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(折角だから、新しい野菜を育ててみたい、と言い出したのは誰だったか。夏野菜の収穫も一段落して、さつまいもに肥料を加えている端からそんな話題が始まって。やがて話題の向きは店頭での下調べに向いたために、好奇心ひとつを胸に抱いた太刀が俺が行こうかと申し出た。そうして現在、万屋街の植物関連の店舗が並ぶ一角で、店先の棚にずらりと並べられた秋植え野菜の種をへぇ、だなんて緩まる背筋とともに眺めていた。)豌豆、そら豆……リーフプランツ?へぇ。育ちは随分早いんだねぇ。(一つ手にとっては裏側の収穫時期と説明に軽く目を通し、棚に戻しては一つ手に取ることを繰り返す。折角ならば育てたことのないもの、なかなか食卓に上がらないものを選んでみるというのも悪くはないだろう。厨の当番たちとてなれない食材でもきっと上手に仕上げてくれるはず、というのは信頼なのか雑なふりなのか。)……おっと、失礼、邪魔だったかな?(そうこうして小袋を手に取るうち、ふと近くに誰かの気配を感じた。片手にごぼうの種を持ちながら、場所を開けるように気配と反対側へと足を引けば。)

09/09 00:39*3

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(日々の報告に耳を傾けるのは、審神者として当然の役割であった。秋や冬に向けて畑の土作りを始めたと聞き、例年であれば刀剣男士たちに任せっぱなしであったが、今年は自分も何か案を出すぐらいはできないだろうかと園芸品店にやってきたまではいい。店員に話を聞いてから、野菜の種が並んでいるところまで来たのもいい。ただ、何がいいのかさっぱりだった。端から順ににらめっこをしているうち、先客の誰かへ不用意に近づきかけてしまったらしい。)あっ、こちらこそ――(顔を上げたが、相手の背が高すぎたため一発で目が合わなかった。改めて視線を上げてから、きちんと謝ろう。)邪魔をしたのは私のほうじゃないかな、悪かったね。これだけたくさん並んでいると目移りしてしまって、初心者にはさっぱりだよ。(肩をすくめて苦笑しつつ、相手が種を持っているのを見つければおずおずと問いかけた。)……君は畑と仲良しだったりするのかな? おすすめがあれば教えてもらえると助かるのだけれど。

09/09 12:26*4

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(気配に気づいてはいても、その持ち主の体格にまではさほど意識を払っていなかった。目線が合うようにと調整してくれた彼女には軽やかな調子の笑みを一つ返して謝礼か称賛の代わりとして。)邪魔だなんてとんでもないさ。何を隠そう、俺も目移りしていたところだったからねぇ。それより、見えたかい?(悪戯めいて揶揄うように笑っているのは、彼女の目線の高さからすれば己の体格で棚の一部が隠れてしまうのではないかと危惧したようでもあって。危惧か意地悪かを冗句めいて口にするのだから変わらぬ言葉の癖はいつでも健在だ。)まあ、そこそこかな。俺は農家にあった経験もあるからねえ。(仲良し、という言葉選びに面白がるようにして笑みをこぼしたなら、場所を開けていた足を整えて彼女の隣に並び立つ。そうしてみれば身長の差というものは実に明らかで。)キミ、審神者だろう?なら、キミが食べたいものを言ってやるといいよ、畑当番たちも気合が入るだろうさ。キミ自身が育てたいのなら…この時期だと、大根や蕪なんかがいいんじゃないかなぁ。割合育てやすい部類だと思うよ。(おすすめ、と一口に行っても彼女にまつわることは何もわからないために、通り一辺倒、調べれば出てくる程度の物言いに納まる。これとこれ、とばかりに大根と蕪の種を彼女の手元に落としつつ、)そういえばキミ、この中で食べたことのない野菜ってあるかい?(もしもあるのならば、同じく現世の生まれである主にとっても物珍しいものかもしれない。そんな愉快がるような心地で彼女に尋ね、回答があればそれを手に取り、なければ自分が見慣れないものを抜き取って会計を済ませてしまうことにしよう。途中、畑に関して彼女からの質問があれば簡単に応じる。初心者と称する彼女の挑戦を他の本丸の刀剣男士である自分がとってしまうのはいささかあちらの男士たちに悪い。そこで優越感を求めて動くようには、小竜は出来ていなかった。)

09/09 17:07*9

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(相手も目移りしていたと聞き、妙な親近感を覚えて小さな笑みをこぼす。)うん、一応は見えていたつもりだよ。(軽やかさを纏った問いかけが、まるで気遣いのようにも感じられた。相手の立派な体格が棚を覆っていたならば、うっかり近づきすぎることもなく、そしてこんな風に言葉を交わすこともなかったのだろうと思えば不思議な縁でもある。)へぇ、農家さんに……。それは頼もしいね。(とある江の一振を思い出しながら、興味深そうに呟いた。農家にあった刀剣は、畑に対して親和性でもあるのだろうか。審神者と言い当てられて、きょとんとした顔つきになりながら、相手が選んでくれた種たちを両手で受け止める。)私が食べたいものを言ってしまうと、彼らに気を遣わせてしまいそうで少し怖い。でも君を信じて、試しに一度言ってみることにするよ。育てるのもやってみようかな。(手のひらの種が芽吹き、葉を生やして育ってくれたら。多くは作れないかもしれないけれど、僅かでも本丸の貯えになったら。少し先の未来を、明るく思い描いては微笑んだ。)この、ルッコラは食べたことがない。ほうれん草に似ているけれど、どんな味がするんだろうね。(先程受け取った種を片腕に抱え直し、空いた手でルッコラの種を指さした。折角なので、これも一袋買ってみよう。大根や蕪の育て方について注意点があればと、もう一度だけ相手に尋ねてみようか。別れ際には改めて礼を述べ、深々と頭を下げた。本丸に帰ってから早速、刀剣男士たちと畑について話し合おう。今年も冬が越せるように。)

09/09 20:38*16