【後半】巻きつく蔓はしがらみか、絆か

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(昨夜はあれ以上、深酒をさせなかったのが功を奏したか。あるいは、もともとの酒の強さもあったか。明けて翌日、朝餉の席で顔を合わせた審神者の表情は、常と変わらず振り仰ぐ空模様のごとくからりと晴れていたように思う。──して、腹を満たせば、出陣、演練、遠征など、それぞれ向かう部隊に分かれて散会となった。本日の薬研藤四郎は近侍として主の補佐につく役回り。とはいえ、机仕事の得意なかの人であるから、万事傍らでつきっきりというわけでもない。思えば、こうして何かを書きつけている印象の多い主である。自分は代わりに、足を動かし本丸中を歩き回っては、内番連中の様子を窺ったり、厨に顔を出して昼餉や夕餉の相談にも乗ってみたり。合間にはもちろん主の元へと戻って小休憩を促したり、各種報告を上げたりする。──やがて昼時も過ぎ、日もやや傾きはじめた八つ時に。そろそろ遠征部隊が戻るからと、審神者の代わりに出迎えへと赴いた門前にて、豪快に笑う初期刀からとある“土産”を渡された。)ああ。ありがとう。なら“これ”は、俺から大将に渡しておく。(「まっはっは! よろしゅう頼むぜよ!」 そんな賑やかな後押しに見送られ、廊下を進んで執務室へ。)大将。薬研だ。入るぜ。(審神者の私室を訪うた先の深更とは違う。この日中、幾度も開け閉めをした襖の引手に手を掛けて。)遠征部隊からの土産なんだと。……ちょうど八つ時だ、休憩にしよう。(盆の上には茶の入った湯呑みが二客と、皿に乗せられた笹団子。青々とした笹の葉から立ち上る香りは爽やかで、気分転換には丁度よいだろう。)

04/22 17:26*8

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(無理を言って水を頼まなかった以上、うっかり二日酔いで倒れてましただなんて主として落第点に違いない。ほんのりとした頭痛も朝餉の時間にはすっかりと消え去って、いつも通りのそぶりで笑う審神者の姿があった。主、と遠征前に呼びかけてくる初期刀にどうかしたかいと応じれば良い酒は飲めたかだなんて聞いてくるので、聡いこの刀はどこまでわかっているのやら。軽く応じて行っておいでといつものように紡げばあちらも豪快に笑って土産を楽しみにと立ち去った。して、日中。締切が幾分先の書類も早々に仕上げてしまいながら、近侍にはいつも通りに必要な書類があれば頼む形。とは言えこの審神者はだいたいが準備をきっちり終えてから作業に取り組むので不意なアクシデントでもなければ近侍にわざわざ声をかけずともスムーズに書類は作成され続ける。本丸の様子伺いは任せているが、こちらに用向きがあって訪れる刀たちの話は時間をとって耳を傾け、座ってばかりではお体に悪いです!と手を引いてくる刀たちにも付き合ったりもして。そうして日常はとめどなく続いて行って、襖に手をかけた彼の一声も同様に。)ああ、問題ないよ。入って。(と応じて、軽く目線を上げる。盆の上の爽やかな香りに目線ばかりではなくて顔まで上げて、朗らかに笑って見せた。)やあ、これは立派な土産だね。後で陸奥守にはお礼を言ってやらなくちゃ。薬研もありがとう、キリのいいところまで仕上げてしまうから少し待っててくれ。(いつも通りにからりと笑うと、そのまま句点までは書き切ってしまってから一旦小休止。書類をわかりやすい位置によけて彼と向き合った。少し待ってて、はいつだって本当に「少し」であるような審神者だった。)

04/22 23:16*14

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(もちろん自分も適宜、小まめに気を配るようにしていたつもりだが、ともすれば仕事中毒とでも評されそうなわが本丸の大事な主を気に掛けているのは──何も、己ひと振りだけではない。「座ってばかりではお体に悪いです!」 同じ粟田口の兄弟であったか、あるいは他の派の短刀であったか、いずれにせよその手を引いて立ち上がらせんとする場面に出くわしたひとときなどには、呵々と笑いながら背を見送った一幕もあっただろう。そんな昼下がりの八つ時。)ああ。できれば、茶が冷めないうちに頼む。(少し待ってて、がいつだって本当に「少し」であることをよく知っている。だからこれは、他愛のない軽口だ。ほどなくして言葉のとおり、切りのついた書類を脇によけて顔を上げた主に、眼鏡の奥の双眸を柔く細めて。)お疲れさん。さて、場所はここでいいか? 今日は天気もいいし、縁側に出るのも悪かないと思うが……、(執務室に籠もることも多い主であるから、気分転換には外の空気を吸うのがよりよいだろう。とはいえ、それだけなら窓を一旦開け放って換気に努めるだけでもそれなりに。休憩場所を移すかどうかは相手の意向に任せることとして、再び腰を落ち着けることがかなったなら、まずは笹団子の乗った皿、それから湯呑みを順番に置きつつ。)酒は、もうすっかり抜けたかい。まあ、見たところ……朝からそんなに宿酔いしてるって風でもなかったけどな。(朝餉の席で顔を合わせた印象を語った。特別こちらから声を掛けることこそなかったけれど、それとなく気にしていたのは常と変わらず。──主が口をつけるのを待ってから、こちらの笹団子に手を伸ばそうか。信ある初期刀直々の土産ゆえ、ここでは毒見の必要もない。)……お、美味いなあ。(頬張っての感想。少し離れた場所からは、兄弟刀の笑い声が聞こえてくる。)愛されてるってのは、いいもんだ。(それは、幾らか唐突にも聞こえる、穏やかな口ぶり。)

04/23 19:51*25

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(坂本龍馬の佩刀であった陸奥守吉行を選んだのは、「だから」だ。人の心を集める存在。自分にはなくて、けれど戦う上で必ず必要になるもの。それを求めて初期刀を選んだ。――思う。その願いは、彼を捻じ曲げてしまったろうかと。そんな風に思索に沈むことよりも仕事を進めることは重要で、ともあれこの日常を守るために自分にもできることを勧めるほかないわけだ。手を引かれて遊びに連れ出されることもままあることで、背中の彼に「薬研もしばらく休憩していてくれ」だなんて言い添えた、そんな日常。)はは。任せておいて。(軽やかに笑みを浮かべながら、書類の体裁を整える手元もよどみない。軽口に他愛のない調子で応じながら、一度眼鏡をはずして目頭をもんで、また書ける。)ああ、いいね。縁側に出ようか、折角のいい天気を逃す手はないよ。(執務室に籠って書類を仕上げることをはじめとし、審神者としての職務を優先しがちではあるものの庭の草木を整えたり笑い声を漏らしてくれる彼らのことを身近にも感じている。いそいそと支度をして縁側に腰を落ち着ければ、)翌日に残すような飲み方はさすがに失格だろう。二日酔いだなんて一文の得にもなりゃしない。…やあ、すまないね、心配をかけてしまった。(恥ずかしい姿を見せずにほっとする半面、心配をかけてしまったことは心苦しい。いつも通り、昨夜の話などなかったかのような、深酒をしただけかのような調子で頬をかきつつ。茶を飲んで、笹団子を食べる。)…貴方達っていつもどうやってこういうの見つけてくるんだい?(普段必要がなければ本丸に籠りがちな主であった。疑問めいて首を傾げながら、隣より、声。ちらりとそちらを見るが、見るばかりで本位が悟れればなにも苦労はしない。)どうしたんだい、突然。(にぎやかな声と、温かな日差しを浴びながら。穏やかな日常の隙間にかろがろしい声を響かせる。)

04/23 21:49*28

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ははっ! まあここには、翌日に残すような飲み方をする刀もちらほら居るがな。(わが本丸の大酒飲みたちの顔を思い浮かべる。これもまた主の、審神者としての姿勢なのだろうか。とりわけ「一文の得にもなりゃしない」のくだりでおかしげな笑い声を上げ、眦を弛めた。)いや。もし……大将が、床から起き上がれないってくらいの宿酔いだったら、直々に薬湯を煎じてやるのも吝かでなかったんだが……残念だ。(こんなこと、相手が心苦しく思うような“心配”ではない。だから、軽く首を振りつつ否定を示した後の口ぶりは、やはり先の軽口めく響きにも似ている。いつとて折り目正しいこの主なら、わざわざそんな羽目に陥ったこともなかろうが──大半の刀剣男士は、口をつけた端から皆揃って面を歪めて「苦い」とこぼす、薬研藤四郎手製の酔い覚ましの煎じ薬。それを披露する機会を逃したことをわざと残念がるように肩を竦めて、他愛のない笑い話に変えてしまうつもり。)うーん、どうだろうな。たまたま目に入った店とかじゃねえか? 後は、こういう土産物に鼻の利く奴らも居るだろうし……そこんところは、聞いてみないとわからんなあ。(主への土産はさまざまだ。その最たるはもちろん戦勝の報だろうが、身近な品であれば、道端で咲いていた季節の花からこういった消え物まで。ぺろりとそのまま平らげて、幾らか茶を啜ったのちに。)──……なに。大将に大事にされてのこの本丸だなと、あらためて思ったわけだ。(穏やかな日常、刀剣男士たちの笑い声。それらを指してのものであると、少しの沈黙を挟むことで伝えては、)俺たちは、愛されて、十分大事にしてもらってる。……大将は、どうだい。俺たち……いや、俺は……そんな大将に、きちんと報いることができているかい。(不安がるような問い方ではなかった。慈しむまなざしはそのままに、そう、静かに口づかせて。)

04/25 10:49*43

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まあ…仕事ができなくなるということはないし。多少はね。(酔っぱらっているかのようなふるまいをする彼らも彼らで戦場に出れば十二分の働きをしてくれる。反してこちらはただの人間にすぎないので深酒を翌日に持ち越せば仕事がどうなるかは自明の理だ。)……話には聞いたことがあるなあ。とんでもないんだって?…南海があんな顔をするほどだもの。(歓迎の宴の翌日、とんでもない顔をしていたひと振りを思い返して肩をすくめて見せた。下戸を相手に飲ませすぎだとその時はさすがに仲間たちを叱ったものだった。一瞬よぎったドキリとした感覚をやり過ごして得たりとばかりの表情をして見せるのにも随分と慣れている。とはいえこちらは審神者としての職業意識というやつに極めて忠実なので、これまでに経験のない分野である。)目端が利くという奴かな。私はさほどそういうのが得意ではなくて、そういうところは私に似なくて大変よかった。…御礼ついでに聞いてみるとしよう。(さわやかな季節の香りを堪能しつつ、仲間たちを称する瞳は和やかだ。季節の花が愛らしく咲く庭の向こう。傍らに彼。その言葉に耳を傾けて、いくらか不思議そうに瞬いた。それから、秘密を共有するような女学生めいた笑いをこぼして見せた。)実は、私もそう思っている。貴方達に報いることができているか、って。力を、心を寄せてくれていること、いつも感謝している。私などは、貴方達が健やかでいてくれるだけで十分満たされている…、勿論、うちの頼もしい刀たちはたいそう仕事ができるから、そこも含めてね。…報いることができているかだなんて、とんだ謙遜だ。(彼の慈しみの眼差しにこちらも言葉を自然と促されているよう。軽く冗談も交えて柔らかに笑うと。)報いるだなんて、考える必要はないさ。貴方達のありの儘を大切にできるだけで、私は私が愛する以上の幸福を貰っているのだから。(これは、本丸の皆に向けての主の言葉。)

04/25 18:27*44

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効き目は保証するんだがなあ。(──「酒は頭を鈍らせる」とは、かの学者先生の言葉であったか。文久土佐藩での特命調査を終え、彼ら二振りを仲間に加えた後の宴の翌朝、この主にこっぴどく叱られていた大酒飲みたちの姿を思い返している。それもまた、いまとなっては穏やかな日常を形づくる記憶のひと欠片だ。土産物のくだりには、)……お。大将、外出かい? 大将は油断するとすぐ籠もりっきりになっちまうからなあ。もちろんそれが悪いとまでは言わねえが、そうして買い物に出るだけでも、身体を動かすには丁度いいかもしれん。(政府の呼びつけで本丸を空ける以外には、あまり進んで外出をしようとする主ではないように捉えている。もっとも、細々とした日用品の買い出しあたりには付き合うこともあるだろうが、外出の機会を感じた気がして、勧めるように頷いた。運動不足は万病の元である。──さて。さも内緒話でもするような、ほんの少しばかりの声の潜め方。つられて隣へわずかに身を寄せるよう背を屈めて、柔らかに笑うその横顔を見つめていた。やがてまなざしがかち合うなら、この鐵の身のうち、ひとひら桜花が舞う心地。)そうか。……そうか。大将がそう思ってくれるんなら、俺は嬉しい。(認められ、受け容れられるという幸福。今生もまた、得難い主を持ったものだ。賜った言葉を噛みしめるように束の間、両眼を伏せ、面を上げては会心の笑みと、それから。)ありがとう。大将の刀として、これ以上ない言葉だ。……だが、(手を伸ばして、かなうなら、その短い髪へと触れてみたい。頭のてっぺん、まるで幼子にするかのごとく掌を置いて。)──大将“自身”は、どうだい。昨日の今日で、思いつく話があるかはわからんが、俺にやれることがあるか、探しに来た。(“審神者”としての高い職業意識の裏、己にだけ、あどけない素顔を見せてくれた人の子。“忍冬”──その人を知る、ただのひと振りとして。)

04/26 17:18*56

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え、いや、……まあ、そうだね。たまにはそうして土産でも買って、みんなを驚かせてやるのも面白いかもしれない。内緒にしておいてくれるかい?(別に単なる雑談の種にでもしようかと思っていただけなのだけれど、彼が勧めるように頷いてくるものだからついそのまま外出する流れになっていた。必需品の買い出しならばともかくとして土産を買うために出かけたり楽しむための外出というものは皆無に近い。仲間たちが望めは叶えはするけれども、それくらい。審神者になる前から仕事に生きがちな女であったのは今も変わらずのことだが、促されたならば気も向くというものだ。こと、彼の言であれば特に。)そうとも。いつもありがとう、薬研。貴方は特に、皆の健やかを守ってくれているから。(自分にとっての大切を、彼も守ってくれている。主として彼に向ける感謝は深い。彼が少しでもこの本心に喜びを感じてくれるのならばこれもまた幸いというもので柔らかな眼差しで彼を見つめている。主としての己だけがいれば迷わずに済む。こうして彼を満たせるのならばそれに勝る幸福などありはしない──が、頭上に手のひらが向かったことに僅かに狼狽する。)私自身?(主として、ではなくて。迷いない彼の様子に恥じらうように幾らか目線を彷徨わせる。言ってもいいのか、と躊躇うような沈黙ののち。)……たまに、…貴方がそうしたいと思った時だけでいいから、…こうして撫でてくれると、嬉しい心地になる、かな。…その、主らしからぬ単なる我儘なことは自覚しているから。無理にというわけではないのだけれど。(願望を移すならばというだけの話で。まごつく唇がいかにも言い訳めいたものを吐き出していることはわかっている。酒の中でうだうだと迷っていた時よりは幾分素直ではあったが、個人としての願望の出力など審神者になる前から数えても随分久しい。)

04/26 21:50*62

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ああ、それがいい。もちろんだ。折角内緒にするんなら、俺が大将に付き添うか。目ざとい奴らが気にして後をつけてこないか、しっかり見といてやるから、大将はゆっくり土産を選ぶといい。(もとよりそう遠出をさせるつもりもないが、近場の商店であれば、流行りや雅というものに詳しくない己でも、品揃えの見当くらいはつくものだ。相手が気分転換に羽を伸ばすという意味でも、一石二鳥──どころか三鳥以上はある気がして、よいことを思いついたとばかりに満足げに頷いている。皆には内緒にしておいて驚かせるための“仕込み”も、いまの話を聞いた仲であれば申し分ない。)……「健やか」?(どちらかといえば、確認をするような復唱で。こいつのことかなと、薬研──ではないが、腰に提げた印籠を指の背で軽く叩いてみせた。こちらを真っ直ぐに見つめ返してくれるまなざしには、いつものとおり、迷いなどは微塵も窺えない気がするけれど、)……うん。(肯定、促し、幾つかの意味を込めて相槌を打つ。わずかに狼狽えて、躊躇うような素振りが、いとけない幼子のようで可愛らしい。)ははっ。大将、まーた「主らしからぬ」で、肩に力を入れ過ぎてるぞ。……そんなにいじらしいお願いをされちゃあ、いつだって撫でてやりたくなる気もするが。(窘めるのではなく、やはり揶揄う口ぶりに似ている。──少しばかり、見えてきた気のする“やれること”。)なあ、大将。俺は、大将のことが好きだよ。もちろん、刀の俺が女としてどうこう、ってわけじゃねえから、まったく同じ気持ちというわけにはいかんのかもしれん。大将は「それでいい」と言ってくれたが、そのうちそれが、却って大将自身を苦しめることに繋がる場合もあるだろう。(由々しき事態だ。それでも、)だから、聞かせてくれ。……いや、一緒に見つけていこう、のほうが正しいのか……?(一個人としての望み、幸せ。立場の裏に息づくその人自身も、忘れずに。)

04/28 00:45*73

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やあ、それは面白くなりそうだ。薬研がついてきてくれるならば後ろを気にする必要もないだろうし、…あとは私のセンスかあ…。(彼と出かけられるのであればそれはそれで心が躍るものだ。愛する本丸のためのちょっとした悪戯であればなおのことに。面白げに笑いながら頷く一方、土産物に関するセンスはやはりわがことながら信用が置けず少しばかり考え込むようにして。)うん、酔い覚ましも、勿論含めてね?(主の影響か、そこそこ酒好きな刀も多い本丸で。手入れまで行くのならばこちらの仕事ではあるもののそうでもない程度の体調不良に彼はよく貢献してくれているように思う。主としてならば迷いなく建てるというのに、一個人としては迷い惑うばかり。好きなひとに撫でられる心地よさをまっすぐに味わえたら、というのは本当にこちらだけの都合だった。)うぐ、…性分というかだね…。…ほ、本当に、気が向いた時でいいから。あまりにいつでも撫でられたらそれはそれでどきどきとしてしまいそうだ。(心地よい一方、胸が弾む感覚があるのも確か。今までの主と刀としての距離感をよく覚えているからだが”いつだって撫で”られて平然としている姿が想像できずに。)うん、私も薬研のことが好きだし、私は薬研のことが好きだよ。この気持ちがあるだけでいいんだって思っていた、けど…。貴方と一緒に、お互いに苦しまない方法を見つけられるなら、それはきっととても幸せなことだと思う。(見つめるだけで満足している恋だった。彼がそこにいてくれるだけで幸福だったし、想いを告げるつもりもなかった。それでも、と彼の目を見て、柔らかに微笑んだ。)お互いに、無理はしない範囲でね。好きだもの、貴方が無理をするのは悲しい。…それに、貴方自身の考えを教えてくれるのも、嬉しい。(主としてではなくて一個人として、素直に。ぜんぶの体裁を引きはがした時に残るのは、いつだって単純な感情だ。)

04/28 06:44*78

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……だろ? まあ……そのあたり、俺に手出しはできんからなあ。まずはじっくり悩んでみてくれ、としか言えんが……大将が「自分たちのために」選んでくれたと知って文句を垂れる奴は、この本丸には居ないはずだ。(何を措いても仕事熱心な主であるから、職務上の無駄を省いて能率を上げることには長けているが、確かに言われてみれば、曰くの「センス」──たとえば感性を問われるような一面には、さほどお目に掛かった機会はないような気がしている。それはきっと、己が「雅なことはよくわからん」と、肩を竦めてぼやくときの気持ちにも少し似ているのかもしれない。なれば、上手く助言のできる男士に事情を説明して、外出の付き添いを代わってもらうほうがよいのだろうか、と、ふと考えて、その思案ごと意識の外に追いやることでご破算とした。同じ仲間とはいえ、わざわざ役目を明け渡してやる道理はないので。)そうか? ま、顔を合わせるたびに撫でるとなると、そのうち挨拶代わりになりそうだからなあ……。わかった。出し惜しみをするのも何だが、ここぞというときに取っておくことにする。(──ねぎらい、いたわり、あるいは励まし。凛と背筋を伸ばすその人のうち、これまで以上に、些細な変化も見落とすことのないよう、目も気も、いつとて配ることにしよう。こちらとしては、回数を増やせば“慣れる”だろう、と、ややずれた感覚をいだいているのはご愛嬌として。このあたりはまだまだ、刃生経験が足りていない。)そうか。……「幸せ」、か。(重なる「好き」は確かにある。それでも、ともすれば、重ならない部分のほうが多い場合もあるのかもしれない。気にせず、忘れることはできよう。人間の男にはなれない。──ただ、それで済ませてしまうには惜しい繋がりや、心があるから。柔く笑むまなざしに背を押されて、)大将のと、俺の……領分を守りながら大事にしていきたいと、思う。(そんな想いの形。)

04/28 18:31*81

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私が選んでこそ意味があるというやつだね、分かるとも。…その点について心配はしていないんだ。ただ、やはりどうせなら喜んでもらいたいからね。頑張ってみよう。(能率主義と芸術的なセンスというやつはある種相反するようなものだ。雅な物事に関しての距離感というのは彼に似ているのかもしれない。文句や非難が想定できないあたり、本丸の皆と過ごしてきた六年の密度たるや。であるから、初めての試みが仲間たちの喜びにつながるかどうか。懸念事項といえばそういうもの。たとえ一度二度悦びにつながらなかったとしても諦めるつもりはないために、長い道のりとしても実り豊かなものとなろう。)それは流石にもう少し勿体ぶっておくれ…。鯰尾あたりに面白がられそうだ。…うん、ええと…なんだ。楽しみにしている、ね?(挨拶代わりに撫でられるというような想定をすれば恥じらいに頬に熱が集まり、それを誤魔化すためにも彼の兄弟刀の反応を想像する。疑問符を付けたこの返答で果たしてあっているのだろうかとかすかな疑問もよぎろうものだが。例え挨拶であろうともちらとも慣れる気がしないのは、これまた恋心の権化というやつ。)…うん。…心地よいこと、だと思う。本当なら私が貴方を「幸せ」にしたいのだけれどね、もし私にできそうなことがあれば、遠慮なくいっておくれよ。(重なる部分、重ならない部分。主として、人として、女として。どの立場であれ彼の幸せを求めているが、そこに乗る形はそれぞれ異なる。彼に向ける感情は多岐にわたり、そのいくつかがかなえられなくとも「好き」に曇りはなかった。けれど、)…うん、ありがとう。貴方の事が、大切だよ。貴方の領分も。……本当に、ありがとう。(心よりの感謝を込めて、普段の主として背筋を伸ばす姿とはまた異なる笑みを浮かべる。)

04/28 20:40*83

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ははっ。大将からの土産なら、うちの奴らは何だって喜ぶと思うが。(軽く笑う。どうせなら。そんなふうに言わずとも、主から不意の手土産を渡された際の彼らの表情は、たやすく想像がつくというものだ。──そしてそれは、当の主その人にも言えることで、だからこそ余計に悩ましい「何だって」で、あるのかもしれない。文句を垂れるのはあり得ないし、喜ばぬとも思えないから。腕の見せどころ──ということで、自分は傍らに控えるだけ。時間には余裕を見ておくことにしようと、そんな予定だけは勘案して。)いいじゃねえか。……頑張ったら頭を撫でるのは、普通のことだろう。あいつなら懐っこく、俺も俺もと寄ってくるかもしれないぞ。(「貴方がそうしたいと思った時だけでいい」と、つい先ほどそう言われたことを承知したうえで、兄弟の言い回しを真似てみよう。こういうところを、独り占めにしたいという考えはあまりなかった。むしろ、これらの側面がもう少しばかり表に出てくることで、常に背筋を伸ばさんとする高い職業意識の裏、ただひとり個人としての、主自身の肩の力が抜けるのではないかと。)大将の面目が立たないとか、示しがつかないとか……そういうことは、考えなくていい。これまで過ごしてきた六年で、大将の人となりや姿勢ってのは皆が知ってるからな。……その可愛い顔を俺にだけ見せてくれるってのも役得だが、もう少し、大将“自身”を見せてやれたら──あいつらも嬉しいだろうし、あいつらも俺も、もっと大将を「好き」になる。(人望のない主では、決してない。いまのままでも、刀剣男士たちに慕われる姿は揺らぐまいと確信できる。兄弟刀の名前が出たのは、ほんのきっかけ。どうすればより主のためになるのか。いつもそれを考えている。だってそれが、)俺はもう、結構「幸せ」だからなあ。(己の幸福。この本丸で、主の隣で。礼には首を振って笑み返した。)それを言うのは、俺のほうだ。

04/29 12:04*93

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そこがまた困りどころだよ。私の刀たちはそういうところがあるからね。(想像がついてしまうからこそ、彼らに渡すのは思いばかりでなく的を得た品物であってほしいと願うのは贅沢だろうか。愛しているし、理解しているつもりだが。よその本丸とかかわりあうことが少ないとはいえ、できた子たちであると常々思っている。軽く肩をすくめるも、そんな彼らに報いる一つと思えば外出の予定も楽しみになるものだった。)小さな子供ならともかくとして私くらいの年の大人を撫でるのは決して普通ではないよ…?……どちらの立場で言ってるんだろうね、どちらも想像できるけれど。(彼の想像の中のその姿は想像できるが、誰が誰を撫でるのかは妙にどの立場でも似合うような気がして苦笑した。それほど外出しない主であるので人間の社会的な常識というものを伝え損ねていることは多々あるような気がする。)……少しずつ、でもいいかな。皆を驚かせてしまいそうだし、…あまり急に変わっても、私が私について行けなくなってしまいそうだもの。かわっ、………。…あっ、ああ、うん、うん。…皆が喜んでくれるというのなら、それは嬉しいし…。うん。……そうだね。仲間同士、「好き」が大きくなっていくのはきっと、良いことだもの。私が…私自身を曝け出すことで、皆にもいい影響がある、といい。(背筋を伸ばして、肩を張って生きてきた。けれど、この本丸で生きていくならば緊張感ばかりではなくて安心感を与えてやれる主でもあるべきだろう。変化がどういう影響を及ぼすかはわからないが、彼に促されて立ち上がることがきっと良い方向につながるのだと確信している。)…そうかい?(ぱちり、と目を瞬かせる。彼が健やかで、安らかで、しあわせでいてくれるのならばそれは自分にとっても深い幸福。彼の笑みに自然と笑みも深まる。)…ふふ。…たまには、深酒もするものだね。(そうでなければ、とても明かせなかった。)

04/29 15:46*96

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……なに、うちの本丸じゃあ、大将がいちばん“お嬢さん”だ。恥ずかしがることはないと思うぜ。(人間社会の常識はどうあれ、世に産み落とされた歳月からすれば当然ながら、人たるわれらの主が最年少。──決して子供扱いをしたいわけでも、貶めたいわけでもないのだけれど、当刃としては、心配は要らぬと伝えるつもりで口にしていた。ところ変われば「普通」も変わる。こちらとしては、兄弟の脇差が主の頭を撫でたがる場面を想像していたものの、確かに、言われてみればどちらも想像がつくので、笑みを刷くことで応えに代えて。)ああ。無理を押してとまでは言わねえし、少しでも躊躇う気持ちがあるんなら……差し当たって当面のところは俺にだけとなっても一向に構わん。(「役得」だと言っただろう。そう伝えるよう目を細めると、小首を傾げて笑みを深めた。)俺は、そうしたほうが、巡り巡って大将のためになるんじゃないか……ということを考えて口にしてるわけだが、当然気持ちがついてこないなら、俺が言ってるからって大将が受け容れる必要はない。──うん。少しずつな。(自分を曝け出すとはいえ、そのあたりは非常に不器用な性質という印象がある。少しずつ。受け容れてくれるなら、それこそ最初は、かの初期刀をはじめ、目端の利く奴らがそれとなく気取るくらいのささやかさでよいと考えていた。やがて、眼前でぱちりと瞬く主の瞳。)ははっ、そうさ。(予想外と言わんばかりのまなざしに、ひとつ笑い声を上げて立ち上がろう。)なあ、大将。俺を、薬研藤四郎を、好いてくれてありがとう。……俺はたぶん、全部の気持ちに応えられてるわけじゃあないんだろう。(そこは些か心苦しくもある。けれど、)だが、それでも俺は大将が好きで、何より大事だ。だから、これからも強くなって守り続けたい。(向けてくれるその“心”ごと。そんなふうに。宣言したのちは手を差し伸べて、残りの仕事を片付けに行こう。)

04/30 04:26*112

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年で言えばそうなのだけど。これまでの人間社会での経験上でね。…はずかしいものは、恥ずかしいんだ。(”お嬢さん”などと呼称されることも含めて。落ち着かない様子で体を揺らして見せるものの、恥ずかしさの主張はしても拒絶するまでには至らない。彼のああした振る舞いは天性のものがあるなあだなんて笑みを返す幕間を挟んで。)…やはりね、どうしても。今までとは勝手が違うだろう。変な混乱を与えでもしたらことだ。が…、うん。まあ、そうだね。薬研の前で慣れておくのがいいかもしれない。(与えでもしたらことである、――が、自分の本丸のことだ。それほど悪いようにはならないだろうともわかっている。単純にこちらが躊躇っているだけだ。今までの自分とは違う自分を晒すことに、自分自身の感情が追い付くかという問題。)ああ、勿論。ありがとう。…ただ、急に変えると私自身がこれは本当に私なのか、と戸惑いそうというかな。いきなり和服に変えろといわれても難しい、というか?…うん、考えてくれてありがとう、薬研。少しずつでも、どうか見守っていておくれ。(うまく表しきれない感情に困ったように笑みを灯せば、それでも彼が促してくれることへの感謝は深い。だから、少しずつでも。こうして自分の事を考えてくれた彼に報いることの出来るように。何かできることがあればと思っていたことをすでにかなえられているとは思っていなかったと瞬いていた。)うん。好きだよ。…ふふ、気にしなくていいのに。大切にしてくれているのも、好きでいてくれるのも嬉しいんだ。貴方のためにできることがあるのも、とてもね。だからこれからも、どうぞよろしく。これからも頑張るから、どうか支えてね。頼りにしているよ。(多くの好きを彼に向ける。彼との間の好きの違いは認めながらも手を取って立ち上がろう。これからも、この世界で生きていく。戦っていく。彼らを愛する喜びと絆を胸に。)

04/30 20:17*120