【後半】誰が為に金木犀は花ひらくのか

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(たった二人の晩酌は結局丑三つ時を越える程まで続いた――らしい。というのも、すっかり寝落ちた主を布団へと運んだ後、程無くして山姥切も意識を手放していたからだ。気が付けば「全く、君が付いていながら……」と眉を八の字に下げた虎徹がひと振りによって朝の訪れを知ることとなり、そして本丸はまた新たな日の迎えたのだった。 朝餉の席は一日で最も多くの刀剣男士たちが集まる場でもある。例に漏れず件の虎徹――蜂須賀の姿は言わずもがな、本科・山姥切長義の姿も勿論見受けられ、まるで昨晩の会話が蘇る心地を覚えるのはこのひと振りに限った話だ。)――長義、少しいいか。(山姥切自ら彼に歩み寄る珍しい場面は、今後もそうそうあることではない。きっと辺りは少しどよめいたかもしれなかったが、御構い無しに涼やかな銀色を見下ろす。「……どういう風の吹き回しかな、偽物くん」冷めた物言いは静かに齎された。)……あんたが俺を認める基準はどこにあるか、それが知りたい。(開口一番の唐突な話題に、目の前では訝し気に片眉を上げる姿。やがて深々とした溜め息の後「そういうことは、せめて頭打ちになってから言うんだな」という一言によって、二振りの会話は締め括られる。そうして山姥切はひとり考えた。強さについて、「好き」というものについて。やがて訪れた昼下がり、厨番であった小豆長光より持たされた苺の白玉小豆を携え、山姥切は執務室の襖を叩いていた。)……山姥切国広だ。主、入るぞ。(宣言だけ述べ有無を言わさず開いた先、主の様子は如何様だろう。いつも通りの襤褸布を纏った打刀は翡翠の双眸で彼を見遣る。そして片手に持った盆を軽く持ち上げて示してみせた。)そら、おやつだ。……写しなんかが相手でよければ、付き合うが。(ぼそり、と呟き視線は空を泳ぐ。その場から立ち去らないことで、貴方と話がしたいのですと不器用にも伝えていた。おやつなど所謂建前というやつで。)

04/22 10:42*5

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(審神者が目を覚ました頃、隣には翡翠と金色が美しい打刀はいただろうか。どちらにせよ、男は平素よりやや遅い時間に起きると虎徹の真作に捕まり、布団が敷かれたまま暫くお小言をもらうこととなった。「分かったよ、ほら、この僕の顔に免じて許してほしい!」「自業自得なんだからね、主……」男の顔、顎辺りに赤い吹き出物が一つ、ぽつんと出来上がっていた。そんなやり取りを以て漸く解放され、急いで朝餉の席に向かっても男が寝坊助扱いをされることに代わりなかったようだ。だから、男は伯仲ふた振りのやり取りを知らない。赤の爪紅が似合う打刀が晩酌のことを聞きたそうに審神者を見ていても、「アイツも素直じゃないにゃ……」とある打刀が意味深長に呟いても首を傾げるばかり。)……ふう。(――穏やかな昼下がり、帳面から顔を上げて一息。休息日を頂戴していた審神者だったが、此の所皆に任せきりになっていた資源や備品の確認を行っていた。無論、修行道具一式も含まれていて。各十の用意があり、何のほつれも見付けられなかった。そんな内容を書き加え終えたところだったか。)……おや!……やっぱり、布はあるんだね。(執務室の襖が叩かれ、直ぐに開けられる。そうされても注意などしない。彼を嬉しそうに見ることはあっても。昨夜の今日だから、隠しもせず残念そうに呟く。)おやつ!ありがとう山姥切!……ということは、きみの分もあるのかな?(ないと言うのなら分け与えたいところ。彼の言葉にすぐさま卓袱台と座布団の用意をし始める。座布団の位置は主と刀剣男士、適切な距離に敷かれていた。)……僕の相手をしてくれるということは、夜のこと怒ってないんだよね?お酒のおかげでとっても貴重な時間を過ごせたと、僕は思っているよ。(彼の話がしやすければと、まずは男から話し始める。なんとなく、伝わっていた。)

04/22 20:01*13

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(昨晩ぶりに顔を見た主は思いの外普通の顔をしていて、少々面白くない気分が山姥切の中で燻る。されど身に纏う布に対して言及され、しかも残念そうである様子にはついむず痒い心地になり、咳払いをひとつ零して誤魔化すことにした。)ん゛んっ、……ああ、俺の分も持たされている。あんたと食えってことなんだろう。(足を踏み入れた先で、昨晩同様に準備される卓袱台に盆を置けば、その上には小振りのガラスの器とスプーンが二つ並んでいる。つやつやとした苺と白玉に惜しげも無く掛かる小豆が食欲を掻き立てることは言うまでもない。ただ、昨晩とは異なる距離の座布団には思わず一瞥し、一拍の後に腰を下ろすこととなった。)……怒る? 蜂須賀ならともかく、何故俺があんたを怒るんだ。昨日のことなら、俺も有意義だったと思っている。……まぁ、“こいつ”を剥ぎ取られたことは少々根に持っているがな。(主の方から口火を切ってくれたことは、山姥切にとっては幸いなことだった。続けて軽く首を捻る姿はあっけらかんとしており、怒りなど微塵もないことはきっと伝わる筈。被る襤褸の其れをくいと引いてみせたなら、昨晩の一幕も思い浮かぶだろう。その口調には少々の揶揄いの色が滲んでいる。)それに、俺なりに考えていた。……あんたに言う、「好き」について。あんたにとっての俺という刀について。(語り口調は静かながら気難しい態度は求めておらず、彼が手を止めているようであれば「食いながら聞け」とおやつを促すだろう。自らも手を伸ばし、ガラスの小鉢にひと匙を突っ込んだ。)あんたの「好き」には力がある。単純な好意もだが、俺はそこから信頼を感じた。……だから、その心に報いたいと思う。(一息にそこまで話すと、ぱくりと苺をひと口。咀嚼の後は再び匙を器へと突っ込み、翡翠の視線は真っ直ぐに目の前の主へと向けられる。)……主、俺を隊長にしてくれ。

04/24 05:29*31

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乾燥してたかい?……あ、夜のお酒で喉の調子がいまひとつとか?(咳払いに相手の体調を心配するものの的外れだと男は気付かぬまま、夜に引き続き二人だけの、おやつの時間が始まろうとしていた。ガラスの器に盛られたつやつやの白玉がまるで刀装のよう。)ふふ……よかった!きみにはセクハラ紛いにひっついてしまったからね。……そうだ!僕、自分で布団に戻って寝た記憶がないんだけれど……山姥切が運んでくれた?……おや!また脱がせられないようにね?(わざとらしい言い回しをすると悪戯っぽく笑って見せ、彼とのお喋りを楽しもうとしていた。)うん?……え?そ、そんなにかい?(男がスプーンを手にした時だ。思わぬところへ話が進みそうな気配に目を真ん丸にして彼を見遣ることとなった。伝えただけの思いが素面で、それも彼が真剣に思いを受け取ってくれたのなら何だか、どうしようと思ったから。それでも食べながら聞いてもいいと言うのならお言葉に甘えるのだけれど。「い、いただきます」たっぷりの小豆と白玉をスプーンに乗っけると、一口。もぐもぐと咀嚼し、飲み込む。)……なるほど。隊長に……。(ここの本丸では、遠征や経験積み等役割や目的に応じて各部隊を編成していた。彼の言う『隊長』とは、きっと本丸の精鋭揃いで編成した部隊の隊長、ということだろうと審神者は推察する。その部隊の現在の隊長は、あの虎徹だ。)ふーーん……ふふ、分かった!月曜にはきみを、山姥切国広を隊長にして部隊を組もう!その部隊にはもちろん、蜂須賀と乱、長義も加えたらいいね?(修行を経験したふた振りと本科。この刀剣男士が並べば皆理解してくれるだろう。主のただの贔屓ではないということ。)修行前にみっちり鍛えられちゃうよ、山姥切ー!いいかい?(生成色と金色の奥、翡翠の瞳を見詰めようとしながら問う男の顔は、何だかにやけている。)

04/24 16:55*37

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(主から齎された気遣いには軽く手を翳し「いや、大丈夫だ」と早口の返答を零す。さして疑問を持たれたわけでは無いようで、腰を下ろした先で佇まいを直したなら、二人きりのおやつ時は開始と相成るだろう。)ああ、布団へ運んでおいた。こう、横抱きで……迷惑だったか?(両手を宙に浮かせ、表現するのは所謂お姫様抱っこというやつ。その先のわざとらしい物言いにはわかりやすく眉を顰めることで返事とした。きっとそれだけでも伝わる程には、既に気安い空気が二人を包んでいることだろう。そして話題は昨晩から続く「好き」とこれからのことについて。まん丸になる主の双眸を見遣りつつも、それでも己の受け取ったものは変わらないと言いたげな頑なな態度は、山姥切というひと振りの持ち得る個性だ。我慢せずと言った風に、次は白玉をひと口。咀嚼の後、彼の繰り返す隊長との言葉に首肯をひとつ示す。そして是の返答にはふたつの翡翠を軽く見開いた。)! ……感謝する。蜂須賀と乱には悪いが、あの二人なら理解してくれる筈だ。……それから、今朝、長義にも話はつけてある。(彼の知らぬところで交わしたやり取りをなぞりながら静かに呟く。何やらにやけ顔で覗き込んでくる彼からの視線には、此度ばかりは逃げず、僅かばかり口端を上げてみせた。同時に顔に掛かる襤褸布の端を軽く持ち上げてみせたなら、主は驚くだろうか。)――望むところだ。これ以上無い程に鍛え、とっとと修行に行ってくるさ。(殊勝な態度は些か珍しいものかもしれない。それでもどこか晴れやかな態度は、きっと彼の思いを受け取ったからこそ。そして不意にガラスの器に刺さる匙を持つと、苺をひとつ掬ってみせる。その儘、彼の手元の器の中へと入れてみせ匙の先でツンツンと突き示した。)……そら、一先ずの礼だ。

04/25 01:02*42

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(早口の返答に首を傾げ不思議がるものの、男の興味はすぐさま別のものへと切り替わる。布団に運んでくれたのは彼のようで、ジェスチャーがつくと男もその真似をして。)こう?……え!そうだったのかい!?いや、迷惑どころかむしろぐっすり寝れて助かったよ、ありがとう!それにしても……やっぱり刀剣男士ってすごいね。僕の方が背だって高いのに……山姥切、王子様みたいだったんだろうね!(恐らく相手の予想以上の食い付きをしていただろう。頭から被った布が惜しいところとして、彼の見目はお伽噺に登場する王子のようだ。昨夜からは中身も彼の良さが際立ってきているような。主の思いに報いようとする要望を無下に断るはずもない。見開く翡翠にくすりと微笑んだ。)二人なら心配ないさ。もしかすると、ずーっと気にしていたかもしれないよ。山姥切はまだ修行に出ないんだろうかって!……そうだったのか。なら、なにも問題ないね!(にやけ顔は途端に呆気にとられきょとんとした表情になる――ものの、彼の顔が大好きなこの男。理性より本能、隠すこともなく、堪能できるうちにとずいっと前のめりになって彼の表情を目に焼き付けたことだろう。それでいて、彼の言葉もしっかり届いていた。不意に届けられた『一先ずの礼』がとどめで、破顔せずにはいられない。)あはは!僕、もらってばかりだね!さっきの山姥切、格好良くて美しかった……いいものを見たよ、流石僕の山姥切。いちごも、ありがとう。……ふふ、肌荒れしてみるものだね!(ポケットから手鏡を取り出し己の顔を見たら、もらったばかりの苺を早速頂く。大事にゆっくり味わって、飲み込んで。)……修行、応援しているけれど、とっとと行ってほしくないなあ。(留めるのが難しかった思いをぽつり呟く。)

04/25 20:14*49

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(子様との例えには一瞬視線を空で揺らし思案するも、すぐに合点がいったように嗚呼と一言呟いた。いつであったか、本丸の古参である乱藤四郎が西洋の王族をそのように言っていた記憶がある。しかし、やはり思うところはあるのがこの一振り。軽く眉間に皺を寄せ首を傾げていた。)別に、礼なんかいらない。人間のあんたを持ち上げるくらい何てことはないからな。……ただ、写しの俺なんか王子とやらには不相応だろう。その称賛は一期にでも言うべきだ。(そう言って思い浮かべるのは粟田口の長兄の姿。卑屈入り混じる雑談はきっと日常茶飯事だ。おやつの片手間程度の軽さで呟いては、目前の主と向き合う時間は続いていく。)……だといいんだが。(彼の微笑みにつられ、ふ、と短い呼気が漏れる。綻んだかんばせは布を上げてみせる今、主の瞳にははっきりと映る筈。続け様に称賛を浴びては遅れて込み上げる照れが山姥切を襲った。誤魔化すように彼の言う『肌荒れ』めがけて手を伸ばしたならば、その指先は届くだろうか。もしも避けられなければ、まるでボタンでも押すかのようにその赤い腫れへ軽く触れるだろう。叶わなくとも其れに対して指を差した。)これのことか?……あんたの顔にこんなものがあるのは、確かに珍しい。……ある意味で役得、だな。(揶揄うような笑みは他の刀剣男士では殆ど見せない一面に違いない。――儘、ぽつりと齎された呟きにふたつの翡翠は再び丸くなる。瞬間、胸に宿る擽ったさはここ最近よく感じるものだった。)……あんたにそう言われると、何だか……妙に落ち着かなくなる。……俺がいないことがそんなに寂しいか?(ガラスの器を卓袱台へと置き、その卓へ肘を突くようにして彼の顔を覗き込む。己から顔を近づける行為など山姥切にはあり得ない行為だったが、今は主の表情が見たい――ただ、その感情に突き動かされていた。)

04/27 02:43*65

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ふふ、頼もしいなあ。あ、そうだね!一期や前田もそうだ……今度お姫様抱っこしてってねだってみようかな!面白そうだ。(卑屈混じった言葉も普段通り、いつも通りにお喋りとおやつの時間を楽しむ。そのうちに彼が微笑んでくれたのなら、思いがけないご褒美をもらえたように男も喜んだ。にこにこ笑っていたものだから、彼の指先の行方に気付かぬまま簡単に赤い腫れを触らせてしまって。痛みはなかったものの「ぎゃっ!」と鳴く声はとある仔虎のよう。)こら、山姥切!もう……好奇心旺盛なんだから……。(誰に似たのかな、なんて彼を顕現した審神者が呟いたかも知れない。可愛い打刀の戯れとしてむっと唇を尖らせるだけで許すとした様子。)うん?落ち着かない?……!……うん、とっても寂しいよ。(彼の言葉が気にかかりつつも、相手からの確かめるような行為が特別な意味があるように感じていた。驚きで目を瞬かせると、そのままの近さで囁くように続ける。)本丸にきみの姿がないなんて、寂しいに決まってる。朝はちゃんとご飯を食べれているのか心配しちゃうだろうし、昼は元気にやっているのか気にかかって、夜はきみが、どうか一日怪我なく修行に励めていますようにって、そう願いながら眠るんだろうね。(覗き込む翡翠に応えるように黄褐色の瞳が見詰め返す。その表情は終始穏やかで、けれど何処か寂しさがにじむ微笑みだっただろうか。ふと、男の右手が彼が持ち上げた布と前髪の辺りに伸びる。彼の目前で止まれば、)……今のうちに、きみのことを見ていてもいい?きみも、僕のこといっぱい見てくれてもいいよ。(イヤリングを揺らし、ちょっとおどけて見せた。)

04/27 22:09*71

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(お道化たように彼が口にする情景を、一瞬だけ思い浮かべた。それは、自ら引き合いに出した太刀に抱えられる主の姿だったが――もや、と心に霞が掛かる。それは僅かな機微だったが、その理由など気が付く筈も無く「……いいんじゃないか?」と不愛想に一言放り投げて仕舞いとしてしまう筈。指を伸ばした先で悲鳴を上げる彼の声も幸いしただろう。)誰に似た、って……あんた以外にいないだろ。 それにしても、……くくっ、今の声……本当にあんたの声か?(僅かな呟きにもあっけらかんと答えるのだから質が悪い打刀だ。口許に手の甲を当てながら先程の悲鳴の余韻で笑ってすらみせる。一頻り笑った後、覗き込んだ先で穏やかに吐露される言葉に、思わず唇を閉じる。息をするのも忘れてしまったかのような、胸に迫る温かな想いを抱え、瞼は静かに数度瞬いた。)……あんたがそんな風に思ってくれるなら、きっと旅先で俺も同じ思いをするんだろう。あんたがちゃんと朝起きているか、ちゃんと笑っているか、……夜、寂しい思いで泣いたりしていないかって。(静謐な笑みを湛える姿は、きっと彼の姿を写したかのように穏やかな黄金色。伸ばされた指先より、ずっと彼の瞳から目を逸らすことは出来なかった。そして徐に両手を使い、頭上に被る襤褸の其れを後ろへと下ろす。最早躊躇など無い素振りで。)ああ、あんたなら幾らでも。……その代わり、俺にもその綺麗な顔をよく見せてくれ。(殊勝にも映る口調を伴い、しゃら、と動くイヤリングに導かれるように山姥切は片手を伸ばす。拒否されない限りは真っ直ぐに頬へと指先が触れるだろうか。叶うならば、優しく擽るかの様に数度その感触を確かめるのだろう。離れても決して忘れないように、と。)

04/29 10:09*92

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(些細な呟きを拾われると、態とらしく大きなため息を吐いてみる。隠す気がなさそうな笑いで彼の目尻に涙でも溜まっていようものなら、隠さずむくれて見せたことだろう。そうやって、この男は自然体の姿のまま、ひと振りの刀剣男士を修行へと送り出す日に思いを巡らせる。)……そうだね、今でこの気持ちなのだから、泣いてしまうかもしれない。その夜は、きみからの手紙を抱きしめて眠ることにするよ。だから、いっぱい書いてね。(昨夜にも願ったはずの言葉を重ねて。彼自らが布を下ろしてくれたなら、目を見開かせてその姿を見詰めた。それだけの絆があるのだと、自信と歓びが満ち溢れる心地。目前にある手のひらが彼の頭を撫でることは叶うだろうか。出来なくとも手を下ろして伝えよう。)ありがとう、山姥切。……ふふ!僕の綺麗さを分かってくれたのかい?嬉しいや……今日は、ちょっと愛嬌ある顔なんだけれど。よくよく見ておくといいよ!(赤い腫れがあるから、言葉には男がよく言う『一番好きな顔』とは言いにくい心情が表れていた。けれど、彼に恐らく初めて『綺麗な顔』と評されれば嬉しいだけでなくて不思議と心がそわつく。擽るように頬を撫でられると肩を震わせ、イヤリングまで笑っているようにしゃらりと揺れた。)ふはは、くすぐったい!嫌じゃないけれど! ……あ、ちょっとそっちへ行ってもいい?(言うが早いか、座布団とおやつを彼の隣へと移動させて。そうして彼へ向き直れば満足そうに頷いていた。)この方がお互い見やすくて触れやすいだろう?(そう言うと、両手が彼の前髪へと伸びたはず。両手を拒否されてもされずとも、言葉は続いた。)……山姥切、僕みたいに前髪を分けてみるのもいいんじゃないかな?

04/29 17:28*98

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(手紙を抱き締めて眠る彼の姿を思い浮かべては、優しい響きの呼気が漏れる。まるで幼い少年のようだ、なんて言っては拗ねてしまうだろうと口にはしない儘「ああ、泣かれては仕方ないからな」と首肯を示した。無くなった布により、光が眩しくて僅かに目を細めた隙、頭を撫でられたのなら大人しくその身を委ねるだろう。)まぁ、あれだけ言われていたらな。……世辞じゃなく、あんたが綺麗だってことくらいはもう分かる。その赤い腫れもののある姿も、暫く覚えているとしよう。(それは果たして本当にかんばせのことを指していたか、はたまたその心根のことか、知るのはこのひと振りの心の中にのみ。揶揄うような言葉を乗せながら、擽ったがる彼の姿を目に焼き付けていた。)……ん? ああ、別に構わない――と、許可する前に動くな。(勝手に動き出す姿にはつい肩を竦めてみせるものの、目前に迫る両手を避けることすらしなかった。ぐんと近くなった距離で、山姥切もまた新緑の髪へと手を伸ばし、その毛先を弄んでいる。)確かに、あんたの顔がよく見える。……前髪、……まぁ、修行次第だな。視界を良くするくらいはするかもしれないが……。(じっと彼の髪の分け目を見ながら呟けば、指先も不思議と其処へと向かうだろうか。嫌がられない限りその額をゆっくりと撫で、視線は再び彼の双眸へと戻っていた。)あんたの額は触れたくなる。……が、俺なんかにこんなにもベタベタと触れさせて……警戒心が足りないな。(不遜ともいえる態度で一言を漏らしたなら、身を乗り出して額へと唇を寄せる筈。その行為に一切の照れが無いこともまた山姥切らしい一面であるかもしれない。)……眠れない子供へのおまじないだと、何かの本で見た。これで、あんたもいくらかは泣かずに眠れそうか?

04/29 20:22*102

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(重ねた願いへの肯定も、断りを入れずとも頭を撫でさせてくれる心の距離感も。お世辞ではない本心や揶揄い合える気軽さ全部を有り難く受け取った男は、満ち足りた笑みを浮かべてそこにいた。相手の許可を得る前の行動を窘められると「断られないような勘がしたものだから!」とあっけらかんと告げるのだった。毛先に触れる彼の指先を満足そうな笑みと共に受け入れる。)そうだろう?修行次第……そうか、見た目も変わって帰ってくるのだったね!更なる山姥切の強さに期待しているけれど、そこにも注目だね。(彼の顔が大好きだと豪語しておいて抜け落ちていた修行後の姿。男の手で分けた金色から覗く白い額を見詰め、撫でられている己の額をそのままに「僕が髪型をセットするという手もある」と喋っていたところだったか。彼の言葉にふと視線を美しい翡翠へ。)どうして山姥切を警戒しないといけないんだい?(全く分からないと言いたげに言い切ったその時。)山姥切?(身を乗り出されると、きょとんと不思議そうに。)…………や、山姥切!?(額に柔らかな何かが当てられると、察した途端に慌てふためく。その頬はほんのりと赤いはず。)子供への!?僕、大人だよ……!ぐ、う……ぼ、僕も、僕もしたい!(何故か悔しそうに張り合う様だって子供のよう。男だってどうして無償にそうしてやりたいのか分からなかった。また許可される前かされた直後か、白い額目掛けて唇を押し当てていただろう。健やかな眠りも修行の成功を願うゆとりもないくちづけがちゅ、と気の抜ける音で終わると、そこでようやっと男は衝動的だった自分の行いに、しまったと言った表情で彼を見遣り、)ご……も、申し訳ない!こ、このお詫びは……白玉で、済むかい?(ちらりと残っているおやつに視線を投げて。)

04/29 21:51*105

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(あっけらかんと答える様子があまりに潔く、あまりに彼らしかった為、山姥切はそれ以上何も言わず触れ合いを甘受した。時折擽ったそうに片目を閉じたりして、己もまた指先は毛先を遊ばせた儘だろう。)期待されても、応えられる保証はないぞ。……まぁ、あんたは大人しくその時を待っていろ。(ふぅ、と小さい呼気を漏らしたなら、きっと近距離に位置する彼の前髪を微かに揺らした筈。その儘目前の髪に夢中と言わんばかりの主の態度にはつい弓を引くかの如く翡翠の双眸を細め、彼から上がる名前などお構いなしに先の行動に移っていた。再び彼を見遣った時にはすっかり頬に紅が宿った男の姿がそこにあり。)は? 俺は別に、……オイ、(言葉の勢いに負けるかの如く少しだけ身を引いたその時、全く同じ行動が打刀の身に降りかかる。額に触れる温もりが彼の唇だと理解すれば、段々と頬に熱が上がってくるのを感じていた。何だこれは。内心でひとり呟き、つい彼の手を握ったのは静止か、それとも捕獲か。)な、何故謝る。別に、詫びはいい。あんたが食え。(やけに早口で回る口調は少々上擦っているだろうか。暫し視線を彷徨わせては、やがてのろのろと双眸が主を捉える。握った手はやがて軽くぎゅ、と力が込められた。)……なぁ、あんたは他の刀にもこうするのか? ……俺は、これは俺だけならいい……と、思っている、が。(ぼそぼそと伝えた言葉は紛れもない本音だろう。愛だの恋だの、そんなものを語る前に本能を口にした。手を伸ばせば触れる程近い距離を今更正そうとも思わず、打刀はただ見つめる。やがてもう片手は彼の唇まで伸ばされる筈。触れるか否か、それはきっと彼次第だろうけれど。)

04/29 22:57*107

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大丈夫、僕の山姥切ならしっかりと期待に応えた姿で帰ってくるよ。……無事に帰って来てくれれば、それでいいんだ。(恐らくこの思いは親心と似たものなのだろうと、主となって初めて抱いた心地を男は内心で例えて。春風でもない優しい風が前髪と額を擽って通り過ぎる。今度は男の側が彼へと齎す番だった。同じものを返したかった、ただそれだけ。手を握られ、見遣った先の彼の顔が色付いたものであったなら、申し訳なさ半分何故だかちょっと嬉しい気持ち半分で彼を見詰めたところ。)本当に?嫌じゃなかったかい?……ほんとうに?(男の口の端が少々持ち上がっていることに気付かれたら、また頬でも抓られてしまうだろうか。握られた手に僅かな力が込められると、ぎゅっと握り返す。そうしたくて。)……なるほど。言われてみると確かに、他の刀にはしないかもしれない。少なくとも、修行に送り出したふた振りには、さっきみたいなことはしなかったよ。……人にも、きっと、しないよ。きみだけさ。山姥切だけ、だよ。(願いを込めたまじないのくちづけも、そうでないくちづけも、きっと彼だけにしてあげたい。男の刀剣男士となれば誰にでも愛情を与えたくなるような男だったから疑われても仕方ないかも知れないけれど、ゆっくりと本心を伝えて。彼の指先が唇に触れたなら、はっとした顔で彼を見詰め返しただろう。それはなんだか、何かを閃いたような。そして、彼の手のひらが驚きで後ろへと引かれなかったのなら。そこへとまた、ちゅっとくちづけるために顔を寄せた。)――僕、ビビっ!ときちゃったんだけど、(彼の反応はお構いなしに話し出し、改めて相手を見詰めれば、)……僕、なんだか、山姥切と結婚しそう!(予言めいた言葉を言いはなった男は、幸せそうな笑顔を浮かべていた。)

04/29 23:56*109

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(無事にと祈る心をきっと旅の途中でずっと思い出す、そんな予感が確かにあった。念を押すように聞き返す姿はむず痒さに拍車をかけたが、「本当だ」と短く返事をして黙らせるとする。)……そうか、俺だけか。……そうか、(にやける口許を堪えたせいか、零れる言葉はひどく簡素なもの。それでも、きみだけ、という甘美な響きが心を熱くする。身に宿る歓喜によって翡翠の瞳は揺らめいていた。その刹那、)――……は? (間抜けな響きは口付けよりもその後の爆弾発言を受けてのもの。結婚。所謂婚姻、夫婦。暫しのフリーズの後、熱が上るように山姥切の顔は更なる朱に染まっていく筈。そして振り翳したのは、昨夜と同じ片手で。)か、軽々しく……結婚とか、言うな!(ビシッと落とされた手刀はまたしても彼の頭上を捉えるだろうか。無論加減は施されているけれど。)そういうことは先ず、俺が修行から帰ってからだ!あんたは気が早い!(言い付ける様な口調は険しいけれど、“結婚しない”とも言わないこの刀の本心や如何に。そしてお八つ時はやんやと続いていっただろう。 ――季節は廻り、本丸を旅立つ打刀がひと振り。支給の手紙とは異なる便箋を多く携え、所縁の地へ。旅先では短い文面をぽつり、ぽつりと頻繁に送る。中でも特に多く書かれた言葉は「あんたに会いたい」、その一言だった。 ――やがて本丸の戸が叩かれる。それは紛れもない帰還の合図だった。)山姥切国広、只今帰還した。……写しがどうとか考えるのはもうやめた。俺はあんたの刀だ。それだけで、十分だったんだ。(襤褸を外し、橙の額当てを靡かせる黄金色がひと振り。幾分か晴れやかなかんばせで主を見遣る。)……それで?どうする、主。俺と結婚するか?(明日の予定でも聞くかのような迷い無き一言は、彼は勿論現在の近侍をも飛び上がらせたかもしれない。――斯くして、山姥切国広は此処に開花した。他ならない、たった一人の為に。)

04/30 22:14*122

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(揶揄う気持ちがなかったと言ったら嘘になる。そんな思いのあった念押しにただ一度だけ返答が貰えたのなら、男の胸の当たりは甘く擽られて口を噤んでしまった。またするねなんて、言うタイミングを逃したままに。)うん!そんな気がね、突然したんだ。(「私、この人と結婚する気がしたんです!」過去に見たテレビの中で幸せそうに語る芸能人夫婦の姿をふと思い出しながら男は話す。あの人も、こんな感じだったのだろうか。爆弾発言をした気もなく、ただ感じた予言か予感を素直に呑気に口にしたものだから、彼の深まる朱にも直ぐには気が付かなくて――)イッターーー!?(脳天に落ちる手刀を避けられるはずもなかった。)気が早いかな!?だって、だってまさに今感じたものだからー!(頭を両手で押さえ言い返す。二人ともが結婚を、そもそも付き合ってもいない関係に疑問や物申す雰囲気が漂わない様子はなかなかにおかしな状況だったかも知れない――そう思い返すほど、季節は廻っていただろうか。約束通り、頻繁に送られた手紙を一通一通大事に何度も読み返していたこと。返事をしたためていたこと。もしかすると本当に手紙を抱き締め眠る夜があったことを、遂に打ち明ける時が来た。)――……おかえり、山姥切。うん、うん。(修行を経た打刀の帰還。いっそう輝いて靡く黄金色と凛々しい翡翠色に、眩しそうに目を細めながらも彼を見詰めて。)……ふふ。……うん、うん! 結婚しよう、山姥切ー!(「なんだって!?」本日の近侍である虎徹を尻目に、とびきりの笑顔で男は堪らず彼に抱きつこうとしただろう。それが叶ったなら、耳元でそっと囁いた。)――僕も、ずっと会いたかったよ。(手紙の返事を、早く伝えたくて。大好きなひと振りへ。)

04/30 23:58*123