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(本を書店でめくる楽しみ、というものは確かにある。顕現する刀剣男士に教え、教わりを繰り返す最中、新入りにも必ず教えているのがこの古書店の存在だ。最新の書物を手繰るための大型店舗も魅力的だが、年月を経た書物特有のこの匂いはこのんでいた。本日ともなったのは医学書を探しているといった短刀で、戦術書を求めるべく店内で彼とはいったん分かれることにした。読書分類に完全には添わないながらも一応は雑多にまとめられている店内の隙間を縫い、よく訪う目的の場所へと顔を出す。まずは下段からすり切れたタイトルに手を伸ばして中をぱらりとめくる。幾度かの繰り返しののち、上段の方へと指先が伸びる。)…んっ…、…もう、あの人、また高いとこに詰めて…!(刀剣男士たちは背丈の高いものも多いし、彼らが手を伸ばすことも多いのだから店主の選択も間違いではないと頭ではわかっているのだが。届きそうで届かないことについ不服を刺激されて悔しげな声が漏れるも、切り替えは早い。この辺りには踏み台もあったはず、と目線を巡らせるが生憎と覚えのある場所にその姿はなく。)……ああ、ごめんなさい。この近くに踏み台があったと思うのだけれど、あなた知らない?(そんな状況に眉間に寄っていた皺も、通りがかる相手を見ては意識して和らげる。気が立っていた昔と比べれば、そのくらいはできるようになっていた。)

09/09 16:53*8

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(特に当てもなく、ぶらぶらと散歩に出ていた。たまには外の様子を見ておかねば、井の中の蛙になってしまう。目に付いた古書店に入ったのは気まぐれであり、店の雰囲気に惹かれたからでもあり、とどのつまり書物を求めているわけではない。店内をうろついていると何やら困っているような声を拾って、自然と足がそちらに向いた。問いかけられる声色が先程聞こえたものより和やかであったため、少しばかり安堵したような表情になる。)ふむ、踏み台か。先程見かけたような気もするが、どこであったか……。(考えるような仕草をとりつつ、踏み台がどこにあったか思い返してみるが今一つ要領を得ない。)高いところに手が届けばよいのだな? ならば、俺が台の代わりになろう。(言うな否や、相手の足元で四つん這いをすべく身を屈めた。衣服が地べたに付くのも一切躊躇う様子はなく、止められなければそのまま台となるだろう。代わりに手を伸ばして本を取ってやる、という考えは浮かばなかったのだ。相手に本を取らせてあげたい、という一心である。もしも、台になるのを止められたならば、今度は相手の体を持ち上げようとするだろう。老爺が孫娘を高く抱えるようにして。)

09/09 18:34*11

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(その美貌に浮かぶ安堵は悟れたとしても、その所以までは悟れない。ほんのりと首をかしげて双眸を見上げ、記憶をたどるような彼の言葉をまずは待つ形。)ええ、そうね、気になる本が高い……待って!?ちょっ、何しようとしてるのやめて頂戴!(目的としては確かにその通りと頷こうとして、思いがけずない行動をとった刀に慌てて制止する。身をかがめようとするのならば肩口を押し返すように触れてでもとめる構え。)ひ、人様の刀を足蹴にするだなんて考えられないわ…!貴方の主に申し訳が立たない…!それに貴方は刀で踏み台じゃないでしょう、用途が違うわ、用途が。(止めようとする顔は流石に必死の様相で、丁重――とも言い難いが、慌てる中に言いつくろう言葉でも止まらないようならば「おばか!」と自らの刀剣に向けるのと同質のひと睨みが追加されかねなかった状況。止めることに成功すればほっと息をつきかけて、「きゃあ!」と声が跳ねる。普段ならば静謐を保つ古書店がにわかに騒がしくなってきたタイミングで主の悲鳴を聞いた薬研藤四郎が駆け付けた。抱え上げられる主と誰かの三日月宗近に目を丸くしている彼にようやっと平静が戻ってきて、目当ての本を抜き取ろう。この善意――きっと善意には、目的を達したと教えてやることで報いとすべきだと思って。)と、取れたわ…とれたから、下ろしてちょうだい…お願い…。(大将にしてはしおらしい、とからから笑われるだろうけれど、無事下ろしてもらえるまではもう大丈夫だと訴え続けることとして。)…その、ありがとう、…でもあなた、もう台になろうとするのはやめて頂戴ね…?(お礼の言葉と、響くかもわからない忠告は絞り出すようにして。「大将、こっちも目当てのモンみつかったぞ」と助け舟が出されたのならばこれ幸い、気恥しさから逃れるようにして軽く会釈をして店主の元へと向かった。)

09/09 20:02*15

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はっはっは、用途が違うときたか。だが、物は使いようだぞ。おなごの手助けもできぬようでは、それこそ俺は主に合わせる顔がない。(慌てて静止しされたとって、この刀は調子を崩さないどころか呑気に笑う。しかしながら肩口に加わる力や、鋭い瞳から明確な意思を感じ取れば、台の代わりになるのは諦めた。これならどうだと一言断りを入れたつもりで、相手をそっと抱え上げる。相手の悲鳴に対して)高すぎたか?(などと悠長に問いかけていた。矢のように現れた薬研藤四郎が相手の伴らしいと察すれば、敵意や危害を加えるつもりはないと、彼の目を見つめて無言で伝えよう。頭上からいじらしい声が降ってくれば、嬉しそうに笑った。)おお、取れたか。それは良かった。(これまたそっと相手を下ろして、手元の本を確かめればうんうんと満足げに頷いて。)そうだな、台はやめておこう。乗ったものが足を滑らせてしまってはことだからな。(あくまでも使うもののことを考えて、己のことなどさっぱり考慮していない様子。同じように会釈をして見送ったのち、傍らの本棚に目を遣った。雑多ながらもおおよそ戦術に関する本がずらりと並んでおり、冷ややかに目を細める。)あのような心優しきおなごまで、この戦いに担ぎ上げねばならんとはな……。(静けさを取り戻した店内でぼそり呟くが、聞いていたのは黙する書物だけだった。)

09/10 01:04*28