(太陽が天高く昇る前のこと。朝と称するには遅く、昼と称するには少し早い。演練を済ませ、遠征部隊を送り出し、朝からの一連の流れを終えて買い物をするべく審神者は一人万屋街へと繰り出した。文具屋にて買い求めたのは紙と筆、扉を閉めて再び太陽の下へと身を晒せば心地の良い風が身体を撫ぜる。)…いい天気ね。(片腕に小さく白い紙袋を抱え、もう片方の手を目元へと翳しながら空を見上げれば一羽の鳥が青い空を駆けて行く。視界を元の高さへ戻し、午後からの仕事に備えるべく本丸へ戻ろうと元来た道を歩み始めて。ゆったりと流れて行く光景はいつも見ているものと大差無く、次に足を止めるのは本丸へ到着した後だろうと思っていた。)……。(風にそよぐ、甘味の文字と季節限定の報せ。ぱちりと瞬いてその存在を確りと網膜へと焼き付けては、沈黙保ったまま唇を引き締めた。お土産に、と持ち帰れば皆喜ぶだろうか。片手を口元へと遣りつつ迷う素振りは、傍から見れば悩まし気かもしれない。足を止めたのが店先であり、出入りの邪魔になる可能性にすら思考が至らない程の迷いではあった。)
09/11 21:08*63
これは美味そうだ。(店先で足を止めている相手の後ろから、平然と甘味処の知らせに目を遣って呟いた。)ふむ、季節限定か。また次の機会にと見送ったが最後、二度とまみえること叶わんかもしれんな。(独り言なのか、話しかけているのか、どちらとも取れるような言葉をつづけたのち、やんわりと相手を見下ろした。)手が足りぬなら、貸してやってもいいぞ。(相手が片腕に抱えている荷物を一瞥し、周りに伴らしきものの姿がないのであれば、手伝おうと申し出た。)なに、じじいは暇でな。付き合わせてくれ。(遠回しに遠慮は不要と伝えてみるが、さてどうだろうか。)それとも、買えない事情があるのか?(投げかけた問いは、相手の悩みを解消するためではなかった。口元に添えられた手が自制の表れであれば、それを取っ払ってやろうと思ったまで。)
09/11 21:44*64
(耳朶に触れる声に肩が揺れ、沈んでいた意識が浮かび上がると同時に声の持ち主へと視線を向ける。思わぬ申し出に持ち上げていた手をおろし、流れるような声を聞いていた。)季節限定、なら来年また出会えるかもしれないとは思わない?(ふ、と口元を和らげて発するのは意地悪のつもりではなく、次への期待として。どこまで見通されているかはわからないが、彼から視線を外してはゆっくりと目を伏せて。)…いいえ、今の言葉で心が決まったわ。お言葉に甘えて開けてもらえるかしら?うちの子たちにお土産を買って帰りたいの。(再び持ち上げた瞼の奥から覗いた瞳は彼を見上げ、荷物と言える程でも無い荷物を抱え直そう。茶髪を靡かせ店内へと踏み入れば、季節限定の物とそうでないものを幾つか見繕い、それとは別に季節限定の甘味を三つ程別で包んで貰おうか。彼の買い物が終わると同時に店を出てすぐ、新たに提げた二つの紙袋の内の一つを彼へと差し出そう。)今日はありがとう。これはお礼よ、お茶請けにでもどうぞ。私が言うのも何だけど、気を付けてね。(微笑と共に差し出した言葉を最後に、女はするりと背を向けて本丸への道を歩き出す。手元で揺れる菓子を購入する切っ掛けを共有するのは、もう少し後のこと。)
09/12 18:15*77
(和らぐ口元を認めて、しばし瞬いたのち鷹揚に首を縦に振る。希望的観測にではなく、相手の前向きな捉え方に感服を示したのだ。)季節は巡る。それは昔から変わらぬもののひとつだ。年寄りは悲観していかんな、ははは。(清々しい顔でゆったりと笑う。たとえ同じ菓子でも、作り手が違えばよく似た別物であり、今年取れた材料で作られたのものは今しか食べられない。などと屁理屈や説教じみたことを言うのは野暮だ。長い時を過ごしてしまったが故に、刹那的な捉え方をしてしまいがちな己をも自覚させられた思いである。)土産か。皆、喜ぶであろう。(相手の瞳を確と受け止めて、口元に弧を描く。すす、と店の扉を開けてやった。軽やかに舞う髪を追いかけるようにして、後に続く。程より距離感を保ちながら店内を回り、終ぞ何も買わずに店を出た。差し出された紙袋を当然のように受け取ったのは、次は荷物持ちを任されたのと思っていたからであり、感謝の言葉を聞いて目を丸くした。)しまったな、そんなつもりではなかったのだが……。有難くいただくとするか。そちらも、気を付けてな。(別れ際には、微笑みを返す余裕を取り戻せていたはず。去り行く背を見つめ、見えなくなっても暫くその場で佇んで、十二分に注意を払ってから――己も本丸へと歩き出した。)
09/12 21:39*84