全く、何処に行ったんだ……!?(ある日の夕暮れ時、山姥切長義は万屋街の往来ど真ん中にて悪態を零していた。――遡ること数刻前、本丸に届く筈の荷物が手違いで万屋街にある集積所にて止まってしまっているとの知らせが入っていた。主に報告をしたとて、誰かがその荷物を取りに行かねばならないという事態だ。都合の良い者といえば、その報告を受け取った己自身、そして本丸の縁側にて気ままにごろごろとしていた暇そうな南泉一文字。難色を示す彼の首根っこを引っ張り万屋街へと連れ出し、無事に荷物を受け取るまでは何の問題も無かった。ただほんの少し、ほんの数分別行動を取ったことで、あっという間にはぐれてしまったのだ。小包を数個抱えながら暫し歩き見渡したところでそう簡単に見つかる筈も無し、緩やかに首を横へと振った後は通り掛かった姿にひと声を掛けようか。)ああ、ちょっといいかな。俺と同じ小包を抱えた猫殺しくん??南泉一文字を見ていないだろうか。さっきまでこの辺りにいた筈なんだが、まさに猫のように何処かへ行ってしまってね。(つい飛び出した愛称を訂正する様にその名を口にしつつ、続け様に零れ出る溜め息は少々深く、そして低い。眉間の皺も相俟って、切実であることはよくよく伝わる筈だろう。まるで迷子を捜す母親の如き態度は、旧知の間柄であるが故の気安さが滲んでいる証でもある。もしも目撃証言を得られなかった場合は、それこそ猫の好むような場所でも引き出さんと静かに返答を待つのみ。)
09/09 21:09*20
(傾く赤い太陽は本日も美しく、何処か憂うような色を孕んでいる――と、瞳を細めながらそう思う。前へと流れた茶髪を肩へと払う指先は何も持たず、もう片方の手指もまた自由。何かを求めているわけではなく、何かを探しているわけでもなく。ただ単に、一人ふらりと夕刻の万屋街を歩いていた。宛ら散歩のように、はたまた抜け出した子供のように。緩やかな足取りで、地を踏みしめて歩いていく。時刻もあってか擦れ違う人の数もそこそこに、様々な声が耳朶に触れては消えての繰り返し。買い物帰り、散歩の途中、荷運びの途中。其々が持つ理由は違っても、同じ空の下、同じ世界を歩いていた。そんな最中だ、掛けられる声に瞼を少しだけ持ち上げたのは。)小包…?(くるりと整えられた睫毛を上下させ、復唱するように唇が小さく動いては音を紡ぎ出す。記憶を探る様な、思い当たり節があるような、そんな空気を帯びていた。聞き慣れた名に彼の姿と性格を思い出し、彼を探しているらしい他本丸の彼の瞳を正面から見据えて。徐に持ち上げた右手の先が、考え込むかのように口元へ触れる。)あなたが探している南泉一文字かはわからないけれど、似たような包みを抱えている子と擦れ違ったわ。通りの真ん中を歩いていたからすぐに横へ逸れる可能性は低いんじゃないかしら。(茜色の空へと目を遣りながら掘り返した記憶を、曖昧ながらに彼へと差し出そう。口にし終えた後は反応を見るかのようにその瞳を覗くだけ。)
09/09 21:55*22
(声を掛けたその先の女性は、凛とした佇まいでありながらどこか無防備にも映る。万屋街を一人で出歩く審神者も少なくは無いにしろ、夕暮れ時に女性の身で供も無し。もし自らの主であったなら小言のひとつでも浴びせていたであろうシチュエーションだ。そんな思考を隅に放り投げたのは、正しく彼女が語った目撃証言。ハッとしたように彼女がやってきたであろう通りを見遣っては、すぐに視線は彼女の方へと戻された。)きっとそれだ、間違いない。こんな時間に小包を抱える猫殺しくんが何体もいる訳が無いしね。……全く、どうして一人で動き回るんだ……。(真顔で頷きを示した後、空いている片手で軽く額を押さえる仕草と共につい零れ落ちる愚痴めいた一言は致し方の無いもの。やがて彼女からの視線を感じては向き直り、軽く頭を下げてみせる筈。)助かった、俺だけでは日が暮れてしまうところだった。協力感謝しよう。……そうだ、もうじきに暗くなる。君も早く本丸へ帰ることだ。何かがあってからでは遅いんだから。(教えられた方へ歩みを進めようとして、一瞬足を止める。そして齎した忠告は勿論心配から来る親切心で。尤も、上から目線だと怒りに触れてしまう可能性もあるのだが、山姥切長義にそこら辺のオブラートは備わっていない。ただ、浮かべる微笑みだけは優し気なものだったに違いなかっただろう。――そうして彼女に別れを告げ、情報通りに往来を真っ直ぐ辿る事ほんの少し。堂々と茶屋の床机に腰掛け、団子を頬張るその姿を見つけた時の山姥切長義の様子たるや、それはもう般若の如き形相で??と、本丸にて主に語るのは勿論南泉一文字。その傍で零れる盛大な溜め息は一体何度目になることやら。そんな日常風景の中で、ふと思い出すのは本日出会った女性の姿。そうして不思議と伸びる背筋のまま、一文字派の刀たちへの告げ口を実行するのであった。)
09/09 23:54*27
(まるで保護者のような言い分を耳にするなり、他人事で申し訳ないと思いはするが本丸の二振と重ねては唇が薄く弧を描く。茜色に照らされる中、元来た道を振り返る瞳に既に彼の探し人の姿を捉えることはできないまま。人の往来から彼の方へと視線を戻し、そっと茶髪を揺らして頭を横へと振った。)流石にもう姿は見えないようね、急いだ方が良いわ。こうしている間にもきっと進んでいるでしょう。(澄んだ声音でそう後押しするも、忠告を受ければ睫毛をはたと上へ下へ。驚きを見せた後、彼の微笑みにつられるように静かな微笑を浮かべては、凪ぐ風に揺れる髪を右手の指で押さえよう。厳しいとも思わず、ただ優しさとして受け止めるのみ。)どういたしまして、それからお気遣いをありがとう。怒られる前に帰るとするわ、うちの子たちも心配性だから。(微かな笑いを含んだ声での返答の後、彼が歩き出せば己もまた前を向いて歩き出そうか。少しずつ近付く夜の訪れ、太陽が身を隠してしまう前には本丸へ到着することだろう。さりとて飛んでくる小言は瞼を下ろして聞き流し、今日の出会いを口にしかけてやはり止める。何を求めて外へ出たわけでも無かったけれど、確かにあった小さな出会いは胸に秘めたままで。何かがあったらどうするんです――とは、とある一振が発した咎めの言の葉。街中で言われた言葉と重なって、諦めたように小さく息をついた。)やっぱり心配性ね…ちゃんと陽が落ちる前には戻ったじゃない、子供じゃないんだから大丈夫よ。(瞳を伏せたまま出された湯呑へと手を伸ばし、両手で包み込んでは広がる温もりを享受する。お叱りの言葉はもう少し続きそうだが、“彼”もまた同じようにお小言を受けているのだろうか。何処かの南泉一文字のことを思いながら、口端に微かな笑みを乗せてからお茶へと口を付けた。)
09/10 21:46*45