【後半】想い綾なす春

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(その日の目覚ましは、鳥の囀りでも眩い朝陽でもなく、起きろ、という声だった。どうやら既に午の刻を回っているらしい事を知らされるも、任務の無い日と記憶しているがゆえにさして反応は示さず。呆れたような溜息が聞こえても笑って流していたが、)……あぁ、そうか。今日だったか(なんか予定があったんじゃないの、と。素っ気無いながらも、情報は確りと伝わる問い掛けは、すっかり忘れていた予定を思い出させた。寝起きは悪い方ではない。既に覚醒した調子で身体を起こしたのなら、二言三言、或いはそれ以上を交わしながら身支度を整えよう。やがて『くそじじい!』なるいつもの愛称を頂戴しては、騒々しく出て行った背を見送った。それから程無く、続くようにして私室を出たところで――)おはよう。昨夜はよく眠れたか?……調子はどうだ(運良く、探しに行こうと思っていた主と鉢合わせた。ともすれば、先程不機嫌に出て行った紅の打刀の姿も目撃しているだろうか。挨拶をする口振りこそ常の其れだが、見つめる眼差しは窺うようでもある。昨夜、酒にとろかされた瞳は、わかれの間際には凛とした輝きを取り戻していたように見えた。とは言え、全く覚えていませんでしたという話も珍しくはないものだ。そういう意味での確認も込められていよう。)

04/23 01:52*17

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(いつも通りの時間に目覚まし時計が鳴り、布団から伸びた手がぺちりと止めた。酔いが遅れてやってくる体質というのは少々厄介だ。いつも、終わり間際の記憶が飛んでいる。昨夜もあれだけ飲んで、あまつさえ夜食まで決めて、よく自室に辿り着いたものだなと。何より気になるのは、やぱり彼のこと。)きちんとお見送り出来たのかしら。(全くもって思い出せないが、杞憂過ぎたるは猶及ばざるがごとし。今日も務めを果たすべく、気持ちを切り替えていこう。朝餉の席で彼の姿を探して、目が彷徨うのもいつものことであった。いない、と分かったときの落胆はしめやかに。その後は執務室で書類を片付けていたが、刀装の実残数と管理簿上の数が合っているか確認すべく外へ出た。保管庫に向かって廊下を歩いていると、不機嫌そうな清光が一言残して通り過ぎていく。じじいは起こしといたから、あとよろしくー。)えっ、ちょっと、清光さん!(慌てて呼び止めようとするが、親しい打刀は足早に去っていった。仕方がなく前を向きなおせば、愛しい彼が目に飛び込んできたので大層驚く。呼吸が止まらなかっただけ、昨日までより進歩したと言えよう。)則宗様、おはようございます。(まずは恭しく一礼し、顔を上げてにこやかに答える。)夢も見ずに眠りましたわ。昨夜はお付き合いいただき、ありがとうございました。……あの、則宗様。そんな風に見つめられると、なんだか照れますわ。(全てを見透かすような浅葱の瞳に、熱を上げるなというのが無理な話だった。頬に手を当てるものの、勝手にじわりと色づいていく。)ご覧の通り、私は元気そのものです。則宗様は非番でしたわね。本日はゆっくりお休みに――あら、じゃあどうして清光さんは(わざわざ起こしに来たのだろうかと、不思議に思って首を傾げた。)

04/23 14:50*22

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(丁寧な挨拶や折り目正しい所作からは、昨晩の余韻は感じられないように見える。体調的な意味でも、態度的な意味でも。而して、確かな変化はここにあり――しろい頬が彩に染まりゆくさまを、愉しげに細まる浅葱が映し出す。)そうか?昨夜はもっと傍で見つめ合っていただろうに(なんて、軽口を紡ぐ唇はゆるやかな弧を描いて。記憶は確かに残っているのだと悟れば、此方も相応の振舞いになろう。緩慢な動きで持ち上げた手は彼女の頬へ、指の背で其の熱を撫でやる。「かわいいな」と、こぼれた囁きは吐息と共に。)それはなによりだ。お前さんを不調に追い込むまで飲ませたとあっては、坊主たちに何を言われるかわかったもんじゃないからなぁ(肩を竦めて笑ってみせるが、あながち冗談でもない。彼女は皆の主であり、慕わる存在であるがゆえに。首を傾ぐ様子に「あぁ、」と理解を示すと)今日は少し外出の許可を貰おうと思ってな。無論、お前さんも一緒に(説明の口調はあっさりとしていて、付け足した情報すら、さも当然の如く。とは言え、新たな疑問を生む前に先んじて口を開くと)小耳に挟んだ話だが、今日は万屋の近くに小物商が来るらしいと聞いてな。元々見に行くつもりではあったんだが……折角ならお前さんと一緒にと思ったんだよ(閉じた扇子を軽く振って、あくまで軽い口振りで説明を。非番であるのに刀剣男士としての正装でいるのも、その為だと理解してもらえるだろうか。彼女がもしも望んでくれるのなら、業務は加州清光が可能な範囲で引き継いでくれるという事も口添える。)まあ、あれだ……“デート”というやつだ(わざとらしく、声を潜めて。どこまでも一方的な、拙いお誘い。それでも、断られるとは微塵も思っちゃいない表情だった。)

04/23 16:53*23

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(昨夜を引き合いに出されたならば、照れが恥じらいへと変化して口ごもる。酒の席とはいえ、積極的に距離を詰めたのは間違いなく自分のほうだった。都合のいい勘違いでなければ、慈しみをもって彼に頬を撫でられ、一瞬頭が真っ白になる。一歩遅れて、胸が甘やかに締め付けられた。恋する乙女の表情はせわしなく、次に満面の笑みを浮かべた。)あら、ご一緒してもよろしいんですの? 則宗様にお誘いいただけるなんて、とっても嬉しいですわ。……ふふ。私の知らない間に、則宗様と清光さんは随分仲良くなられたのですね。(彼が出かける予定であると知っていて、起こしに行く間柄を仲良しと言わずなんというか。主としてだけでなく、個人的にも嬉しい。そして、それ以上に同伴の誘いを受けたことを純粋に喜んでいたのだけれど、)まあ、デートだなんて……!(黄色い悲鳴にも似た声を上げた。今すぐにでも行きたい気分だったが、はたと気付く。彼は正装、片や自分は普段着であった。)則宗様、私に十分だけ時間をくださいな。用意してまいりますので、玄関でお待ちくださいませ。(真剣な顔付きで言うや否や、早歩きで自室へ向かっていく。――宣言通りの十分後。薄水色のブラウスに白のフレアスカート、飴色のショルダーバッグを肩から掛けて、先程よりも気合を入れたが派手ではない化粧を施した姿で現れた。)お待たせしました。さあ、まいりましょう。(心に合わせて、声が弾む。先程、部屋に戻る途中で清光を掴まえて、準備を手伝ってもらったと話しておこう。どうして不機嫌なのかは、最後まで教えてもらえなかったとも付け加えて。)

04/23 23:54*29

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うはは、知らなかったのか。僕と坊主は仲良しだぞ(しれりと、何食わぬ顔で宣う。巡り巡って当の一振りがこれを聞けば、さぞ愉快な反応を示すに違いないという意図も含め――なんて事は、純粋な主は知らなくて良い話だ。色好い返事には笑みを深めて、唐突な声掛けという自覚はあるがゆえに、準備を待つことに不満が生じる筈もない。そういう時間も含めて“デート”なのだとは、さて誰から聞いた知恵だったか。足音が聞こえても視線を移す無粋はせず、ひらり揺れる白が浅葱に映ったのなら顔を上げた。)あぁ、行くか(彼女の隣に立ち、出立の応え。けれども足を踏み出すその前に、)いやしかし、装いが変わるとここまで印象が変わるものなのだな。いつもは凛然とした雰囲気だが……今は、とても愛らしい(やわく細まる双眸には、甘やかないろが滲む。そうして麗らかな陽射しに導かれるように、玄関を出よう。慣れた万屋への道すがら、某一振りの話題に耳を傾けて一笑する。不機嫌の理由、想像は容易いが――)お前さんが愛されている、ということだろう(本人が口にせぬ以上、此方が説明するのも無粋だろうと。さりとて、確かな部分だけは伝えんとする口振りは穏やかで、尊ぶような其れだった。歩調はどこまでも緩慢で。)ところで。すまんが、僕は“デート”というものにそう詳しくない。人の真似事をしてみれば、お前さんの想いに近付けるかと思い誘ってみたわけだが……(此度の目的。そこで一度言葉を区切り、ほんの僅かな思案。それから彼女の方へ視線を向けて、)帰るまでの間は、お前さんのことは『瑠璃子』と呼ぼう。お前さんも、『様』はよしてくれ(にこり、と楽しげな笑顔を向けた。次いで口を開き、)お前さんからも要望があれば聞こう。折角の“デート”なのだからな。

04/24 15:11*35

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(急ごしらえが否めない装いを褒められて、面映ゆさを隠せない。)ありがとうございます。(甘く優しい眼差しに、胸は高鳴るばかり。夢心地で歩き出したなら、一応は前を確認しつつも隣の彼を見上げる。)私は赤い色が一番好きなんです。則宗様の勇ましいお姿にも、赤い色がありますでしょう。始終見惚れてしまっても、どうか許してくださいな。あっ、昨夜の親しみあるお姿も、もちろん好きですのよ。(艶やかな赤を着こなせる風格も、彼に惹かれた理由の一つだった。自分はどうしてか赤い服が似合わないため、憧れに近いものもある。始まりの一振りに加州清光を選んだのも、赤い鞘が気に入ったからだ。その彼に愛されていて、自分も愛しているのは間違いないのだけれど、愛が不機嫌に繋がる道理だけはいまいち分かりかねた。)愛って、深いものなのですね。(怒りながらも身支度を手伝ってくれた清光には、後でもう一度感謝を伝えよう。お土産を買って帰ろうかとも思ったが、やぶへびになりそうな気がした。何となく。)ご安心くださいな、私もデートは片手で収まる程度の経験しかありませんわ。(例え真似事でも、寄り添おうとしてくれる彼の気持ちが嬉しい。だが、不意に名前を呼ばれて目を丸くした。歩みが止まりかけたが、どうにか足を動かして付いて行く。)それは恐れ多いですわね。……でも、『瑠璃子』と呼ばれて悪い気はしませんでした。私からも、この心地をお渡ししたいと思います。(呼び捨てを求められなかったのは、彼の気遣いだと理解すれば覚悟も決まる。少しずつ伸ばした指先で、彼の片手に触れてみようと。上手く動かせずに、つついてしまうかもしれないがご愛嬌と許されたい。)それでは、手をつないでくださいな。……則宗さん。(初めて口にする響きを噛みしめて、顔をほころばせた。)小物商で、どんなものが見られるのか楽しみですわね。

04/24 20:08*38

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見惚れるのは大いに構わんが、それは赤色にか?それとも僕にか?(文脈を考えれば理解出来ようが、敢えて問うのは戯れの一種。愉悦に弛む浅葱は、円かな虹彩を見つめて「お前さんの瞳も赤に近いな」と改めての気付きを口にする。瑠璃の髪と柘榴の瞳。対比する色彩は、明るい陽光の下で一層際立って映えるようだった。不意に、手に何かがあたる感触。反射的に意図せぬ接触を避けようと腕を引きかけたが、)……ああ、喜んで。瑠璃子(やわく響く呼び名に双眸を細めて。愛らしい願いを聞けば、衒いなく聞き入れる姿勢を示す。控えめに己の周りを泳ぐ指先を捉えて、そのまま握り込んでしまおう。武具は身につけていない為、負担を掛けることも無い筈だ。主と刀剣男士という間柄では、凡そせぬであろう触れ合いに、不思議と何か満たされる心地。「なるほど」と得心したように呟いたのち、)ちいさな手だな(繋いだ手をほんの少し揺らしながら、横目で見遣る。楽しみという彼女の言葉には同意するように笑みを返してから、)無理にとは言わんが、その話し方も楽にして構わんのだぞ?(そう徐に告げたのは、誰にでも“そう”ではないと知っていたがゆえ。さりとて、己にとって彼女は『瑠璃子』であるように、其の語り口もまた此処でのまことなのであれば、これ以上の無理強いはすまい。そうして少しずつ歩を進め行けば、やがては見慣れた万屋と、其の周辺に展開された蚤の市が見えてくるだろう。)おお、中々立派なもんじゃないか。色々置いてあるようだが……瑠璃子、お前さんは何が見たい?(率直な感嘆の声を上げて、見渡す視線は好奇のいろ。雑貨や和装小物、衣類等々多種な店が並ぶ。ひと気は然程多くはなく、ゆったりと見て回れるだろう。お窺いの声色は当たり前のように、彼女の希望を知りたがった。)

04/25 18:28*45

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(問いかけがくすぐったくてクスクスと笑いをこぼしながらも、力強く主張する。)それはもちろん、赤が似合う則宗様に決まってますわ。(彼へ向けていた片方の目をぱちんと瞬かせて、茶目っ気たっぷりに戯れ返す。彼には自分の瞳がそう見えるのだなと、気持ちが鼻やいだ。こちらからお願いしたこととはいえ、いざ掴まれると心臓が跳ね上がる。でも、もう苦しさは感じない。あるのは喜びと幸せだ。)則宗さんの手は、こんなにも逞しくて大きかったのですね。感動しましたわ。(見ているだけは想像できなかったほど、がっしりとした触感に驚きを隠せず、同時に愛しく思う。)この話し方は、審神者として皆様に失礼のないようにと身に着けたものですの。でも、折角ですし、今だけお言葉に甘えさせていただきます。(審神者になりたての頃は、まだ普通に話していた。清光を始めとした数振りに対して、その名残があるのは周知の事実である。ちなみにこんのすけは練習相手だったので、お嬢様口調が抜けなくなってしまった。やがて見えてきた景色に、)わあ、すごい沢山ありますね!(すんなり砕けた口調が飛び出した。端から順番に見ていきたいのも山々だが、ひとつ目に留まった店に足が向く。)あそこの扇子が見たいです。(彼と繋いだ手を嬉々と引いて、色とりどりの扇子が飾られた店へ向かおうか。そこでもやはり、赤い色へ惹かれてしまう有様だ。隣の彼と、赤い扇子たちを交互に見遣り。そのうちの一つを手に取って彼の胸元に添えてみよう。艶やかな赤に、一筋の桜を散らした扇子だ。)……則宗さんは、この扇子どう思いますか? ちょっと可愛らしすぎるかしら。(おずおずと彼を見上げて、やんわり切り出そう。)デートの思い出に、扇子を贈りたいんです。

04/25 23:21*51

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(望んでいた答えが返ってくると、合格と言わんばかりに満足気に笑ってみせる。傍から見れば“バカップル”なるやり取りに見えようが、恐らく当人たちに自覚は無いだろう。自然なやり取りは、昨日までは想像もし得なかった事だ。)そうか?僕の手も、長道具の連中に比べれば小さい方にはなるが。まぁ、お前さんを守るには足りているから不満は無いさ(視線は一度蒼穹へと向かい、空に見るは己よりも屈強な面々。さりとて言葉の通り、今得ている身体に思うところなど無いのだから、語り口はさっぱりとしていただろう。蚤の市を前に、ぱっと花開くような表情の彼女を見つめる眼差しは穏やかに、引かれた手にも喜んで対応しよう。ほどけた口調も相俟って、今日の彼女はいつもよりあどけなく感じられた。歩行に支障が出ない程度の距離を保ち、並ぶ扇子を眺める。それなりに上等な物もありそうだと値踏みをしていたさなか、ふと視線を感じて其方へと向く。意見を求められたなら、胸元に寄せられた扇子を手に取って)ふむ……いや、色合いも鮮やかで悪くはない。僕の好みではある。が、欲を言えば……(徐に視線を向けたのは、彼女が選んでくれたものとは反対の――深い青色の扇が並ぶ列。そこにある品をいくつか瞳でなぞったのち、再び柘榴を見つめては、)お前さんの、瑠璃子の色が欲しいな(ひそやかな声で乞う。無論、彼女が好む赤を纏う事も喜びのひとつである。ゆえに、其の『贈りたい』という気持ちを一番に尊び優先したいと考えて、「どちらでも嬉しいよ」との旨は確りと伝えようか。もしも新たに選んでくれるのでも、先の品を会計するのでも、どちらであれゆったりと待つつもりで。彼女を見守る傍ら、時折隣の市へ視線を投げ掛けながら――)

04/26 19:05*58

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(青天を仰ぐ彼の爽やかな様子に、目を奪われた。花びらのようにふわりとした金糸の髪も、かの物語の天才剣士を思い起こさせる浅葱の瞳も、どこまでも優しい声色も、この小さな手をすっぽり包んでくれる大きな手も、挙げればきりがない。無意識のうちに「好き」と口が象るも、音にはならなかった。扇子を扱う店を見つけて、すぐに彼へ結びつけてしまうのだから、惚れた病に薬なしとはよく言ったものである。選んだ扇子に好感触を得られたものの、途切れる言葉に一抹の不安が過り、続く甘美な囁きを聞いて別の意味で驚いた。)もう、則宗さんったらお上手ですね。(照れ混じりに破顔しながら、売り物の赤い扇子を引き受けて元の位置へと戻そう。彼が目を遣っていた方へそそくさと移動し、深い青色の群れをじっと眺めていた時間は、そう長くなかったはず。七宝柄が線で薄く描かれたものを選び、もう一度彼を見遣っては頭の中で照らし合わせ、いざ会計へ。七宝と呼ばれる七つの宝玉には瑠璃が含まれているため、うってつけだと思った次第。贈り物にする旨を店員に伝えれば、化粧箱に入れてもらえた。渡すのは帰ってからにしようとバッグの中に仕舞って、さも当然のように彼の真横へ戻ってくる。)買い終わりました。次はあっちを見てみましょうか。(隣の市へと誘いをかけよう。何気なく見ていただけか、気になるものがあったのかは生憎分からないが、自分ばかり楽しむのは申し訳ない。)則宗さんって、私を甘やかすのがとても上手ですね。そうしたいと思って、してくれているならいいんですけど、肩身が狭いというか、身に余るというか、いつも通りで構いませんよ。(一夜にしてここまで関係性に変化が起こるとは、もとより恋仲になりたいなどと考えてもいなかった。心遣いを感じる問いかけが先程から続いていたため、いい意味で戸惑っている。)

04/27 00:01*64

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(目の前でくるりくるりと変わりゆく表情は、見ていて退屈させず、次はどのような表情を見せてくれるだろうかという期待を生む。購入を済ませる彼女を待つ間、ふと過ぎるのは昨夜重ねた言葉たち。苦しいと、そう語っていた彼女が、今は華やいだ笑顔を見せている。緩慢な瞬きを数度、やがて戻って来る姿を見とめては)あぁ、そうしようか。……何を買ってくれたのか、楽しみだ(バッグにしまわれた品を一瞥したのち、どちらともなく手を取って。先程視線を向けていた隣の市へと歩を進めよう。変わらず足取りはゆったりと、道筋も楽しむように。)うはは、それではまるで“いつも”の僕が冷たいと言われているようだなぁ。今日の僕は、お前さんの好みではないか?(揶揄めいた応えは、笑い声を交えながらの軽やかさ。反応を窺うような眼差しを向けながら、和装小物の市に足を踏み入れて)特段、甘やかそうとしているつもりはないんだがな。自分を大切にしてくれる相手を大切にしたい。愛には報いたい。そう思わないのは、嘘だろう?(ふ、と眦をやわらげて。問う、というよりは、確信を持った上での呼び掛け。其れは物であれ。或いは物だからこそ。繋いでいた手を一度ほどいて、彼女の前を歩く。こぢんまりとした市の中、並ぶ品々にいくつか触れながら)あとは……そうだな。お前さんの昨夜の、まっすぐで、いじらしい、僕への言葉に。心を惹き寄せられたのは確かだ(静かな呟きは、宛ら独白の如く。そうして指先が持ち上げたのは、紅い玉簪。菊模様があしらわれた其れを、彼女の艶やかな瑠璃色の髪に添えて。)……やはり、似合うな(いとおしむように浅葱を細め、紡ぐ所感はどこか嬉しげな響き。次いで「そこのお嬢さん、これを頂こう」と、近くの売り子に声を掛けて購入まで済ませてしまおう。無論、代金は己の手持ちから。さすれば言わずとも、其れが贈り物であると伝わるだろうか。)

04/28 00:28*72

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冷たいだなんて、ごめんなさい。でも、そんな風に思ったことないです。(素の口調は、明け透けにものを言ってしまう。軽くかわされたとて、思わせてしまったのなら反省しよう。再び繋いだ手に、少しだけ力を込めると)今日の則宗さんも、私の好みど真ん中で好きですよ。(何度目かの好きを、何度繰り返しても薄れることない心を込めて、晴れやかに伝えた。ゆるやかな歩調ひとつとってみても、彼の愛を感じられる。問いかけるようでいて確かに紡がれる言の葉は、ごく自然な心の動きを語るもので素直に頷き返す。変に気を遣わせてしまったわけではないのだと、少しばかり安心もした。)魚心あれば水心、ってことですね。私、いつか則宗さんに溺れてしまいそう。(どことなく楽し気に呟く。美しく並ぶ和装小物たちに興味を抱いたのも束の間、昨夜と聞けば恥ずかしさで伏し目がちになった。紅色が視界を掠め、顔を上げれば微笑みを湛えた彼がいて、胸がいっぱいになる。似合う、と。その響きを反芻しては、彼を見つめていた。)……則宗さん、ちょっといいですか。(小声で話しかけ、口元に立てた片手を添える仕草は昨日と同じそれ。彼の注意を上手く引けたなら背伸びをして、自分の唇を彼の頬へ寄せてみよう。そのまま触れることが叶えば重畳、叶わずともせめてリップ音を鳴らし、至近距離でお礼の一言を囁くぐらいは出来るだろうか。踵を下ろしてから、いたずらに笑って言う。)私なりに、愛に報いてみました。デートなら、これぐらいはしても良いですよね?

04/28 20:36*82

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(気持ちを隠すことはしない、とは昨晩の言。その宣言通りの真っ直ぐな『好き』には、吐息混じりの笑みがこぼれる。「それは光栄だ」と。言霊使いはそうして“水”の心も捉えてゆくに違いない。)……ん?どうした(瑠璃に咲いた紅を見つめていたが、雑踏に紛れそうなひそやかな声を耳が拾う。やや腰を屈めたところで、彼女の唇が耳元を通り過ぎ――頬に触れたぬくもりに瞠目する。薄い色素の睫毛を上下させて、眼差しがかち合ったのは悪戯めいた柘榴色。其の大胆さに挙動が静止したのは、かの夜初めて『好き』を頂戴した時と同じく。)――行こうか(お決まりの笑い声を零さなかった代わりに、喉で込み上げる感情を押し留めて。愛らしい問いかけを肯定するかの如く、其の瑠璃の髪に唇を寄せよう。そのまま市の者には目礼で示し、彼女の肩を抱くようにしてその場を後にしよう。戯れのような触れ合いに浮かぶ笑みは面映さと、それ以上に)っはぁ……。お前さんは本当に。退屈させてくれそうになくて、いいな(堪えていたものを吐き出すように。可笑しくて仕方ない、といった調子で浅葱を細める。眦には微かに熱を残して、肩に触れていた手を離そう。そうして向かい合えば、一時的に髪に宛てていた簪を外して彼女の手に乗せる。)これは僕の色だ。持っていてくれ(簪の挿し方などは分からぬゆえに、素直に託そう。さて、と。改めて市の方へと視線を向ければ)他に見たいものはあるか?本丸のもの達に土産を買っていっても良いが……(そう持ち掛けるのと、手を差し出すのはごく自然な所作で。希望が無ければ“デート”を教えてもらうのも良いだろう。何であれ、ふたりの影が伸びるまで、今少し時間を共にしたいと提案するつもり。)

04/29 01:47*88

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(意表を突くことに成功し、常に余裕を感じさせる彼の調子を一瞬でも崩せたならば、勇気を出した甲斐があるというもの。問いかけに明確な返答がなくても、悪くない彼の反応にこちらは上機嫌で、髪への愛撫をすんなりと受け入れた。和装小物の市を後にして暫く、吹き出した彼に釣られて、自分も小さな笑いを零す。)ふふっ、どういたしまして。則宗さんが好きって気持ちを胸に溜めているから、ずっと苦しかったんだと思うんです。口にすると随分楽に――いいえ、楽しくて嬉しくて、しあわせです。(あまりにもしあわせで。肩を抱かれていたと気づいたのは、彼の温もりが離れてからだった。簪を両手で受け取り、紅い玉飾りが目を引くが、そこに菊模様を見つけて息を?む。)……とても素敵で、大好きな色です。ありがとうございます。(うっとりと呟きながら、彼を想起させるそれを指先で一撫でした。ハンカチで大事に包むと、バッグの中へ仕舞っておく。差し出された手を取り、なだらかに指を絡めてみようと。)お土産は帰り際にしましょうか。近くの店から順に見て回るだけでも、きっと楽しいですよ。(デートを続けることには賛成の意を示した。傍らの彼をゆっくりと見上げて、熱の籠った瞳を向ける。)今日が終わっても、『瑠璃子』って時々呼んでくれませんか? ……ほぼ本名なので、呼んでもらえるのが無性に嬉しいんです。ダメなら、帰るまでに一生分呼んでください。(無茶なことをと思いながらも、願わずにはいられなかった。募る思いとは裏腹に、しおらしく心許ない声色が続く。)お望みなら、私もあなたを名前だけで呼びます。(付喪神たる彼を呼び捨てるなど失礼も甚だしいが、名をただ呼ばれる喜びを知ってもらえたらと考えた上で持ち掛けた。)

04/29 16:18*97

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(しあわせだと彼女は語る。其の面差しには、確かな喜びが感じられた。信じるに足る言の葉に、己が胸に広がりゆくは安堵。)そうか。……いや、それを聞けて良かった。僕の存在がお前さんを苦しめてしまうのは、どうあれ避けたかったからな(この刀に於いては珍しい、弱ったような形での笑み。それは、長い前髪の隙間からでも窺えるような。明るい陽光の下、繋いだ手は酷くあたたかい。一歩を踏み出すより先、ふと視線を感じたのなら、どうしたと窺うように顔を其方へと向けて。美しい柘榴を見つめていた浅葱は、いじらしい願いを聞きほんの僅か丸みを描いた。けれども直ぐ、三日月の如く細められ)お前さんが……瑠璃子が望むなら、いつでも(元より、今日限りなどとは考えていなかった事は秘めおこう。ふわりと頬を撫ぜる春の風。草木の香りと届けられた控えめな提案には、幾度か瞬きを重ねる。人の子の名と、刀に与えられる号や愛称の持つ本質は凡そ異なるだろう。ゆえにこそ、彼女の想い全てを汲み取れるとは思わぬが、)あぁ。では、呼んでもらおう。一度だけでいい。僕が、“瑠璃子だけの則宗”となるために(静かに、けれど確かな望みを以って紡ぎ届けよう。すっかり立ち止まり、話し込む形となっているが、人波から抜けた場であるから迷惑にもなるまい。繋いだ側と逆の手をおもむろに擡げて、やわらかな頬に触れる。)では、僕からの頼みも聞いてくれるか?(そう切り出す口振りは、是以外の返事など知らぬといった調子で。答えを待つでもなく、再び口を開く。)またこうして、“デート”をしよう。そうすれば、僕が今抱くこの感情が……お前さんのものに追いつく日は、そう遠くないと。そんな予感がしているんだ(眼差しはどこまでも穏やかに。彼女の尊い想いと、己の胸にあるものが同等とは未だ思えぬが。それでも伝えられる事もある。)いとしい人の子。これからも僕に、その愛を教えてくれないか。

04/29 19:06*101

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(見慣れない翳りが、いやに印象深く映った。憎からず思っている、という昨夜の言葉が俄かに甦る。そんな風に笑う姿に一匙の悲しさを感じて、知らずのうち繋いだ手を固く握っていた。ひとつ願いが叶うと、ふたつみっつ欲しがってしまう人の業すら、彼は愛してしまえるのだろうか。僅かな後ろめたさをしあわせの中へ溶かしてしまって、本名をなぞる響きに緩慢と瞬いた。深呼吸で気持ちを落ち着かせ、今生一度きり“自分だけの彼”を呼ぶ。)――則宗。(結びの音から、自然と口元が弧を描いた。往来であることを忘れるほど、今は彼しか目に入らない。頬で感じる温かさは自分のものか、彼から与えられたものか。)はい、またデートをしましょう。思い出をたくさん作りましょうね。(喜ばしい願いには二つ返事だ。自分に出来ることならば、彼の頼みをいくらでも叶えてあげたい。)則宗さんが追い付いてくれるまで待ってます……なんて、かわいいことは言えません。だって、私は今も、好きで好きでたまらなくて走り続けてるんですよ。早くつかまえてくださいね。(冗談半分で軽やかに笑った。そう遠くない日を、焦がれながら待つのも一興。頬に触れる彼の手に、自分の手を重ねて、肌を擦り寄せる。)誰よりも何よりも、あなたが一番好きです。愛しています、則宗さん。(心に咲かせた想いを差し出すように、溢れるいとしさを紡いだ。昨夜と同じ愛の言葉を、今日が幸福に満ち足りた声で象った。ひとしきり愛を語らいだのち、デートの続きを足取り軽く始めよう。帰ってからも、扇子を贈る楽しみが待っている。――蚤の市の日、一組のバカップルがいた。居合わせた人々の口から世間話のように広がった噂は、まわりまわって本人たちの耳にもいずれ届くだろうか。それもまた、ふたりの物語となろう。)

04/30 11:00*114

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(凛然と響く四つの音。深く馴染むようでいて、まるで別ものに感じられていた其の音が、本当の意味で己のものとなった瞬間だった。幾許忘れていた呼吸を取り戻し、吐息と共に浮かぶ微笑みは晴れやか。)あぁ。ありがとう、瑠璃子(互いが持つ音を確かめ合うように、今一度彼女の名も呼ぼう。求めれば与えられる。人であればそんな当たり前も、この刀には新鮮で不思議な感覚でもあった。それでも、けして嫌ではない。)うはは!鬼事は得意ではないんだがなぁ。だが、お前さんが待っているのなら行かなければね。こういうのは、ふたりで歩んでいくもの、だろう?(冗句には相応の気さくさで応える。けれども内にある想いを揶揄したりはせず、未来を確りと見据えていた。己が掌にちいさな手が触れたのなら、其の熱を受け入れるように。)……本当にお前さんは、まっすぐだな。眩しいくらいに(重ねられる愛の言葉に浅葱を細めて。一度、深い瞬きを挟んだのちに)僕も、お前さんを大切にしたいと思っているよ。……これからは、僕なりの形で愛させてくれ。瑠璃子(紡ぐ言葉に想いを吹き込んで、“これから”の誓いを彼女へと送ろう。頬をやさしくひと撫でしたのなら、淡色の気配を残したまま、逢瀬の続きを再開しようか。他愛ない会話を交えながら、互いの事を多く知る時間となったに違いない。夕暮れの下、同じ場所へと帰る感慨を抱きながら――後日、一文字則宗の手には見慣れた赤い扇子ではなく、瑠璃色の扇子が見られるようになったとの事。たいそう気に入りの其れを、自慢げに始まりの一振りへ見せ付けては、『くそじじい』と言われるのが定番だとか何とか。惜しみない愛を謳う主の傍ら。己だけの愛の形を知り、想いに報いる日は、きっとそう遠くはない。或いはもう、すでに――なんてことは、また別のお話。)

04/30 15:02*116