
山査子
かつての少女は大人になった。就任当初の復讐と憎悪に燃えていた瞳は優しい神様たちと触れ合う事で湖面の奥に沈めて、今では微笑みすら浮かべられるようになった。根深い恨みは力に変えて、それでもなお敵の喉笛にくらいつくことを日々望んでいる。審神者としては好戦的ではあるものの、戦績は残し、戦況の分析はすべて政府に報告し、刀剣破壊は起こしたこともない。優秀と判を押されるような態度を保っている。本丸の襲撃があった時に備えて政府との連携は密にしており、情報も一箇所にまとめている。たとえ己の身が潰えようと、敵には何一つ残してやるつもりはない。そんな苛烈な本性と仲間に向ける慈しみを同居させて生きてきた。戦闘に関しては苛烈になりがちだが、普段の振る舞いはといえば温厚で、短刀たちとする手遊びが何よりの楽しみ。「皆の前では私はただの人の子だもの」だなんて、どこか晴れやかな心持を与えてくれたのは、何より大切な彼らだ。本丸の仲間たちを慈しみ、また愛されていることを知っている。審神者となって十二年。万が一の時のための備えをしているくせに、この生活がずっと続くのだと思っていた。また、己の愚鈍さを思い知る。