【前半】献身的とも解熱とも程遠い

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(子の刻。審神者の私室。本丸で暮らしてはや六年。書類をため込まずに仕上げることが得意な審神者であるので、自然と就寝時間も前職よりは早くなっていた。夜を徹して仕事をするというよりも、悪い遊びのために滅多にない夜更かしをする。そんな不健全で健全な日常になって久しい。)薬研。この間実家から梅酒が送られてきたんだ。一緒にどうだい?(夕餉の後、本日は仕事の納期も遠いからと皿洗い当番に自分を組み込んで日常の仕事を終えたのち。縁側で見かけた彼に何の気負いも持たないように誘いを投げる。古株の彼相手に酒の席を誘ったことも、誘われたことも今までにないではない。特に初期に顕現していた刀たち相手には酒の力を借りて彼らと話をすることもあったし、最近顕現した刀たちにだってそれは同じ。そういうところは前職のおかげである。無理強いはしないようにはしているが。「つまみは用意しておくから、またあとでね」と言い添えてからりと笑えば、そのまま言葉通りにいったん席を外して――現在。普段のスーツ姿よりかは幾分気の抜けた格好で彼の前に座し、つまみと酒を着々と進めて少しばかり頬を染めていた。)………ふふ。薬研、いつもありがとうねえ。わたしねえ、あなたがすきだよ、とってもね。(どこか腑抜けた声。自分の発言を精査することなど放棄して、酒に蕩けて好意を語る。)

04/14 01:06*3

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(生まれ変わった気分──とはいえ、時も経てばその感覚も随分と馴染んできた。任務を終えて、あるいは内番をこなし、一日の終わりは広間に揃って夕餉を摂る。極の身となってもやることは変わらず、しかしここ最近は、これまでとはちょいと異なる方面から相談を持ち掛けられることも多くなったような。それすなわち、)なあに、練度を満たしたからといって、すぐさま修業に放り出されるってわけでもないだろう。もし、踏ん切りがつかずにいるとしても、つくまで待ってくれるさ。俺たちの「大将」は、そういう御人だ。(夕餉の後、縁側に居たのはつまるところそういうわけである。修業とは、みずからの逸話や過去にも向き合うこと。当然、刀剣男士ごとの受けとめ方があり、今宵は先達としてひと振りの話を聞いていた。その人に声を掛けられたのは、話に一段落がつき、くだんの刀と別れて間もなく。よっ、と軽く弾みをつけて立ち上がると、)……おっ、……へえ、そりゃあいい。相伴に与るのは俺でいいのか?(直々のご指名であるので遠慮をするつもりは毛頭ないのだけれど、念のための確認として。これまでに酒を酌み交わしたことのない仲でもなし、からりとした笑みが返ってくれば、応えの代わりに片手を上げてその背を見送ろう。「あとで」と言われたからには、残りは寝るだけの支度を整えつつお馴染みの白衣をはためかせ、審神者の私室を訪ねた。「大将、邪魔するぜ」──そんなふうに入室の許可を乞うて、現在。)……ははっ、どうした。藪から棒に。でも、そうだな。どういたしまして。本当は礼を言われることじゃあないんだが、大将の役に立つってのが、俺らの本分だからなあ。(いつもの凛と背筋を伸ばした姿勢が些かほぐれて、女人らしい柔和な一面が垣間見えるよう。ひょんな吐露には意外そうに瞬くも、掻いた胡坐につく頬杖から仰ぐまなざしは微笑ましげだ。)

04/14 03:04*6

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(修行に関し、この審神者のスタンスは「待ち」の一言。希望されたならば送り出すが、希望しないものを促すことはない。自室の文箱に大切にしまわれた修行に赴いた刀たちからの手紙たちが、彼らの心のありかこそが大切な旅なのだと教えてくれている気がするからだ。彼が縁側で何をしていたのかまでは突っ込んで尋ねることもなく、)勿論。貴方に用事がなければね。(口ぶりは軽やかに、確認事項に応じて見せる顔つきはいつものさばけたものに違いなかった。「どうぞ」と応じる声も、おなじみの白衣に軽く笑って見せる姿もいつも通りだった。――が。)うん?いつもおもっているけれど。折角二人の席だからねえ。そうして本分といってくれるのもだし、(ここで止められていれば、きちんとした主らしかったろうか。)……薬研は格好いいでしょう。「短刀なのに」。…私が「女なのに」といわれるのを嫌うのに、おかしな話でしょう?「なのに」「くせに」って、嫌いなのに、私自身までそういう、先入観でものを見てた。…ってね、気づいてからは、ずいぶん楽なの。あなたがいてくれるおかげだよ。(彼のまなざしの色にふわつく笑みをこぼして見せて、水割りでもない梅酒をまた口に運んだ。酒は飲み込む癖に言葉は滑り落ちる。姿形にとらわれない彼のありようがまぶしくて、敬慕の念は汲めども尽きぬ。背筋を伸ばして立ち居振舞う普段からはかけ離れた女としての顔で心地よさそうに笑った。)

04/14 05:57*11

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……「短刀なのに」? そりゃあ俺たちの見た目の話かい。……ま、人のかたちに顕現されたとはいえ、もとは刀の姿だからなあ。せいぜい、刃渡りがいまの背丈に影響するんだろうくらいの感覚で居たが、大将の気が楽になったんなら何よりだ。(気を害したような口ぶりではない。確かに傾向として短刀の男士は小柄であり、幾つかの例外こそあるものの、大太刀や槍、薙刀の男士は長身だろう。とはいえ、大して気にもとめたことのない事柄であったし、室内でも小回りの利くこの身体は気に入っている。「あなたがいてくれるおかげだよ」。意識をしていない部分での貢献というのは何やら面映ゆい思いもあったが、なかなかどうして悪くなかった。──前職を経て、この任に就いた主である。以前のしがらみこそ詳しく聞き及んだ場面は少なかったかもしれないけれど、女の身ゆえの苦労もしてきただろうとは、その負けん気の強さにうっすらと察するところでもあったので。)仮に……前線に出て戦働きをするとなりゃあ、都合の悪い面もちらほら出てくるのかもしれんが、指揮を振るうだけなら、男も女も変わらんだろう。大将の采配は信頼できるしな。(単純な臂力。あるいは武の才。戦略などは多少求められることもあるだろうが、審神者なる勤めは基本的にそういう方面からは懸け離れている。本丸の隅々にまで目を配り、心をくだく。あなたがいてくれるおかげ、は、こちらの台詞だともふと思った。)大将、それ……水でも湯でも、何か入れたほうがいいんじゃねえか? 確かに飲みやすいが、せめて、水と交互に飲むとか……、(世話焼きの性分がつい顔を出し、水差しやらを周囲に探す。ないようなら、いまからでも、立ち上がって厨にまで取りに行こうか。そんなふうに考えると、ほんのわずか腰を浮かして。)

04/14 16:50*14

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うん、見目の話。小さくて、愛らしくて、守るべきものみたいな外見なのに、心根の強くて頼もしい私の短刀たちの話。背丈とか、顔立ちとか、性別とか。どうしようもないものをあんまり気にしてないように見えるあなたの話。(人は見た目にとらわれがちなのだと、彼らを見ていてあらためて気づかされる心地。それはとても嬉しく響く気づきだった。――前職にまつわるしがらみというものを見せないように、ただ背筋を伸ばして本丸の主として誇り高く在ってきたつもりだ。そんな今の自分に対する評価に、信頼を告げてくるのはやめてほしい。きゅうと胸が閉まってあまい梅酒がしょっぱくなってしまう。)……主冥利に尽きる。あなたの信頼を損なう采配など、できるはずもないね。(女は感情的だから、もの知らずだから、といってくるのが頭の堅い老人たち。彼らに比べてもうんと彼の歴史は古いのに、そんな老人臭さを感じないのがおかしくて、しみいる心地とこそばゆさに笑いだしたくなる気持ちが半々で、変な顔をしていたろう。「………うん、やっぱり私は、あなたに相応しい主でいなくちゃ」ちりちりと胸を焦がす慕情を敬慕故と言い聞かせて、しかと頷く。)…ああ、道理でいつもより味が濃いと。おいしいよ。(からころと笑んで見せてしまう危機感のなさは酔いの象徴。かちわり氷がいくらか小壺にはいってはいるが、それでは足りぬと判断したのだろうか。立ち上がりかける彼の白衣を反射でつかんだ。)

04/14 17:58*16

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なるほどね。可愛い顔して何とやら、というやつか。人間ってのは難儀なもんだ。ただの刀だった頃の俺たちは、その一番近くで、主を守ってきたわけだからなあ。(後半は、話題を繋げようとするよりは、どこか独り言ちるような響きとなった。肌身離さず持ち歩くためには、当然、小さいほうが理にかなう。それだけのこと。さらに掘り下げるつもりはなかったから、杯に口をつけることで切り上げとして。──さても当代の主である。顕現当初こそ除くとしても、数多の戦線を潜り抜けるうちに芽生えた信頼は、折に触れて告げてきたつもりだ。何やら身のうちで感情が幾らかせめぎ合うような顔をしているとは感じたものの、その詳しいところまではわからない。機微を上手に察するには、まだまだ不慣れな面も多いもので、だから告げられる言葉からひとまずは判断するのだけれど。)ははっ! 大将、そりゃあ肩に力が入り過ぎだ。特別、誰かと比べるつもりもねえが……そこまでして自分に言い聞かせなくても、大将はよくやってるよ。(「相応しい主」だなんて、まるでみずからを戒めるように呟かずとも。そうして、常からすると随分あどけなく映る機嫌のよさそうな笑みには。)……おいおい。……まあ、確認を怠った俺も俺か。それなら、いまからでも取ってくるから少し待っていてくれ──、(早々に視線を襖のほうへと移し、立ち上がりかけたところで白衣の裾を引かれてぴたりと静止。よもや自分で踏んづけたわけでも、何処かに引っ掛けたわけでもない。ぱちくりと目を丸くして、性急な仕草ではないが、裾を掴んでいるその人をやや驚いたように振り返った。)……うん? どうした、大将。俺は、厨に水を取りに行くだけだ。(相手はどんな表情をしていただろう。どうしてか、不安や心細さの類を見つけた気がして、ゆっくりと優しく、噛んで含めるような物言いをする。伸ばされた手や指先を、上から撫でるように触れながら。)

04/15 11:50*33

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(難儀なもの。それは確かに。刀と人の意識の隔たりというのは儘感じるもので、そんな難儀なものを感じるというのもまた、だからこそ過ごしやすくはある。そうだねえ、と、緩やかに笑んで頷いた。)…そうかなあ、そうだといいんだけれど。あなたたちが私のもとで働くのに苦痛ばかりはいやだもの。あなたがよくやってくれるというのなら、私としても信じられるけど。でも、…わたしねえ、薬研が「好き」なんだよ。(彼にとっては論理の帰結にもなっていない言葉の結びだろうと考えることはなく、酒に火照る声はそのままに。仲間として、敬慕する相手としての「好き」とは明確に異なる「好き」が胸元にあることは常日頃から自覚している。自覚しているからこそ蓋をして鎖をかけることはかなっていたのだけれども。彼の信頼にいつもならばあっけらかんとありがとうを伝えられていたのに、心を露出させ始めると日頃抱えている葛藤までも露出してしまっているようだ。)大丈夫だよ、もう少しゆっくり、つまみも多めに食べながら飲むことにするさ。だから、(言い訳めいたものだと自分でもわかっている。主を想う藤四郎が水を取りに行くのは当然のことだろう、とも。からりとした声色の癖子供のような駄々だ。)分かってる。……きゅうに、さみしくなって、(彼を引き留めたのは無意識だったが、それだけ急な感情な流れだったこともあるのだろう。寂しい、悲しい、辛い。主と務めると決めたからには、言うはずもない言葉だった。その感情を行動の根拠とするなどありえないことだった。なのに、「薬研が今いなくなるのは、さみしい」と、ぽつりと感情だけを俯きがちな視線に乗せて繰り返した。)

04/15 13:14*35

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(「信じられる」と、主の助けとなれたことは喜ばしい。しかしながら、すぐ後に続く逆接の意図を量りかね、はてと首をかしげるのだった。)? うん。そりゃあ「嫌い」よりかはいいだろう。(人間の感情や、心模様が複雑であるのはこれでも知っているつもりだが、いかんせん自分ごととして捉えて結びつけるには、流石に刃生経験がまるで足りない。好意の何処に不都合があると言うのだろう。それとは本来、歓迎されて然るべきもの。そのはずだ。──古来より酒は人を酔わせ、ついうっかり口を軽くさせることが往々にしてある。あるいは、頑なな心を少しばかりほぐしてやるような。耳朶を打つ声音は、たとえば泣き言めいた湿っぽい響きではない。それでも迷い子のようだった。不安がっている。悪い夢でも見たかのよう。常に背筋を伸ばして生きる相手の、それはひどく珍しい姿。おそらくは、こうして酒を少々過ごさねば、表に現れることもない秘められた、)……そうだな。だが、せめて、あの氷はぶち込んでおいてくれ。(正直、納得をしているとは言い難い。とはいえ、この状態の主を置いて行くのは以ての外だ。共に厨まで赴く──だとかそういうことでもないのだろう。かちわり氷の入った壺を指す。)居なくなるとは言ってねえ。……なんだ。大将、今日はやけに甘えただなあ。(非難をするような口ぶりではなかった。揶揄を向けるようでも、もちろん。ただ、その齢のおおよそ十分の一ほどの童にするような声の調子と振る舞いで、ぽん、と、頭のてっぺんに掌を置こう。)何処にも行かない、とは言えないが……それでも、俺はいつだって大将のところに戻って来たいと思ってる。(帰りを待つ人の元。主から何か反応があるまでは、しばらくそうして頭を撫でているつもり。)

04/16 02:26*47

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…うぅん、そうだなあ。薬草でも使う場所によって効能が変わったり、使用量の多寡で毒になったりもするでしょう。そういうことかな。好きは好きでも、それが毒になる場合もあるんだよ。主が刀に恋をしているなんて、本丸の運営に差し障るでしょう?気持ちを変えることは出来ないけれど、気持ちを隠してあなたたちに恥ずかしくない主としてふるまうことは出来るんだから、そうしなくちゃね。(――当人の意識としては、薬草に絡めた説明をして、好意というのは難しいものなのだと苦笑したところで口を噤んだつもりでいた。しかし本日の酒はやたらと口に回ってくるようで。普段ならば押しとどめて飲み込んだことすら気付かせないほどにうまく主としてふるまえる理性は明らかに低下していた。と、今もなお気づかない。)勿論。二日酔いにも十二分に気を付けるよ。(納得をせずとも妥協をしてくれた彼にほっとしたように彼を見て、残ってくれるというからにはと頷いて見せつつ、氷を備え付けのトングでグラスの中に従順に運ぶ。)……、自分でも、そう思う。(彼の口ぶりに、こくんと頷くさまはやはりどこか幼げだ。三十路も過ぎて恥ずかしい。無理に引き留めて、あまつさえ――子供にするように、こんな風に撫でられて。それに幸福と喜びを刺激されているのだから、何とも救えない。一番近い記憶を探っても、記憶の彼方を探っても、こんな風に異性に縋ったことも、こんな風に撫でられたことも、きっとなかった。)…うん、…分かってる、つもり。あなたがどこかに行っても、帰ってきてくれることも。そうしたいと思ってくれていることも。…あなたの帰る場所でありたいとも、思ってるよ。……ごめん、恥ずかしいところを見せた。(彼からしばらく撫でられて、言葉を酒のみちた体にしみこませて、漸く。ぽつりぽつりと感情を返し、いつもに近い笑みを浮かべた。からからとしたというには恥ずかし気だったが。)

04/16 10:38*52

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ああ……。まあ、確かに薬も過ぎれば毒になるし、可愛さ余って憎さ百倍、なんてこと、も、(あるんだろう。そう応えるはずの続きは、音にならずに掻き消えた。後半はやや物騒な方向に矛先が振れたが、合点がいったような素振りでうんうんと頷いていたところ──主が刀に、“コイ”をしている。さっぱり馴染みのない響きに両目を瞬かせて二の句を継げられずにいたけれど、流石に「気持ちを変える」だの「気持ちを隠して」だの告げられると、それが人間の言うところの“恋”の意であるとは容易に想像がつくものだ。しかしながら。気付いていないのか、それとも──気付いたうえでの敢えてなのか。声音だけでは判断がつかず、万が一にも意図せぬ吐露であったなら藪を突いて蛇を出しかねないこともあり、主を慮る藤四郎の性がこの場では、表立って触れることをどうにもひどく躊躇わせた。)……珍しいとは思うが、窘めたいわけじゃあない。いつでも背筋を、しゃんと伸ばしてるってのは立派なもんだが、そればかりだと息が詰まるだろ。息抜きがてら、こうして頼ってもらえるのは嬉しいよ。(謝る必要もないと首を振り、どうやら少しは落ち着いたらしい主のすぐそばで、再び腰を落ち着ける。)だから、大将のそんな珍しい姿が見られたのは……今宵の俺の特権ってわけだ。(これには少しばかり揶揄の響きを込めて軽やかに、後々尾を引かぬほうがよいだろうとも考えて、)“さっき”のは、大将のなかで結論が出てるんなら、そうするのが一番いい。刀の俺には、いわゆる「恋」ってのは、まあ……馴染みがないわけだが、「そうしなくちゃ」でやっぱり肩に力が入り過ぎるってんなら、また話でも聞く……いや待てよ、その役は俺じゃないほうがいいのか?(最後のくだりは完全なる自問。聞いてしまった以上、話を流すことも不忠に当たる。そう思い直したがゆえの、あらためての指摘だった。)

04/17 06:19*66

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(画展が行く説明というのはときに難しいものだが、今回ばかりはうまくいった。うん、と頷いて相槌を打っていれば途中で途切れた彼の言葉の切れ端。その意図をつかめないままにグラスに口を近づける。ひんやりと氷の冷気が漂うのが何とはなしに口元を潤してくれているようだった。貴方に恋をしていることは間違いなく、けれどそれで彼の負担になるつもりも、本丸を惑わすつもりもない。ただ、こうして深酒をしてしまったから、つい言葉がこぼれただけ。自覚もしていないことである。)…ふふ、そうかな。立派な主でいたいんだ。貴方達の信頼に応えたい。薬研は頼もしいから、いつも頼っているけれど。頼るのと甘えるのとでは、違うし……もう、甘えてしまいそうだなあ。(主として、審神者に従事する者として、背筋を伸ばさない生き方はきっとうまくできない。彼のやさしさ、頼もしさにまぶしげに目を細めて。)………そういうところだよ、薬研…。(軽やかに響くその声色が恋慕のありかをかき乱す。気恥ずかし気に視線をそらした。)……さっき?(きょと、とした顔をして首を傾げる。その顔のまま彼の言を聞けば、ようやっと自分が口を滑らせたことを思い知って顔色は常日頃かけている赤い眼鏡にも負けず劣らずの様相。グラスを持ったままでは零してしまいそうだという妙な判断により盆の上に預け、)ちが、ちがうんだ。いや。なにがちがうんだ。……いや、聞かれてしまったからには貴方でないと困るけど、それに肩に力を入れ過ぎてるとかそういうわけでは、ちょっと待って、ちょっと…何。私は何を言っているんだ…?(反射で言葉を紡ぐ橋から否定するありさまは、普段思い描く主というものに相応しくない。待って、を手のひらで彼に伝えると、一度深呼吸を試みて。)

04/17 14:15*69

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(頼ると甘える。確かに字面からして違うのだから、含む意味とて異なるはずだ。とはいえ、何でもかんでもこちらに任せきりというわけでもない。──そも、主の気性からして、そういう生き方をみずからに許す性質でもないだろう。)まあ……いいんじゃねえか。甘えるほうに少し傾くくらいでさ。うちの大将は、たまに肩に力が入り過ぎるきらいがあるんでな。(常にしゃんと背筋を伸ばし、襟を正さんとする主の、審神者としてのありように危うさを覚えたことはない。いまのままでも十分、この先も上手くやってゆけるだろうという信頼がある。それでも。人の身にいだく心というものについて想いを馳せてみたとき、たまには“そちら側”へと舵を切ってみるかと思い立つための手助けは、自分たちのような側仕えにしかかなわぬとも感じていた。人間は、ひとりで生きてゆくのではない。たといその最も傍らに侍るのが、刀剣男士として人のかたちを取った付喪神であるのだとしても。)? 何がだ? 大将。(ちっとも思い当たる節がないとでも言いたげに独り言ちては、不思議そうに首をかしげて。)そうだ。(頷く。その復唱の様子からして、やはりあれは意図せぬ吐露であったのだと、状況を察するのは早かった。)……まずは、ちっと落ち着いて深呼吸だ、大将。……大将がわからんことは、俺にもわからん。(肩か背中にでも添えてさすろうとした掌を、待ての合図で引っ込める。代わりになるべく急かさぬようゆったりとした声音で、そんなことを勧めよう。些か困った顔で眉を下げているのは、相手がどうこうというよりも、みずからにできることが見当たらないがゆえの不甲斐なさによる。いったん、水でも飲んだらどうだと口にしかけて、そういや水差しがないんだったとは内心のみでのぼやきだ。ひとまずは主の焦りがほんのわずかでも鎮まるよう、その向かいで静かに待っていたい。)

04/18 12:41*86

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(もしも、彼をただ頼っていれば水を取りに行く彼にすまないねと見送ったろう。普段ならばそうできたはずが、酒に酔って甘えているせいでさみしいからと引き留めてしまった。)…貴方達には十分に頼っていて、よくしてもらっているつもりだけど…甘えてしまうだなんて、そこまでしてしまっていいのかな。がっかりさせたり、びっくりさせてはしまわない?(背筋を伸ばしているからこそ、女を主と仰いでも問題ないと思ってもらえているのでは。そこに甘えが入ってはよくないんじゃあないか、と思いながら、ふわりと促されるような心地は、酒にか、彼の声にか。――ああ、と、両手で頭を押さえた。穴があったら入りたいというべきか、自ら墓穴を掘っているというべきか。深呼吸、という言葉に合わせて呼吸をすれば、少しばかりは落ち着いてくる。)……ごめん…。いうつもりはなかったものだから、つい動揺してしまって。………ええと。そうだね、私は貴方が好きだよ。主としてだけでなく女としても。刀剣男士の貴方を尊敬して、共に戦えることを喜びと感じて、貴方に相応しい主であろうと励んで、あなたに主として認められることが幸福で。……でも、ねえ。人間の感情っていうのは一種類だけじゃないから。格好良くって、頼りになって、優しくって。剛毅で、実力行使してくるのすら気持ちのいい気性の貴方を、男として見てる。(そこまで真剣に言い切って、ぱっと気分を変えるようにからりと笑って見せた。)好きだよ。好きだけれど、貴方に変わってほしいわけじゃない。同じ気持ちを抱いてほしいわけじゃない。何かを変えたいわけじゃない。ただ、好きで、好きで。それだけ。忘れていい、…嫌わないでいてくれると、嬉しいけどね。…だから、ええと、そうだね。力を入れ過ぎているつもりはないし、あまり気にしないで。その役を望んでくれるなら、してほしい。(ようやっと話題の端に戻ってきて、うんと一度頷いた。)

04/18 19:47*90

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うーん、そうだなあ……珍しいという意味で、多少はびっくりするかもしれんが、少なくとも、がっかりってことはないだろう。思い浮かばんよ。この本丸の奴らは皆、大将の刀なんだし。そりゃあ、たとえば、明日からすべての任務を放り出して奥の間に引き籠るってんなら、思うところのある奴らも出てくるかもしれないが、そもそも大将は、そういうことはせんだろう。(考えを胸中に留めるだけではなく言葉にして口づかせる。持ち物が主に落胆して、あまつさえ疎んずるということは滅多にない。逆はよくあることだが。さても──いまこうして相対しているのは、己が心を励起し、人のかたちに顕現せしめた当代の主である。それが唯一の事実であるから、そこに人間で言うところの性差の別は、実感としては非常に薄い。つい先ほど相手自身が述べたとおり。)俺たち、いや、俺にとっちゃあ、大事な大事な大将だ。無理をさせたいわけじゃない。それで少しでも心が軽くなるってんなら、頼られ甲斐もあるってもんだろ。(つまりは、心配なんぞ要らぬという意思表示。──して、動揺を収めた主のあらためての吐露が、真摯にこの耳朶を打ったなら、「貴方を、男として見てる」。ひょんな発言に、完全に虚を衝かれて瞬いた。やや不躾に、まじまじと眺め遣っては。)…………男として?(まるで人間のような。嫌がるような口ぶりではない。)ええと、待ってくれ。大将の気持ちは嬉しいが、つまり、俺に、人間の男のような振る舞いを期待して言っているわけじゃないと。(幾らか矢継ぎ早にも思える補足に、理解が追いつくまで時間がかかる。)でだ。忘れていいし、気にしなくてもいいが、話を聞く役はしてほしい? ……すまん、大将。ここが上手く繋がらんのだが……。(勝手ながら、矛盾があるような印象をいだいている。無理をさせているのではないかと。)……俺が、大将を嫌うなんてことはない。そこんとこは、心配しなくていいぜ。

04/19 04:14*101

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私の刀…だったら、やっぱり私は人としての規範とならなくちゃね。それは普通に駄目だろう、やれと言われてもできる気がしない。(仕事にかまけて不健康な生活になっていた前職から本丸での健康的な生活を習慣づけるのにも時間がかかったくらいだ。例えば休暇を求められれば話は別だが、仕事の放棄に対する忌避感は根強い方。それを悟られてしまっているのがいささか気恥しくもあるけれど。「じゃあ、たまには甘えてみようかな」だなんて不確かな未来に笑みを浮かべて。――そうして。告げた言葉は半ば彼の意見を聞きもしないものだったろうに付き合ってくれていて申し訳ないような、ぬくもりを宿してしまうような。)うん。好きだけど、別に恋人になってほしいだとか、人間の男のようになってほしいだとか、そういうことは思ってないよ。私は薬研の主だし、貴方が私をそう見るのは正しいもの。…そもそも、私の好きひとつで人を変えられると思うほど己惚れてもいない。(不純な気持ちを抱いているのはこちらの勝手で、それに合わせてもらうことを望んでいるわけではないと笑う。)ああ…、勿論、そんな話を聞きたくないというのなら聞かなくてもいいのだけど。なんというのだろうね。この気持ちは陸奥守にすら言っていないから…「そうしなくちゃ」で力が入っているとしたら、他の誰に言うでもなく貴方に言いたいと…ああ、ごめん。でも、そうしたら負担をかけてしまうか。好きだから、そばにいてもらえるのは単純に嬉しいけれど…うん、やっぱり、聞かなくて大丈夫。(他者に敏な初期刀のことを思えばうぅんと首を傾げる。それでもこの件に関しては彼は沈黙を守ってくれているのでその点で言っても自分は存外刀剣男士たちに甘えているかもしれない。ふるりと首を振って撤回すると、)……もう。頼りになるっていうのは甘えたくなるっていうのと紙一重なんだから、困ったものだ。…でも、ありがとう。素直に嬉しいよ。

04/19 09:59*103

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(「人としての規範」。それをまず口にするさまはいかにもこの主らしく、口元が緩やかな弧を描いた。他所の本丸事情をそうそう窺い知れるわけではないけれど、主の勤勉さを反映してか、ここの本丸の刀剣男士たちには働き者が多い気がする。後半ではますます笑みを深めて「たとえ話だ」と喉を鳴らそう。やがて、不確かな未来については歓迎するようまなざしを細め、)……、……そういうもんか……。(些か呆気に取られたような口ぶりとなった。この短刀としては珍しい。)まあ、俺は大将の刀だから、やれと命さえ下れば“できる”とは思うが……、(とはまた、随分と無粋な物言いになってしまう。確かに人を変えることは難しいが、こちとら相手の持ち物である。主であるということのある種の絶対性については、いまいち認識も薄いのだろうかと、頭の片隅でぼんやりと考えていた。もっとも、勧めたいわけでもなければ、反駁が返ってくるのもわかっていたので、何かを言われる前に「たとえばの話だ」と言い訳めいて先手を打とうと試みつつ。)……いや、負担を掛けるってのとは……、(違うと思う。思うけれど、代わりの言葉が見つけられず中途半端に口を噤んだ。酒を過ごしたこういう状況でもなければ、終ぞ打ち明けることもなかったのだろうと感じた先のくだりではあったから、いま名前の出たかの打刀にも伝えていないということには合点がいく。言われたそばから撤回が入ると──何やら、身勝手は承知のうえで肩透かしを食うような心地。)大将は、何でもかんでも、ひとりで完結させちまうんだからな。(誓って貶める意図はない。ふとこぼれた吐息は、慈しむようなぬくもりで。)うん。大将の気持ちは、わかった。俺を好いてくれてありがとう。嬉しいよ。……だが、こっちを慮るあまり、大将が自分で自分の首を絞める羽目に陥っちゃいないかい。(心配は不要だろう。だからこれは、主を想う藤四郎の念のための確認だ。)

04/20 03:48*113

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(彼らの元の主に恥ずかしくない、今の主として相応しい、人としてあるべき姿。そういうものを示すことができているなら重畳で、彼のたとえ話にはこちらも笑った。「多分そういう私は熱病にでもかかってるから、一発小突いてやってくれ」と冗談一つ加えておいた。)薬研のそうした顔は珍しいね。……そういう”できる”は望んでない…というか、できるの?(無理に変えてはいけないだろう、と思う。人としての感性だ。彼ができるというからにはできるのだろうけれど、信じられないような心地での復唱は先手を打たれて宙に漂う。「たとえでも、望まないよ」その意思ばかりははっきりとしていた。邪道を許すべき時とそうでない時くらい心得ている。)負担…ではないの?身勝手な感情のままで我儘を言うことになってしまうよ。(こういうところは何に由来する意識の差なのか。いつもよりも素直な形で首を傾げる。――それから、零された言葉には幾度か瞬きをした。図星をつかれたような、暴走を嗜められたような心地。だから深酒なんてするべきじゃない。)…でも、じゃあ、薬研はどうしたい?…って聞くの、なんだか不誠実じゃないかな。間違ってるのは私の方なのに。…いや、ひょっとしたら、単に薬研の答えを聞くのを怖がっているだけ…なのかもしれない。それで、自分の中に抱えるってだけで満足したがってる、あたりかな。…我がことながら…呆れる…。(自己完結といわれてしまえば確かにその通り。躊躇うようにして問いかけながら、どうにも不安がってでもいるかのように曖昧にしたがる言葉が続いた。そこからつらりとつづけるのは自己完結に似た自己分析。)私の方こそ、受け止めてくれてありがとう。それだけで嬉しい。……薬研は本当に、優しいね。これは単に、自縄自縛とかそういう…絞めてるかもだけど、解決法がわからないんだ。どうしようね。(酔っているらしい。呟くようにして首を傾げるだなんて。)

04/20 10:40*116

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……まあ、実際にやってみたことがあるわけじゃないからわからんが、大将が心底望めばできるだろう。大将は俺の主だからな。(あまり楽しい話ではない。それを望まぬ主であるのだから、尚更。これ以上の反実仮想を続けるには不毛で、はきと示された意思には、「うん。わかってる」と、応えることで締めくくりとした。)そうだなあ。さっき、大将は……俺に、人間の男のような振る舞いを期待しているわけじゃないと言った。だから、これまでと特別、何が変わるわけでもないように思えて……なら、負担にはならねえだろうと。俺は、大将の気持ちを迷惑だとか、そんなふうに感じているわけじゃない。話を聞くだけで我儘にはならんさ。これを身勝手と言うには、大将は随分俺のことを慮ってくれてるよ。(さも同じ“人間”にするよう。不意のはずみとはいえ、その打ち明け話は恋情の押しつけからはまるで懸け離れていた。こちらとしては、相手の自覚よりも、遥かに理性的な振る舞いであると捉えているので、)うーん。確かにどうしたいかと聞かれると、少し窮するところもある。俺は……大将の役に立ちたいし、望みがあるなら叶えてやりたい。だが、刀が人間の真似をして、たとえば夫婦の契りを結ぶだとか子を生すだとか、そういうことは難しいだろう。(人間が恋をするとは、すなわちそういうことなのだろうと考えていた。しかし、己の本分は戦働きである。主か望むと望まざるとにかかわらず、これは世の習いとして。)……結局、俺も上手く想像がついてないんだろうな。でも、大将の気持ちは大事にしてやりたいと思うよ。(何を強いるでもない今生の主に。)解決法ってのは、ひょっとするとないのかもしれん。(さても古来より、恋は不治の病であるという。)どうしよう、ってのは……いますぐには見つからんが、だったら……やっぱり、話を聞くってのはどうだい。(これまでの日常に想いを乗せて。話題は三度、舞い戻る。)

04/21 12:01*130

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(彼のありよう、それ自体をそもそも好いているものだから主としてふさわしく在ろうと思っている。真っ直ぐで思いやり深い彼を自分の恋慕ひとつで捻じ曲げるなど到底許せることではないから、彼の応じてくれる様に安堵するように微笑んだ。)うん。私は、貴方に無理をさせたいわけじゃないんだ。……迷惑、ではない?自分の持っているのとは違う目を向けられるのは、…貴方の負担にはならない?いや、勿論何かを強要するつもりはないわけだけど。…慮りたくもなるし、気にしてしまうよ。(恋情に関する距離感や認識というのはやはり人間として。同じ部署での色恋沙汰や、断り切れない立場の人間からの身勝手なセクハラめいたもの。彼を想えばこそそうしたものに身をやつすわけにはいかないというのはそこそこの人生経験から考えざるを得ないことが増えた証か。本当に負担になっていないだろうかと、伺うように彼を見た。)貴方は十分力になってくれている。薬研がいない本丸の運営なんて今では想像もできないもの。……子供。(審神者としての顔を挟んだのち、一人目を丸くして。)…そこまでは考えてなかった。精々、笑っているところを見られたらとか、手を繋げたらとか、喜んでいるところを見たいとか貴方にだけ見せられる姿とか、キスとか、……違う、何でもない。(つぶやきを落とすようにして、慌てた調子で首を振った。羞恥と自省すべき望みがあふれ出たことに対する罪悪感で「わすれて」を続けて。)…だねえ。それは、私もなんだ。薬研の気持ちを優先したい。好きだもの、薬研がしがらみなく自由にいてくれる方が、嬉しい。……いいの?じゃあ…そうだね。また、話しを聞いてくれると嬉しいな。…お酒でも飲まないと話せる気がしないけど。(軽く肩をすくめるようにして笑った。どうしたらいいのかわからないから、話をする。思えば当然の事で。それを与えてくれる彼に感謝するばかり。――夜は更けていく。)

04/21 17:35*133

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「自分の持っているのとは違う目」か……。しかし、人も刀も、ふたつとして同じものはないだろう。物の見方もそうだ。大将は想像して心配してくれてるが、俺が実際にそう感じるとは限らないし、少なくとも現時点では思っちゃいない。それに万が一「迷惑だ」と思うことがあっても、いつまでも腹に溜めておく気はないさ。大将が気にし過ぎるくらい気にしてるのを知ってるからな。(審神者と刀剣男士の間に横たわるのは、仕事上の同僚関係や上下関係などではなく、れっきとした主従関係である。刀という“物”であるわれらは、本来、人の子に振るわれなければ用を為さないただの鉄屑。だから、腹に溜めるというのも、我慢の意味とは少し違う。そういうものだ。人とは違う。受け容れる定めであり、それ以上でもそれ以下でもない。──けれど、これまでの歳月を共に過ごして、それを「無理」や「負担」と捉え、まるで自分事のように心を痛める主であると知っているから。万にひとつも可能性はないだろうが、そんなことも口づかせつつ。)…………、(「そこまでは考えてなかった」とは言うものの、落とされる呟きが示す振る舞いは、人間の男のそれにも感じる。心というのは難しい。畢竟、こちらを慮って繰り返される否定の裏、もし仮に別の想いが息づいていたのだとしても、それを類推し、敢えて指摘をするような性質ではなかった。何より「わすれて」と言われるなら。)わかった。(そこで、たとえば異を唱えて踏みとどまったりすることは、この忍冬の本丸の、薬研藤四郎にはできない。雁字搦めの“蔓”を斬ってやれるとするならば、それこそ主の命が危険に晒されたときくらいだ。変えられるのは自分だけ。だから、やれることを考えて、)ははっ! あんまり酒が習慣化するようなら、俺がほかの奴らにどやされそうだ。……なら折を見て、また追々な。(夜は更ける。やがてお開きの後には、一杯の水の差し入れも忘れずに。)

04/22 13:25*148