて彼の好みは。)

04/14 01:57*4

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(審神者が起床するより早く仕度を済ませ、いつ呼ばれても構わぬようにと控え――そして審神者の就寝を以て、一日を仕舞いとする。そのように在る生活は、顕現を果たしてより変わりなく。もういい時間になる。様子を見に主のもとへ向かっていた足取りはしかし、当人との遭遇によりぴたりと静止。呟きのように己を呼ばう声が、静謐の中ではよく聞こえた。親しみの滲むその響きは、いつだってこの胸を温かくする。夜の挨拶を返す心地は穏やかに、すっきりとして見える顔ばせをそっと見つめて。)そうか、無事に終わったか。そろそろ休んではどうかと声をかけようとしたところだったが……“がんばった”主には、息抜きも必要だ。俺で良ければ付き合うぞ。(僅かな逡巡の気配は、御身を労らんとするために。けれど心の健康もまた肝要。加えて相伴に与る名誉はみすみす手放せまいと頷けば、やや後ろをついて主の私室まで赴こう。「失礼する」と一言、つられるように自ずと視線は花へ向く。)役に立てたのであれば、俺も嬉しい。頃合いを見てまた新しく生けよう。(飾られているそれに込めた真心ごと、大切にしてくれる主だ。感情を乗せることの少ない目許が微かに和らぐ瞬間を、彼女以外の誰が見つけられるだろう。そうして、明るい声音に促されるまま座したなら。)――……では、そうだな。葡萄酒を。主の瞳の色にも似ている。(自身のこだわりや好みという感覚は、極めて薄い自覚があった。ゆえにこそ思考は一瞬。思ったまま、惹かれたままを口にした言の葉は滑らかに落ち、)主の分は俺が注ぐ。同じもので構わないか?(是であるならば葡萄酒を、そうでなければ日本酒の方を。とくとくと傾けるつもりで、程なく乾杯と相成ろうか。)

04/14 07:36*12

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なんと。そうだったの……。たまには、先に休んでいてくれてもいいんだからね。でも、……うふふ。今日はだぁめ。ともえちゃんが起きていてくれて、よかった。(まさに側仕えの鑑のような刀剣である。いだく想いによらずとも、近侍を任せることは少なくなかったが、ここのところは任務の都合上、違う男士を付けることも多かった。そういう意味でも久方振りとはなろうか。)よかったぁ。ありがとう。だけどね、「俺で良ければ」じゃあなくって、あなただから、……いいの。(まだ酒も入っていないというのに、大きくなった気の饒舌なこと。長身を振り仰いでは目を細め、後は荷物持ちを手伝ってもらいながら私室へと。)ふふ~~。とってもとってもお役立ちよ。こう……ひと息ついて書類から顔を上げたり、畳にごろんと寝っ転がって見上げたり、そういうときに目に入ると、気持ちがぐっと華やぐの。ほんと? うれしいなぁ。それなら、またお願いね。(涼やかな目許が、かすかに笑むように和らげられる。こんなに喜ばしいことはない。続きの襖を開けたなら、執務室よりは小ぢんまりとした審神者の私室が現れた。その窓辺には小さな花器が飾られている。)ほら。あっちのお花があんまりにも素敵だったから、こっちにも一輪、そのぅ……勝手に、(口にして、はたと思う。折角生けてくれた“作品”から断りもなく拝借するだなんて、あまり褒められた行いではなかったかもしれない。おそるおそる様子を窺い、それでも互いに座したのち。)──……そっ、ゆこと、言う~~。(葡萄酒を選んだ理由。それが耳朶を打てばたちまち頬を染め、片手にグラスを差し出した。お願いしますの意である。乾杯し、葡萄酒をひと口ふた口、さらには半分ほど乾してから。)もうっ。ともえちゃんのそういうところ、心臓に悪いけど、でも……とっても好き。だいすき。(早くもとろんと酒精にやや蕩けたまなざしを、うっとりと彼に注いでいる。)

04/14 17:57*15

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(――あなただから。数多の巴形薙刀にではない。確かに己が求められているという感慨が、じんと器の内側を満たす夜だ。この人の子の、主の力になれることを幸いに思う。「主よ、好きな花はあるか?」向けた問いかけは、次のお役立ちの参考に。ふと打ち明けられた窓辺を彩る花器の秘密に、納得したような、微笑ましげな吐息が零れた。)……ああ、移して一輪挿しにしたのか。可憐でいい。主のより近くで花を添えられるのならば、俺としても本望だ。(花を添えるは、文字通り。よもや、生けていた花を千切ったわけでもなし。好きで捧げたものを斯様に扱われたとて、無下にされたなどとは微塵も思わぬ。ともに手掛けた短刀にしても同様だろう。一切の曇りなき声音は、ばつが悪そうにしている主の懸念を晴らしてやれるだろうか。)お疲れ様。こうして腰を据えて話すのは少し久しいな……打ち上げと、慰労会を兼ねよう。(乾杯。グラスを鳴らして、ひとりと一振り、密やかな時間の幕開けである。主が葡萄酒を口にしたのを認めてから、己もまた一口流し込む。“そういうこと”も“そういうところ”も、生憎と合点がいかずにやおら首を傾いでは。)心臓に? ……それは、改めなくても良いものだろうか。(などと大真面目に受け取って一考してしまうくらいには、未だ人心に疎くあることを許されたい。けれど次がれた直截な言葉を受け止めたなら、それが悪い意味ではないと判じるのは容易だった。)ありがとう、主。主の刀剣として、惜しみなく愛されていることを誇りに思う。(僅かばかりの間、喜びを噛みしめるように目を伏せていた。再び瞼を持ち上げると、交わる眼差し。常から柔和なその人が一層円やかに映る。不躾にならぬ程度に見つめ返す澄んだ瞳は、主が向けてくれる情を何一つ疑っていない。)

04/15 00:45*30

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(好きな花。問われて思案をめぐらす横顔は、どことなく楽しげだ。)う~~ん。たくさんあって迷っちゃう。チューリップやフリージア、あとはラナンキュラスも可愛いし、生けてもらうなら桜も素敵ね。菜の花もきれいだし、……美味しいし。でも、いまは青い花を眺めたい気分だから……ネモフィラや忘れな草、すみれ……本丸に咲いているお花のうちから、ともえちゃんと一緒に探して、選んでみるのも楽しそう。(その色彩を求める理由は、もちろん目の前の彼に。ここで育てている花もあれば、ない花も当然あるだろう。主とはいえ、不肖ながら、この庭で世話をされている花のすべてを知り得ているわけではない。なればいっそ、と、軽やかな展望を口ずさんで。私室の花器へと勝手に拝借した一輪に対し、純なる「本望」の応えがあれば、ほっとしたように胸を撫で下ろす。怒られると思っていたわけではないけれど、わが身のそばにあってほしいと、そうと手繰りたくなるその気持ちをとりわけこのひと振りに肯定してもらえると──嬉しいような、困ったような。)あっ、……うふふ。いまのはね、何か病気に繋がるとか、そういうことはないから安心してちょうだい。これは……えぇっと、胸がドキドキすることなの。とくべつ身体を動かしたわけでもないのに鼓動が早くなって、恥ずかしいけど嬉しいのよ。(説明は存外難しい。それでもおおむね伝わったことは、目の前の表情を見つめていればわかることだ。喜びを噛みしめる仕草に、胸の奥がきゅうっと切なくなる。いまはとても、愛を伝えたい気分だった。)……うん。ともえちゃんが、好きよ。すき。だいすき。でも、依怙贔屓とかほかの子たちが大切じゃないとか、そういうつもりじゃないの。ただ、とにかく好きで、触れてほしいって、思う。ふふ~~。知らなかったでしょ。(何ゆえか口ぶりは得意げに、残り半分をこれまたひと息に乾しては、差し出すグラスでお代わりをねだる。)

04/15 12:58*34

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(人柄そのままにゆったりと紡がれる主の声は心地好い。挙げられてゆく花の名を心に留めんとする傾聴の途中、耳を掠めた「美味しい」に唇を緩めたのは慈しみゆえ。)……ほう、今度は主と合作か。それは妙案だな。主の予定が空いている日に、ゆっくり庭を回ろう。きっと俺は、主と見た花を好きになる。(確信と言ってしまってもいい。そうして己という巴形が形づくられ、物語の一部となる。遠からず叶えられるやもしれぬひとときに思いを馳せては目を細め、徐にまたグラスへと口をつけた。)それは……、失礼した。覚えておこう。ここへ来てから、つくづく学んでばかりだ。(心拍の上昇を伴う、恥ずかしくも嬉しい気持ち。左胸の上に片手を添えると、主の言葉を刻むように反芻する。思えば顕現したばかりの頃は特に、降って湧いた疑問を様々紐解いてもらう機会が多かった。こうして丁寧に噛み砕いてくれるたび、またひとつ主に近づけるようで喜ばしくもある。)わかっている。(愛されていることも、他を蔑ろにする人ではないことも。肯定はいっとう柔らに。)……が、触れてほしいというのは確かに、知らなかったな。俺の振る舞いに不足がある……という訳でもないと思っているが。純粋に親愛表現として、だろうか。(静形であれば惑いそうな話だ。触れ合いを好む刀剣もいるにはいる。ただ主の口からそれを求められるのは少しばかり意外だという顔で、緩やかな瞬きを続けた。差し出されたグラスに呼応するよう葡萄色を注いだあと、揃いの瞳を今一度窺って次ぐ。)主、……飲みすぎには気をつけてくれ。体に響いてはいけない。(今はまだ構わないが、この減りの早さが続いてしまっては心配だ。そう言外に案ずる口振りにて。)

04/15 23:09*41

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……あっ! いま、ともえちゃん、笑ったな~~? うふふ。いいの。おひたしにしてもよし、天ぷらにしてもよし。……今夜のおつまみにしても、よかったかも。(この本丸には料理上手な刀剣男士も多いゆえに、おかげさまで随分と、美味しいものにも詳しくなった。そう、咎める気もない和やかな響きで、)──……うん。約束ね。(「きっと俺は、主と見た花を好きになる」。遠からず現実となるだろういつかの未来を想い、同じように目を細めた。好きな相手に好きなものを、好きになってもらえるのは喜ばしい。銘や逸話をいだく固有のひと振りではなく、数多の薙刀“巴形”の集合体。まっさらな物語と同様、雛鳥めく無垢なる性質を、恣意的に歪めてしまうのではないか──と、懸念を覚えたことがないわけではないけれど、それでも器に水を注ぐよう、与えることをやめたくはなかった。取捨選択はのちの彼に任せればいい。そんなふうに。)んん、不足というのは、ちっともよ。そんなことはぜんぜんないの。でも、……「純粋」。じゅんすい。う~~ん、えぇっと、そのぅ……それは、ねぇ、(純粋な親愛表現。さて、これは何と説明したものか。ちろりと、思惟をめぐらすよう視線を外したのは数瞬のこと。グラス半分とはいえ勢いよく呷ったことでふわついた心地では、なかなか上手い表現が見つからない。言葉を探しあぐねた結果、ちゃぶ台の対面から相手の座すほう、すなわち隣へと、にじり寄ってはちゃっかり収まろうとする。)あのね、ともえちゃん。(畏まった正座をして、)実は。下心が、あります。親愛からは、ちょっと……や、だいぶんはみ出ちゃうなぁ。さっきの心臓に悪いドキドキを、ともえちゃんとしたいのよ。そういう「好き」なの。……はっ! でも、これは主命とかじゃないから、そこは大丈夫。問題ない。(強いるつもりはないのだと、下手くそな念押し。気遣いには「はぁい」と、聞いているのかいないのか。)

04/16 03:32*50

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む、……そうか、笑っていたか。刀剣男士は、主に似てくることもあるらしい。(無自覚だった口許に、はたと指先を運んで目を遣った。言われてみれば食す、という手もある花の楽しみ方も主とであれば魅力的だが、まずは生まれたばかりの約束から叶えたい。)――ああ、必ず。(確と頷く。お互い万に一つも違えるつもりがなければ、言の葉以外の誓約は不要だろう。主の一振りとして、過不足なく日々をこなし務めを果たしている自負がある。そこに間違いはないと分かれば安堵しつつも、どこか煮え切らない様子の彼女をすんなりと傍らへ受け入れよう。側仕えとしては、寧ろこの方がしっくりと来る距離ではあった。唯一違和感があるとすれば、主の纏う改まった空気だろうか。少々腰を浮かせ向き直るよう姿勢を正してから、「どうした?」と。続きを促すように首を傾げ、しずしずとその声を聞き届けたなら。)下心。(控えめな瞠目と同時、思わず言葉をなぞっていた。主が向けてくれる心に、上も下も考えたことなどなかったけれど。)……すまない、主。要するに俺は……思い違いをしているのだな?(そのことは確かに解るというのに、実感が伴わぬ心地がもどかしく胸をざわつかせる。)そうであるなら、これまで俺の言動で知らず主を傷つけてはいなかっただろうか。……主の言う「好き」を、俺は正しく理解できていない……と、思っている。(その事実がある時点で、少なくとも己にとっては「大丈夫」とも「問題ない」とも感じられなかった。心臓に悪いドキドキ、とやら。先に認識したそれが、“そういう好き”とまだ上手く繋がらない。至らないようで口惜しい思いを声色に滲ませながらも、偽るまいと素直に告げよう。)

04/16 20:24*59

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ともえちゃんが、わたしに……? うふふ。ちょっぴりのんびり屋になるのかな。(「刀剣男士は、主に似てくることもあるらしい」。それを聞いて、何とはなしにこの薙刀の“そういう姿”を思い浮かべてみようとするのだけれど──当然ながら、わが身のごとく気の抜けたところはあまり想像がつかなかった。おかしげに笑ってその口許に指先を添える仕草を見つめている。酒精によりさらに大きくなった気もあれば、常にも増して素直な欲求がこぼれ落ちることもあっただろう。すなわち、いだく好意に対する説明もそうだが、相手のいっとう傍らまで近づきたかったからこうして膝を詰めたのだ。すんなりと、さも当たり前のように受け容れてもらえることが嬉しい。柔らかな促しも、傾聴の姿勢も、すべてが恵みの雨となって、この恋心をすくすくと育んでゆくのだから。)──! ……ぁ、……れ? えぇっと、ともえちゃんが謝ることじゃあ、(ないのだ。ちっとも。「すまない」の第一声にひんやり腹の底が冷える心地は、だいぶん正直で反応が遅れた。てっきりお断りのお返事だと思っていた“それ”が、どうやら違うらしいと気づけば首をかしげよう。思い違い。確かに認識の齟齬はあるが、)ううん。……ううん! 傷ついたとか、いまも傷ついてるとか、そんなことはないのよ。ぜんぜんない!(あわてて否定を口づかせつつ。)……ともえちゃん……。(どこまでも、主の想いに寄り添おうとしてくれる刀剣だった。それが嬉しくて、切なくて。)「正しく理解したい」と、思ってくれてる? わたし、あなたに教えてもいいのかなぁ……。(ドキドキする気持ちを。恋慕の何たるかを。些か不安げな吐露になる。あんまりにもひたむきな声音に、ふと覚える懸念はこれまで以上に強くなるものの、)でも、……そうね。まずは、知らないとはじまらないのかも。(──取捨選択はのちの彼に任せよう。帰結するのはやはりそこだ。小さく笑った。)

04/17 19:17*74

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のんびり、……のんびりか。それとはまた違うかもしれないが、(一説を唱えておきながら、不思議さの拭えぬ口舌。斯様な己の可能性自体に、まったく嫌な気はしなかったけれど。)いやなに、雰囲気が柔らかくなった……と、以前言われたことがあってな。主の影響ではないかと思ったのだ。(ともすれば、先のように知らず笑うようになったことも。――掛け替えのない主。一体いつから“そのように”思ってくれていたのか、定かではない。今の今まで気づけずにいたことを、側仕えとして不甲斐ないとさえ思う。傷つけていた訳ではないと知り、心弛びで自ずと細い吐息が零れてしまうくらいには。どこか不安げで、しかしあえかな笑みを浮かべるに至った面差しを見つめ、結んでいた唇をほどく。)……許されるだけ、俺は主のことを教えてほしいと思っている。主がそういった想いを抱いてくれていると知り、理解できぬままうやむやにしてしまいたくはない。(叶うならしなやかなその手へと、己が指先をそっと添えたい。握るとも、包むともいかぬ。それであっても身の回りの世話や必要な時を除いてしまえば、自ら主へ触れようとするのはひどく珍しいことだった。)だから――教えてくれ。我らの……俺の物語は、どこまでも主とともに在るものだ。(だからこそ変化してゆくこととて、大なり小なり当然にあろうとでも言うように。或いは、何を知っても己の根幹は変わったりしないと言うように。懇願にも似た響きが落ちて、)主よ、……俺はどうしたらいい?(何たるかを説いてくれるのならば、変わらずそれを聞き届けたい。願いあらば、そのようにしたい。無論それ以外でも、なんだって。眼差しは一途に、艶やかな虹彩へと唯一を映した。)

04/18 02:12*81

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(──そういえばそうかも、と、ふと思う。いわゆる“個”としての銘や逸話のないこの刀剣男士は、ほかに比べて、顕現当初よりどこか人ならざる存在として神格をよりまばゆく放つようだった。すでに本丸に在った、かの武蔵坊弁慶が振るったとされる薙刀とはまた随分と雰囲気が異なる。それが「柔らかくなった」と。確かに涼やかな目許がほのかに和らぐさまを、折に触れて見かけるようになったものだ。人のかたちをした器に心が引っ張られたのか、それとも。自分の影響ではないかと言われてこの胸に過ぎるのは、ほんの少しの背徳と、それを補って余りある幸福。ほほ笑んで享受しよう。いずれもひどく甘やかだった。)……うん。ありがとう。やぁ~~っぱり、好き、だなぁ……。すき。すきよ。だいすき。お酒が入ったからかなぁ。今夜はねぇ、どうしても言いたくなっちゃったの。たぶん、もっと上手な立ち回りかたができたのかもしれないけど、……うふふ。わたし、ともえちゃんに伝えたかったのね。教えて、知ってほしかったの。(それもまた、気づきである。こちらの手に伸べられる指先。焦がれて、“触れてほしい”と願った彼のぬくもり。欲張りなこの心は、たちまち赦されたような気にすらなって、握るとも、包むともいかぬ掌を手繰り、拒まれない限りはそうと引き寄せ、己が頬へと宛がおうとするだろう。少しでも躊躇うような素振りがあればやめておく。募る想いに熱の篭った吐息をこぼして。)ふふ~~。お言葉に、甘えまして。(心臓に悪いドキドキが、何だか癖になりそうだ。懇願にも似た響きにうっとりと、さらに蕩けるまなざしを細めては、)……うんとね、えぇっと……まずは、ともえちゃんが、どんなときにドキドキするのか、知りたい。わたしと同じなのか、違うのか。──……うふふ。探しもの、たくさんね。一緒に見つけてくれる?(飾る花も、恋する心も。のちの彼に、取捨選択のすべを与えられるように。)

04/18 13:40*87

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(――好き、すき。幾度繰り返されど褪せることのない主の言葉は、ふわりと舞う春先の花弁の如く。けれどどこまでも温かに、我が身のうちへと降り積もってやまない。)礼を言うのはこちらの方だ。今日まで大切に秘めていたものを、こうして伝えてくれて俺も嬉しい。……主が嫌でないのなら、いつでも。何度でもまた、伝えたいと思った時に聞かせてくれ。(酔っていても、いなくても。細いその手に導かれるまま、主の面へと触れる。そう望んでくれるのならば、躊躇うことは何もない。白くまろい頬の形に沿わせるよう、辿々しくも指の一本ずつを動かして――ようやっと、片手で包み込む形になろうか。親指の腹で一度きり、慈しむようするりと撫ぜた。)……そうだな。今の俺では、遠回りになってしまうかもしれんが……主とあらゆることを感じ、なるべく多く揃いのものを見つけてゆきたい。(探しもの。その言葉選びは急がなくても良いのだと言われているようで、改めておおらかな為人を感受する。)差し当たって。戦で良い働きができた時には、主の役に立てた喜ばしさで高揚を覚えることもある……が、こういうことではないな……?(嬉しい胸の高鳴りには区分されるかと思ったが、心臓に悪いふうではない。微妙にずれているとは薄々わかって、「やはりこれから知る必要があるようだ」と空いている手先で軽く片眼鏡を押し上げつつ。)……主は、どうだ? これまで、どのような時にそう感じてきたか……尋ねても良いだろうか。(それを本人の口から詳らかにさせるのは、どことなく野暮であるような気がしないでもなかった。ゆえに舌端を少しばかり鈍らせながらも、許されるなら主の抱く“ドキドキ”へ、少しでも近づくための参考に。)

04/18 23:18*94

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う~~ん、そゆとこ……。うふふ。たぶんね、大切に大切に、鍵をかけて仕舞っておいたほうが、よかったかもしれない。うちのみんなは……うん、大丈夫でも……「本丸の風紀が乱れる!」なんて、こぉんな目で睨んでくる、こわぁいオジサンが居るかもしれないでしょう。(伝えることを“嬉しい”と感じてくれる相手だから、きっと自分は恋をした。後悔をするような口ぶりではないし、実感としてもかなり薄いが、片手の指先でまなじりを吊り上げるかたちにしながら、おどけて笑う。)いいの? ……ありがとう。また、伝えさせてね。(酔いの自覚は遅ればせながら芽生えつつある。酒の席での戯れ言と流すのではなく、こんなところまで、素直に真摯に受けとめようとしてくれる姿勢に胸を打たれ、噛みしめて。気持ちとしてはもう十分、報われた心地になっているのだけれど──「ともえちゃんは、わたしを甘やかすのがとっても上手」。添えるだけの掌が、いつしか柔く包み込むかたちに変わると、)とけちゃう……。(あんまりにも幸せだから。撫ぜられるとたちまち相好を崩しては、しかしいつまでも掌をお借りするわけにもいかないので、しかと堪能させてもらってから名残り惜しくも解放しよう。)なるほど。誉を取ったときだとか、そういうことよね。惜しいなぁ……。(惚れた欲目か判定は広い。さして足しにもならぬ合いの手を入れつつ、些細なずれとて、これから彼と一緒に探してゆけたらと想いを馳せていたところ。)わたし?(ふと水を向けられて、瞬く。)うん。もちろんよ。ふふ~~。たぶんこう、喋りたがりだから、どんどん聞いて。(もとより好意を伝えるに躊躇いを覚える性質ではないが、やおら胸を張ると、)それはもう、たくさんあるけど……でもやっぱり、目許が和らいで……あっ、いま笑ってくれたなって思えたときとか。ほかとは違う、わたしだけの特別かなぁって感じると、ドキッとしちゃう。(まずひとつ。)

04/19 05:16*102

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だが、主は“教えて、知ってほしかった”のだろう?(先程聞いた通りであるならば。その声に翳りがない以上、こちらも深刻に捉えすぎるつもりこそないけれど。)仕舞っておいた方が良かったかどうかは、一度、鍵を開けてみた後でなければわからぬのではないか。(とは、純然とした所感である。怖い顔を作ってなお到底そうとは思えぬ主につられるよう、ふと空気を和らげて。風紀云々となれば取り締まるのは政府であろうが、「そのように可愛らしい顔で怒る役人は見たことがない」と、これもまた素直な所感。)光栄だ。主をもっと甘やかせるよう精進しよう。(ほころんでゆく顔ばせに、“とけちゃう”、が良い意味であるとは容易に解する。己が主を笑顔にさせているのかと感ずればまた格別な思いがあった。導かれていた手がほどけたことで、自ずと頬を離れていく指先は緩やかに。今少し触れていたかったような心残りが数瞬顔を覗かせた気がしたのは、さて。主の快いいらえで我に返るよう、暫し傾聴の姿勢をとった。)……他とは違う、自分だけの特別。(そっと繰り返す。言葉以上のものを馴染ませるように、主が感じてくれたものを大切にするように。)なるほど。俺も笑まう主の様は好きだ。無論、どのような部分も好ましいことに変わりはないが……主の笑みを見た時や、名を呼んでもらえる時は、胸のうちが温まるような思いがある。(振り返れば図らずも、主が言ってくれたように眦が緩む。この気持ちはひと振りの刀剣であるから、なのか。判別することは難しかったが、何より、彼女がいつも与えてくれているものを純粋に伝えておきたかった。心が動く、といった点は近しいだろうかと考えつつ、)ああ……話の腰を折ってすまない。たくさんある、のだったな?(眼差しが葡萄色を窺う。他にも挙げてくれるものがあるのなら、当然に耳を傾けようと。)

04/19 23:48*111

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うん。そうなのよ。……ふふ~~。いまのは、いい子ちゃんぶろうとした優等生の発言でした。でもねぇ、わたしは“わるい子”みたい。(先ほどから幾度かしているように、何ゆえか得意げな口ぶりである。──志ある、見目麗しい刀剣男士たち。顕現するとなまじ人のかたちを取るばかりに親しみやすく、その種類はどうあれ、彼らに惹かれる審神者というのはきっと後を絶たない。それを時の政府が何処まで考慮に入れているのかこちらが知るすべはないけれど、純然たる所感には、思わず目を丸くして。)! ……確かに、そうかも……。(結果というのは、いつだって選択ののちにもたらされるものだ。和らぐ空気のなか、ひとえに「可愛らしい」の部分に少し照れると、うろうろと視線を彷徨わせよう。)お、お手柔らかに……。(人のかたちを保てなくなっては大変である。そんな突拍子もないことをうっかり考えながら、離れてゆく指先を見つめていた。彼の応えに耳をかたむけていれば、みずからに馴染ませるよう、反芻するような声音。)よかったぁ。……名前って、大事だものね。自分はここに居るよっていう、証みたいなものだから。(古来より言霊というものの息づく国だ。“個”としての銘も逸話もない、その集合体としての呼称でも、それが存在とうつし世を繋いで結ぶためのものであるなら、折に触れて口づかせていたい。響きとしては同じ音でも、そこに慕う心を乗せて。)うん? ううん、腰を折るなんて、ちっとも! ともえちゃんがどんなふうに感じたのか、聞かせてもらえるのはとっても嬉しい。……これからもたくさん笑って、たくさん呼んでいこうと思いました。(ほほ笑んで、)そうねぇ……。あとはじっと静かに見つめられるのと、薙刀を振るうときの手つきもそうで、(と、これはまあ、些か嗜好に寄ったが。)それから、なんでもまず、受けとめようとしてくれるところ。(これは、ドキドキというより好きな一面。)

04/20 11:30*117

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わるい子か。では俺も、わるい主に付き合うとしよう。(酒の話ではないが、何とはなしにグラスに残った中身を飲み干す。そも、主の想いと風紀は同じ秤にかけるべきものなのか。“わるい”などとは到底思えずも、一種の洒落であろうと判じて返す声音は多少なりおかしげな響きを伴っていたか。面映ゆげにぽつりと紡がれた願いには、「善処しよう」と一言。その実、主を甘やかすことに加減が必要だろうかと疑問はあったが秘めておこう。他の刀剣からも過保護と称される所以である。)ああ。主が呼んでくれること自体が、俺にとってはどんな銘より価値あるものだ。……だが、だから喜ばしい、という訳でもない。……、上手く言えぬものだな。(名を呼ばれる時の喜びは、もっと単純な気持ちのはずだ。であるのに言い表すのは複雑で、やや難しい表情が浮かぶ。それと比べ“ドキドキ”や“好き”を語ってくれる主の、心延えの美しさと言ったら。仄かにむずむずとするような、言い知れない心地さえ覚える。ああ、こんなにも。如何に愛されているか知るようで、緩慢に睫毛を伏せた。万感の思い。)――……ありがとう。(未熟な己とも、こうして優しく向き合ってくれる主。「……失礼する」と断ってから、一度は離れたその温度を求むるように片手を取った。それを大層大事げに、己が両の手で包み込むと。)これからは、もっとともに過ごす時間を増やせたらと思う。従者として、だけではなく。……貴女の想いを受け止める者として。(――真に主の名を知らぬ。それでも主としての“織江”ではない、その人に語りかけるように。無論、刀剣として、側仕えとしての本分を忘れるつもりは毛頭ないけれど。それからただ包み込んでいた手を、此度は己の頬に導こうとする。つい先程、彼女がしてくれたのと同じく。拙い真似事だ。それでも、そうしてみたかった。)

04/20 23:29*124

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(いい子、わるい子。洒落や、言葉遊びのたぐいにも似たそれ。おかしげな響きでお喋りに乗ってもらえたことが嬉しくて、お代わりの葡萄酒をもうひと口。相手のグラスが空けば、お酌を申し出たひとときもあっただろうか。)うふふ。なんだかとっても光栄です。そうよねぇ……もちろん、誰の名前も大事に呼んでいるつもりだけど、ともえちゃんや、しずかちゃんを呼ぶときには、やっぱりね。(「どんな銘より価値あるもの」とは、些か面映ゆくもあれど、“あなた”を呼んでいるのだと確かに伝わっていることがよくわかる。もうひと振り、かの静形薙刀のこともまた引き合いに出しながら、何かを探しあぐねるような口ぶりに首をかしげた。)? そっか。でも、ゆっくりでいいのよ。いまは上手く言えなくても、いつか、忘れたころにぽんと浮かんでくるかもしれないでしょう。(ゆえ、いまは深く掘り下げることもせずに。)ふふ~~。どういたしまし、て……、……!?(今し方、離れていったばかりの彼の手が、今度はあちらから伸べられるさまに束の間、瞬いて。)わわっ、わ、(不意に仰天してまごつきつつ、状況把握に努めるのが精いっぱい。ひどく丁重な仕草で、大きな両の掌に包まれる己が片手。あたたかい。理解するとたちまち伝染したように頬やら耳たぶやらが熱を持ち、その涼やかな彩のうちでもひときわ目を惹く、赤みがかった春めく花の色へと吸い込まれるようにまなざしを寄せよう。)これからは、もっと、ともに。(噛みしめる復唱。)──……はい。(胸のうちに込み上げる想いを堪えるよう、泣き笑いの様相で。)ともえちゃん。──“巴”。(わたしの焦がれる、恋しいあなた。導かれた掌を頬へと宛がうと、)受けとめようとしてくれて、ほんとうに嬉しい。これからもどうぞ、よろしくね。(赦されるなら、もう片方の手も対の頬まで伸べては顔を寄せ、額と額を合わせてしまいたい。これはそんな、愛しい夜の話。)

04/21 13:27*132

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(神事を除けば酒の良し悪しなど然して拘りもなかったが、美味だ、と感ずるのは偏に眼前の存在あってのこと。御酌があらば丁重に受け、しっとりと舌を潤すだろう。如何な有事にも備え、弁えつつの含味ながらも心地好いひととき。)その気持ちが、俺たちが戦うための糧にもなろう。俺や静形をはじめ……主のもとへ顕現して良かったと、この本丸の皆が思っている。(大切にされれば嬉しいと思う、物の自覚としても当然に。ゆっくりでいい、と紡がれた言葉にもまた、大事にされていることを実感する。与えてくれた器と心で以て、こちらも一心一意の『大切』を届けたい。だから。狼狽する主の様子に常ならば引っ込めていたであろう手も、しかし今宵躊躇いはなかった。何故なら触れてほしいのだと、確かにその声で聞かせてくれた。色づいてゆく顔ばせをまっすぐに映しながら、ささめくように唇を開く。)驚かせたようだ、……許せ。(悪びれたふうではない。微笑の気配さえ纏って柔らに告げたのち――瞳が揺れたのは、何も戸惑いのせいじゃない。彼女の口から初めて耳にする三音が、波紋を広げてゆくかのように胸を打つ。誘い、宛がわれたその手へとささやかに頬を寄せて。)……ここに。(巴形薙刀も、“ともえちゃん”も、己を形づくる一部であることに変わりない。けれどもうひとつ。彼女のための“巴”が今生まれたのだと、ここに居る、と教えるように。)ああ、……末永く。俺の方こそ、よろしく頼む。(それ以上の言葉は、今は要らない気がした。手のひらから、額から。染み渡るように伝う命の温もりを、互いの吐息すら届きそうな距離で享受する。満たされるような喜びと、切ないような、微かな痛みに双眸を細めて。それは明日かもしれなければ、幾年後かもしれないけれど――受け止めるばかりでなく、いつかきっと返せたらいい。願ってやまぬ、深き夜ら。)

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