いやだ。(あるじさま、だがしやにいきましょう!――遡ること数刻前、切っ掛けは今剣の一声だった。きっぱりと否を紡いで執務室の机に片肘を付く。ツンと澄ました面で襖の前にピシッと座る短刀たちを見据えては、溜息混じりに口を開いた。)万屋街くらい僕が一緒じゃなくても行けるだろ、しかも目的は駄菓子屋だって? 付き合う理由はないな、そういうことは一期一振に頼めよ。(己よりもずっと適任だろう刀剣の名を挙げて矛先を逸らそうとしたものの、すくっと立ち上がった短刀たちにあっという間に両腕を掴まれてしまえば抗う術は無く。ぐいぐいと腕を引っ張られて歩かされるのを保護者然とした太刀たちにも微笑ましく見送られて今に至る。)くそっ、僕はお守か……!(寧ろお守をされている側であるのだが、無論そういう自覚はない。ぶつぶつと文句を垂れつつ、駆け足で駄菓子屋に入っていく短刀たちの背を追って店内に足を踏み入れる。甘ったるい匂いに微かに眉根を寄せながら所狭しと並ぶ駄菓子を見遣り、ふと目に留まった金平糖を手に取ろうとして。)お前。……そこのお前だよ、邪魔だ。そこの、取れないだろう。(偶然居合わせたのか、或いはその人物も金平糖を取ろうとしていたのか。とにもかくにも目的の棚の目の前に居た人物へと、理不尽な文句を突きつけた。)
09/09 21:02*19
清光。だから、私はいいって言ってるでしょ。(はいはい、いくよー。軽やかな言葉の調子で手元に下げた文具用品店の紙袋をかっさらわれ、ついていくしかなくなった。初期刀の前ではつい眉間に皺を寄せがちになるのはある種の信頼の形ではあるけれど、今日はどこに連れていかれる事やら。必要を重んじがちな主にそれ以外を与えようとする初期刀はしばしこうした行動をとる。)…駄菓子屋なんて。子供じゃないのよ。(俺適当に見てくるから、と、文句を受け付けもしない打刀に明らかな溜息をついて。とはいえ、爪紅を用立てられるよりははるかにまし。手遊びを共にする短刀たちに何かみやげを買ってやるのもいいかもしれない、というのはある種の諦めであった。そうするうちにきらきらと光るコンペ意図に目が行って、そういえば最近短刀のひと振りがハマっていたな、だなんて口元に緩やかな笑みを浮かべ――)私?(するりと引き戻された現実に彼の方へと視線をよこす。)あら、ごめんなさいね。金平糖に興味がおあり?(伸ばしかけていた手は体の横へと戻り、一歩退く形で彼に道を譲る。広義で言えば彼とて歴史を守る仲間であろう。ならば特段衝突したがる理由もなく、)それにしては、眉間に皺ね。誰かの付き添いかしら。(トン、と、自らの眉根をついてころりと笑った。菓子類が苦手な男性が、誰かに連れられて顔を出し、誰かの好みを思い出して手を伸ばした、と、そういう流れが自然なようにも思えて。彼が金平糖を手にし終えてから、自分もまた手を伸ばす心づもりだった。かつての少女も大人になれば、人付き合いの心得というものも覚えるものだった。)
09/09 21:39*21
(金平糖を手にしようとした理由なんぞ存外大したものではない。そういえばあの短刀が好んで食べていたな、なんて脳裡にその姿を思い浮かべた時には手を伸ばしていたというだけのことである。向けられる眼差しに対し他に誰が居るんだよと言わんばかりの不機嫌面で応じては、譲られた道へと図々しく一歩を踏み込んで眉根を寄せた男には大層不釣り合いであろう金平糖の小袋を手に取った。)駄菓子屋に居るんだ、菓子に興味を持ったって可笑しくはないだろ。(大人の対応をする彼女とは対照的に、ふんと鼻を鳴らす大人げない男の口からは不遜な言葉が次々とまろび出る。万屋街には審神者以外の人間も居るとはいえ、彼女は男と同じく歴史を守る者のひとりだろうと直感を元に推測しては品定めでもするような不躾な視線を送ったものの。ころりと笑う姿に不意打ち喰らい、すっかり毒気を抜かれてしまっては決まりが悪そうに頭を掻いた。)……ああ、そうだよ。うちの短刀どもがどうしてもって言うから付いて来てやったんだ、迷惑なことにな。そういうお前も付き添いか? だとしたら、互いに難儀なことだな。(迷惑だときっぱり告げるくせ、その口吻に棘は無い。問い掛けというよりは確信めいた音を投げ、ふっと息を吐いては疲れたように肩を竦めた、その直後。「あるじさまー! ちゃんとそこにいますか!」と今剣の声があがったのを契機に、続々と短刀たちが男の安否を確認する声をあげた。それはさながら、保護者が子どもの安否確認をしているように聞こえなくもなく。)居るよ! 僕を迷子みたいに言うんじゃない! まったく……それじゃあ僕は行くぞ、これ以上店の中で騒がれたらたまったもんじゃないんでな。(再び眉間に皺を刻み、盛大に溜息を吐いたのち。苛立ちを抑えるように髪を掻きあげては彼女を一瞥し、声の聞こえた反対側の棚へと向かうのだった。)
09/10 14:12*31
(あからさまな不機嫌顔はいっそ懐かしさすら感じさせる。不遜な言葉に「そうね」と笑みを含ませるようにして頷いた。実は甘党だったとしても、仲間のためであったとしても、どちらでも構わないといえばそれは確かに。どちらであっても彼がこの場で金平糖を手に取ったという事実そのものは変わらない。彼の視線は受け流した。何一つ余さずに噛みついていた少女時代からはとうに卒業していたために、平静さを崩されなければこの程度は可能だった。)あら、いいじゃない。そちらの子たちも喜んだでしょう、主の護衛だなんて。私は、……そうね。文具を人質に取られたのよ。(付き添い、という言葉は正確ではないだろう。主を連れ出す喜びを顔に乗せる刀たちの姿はよくよく知っているために軽く頷いて、彼よりもそちら側に心を寄せる。反して己とは言えばどちらかといえば強引に連れ出されただけのような。付き添い、よりもつれてこられた、という言葉の方が正確な気がして軽く息を零してみせる。宛ら親兄弟のように、主としてではない側面にまで世話を焼かれている。それは「主様」と声をかけたとて、彼の刀剣男士とて同じようで。)彼らからしたら、あなたの年頃なら子供みたいなものでしょう。…あら。(盛大な溜息とともに反対側へと向かっていく彼の姿を見送った。特段引き留めるわけでもないのは、刀剣男士たちの心情は理解しつつも危険がなければいいだろう、との判断による。金平糖を手に取り、店内をいくらか見て回ってから会計に赴けば、戦利品一つも手にしていない初期刀と再びの遭遇がかなうだろう。)…清光、ほら。(あげるわ、と、差し出したのは一人用のパック入り綿菓子だった。その理由を、特に明かしもしなかったし、問いかけられもしなかった。)
09/10 20:02*40