
玉梓
良き主、というよりは良き上司といった方がしっくりくるだろう。審神者としての務めは仕事と割り切り、刀剣男士たちとは一定の距離を保ってきた。戦の良し悪しも分からぬ身なれば下手な口出しはせず、経験豊富な彼らに意見を仰いで学んでいく日々。花見や月見など本丸内での催しの席も、上の者がいないほうが彼らも気を遣わずに楽しめるだろうと遠慮する始末だった。唯一、審神者就任祝いの宴にだけは毎年参加していた。そうして五年が経った節目に、刀剣男士達から頂いた言葉の数々がふいに琴線に触れた。彼らを大切には思っているものの日常的な関りを最低限に留めていた自分を、主と認めて労い、祝ってくれる温かな気持ちを思い知った。たまらず涙したところを、とある一振に見られてしまったのが転機となる。刀剣男士達との接し方を少しばかり変えて、一歩ずつ歩み寄り始めたばかり。件の一振には、泣いたことを他言無用でとお願いした流れからか、とりわけ親しく接している。