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(夕刻ともなれば夕餉の支度に厨が賑わい、遠征に出掛けていた刀剣たちも戻る時刻。主より仰せつかった畑当番も半刻前に終え、共に働いた仲間たちと共に浴場で汗を流し、なにか手伝えることはあるまいかと厨へと赴いた折に使いを頼まれたのだった。言い渡された食材を買い、籠を提げての帰り道。あとは橋を渡り、早々に本丸に帰れば任務は完了であったのだが。)む。これは……泣き声であるか?(耳に届いたかそけき声は確かに泣き声のように聞こえた。ならば放っておける筈もなく音の方向へと踵を返し、大通りより路地を少し入ったところに泣き喚く童女の姿を見つけては目線の高さを合わせるようにしゃがみ込んで。見目から推測するに齢は五つ程といったところか。しかし大の男が恐ろしいのか、笑顔で言葉を掛けても幼子は更に大泣きしてしまう始末で肝心の心を伝えてはくれない。衆生を救いたいと願う刀が童女のひとりの涙も止められないとは我ながら不甲斐ない事この上なし。響き渡る泣き声をさてどう止めたものか。せめて菓子のひとつでも持っていればと、ううむと悩ましく腕を組んだ。)

09/11 13:03*58

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(不思議なこともあるものだ。その日は次から次へと本丸内で不都合が起きていた。やれ突然電球が切れた、やれ醤油が無くなったなど、そのどれもが余剰在庫の届く前に起きたものだから、山姥切長義は頭を抱えることとなる。眉間に皺を寄せながらも己の他に物吉貞宗や鯰尾藤四郎を連れ、万屋街であれやこれやと買い物を済ませた頃にはすっかり夕刻。「あちゃあ……早く返らないと厨当番が困ってるかもしれませんね」との鯰尾の言葉に頷きながら、そのまま帰路に就こうとした??その時だった。響き渡る鳴き声の方へ自然と視線は向けられる。)……そこの山伏国広、何かあったのか。その女児はどうも審神者ではなさそうだが……迷子、かな?(ふむ、と袋で塞がっていない方の手を顎に添わせ、軽く首を傾げた。状況を見るにそう推測できるであろう単語を口にしては徐に近寄り、彼の隣に並ぶかの如く片膝を突こう。そして手持ちの袋の中から飴玉を??本丸内のある短刀に頼まれた菓子のひとつを取り出してみせる。)持てるものこそ、与えなくてはね。……この男は身形は大きいが優しい心根の持ち主だ。安心していい。(なるべく柔らかな笑みを浮かべながら少女に飴玉を差し出したならば、果たして受け取ってくれるだろうか。加えてからに対してのフォローも耳に届いているといい。「僕たち、保護者の方を探してきますね!」との物吉の声に片手を挙げて応じながら、視線は苦笑を伴って隣のひと振りへと注がれることだろう。)君も買い出しといったところか。随分とまぁ、災難だったな。

09/11 20:56*62

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(山伏国広という刀剣はうだうだと悩まぬ性質である。真正面からぶつかって、それでも駄目ならば別の手を打つのが常。泣き已まぬ童女に対してもまた然り。気合を入れるよう膝を打てば改めて童女と向き合ったのだが、第三者の気配を感じてはそちらを振り向いた。)おお、これは山姥切長義殿! うむ、恐らくは親御と逸れたのであろうが事情を訊ねようにもこの通りでなぁ。カッカッカ、よほど拙僧の顔が恐ろしいと見える!(これは困ったと言葉を紡ぐくせ、かんばせは晴れやかだ。呵々と笑って隣に膝をつく兄弟と縁の深い一振りを見遣っては、此処は有り難く彼に頼らせてもらう事としよう。飴が功を奏したのか、或いは彼の穏和な対応が幼心に響いたのか。泣きやんだ上に彼の言葉に耳を傾ける様相には「おお!」と感嘆と声をあげ。)迷い子ひとり導けぬとは情けない姿をお見せいたした、山姥切長義殿のお陰で助かったのである。拙僧だけでは斯様に滞りなく、とは行かなかったであろうからなぁ!(先刻の菓子も恐らくは彼の言う買い出しのひとつであったろうに。さりとて敢えて野暮を告げることはせず、フォロー諸々を含めた感謝を簡潔に紡ぐのみに留めた。間もなく彼の本丸の仲間より吉報が届いたならば僥倖と笑顔を咲かせた。)カカカカカ! 早くも親御が見つかったようであるな。では行こうぞ、高い高いである!(菓子ですっかり警戒も薄れたらしい童女を手招いては、肩車をしながら此方を呼ぶ声の方へと向かうとしよう。頭上の笑い声を聞きながら「山姥切長義殿! 今暫しお付き合い願うのである!」と今暫し親御の元まで共を願う心算で。)

09/13 15:47*92

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(困ったという割に晴れやかな笑みを浮かべる様相こそ、己の本丸でもよく見る山伏国広の本質であるのだろう??そんな思考を脳裏に描きながら肩を竦めてみせる。)いや、俺が出なくとも君なら解決していただろうとは思うけどね。こういう時はお互い様、と言ったところか。(自分が同じ立場であったなら、人手は多い程良い。それに子供の相手ならばもっと適任が??それこそ保護者の捜索へ出ている脇差のふた振りの方が得意だというのは正当な自己評価であるし、一般論でもあった。それでも飴玉が功を奏したのか、少女は落ち着いたようで思わず肩の力が抜ける思いのまま緩く笑みを浮かべる。)君はどの本丸でも変わらないようだ。そちらの俺はどうかな?皆に……特に、君の兄弟にも負けないくらい活躍をしていると鼻が高いけど。(軽く首を傾げながら問い掛けた言葉には、勿論と言っていい程の含みが持たされている。“兄弟”――その言葉を発した時、青い双眸はゆっくりと細められていた筈。そんな雑談の行方がどんなものであれ、やがて向こうの方から「おぉ~い、お母さんを連れてきましたよぉ!」という鯰尾の声を受け、お役御免とばかりに立ち上がった――その時、軽々と担ぎ上げ肩車をしてしまう姿には思わず瞠目するばかり。)……やれやれ、俺には到底真似できない芸当だ。わかった、では行こうか。(再度肩を竦めながら、彼の頭上で笑う少女の姿をチラと一瞥する。そのまま先導する様に歩みを進めるひと振りの表情は、まるで彼につられたかの如き晴れやかなものであったとか。)

09/13 18:15*93