
一ツ木
一ツ木は「一の次」、本家のものには勝つことの出来ない永遠の二番手なのだと揶揄され続けたとある分家筋の一族が代々受け継いできた審神者名だ。霊力の質こそ平凡ながら運の良さで乗り切ってきた少年は、十二の歳に■■代目の一ツ木となった。しかし本丸の主となって数年経っても何かしらずば抜けた才を見せる事はついぞ無かった。それでも気に病む素振り一つなく年頃の少年らしい振る舞いで本丸生活を送り、戦績も可もなく不可もなくといった立ち位置を保っていた。本丸ではとある刀の悪戯の共犯を務めたり書類仕事から逃げ出してみたり、男子高校生の無鉄砲さを遺憾なく発揮しては保護者然とした刀剣男士に叱られることも多かった。時代錯誤な「本家の為に生きて死ぬべし」等という教えも何のその、宛がわれた本丸とそこに顕現した刀剣男士こそが己の中で一番に大切にすべきものだと考えていて、それをはっきりと口にしたのは初期刀が顕現した時のみただ一度。思春期真っただ中という事もあり親に近しい小言を口にする刀剣男士には多少反抗的ではあったが根っから嫌っていたという訳でもなく、平々凡々で穏やかな本丸生活を心から愛していた。