(簪、笄、それから紅や粉の類まで。小さなきらきらしたものが集まる店から娘は丁度出て来たところであった。店主の声を背に受けて軽く会釈を返した顔は次に空を仰ぐ。連れの刀剣男士と分かれてから然程時間は経ってないだろう。それは同時に待ち合わせの時間までまだ少々あることを示していた。)……こんな時に限って誰もついて来てくれないのだから。(恨み言は身なりに気を遣えと言ってきた古くから共にいる刀剣男士の一人に向けて。そろそろ何もしないでいて許される年齢でもないのは理解していたが、だからといっていきなり放り出されても何も出来ない。参考になりそうな乱藤四郎も次郎太刀も出払っていて何の助けも無い。結局売れているオススメの品をちょこっと買うので終わった。)――あ、ごめんなさい。(通りの邪魔になっていたか、或いは店の入り口を塞いでいたか、足を止めていたのは事実であったから近付く人影に気付くと横に一歩。)
09/12 20:43*83
……おせぇ(腕組みをしながら、路地の隅に仏頂面で立ち尽くす打刀の姿は、此処が万屋街でなければさぞ目立っていたに違いない。トントンと一定の速度で指を叩くのも何度目か。1時間程前、共に来ていた乱藤四郎が、ちょっとだけ、という言葉を残して小間物屋へ入っていったのだ。仕方なく近くをうろつきながら待機していたのだが、待てど暮らせど現れやしない。はあ、と深い溜め息を吐き、整えた髪が崩れない程度の軽さで頭を掻く。そうして足早に進んだ先は小間物屋の前。中を覗き込んでみるが、見える範囲にその姿はない。さてどうしたものか。心底面倒そうな溜め息がまた一つ増えようという頃合に、声が聞こえた。双眸は機敏に其方を見て、)……いや、こっちこそワリィな。(己からすれば小柄に映る少女の姿は、それまで視界に入っていなかった。道を譲ってくれのだろう事を悟れば素直な言葉で応じて、入り口から一歩中へと踏み出す。案の定、其処は女性客が大半で――無言で踏み出した足を引っ込めては、近くに居た少女の方を向く。)……あんた、今までこの中にいたんだよな。そんで審神者だよな。乱藤四郎見てねーか?(最初の二節はほぼ確認で、最後の問い掛けこそが本題。彼女の返答次第では「呼んできてくれねえか?」と頼むことになるだろうか。人懐こい短刀のことだ。もしも彼女と顔を合わせたなら、似合いそうな紅の類でも押し付けてくるやもしれない。)
09/13 02:28*87
(なるほどこれはこちらはすぐに影に気付く筈だと、そして相手からは気付きにくいのだろうと、見上げて理解した。随分と高いところに頭があった。同じ顔は知っているからこそこの場所に違和感を覚えないでもない。何処かの審神者のおつかいだろうかと中に入らんとする様子を見ていたが、こちらを向いた顔に娘はぱちんと瞬きを落とした。)……ああ、さっきの、(こくんと頷いて返したのは三節全てに対して。中に居た。審神者である。そして、中で乱藤四郎を見た。その乱藤四郎であるかはわからないが、確かに中で店内に連れが居ない様子の乱藤四郎は見かけた。店主にオススメされたふたつの内のどちらの紅かを迷っている時に助言してくれたのだ。品物を見るのは勿論、そんなやりとりも愉しんでいたようで店内の一角がやけに盛り上がっていた。)私もその乱藤四郎には助けて頂きました。――声を掛けて来ましょうか。(店内を一度ちらと見てから高い所にある顔を見上げた。先の様子からあまり中に入るのは気乗りしないのだろう。分からなくもない。小間物屋と和泉守兼定という組み合わせにふつりと唇に笑みの気配の緩みが生まれた。そうして店内に戻り声を掛ける。名前を出せば用件はすぐに伝わるだろう。別れ際には紅の件に対しもう一度お礼を告げよう。そして彼らの主に、一人の審神者が助かったと礼を言っていたと伝えてくれというのも添えて。)
09/13 23:07*98
(首肯を得て、探している刀にも覚えがあるような呟きに眉を軽く上げた。金色の髪に翠の瞳、目立つ容姿の一振りだ。印象には残りやすいだろうとは思っていたが、)助けたって……あんたをか?マジかよ。(直接的に関わっていると知れば、思わず口の端が引きつった。一瞬、余所の審神者に粗相を働いてやしないかと勘繰りもしたが。処世術に長けた短刀のことだ、それはないだろう。翠玉が此方を見て、心なしか其の口元がゆるんだ気がした。これが主相手ならば、『笑ってんじゃねえ』と罰が悪そうに突いただろうが。初対面の少女にそこまで馴れ馴れしくする性分でもない、「頼んだ」とだけ言い添えて入り口横で待つことにした。――程なくして、耳慣れた声が近付いてくる。どうやら一方的に彼女の方へ話し掛けているようだ。姿が見えるとじろりと一瞥をくれてやり)お前なぁ……(怒りよりも呆れを多分に孕んだ瞳で睨め付ける。ごめーん!と悪びれない謝罪に溜め息ひとつ。去ろうとする彼女に気付くと、改まって其方に身体を向けて。)助かったぜ。なにがあったかは知らねーが、これでお相子だろ。(律儀に礼を重ねる相手へ、にっと笑い掛けるさまは自然体の其れ。主へは土産話として伝えおこう。別れの際には、「またね~」と手を振る短刀と、「気ィつけてな」と打刀が見送っただろう。さてその背が小さくなったのを見届けたのなら、自分達も次なる目的地へと足を運ぼうか。小間物屋での話を聞く道中では、既に不機嫌な様子は見られなかったとか。)
09/14 03:21*100