【前半】ぶどう畑とぼくらは手がかかる

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(とある男が審神者になったのは十七の時。まだまだ至らぬひよっこだけれど、しっかり者の初期刀と古参の刀たちが一息つける程度には、ほどよい余裕と頼もしさが増してゆくこの本丸。勿論油断は禁物、何故なら戦況は未だ終息を悟らせないだけでなく、成人を迎えたって相変わらずの調子である審神者だったから。そんな男は最近刀剣たちとの飲み会にハマっていた。酒とつまみを味わいながら、大好きな刀剣たちとの時間を楽しむ。そんな会は度々あって、ある春の日、この本丸の古参である刀が近侍であった機会に誘ってみる。常に彼が被っている布と金色の長い前髪に屈することなく顔を覗き込みながら。)――やあ!よく来てくれたね山姥切!(静かな夜半。彼はどうであれ、男の方といえばにこにことご機嫌に、寝巻き姿で彼を歓迎していた。会場は審神者の執務室兼私室。普段は寝る時間であったけれど、明日に設けた休息日と一仕事落ち着いた解放感、そして彼とのお酒が楽しみで寝るには勿体ない。)さあさあ、どうぞ入って!……あ、おつまみはね、堀川や料理が得意な子たちに手伝ってもらいながら用意したよ!おすすめは、僕が作っただし巻き玉子さ!(招いた部屋の卓袱台の上にはつまめる料理が数品、ビールやチューハイいくつかと、あとは食器の類い。彼にも食べたい、飲みたいものがあれば持ち込んでおいでと伝えていた。早速敷いてある座布団のひとつ、そばに手鏡が置かれている方に座り込んで。)今夜は寝かせないよ?(にやりと、そんな冗談くらいは言えるほどの仲だったか。)

04/14 12:39*13

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(主と君はまるで対照的だね、とは、始まりの一振りの言葉だったか。事実、他人に指摘されがちな容姿を隠し忌避し続ける刀にとって、我が主が宿すその溢れんばかりの自信は非常に眩しいもの。輝かしくも凛とした新緑のような魅力に導かれること早数年――主は齢二十を迎えていた。やっと成人に達したとかで、夜な夜な皆と酒盛りに興じる姿を山姥切も幾度と無く目撃しているが、その輪に加わったことは未だ一度も無い。確かに写しの俺なんかと飲んだところで……といつも通りの思考が脳裏を過ったその日、突然の晩酌へのお誘いには少々の押し問答の末、沈黙を伴って頷いてみせた筈。)……山姥切国広、入るぞ。(夜更け頃、軽装と襤褸布を纏った刀はひとり静謐な廊下を抜け、主の御座す執務室兼私室の前へ。一言の後無遠慮にも此方から引き開けたなら、文字通りご機嫌な青年が嬉々として出迎える。すっかり長酒する気満々という室内に視線を遣りながら、打刀は足を踏み入れた。)だし巻き玉子――全く、準備がいいことだ。……そら、これでいいんだろ?(つい憎まれ口で返したとて、ふっと浅く吐き出した呼吸は小さな笑みを意味する。彼が作ったというそれは、紛れも無く山姥切の秘かな好物のひとつであったから。長船派から頂戴したワイン瓶を誤魔化すように卓上へと置けば、中からちゃぷん、と小さな音がした。)寝かさない?……明日、写しに潰されたと蜂須賀に泣きつくことになるぞ。(フン、と鼻にかけた小さな生意気をひとつ。それくらいは許容し合える程にはもう長い付き合いだ。その儘空いている座布団へと腰を下ろしたならば、二人きりの晩酌はスタートするだろう。兄弟をはじめとした厨を牛耳る奴らのつまみは酒によく合いよく進む。夜と共に酒もどんどん深くなっていくことは言うまでもない筈だ。)

04/14 20:52*24

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(審神者と酒を飲んだ刀剣たちは皆が似たようなこと言う。「誰彼構わず晩酌に誘わない方がいいね」「特に女性と二人きりで飲むのはやめなさい」と。言われた本人は確かに翌日記憶に抜けがあるなだとか心当たりがあったものの、今晩は彼だけにお相手を願ったのだが。果たして彼の耳にも聞き及んでいただろうか。彼の手土産に瞳を輝かせ、益々今宵の酒盛りに期待が高まる。)なに?きみ、そんなに強かったんだね……?ふふっ、けれど、蜂須賀は僕に甘いからなあ。……さあ、今晩は無礼講だー!(「僕を泣かせたらきみだって泣くことになるぞ」なんて根拠のない脅しをひとつ。彼との軽口を楽しみながら、二人きりの晩酌は和やかなものだった。だし巻き玉子の感想を乞うこともあれば、手鏡チェックが入ったり。そうして、空き缶がおぼんの上でいくらか整列する頃。)……そう、そういえば山姥切ぃ、僕は聞いたぞ!いや、気付いていた!(グラスの中のワインは芳醇な香り且つ飲みやすい。チーズやドライフルーツなんかと愛称が良さそうな代物を、審神者は本丸の畑産フライドポテトと共に味わっていた。口の中が空になると話し始める。)最近、その布、洗ったようだね?堀川がとっても楽しそうに話してくれたんだ……。……山姥切、山姥切ぃ……、(男の頬はアルコールの影響で仄かに熱を持ち始めているものの、まだ呂律も頭も回っているように見えただろう。そしてじっと彼を見たかと思えば一度言葉を区切り、徐に彼のそばに移動して、)……その、布を、とれぇぇ……!(相手に逃げられなければ、彼の布の端っこを審神者の両手が掴むことだろう。突然の駄々っ子のような要望はあくまでも部屋の中だけに留まる声量だった。) 

04/14 23:18*27

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(今宵山姥切が主に晩酌へと誘われたことは、ごく一部の刀剣男士たちの知るところだ。何かのはずみに口を滑らせた折だったか、ずるいという文句と共に「主は『刀たらし』だから気を付けなよ」と赤い爪紅からの忠告がひとつ。その言葉の真意など分からぬ儘首を傾げるのが、まさに山姥切国広という刀剣男士をよく表していた。)飲んだ経験が多い訳じゃないが、すぐに潰れた記憶も無い。……やれやれ、長い夜になりそうだ。(楽しそうな号令に続くような性格でも無し、小さく肩を竦めさっさとグラスやら御猪口やらを準備しに掛かるだろう。脅し文句にも「俺は泣いたりなんかしない」と一言を添え、先ずはこれとばかりにビール缶を差し出す。乾杯の音頭を取った後も晩酌は恙無く進み――そして現在。)ああ、これか。兄弟が洗うと言ってきかなかったから仕方なく。……写しの俺には、汚れているくらいが丁度良いと言っているのに……。(アルコール特有の浮遊感を味わいながらも、顔色には出にくいのは個体差故なのだろうか。比較対象になるのは目の前でご機嫌に弁を回す主のみ。話題に上った襤褸布を一瞥した後、これ見よがしな溜め息は零れる。グラスをグイと煽り飲み干すと、二つのグラスにワインを満たそうと手を伸ばし――ピタリと止まった。譫言のように山姥切の名を呼び、じっと見たかと思えば此方にやってくる主の姿には流石の朴念仁とて訝し気な視線を送らざるを得ない。)……オイ、主。一体な――、(に、と唇が紡ぐ前にその我儘は耳に届く。いつの間にか布の端はしっかり掴まれており、どうやら逃げる術を失ったのでは、と思い至るまでには些か時間を要した。)と、突然何なんだ!クソッ、俺は脱がないぞ……!(主を無下に出来ない気持ちと譲れない卑屈さ故の、これぞまさしく押し問答。今にも崩れそうな力の均衡の末、あっと思うも時すでに遅し、頭上からは布が落ち、視界は良好となっていた。)

04/15 23:31*42

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堀川、あの甘くて優しい顔で引かないと決めたら一歩も引かない男だからな……そのくらいの押しがあってもいいということか……。(『写しの』云々の言葉は華麗なほどにスルーし、更に言えば男もそれなりの押しの強さを見せているのだが。端から見る分には、アルコールの影響が出始めているもののご機嫌な審神者だったはずだ。だからきっと、彼の反応が遅れてしまっても致し方なかった。たとえこれが審神者の暴走の幕開けとなり、『長い夜』の本当の始まりになってしまったとしても。)突然なんかじゃなーーい!僕はずっと、ずっと思っていたんだ!きみの、きみを……脱がせたいと……!脱げーー!!(聞きようによっては大きな勘違いを引き起こしそうな要求だった。彼の思いやりを知ることなく、布を痛める程度ではなくとも手加減せずにぐいぐい引っ張っていた男だから、遂に彼の頭から被られていた布が落ちると同時に勢いよく畳にべしゃり、倒れ込む。幸い残っている酒やつまみには被害はない。倒れた本人も欲しがっていた布を抱き締め身を起こすと、嬉しそうにきらきら輝いた瞳が布に――ではなく、彼に向けられていた。)やっ、やったぞ……!山姥切……あぁ、僕の可愛い山姥切……。(ぽい、と放られた布。まるで熱に浮かされたような声色では、普段から刀剣たちを可愛がって言う言葉とは別物に聞こえたかもしれない。目を細め、彼を見詰めながら囁いた。)僕、好きなんだ。……大好きさ。(きらきら揺れる瞳のまま、彼にそっと顔を近づけて。その時に右耳だけにつけた大きなひし形のイヤリングもまた揺れて。)大好きだよ――……きみの綺麗な顔が……!!(数年間男はひそかに思い続けていた。今宵はっきりと打ち明けてしまった。)

04/16 02:21*45

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(主の気質に似てなのか、どうにも押しの強い刀剣男士たちが揃っているように思えてならないのが山姥切国広の本丸への所感だった。時折山姥切がはじめるお得意の鬱屈さはしょっちゅうスルーされていたし、最早当たり前となっていた――が、まさか酒気によって悪化するとは思ってもいないこと。聞く人が聞けば誤解しか招かない言葉には、ただただ抵抗しながら叫び声を上げる他は無い。)誰が脱ぐものか!……くっ、お、オイ!変な言い方をするな……っ!(必死の抵抗も、動揺により打たれた先手が痛い。やがて攻防の末、主の体がべしゃりと畳へ倒れ込んだ折につい心配をすると同時に、襤褸布は見事主の手元へと渡ってしまっていた。そして輝く視線にはつい気圧されて座った儘後退りをする打刀がここにひと振り。)クソ、何なんだ……、可愛い、などと……!(まるで熱に浮かされたような主の言葉を思わず繰り返す。例えば短刀、もしくは一部の刀たちに似合う言葉にはつい首を傾げるばかりだが、次の瞬間、告げられた「大好き」にはつい瞠目せざるを得ない。何と返すべきなのか迷いに迷った末、視線を逸らしながら「……悪いが、」と口を開いた、その直後のこと。)……は? …………顔?(彼のある思いが口走られた後、山姥切の素っ頓狂な呟きが室内に響く。徐々に状況が見えてきたならばぎゅっと眉を寄せ、まさに怪訝といった表情を浮かべていることだろう。そして徐に振り上げた片手の行方は、既に決まっていた。)……綺麗とか、言うな!(彼の頭上にはビシッと手刀が落とされた筈。勿論加減はしているに違いないのだが。気を取り直すようにワインボトルへと手を伸ばし、二つのグラスにワインを満たす頃、改めてじとりとした湿度の碧眼が彼を見遣っていた。)全く……自分の顔が好きなんじゃなかったのか、あんた。

04/17 01:04*62

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(もしもこの本丸で押しの強さ選手権が開催されたとして。優勝争いに絡む面子の中にこの男は入ってくるだろう。酒を飲むと殊更で、駄々っ子になったかと思えば甘えたり甘やかそうとしたり、いらぬスキンシップまでしようとするのだから普段にも増して面倒になる。そんな男の相手を真面目に勤めようとすれば疲れるだけであった。ひと振りの刀剣男士を後退りさせて尚勢いは止まらずで。)そう、顔!あぁ、けれど、きみだけはどうか勘違いしないでほしい。純粋に、素直に、単純に顔が好きなんだ!性格は好きじゃないとか、そういう評価をしているわけじゃないからね?……ただ、好きなんだ。(打ち明けてしまえば気が楽で、少しだけいけないことをしたようで甘く心の内が痺れる。はじめての感覚に口の端が緩むのだけれど、)イターーー!!(審神者の脳天に落とされた手刀は酔い始めの頭をよく揺らす。ぐわんぐわんする頭を両手で抱えて大袈裟に畳へと転がれば、恨めしそうに打刀を見遣って。似た種類の瞳との鍔迫り合い。ぷっくり頬を膨らませ、身を起こす。)手荒なんだから、山姥切は……。そうさ、僕は僕の顔が世界で一番好きさ!両親に感謝だね。……ということだから、僕の顔はもはや別の次元。僕の山姥切の顔が、実質一位なのかな?(何だかんだ二つのグラスにワインを注ぐのだから、この刀は優しい。優しい刀の布を回収すれば、勝手に彼の隣に肩が触れるほどくっついて座ろうとし、これまた勝手に彼の布を膝掛け代わりにしようとしたか。グラスへと手を伸ばすと、音のない笑みを浮かべて。)僕はまだ、飲んでもいいということだね?……ありがとう、山姥切。僕の可愛いこ。(「その顔をよく見せて?」と、ワインを口に含んで強請る。)

04/17 13:31*67

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(常々変わった主だとは思っていたが、酒が入ると殊更であることを漸く実感する羽目になった。山姥切はつい長い前髪越しに額を掌で覆う。その外見が大人びているとはいえ、主は未だ齢二十の青年。さて、この酔っぱらいを如何せん――と向き直ったとて、うっそりと吐き出されるのは如何にその外見が好ましいかという言葉。そしてポンポンと惜しげも無く伝えられる「好き」の感情。はぁ、という短い溜息の後、手加減を施した手刀が落ちたのは最早当然と言わざるを得ない。目の前で大袈裟な悶絶と共に畳へと転がる姿と恨めしそうな視線にフンと鼻息をひとつ零した。)あんたが綺麗だとか言うからだ。……別に顔の成り立ちで一等を貰っても仕方ない。別の俺だって同じ顔だろう。本科の山姥切だって此処にはいる。(見遣る視線はその儘に、脳裏に浮かぶのは他の本丸の山姥切国広、それに本科・山姥切長義の姿。視線の先ではいつの間にか肩が触れる程彼が傍にいて、襤褸布は彼の膝掛けになっている。その光景の前で諦めたように呼気を吐き、最早何も言うまいと手を出さずにいた。)燭台切たちからもらった葡萄酒に罪はない。それに……止めたところで飲むだろ、あんたは。(グラスへと手を伸ばし、またひと口を飲み込む。彼からのおねだりには「断る」と一言付け加え、視線を遮るように目前へと手を翳してみせた。その距離の近さはきっと、平素の山姥切には無いもの。やはり刀とて、今は人の身を得ている刀剣男士。知らず知らずの内に二人を取り巻く酒気の香りは強くなっていた。)……可愛いも、綺麗も……俺には必要ない。美醜もわからない。ただ、あんたを守る力さえあればいいと思う。……なあ、こんな俺はあんたの「好き」にちゃんと応えられているか?(ぽつりと呟いた疑問は、まるで愛されたがりのような小声。ゆっくりと瞬く碧眼はいつもより幾許か気を許した微睡みを孕んでいた。)

04/17 23:59*79

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山姥切は一位になりたいものがあるのかい?……おや!同じに見えるかもしれないけれど違うよ!きみと長義だって別さ!金と銀のようにね。(幼子のように気軽に、楽しげに表情を変えながら話すと、一言の申し出もないから審神者はご機嫌に彼の腕にそれを巻き付け、布は膝掛けとして使いだす。優しさの詰まった手刀の痛みなんてとっくに消え去っていた。)長船のこたちが!今度お礼をしなくちゃ。……ふふ、よく分かっているね。流石は僕の山姥切だ!……あ、こら!それは意地が悪いぞ!(手で視界が遮られてしまうと早速抗議し始めて。けれど、次第にひと振りが纏う雰囲気に変化を感じると静かに言葉を聞いていた。)山姥切……。どうしたんだい、迷子の子供みたいな声をして。ほら、僕はここだよ。よしよし、こちらにおいで?(男は心配そうな声をしていた。彼の方へ身体を向けて、両手を伸ばして頭を撫でようとして。さらさらと金を撫でられたなら、イヤリングが垂れていない方の肩口に顔を寄せさせようとまでした。)……可愛いも綺麗も必要なくて、美醜も分からない。そんなこがこんなに可愛くて綺麗だなんて、神さまは悪戯なことをするね。……僕はきみの顔がとっても好きだけれど、その心も好きさ。苦しいことも多いだろうけれど、それで腐らないきみの煌めく強さは隠しきれないんだ。……守ってくれて、守ろうとしてくれてありがとう山姥切。いっぱい誉桜を舞わせて帰ってくるものねぇ。蜂須賀も負けてられないって言っていたし、長義もきっと……ね!(本丸の道場にこもりがちなとある本科の姿を思い出しつつも、心は彼に寄り添おうと努めていた。新緑のような瞳を覗き込む。)

04/18 19:27*89

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一等になりたいわけじゃない。……が、あんたが何を以って俺を評価したのか気になっただけだ。(片腕に絡む彼を止めることなく視線をグラスへと戻す。ひと振りは内心で呼気を吐き出した。きっと写しだとか本科だとか、変えられない本質の評価に惑わされない彼に安堵したからだ。)……フン、酔っ払いにはこのくらいが丁度いい。(抗議の声を受け、やがて翳す手は退けられる。その時で少々愉快そうに鼻で笑ってみせたなら、揶揄い半分の言葉だと伝わるだろうか。退けた片手で彼の頭へと触れ、ポンポンと軽く叩いては再びグラスが傾けられる。喉を通っていく葡萄酒はきっとそれなりに上等なもの。熟成された味わいに不快感の無いアルコール、それらは山姥切が管を巻き始める切っ掛け。ぽつぽつと語る口調の儘、視線は尚も彼の方へと向けられていた。大人しく撫でられながら、委ねる様に碧眼は細くなる。導かれる儘に肩口へ額を寄せるまでそう時間は掛からなかった。)神様とやらがどうであれ、別にあんたがわかっているのならそれでいいんだ、俺は。他人の評価は煩わしいが……あんたがこんな俺をそう言ってくれるなら、俺はこれでいいのかもしれない。……こちらこそ、いつも感謝している。(覗き込まれる視線に、心が柔くなる。そっと吐き出した内心と共に、手を伸ばして彼の頬へと指先を伸ばした――その時、指摘された誉桜だとか、密かに張り合っている二振りのことだとかの名前が出ると、じわじわと羞恥が襲ってくる頃合い。幾分か和らいだ筈の眉間はぎゅっと寄せられ、もしも彼が油断を見せていたのならその儘頬を軽く抓んでみせるだろう。)あいつらの話は今は無しだ。……今に蜂須賀よりも誉を取ってみせる。本科にも負けるつもりはない。見てろ、主。

04/20 07:19*114

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何を……?好きってことのかい?きっかけは、瞳だよ。きみを顕現した時にね、僕の髪と似た色だなってちょっと思ったんだ。それで、きみが本丸で過ごしていくうちにね、なんだかその瞳の輝きが増して見えて、いつの間にかきみの顔が大好きになっていたんだ!(些細なきっかけと思われても、審神者にとっては十分だった。当時のことを思い浮かべながら、また一口とワインを飲み進める。)なに!……や、山姥切ー!そういうところも大好きさ!(覆われた視界が晴れると、まるで天使の梯子を見付けたように瞳を見開かせ喜んで。彼の姿を間近で見られたら嬉しい。手鏡を気にしないほどに。軽く頭に触れるスキンシップもまた男が上機嫌となる源となり、酒を楽しむ彼の横顔を無遠慮に眺めたことだろう。普段にも増して遠慮しない一面は彼に触れるスキンシップにも如実に表れていた。何度も彼の頭を撫でる行為に関しては酔っ払いなりに主としての思いやりではあるようで、男の表情は終始柔らかだった。)僕が分かっていればいいんだね?ふふ、僕の山姥切は可愛くて綺麗で、美しく、格好いい自慢の刀だよ!……感謝し合えて、嬉しい。(目が合えば、目尻を下げて気持ちを言葉にする。ふと彼の眉間に濃い皺を見付けたなら不思議そうに見遣った。心当たりがなく、あったとしても彼の手も指先も男が避ける理由にはならなかったはず。)な、なしだったんだね?……今の僕、間抜けじゃないかい?(抓られている大好きな己の顔の見え方を気にして。)……ふふ、ふふふ!わかった。その意気だ、山姥切!僕はちゃんと見ているよ、きみの顔もね!……あ、何かご褒美も用意があったらいいかな?(既にやる気十分の彼には不必要だろうが、もし希望があればと伝えておこう。)

04/20 20:29*121

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(瞳という言葉に呼応するかの如く、山姥切は碧眼をぱちりと瞬かせた。そして視線は彼の髪へと移り「……そうか」なんて素っ気ない一言が返される。彼の語る己の姿が無性に気恥ずかしく思え、誤魔化すようにグラスをまたひと口傾けた。)……あんたはいちいち大袈裟だ。まぁ、そういうあんただから、皆もあんたのことが好きなんだろうな。(皆、という表現に己自身も含まれていることは言うまでも無い。平素であれば横からの視線に襤褸布を引っ張って遣り過ごしていたが、今宵ばかりは好きにさせていた。容姿だけではない、確固たる理由と時間を以って山姥切という刀を愛する気持ちが何よりも嬉しかったから。だからこそ、彼が繰り返し口にする誉め言葉も聞き入り、大人しく撫でられもする。)ああ、それでいい。あんたがそう言い続ける限り、俺もそう在り続ける。……俺は、あんたの為の傑作になろう。(一つの在り方を見つけたような呟きは、酒気を帯びていても晴れやかに響く。流れの儘に彼の頬を抓んだものの、まさに間の抜けた言葉で毒気を抜かれ「さあな」と言葉を濁し手を離した。)顔は余計だ。……褒美?……なら、(ちらり、視線を一瞬向けたのは卓上にてすっかり空になった皿。そして戻した視線の先にある美しい我が主に向け、言葉ははっきりと告げられるだろう。)……玉子焼き。あんたの作った玉子焼きがまた食べたい。それから、修行道具一式の使用許可を。(グラスを置き、静かに向き直る。後半の申し出は寝耳に水だろうか。常日頃考えていたことを口にしただけとはいえ、刀剣男士たる者には大きな決断のひとつには違いないのだから。)何、今すぐどうこうという話じゃない。……俺があいつらにも十分に認められた時、更に強くなる為だ。その時はどうか、送り出してくれないか。(翡翠の双眸は隠されることなく、真っ直ぐに向けられている。主の返事は如何なるものか、ひと振りは静かに言葉を待つのみ。)

04/21 21:07*137

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(彼の心情は露知らず、楽しそうな笑みを浮かべながら「それでね、僕はこの髪がもっと好きになったよ!」と、新たに打ち明けた思いに更に付け足して。審神者は滅多に恥ずかしがらない。それもあって、真っ直ぐに好意を伝えられる方であり、実年齢と不釣り合いな大袈裟な反応だって出来るのかも知れない。男の気質が本丸の皆に受け入れられていれば嬉しそうに、自信たっぷりと「そうだろうとも!きみも僕が好きだろう?」と、美しい彼へ熱視線を送りながら言葉を欲しがって見せただろう。)……ふふ、うん!僕はとっても幸せ者だね。……僕も、主として、きみとさいごまで在り続けるよ。支えられながら、支えるからね。(酒に気持ち良く酔っている男の頭でも、彼の呟きは主冥利に尽きる言葉だと理解出来た。平素よりも気の抜けた声でありつつ、彼の思いに応える。頬が解放されても暫く納得いってない顔をしていたか。)顔だって重要さ!うん、あるかい?……玉子焼き?それならまかせて、ほしい……、(続いた申し出には目を丸くする。審神者が修行へと送り出した刀剣男士はふた振り程度、男の審神者としての始まりを共にした打刀と短刀ぐらいだった。願われれば確かに、彼が更なる強さを求めたって可笑しくない頃合い。)……可愛い子には旅をさせよ、だね。……もちろん、もちろんだよ。その時は必ず、きみを修行へ送り出そう。(居住まいを正すと、美しい輝きを放つ翡翠の瞳をしかと受け止めた。彼の申し出を受け入れ、力強く頷く。そしてふう、と息を吐くと、膝を抱えて座り直した。)……ぼく、もうさみしいよ。(これまでの勢いは何処へやら、ぼそりと呟く。)手紙、いっぱい書いてね。便箋をたくさん持たせるよ。それから、おにぎりも……その時は玉子焼きも。あと、あとは……、(「……やだ!今夜は僕を寝かさないで山姥切ー!」なんて言ったかと思えば、きっと彼より早く寝落ちしただろう。そういう男だった。)

04/21 23:39*144

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……やっぱり変わり者だ、あんた。(フンと小さく鼻を鳴らしツンとした色を唇に乗せるのは、照れた表情を隠す為の方便。卑屈な刀の心はいつだって屈託の無い彼の態度に救われているのだ。だからこそ、熱視線を伴って求められた「好き」には、半ば諦めたように首を傾けつつ唇を開く。)ああ、……俺もあんたが好きだ。(愛だの恋だの、そんなものは置き去りにして口にした珍しく素直な物言いは、思いの外真っ直ぐに音に表れただろう。向ける視線は柔らかく、緩慢と首は縦に振られた。)そうだな、あんたの支えがあってこそ、だ。……それにしても、さっきの言葉……蜂須賀が聞いたら泣くんじゃないか。明日にでも言ってやるといい。(冗談めいた言葉が乗ることも、酒の力があるからこそかもしれない。くつくつと喉で笑う様も、きっと今宵だけの気安さで。褒美として挙げた二つ目の申し出に瞠目する姿には、ただ静かに首肯を示しその双眸を見据えた。)許可、感謝する。……その時は今より必ず強くなって帰ると約束しよう。勿論、俺自身とあんたの為に。(そして約束は確固たる決意となった。ただ寂しいと言う姿は小さな子供の其れと何ら違わず、思わず「気が早い」と小さな笑みを乗せた呼気を吐き出す。そして腕を伸ばし、優しい手つきでその新緑の髪を撫でた。)ああ、写しの語ることなんかでいいのなら幾らでも。……おい、あんたやっぱり飲み過ぎじゃないのか。もっと飲みたいなら……ほら、水も飲め。(管を巻く主相手に水を差し出すものの、大人しく飲んでくれるだろうか――その結果がどうであれ、今宵の晩酌はもう暫し続いていく。果たして山姥切は寝落ちした主を介抱できるのか、それとも二人揃ってすっかり眠ってしまうのか――それは翌朝、主を起こしに来た虎徹がひと振りならば知り得る筈だ。――斯くして、山姥切国広は戦場を駆け続ける。その刀の煌めきは今迄にも増して鋭く、美しく輝きを放つことだろう。)

04/21 23:59*145