(うつくしい夕暮れの日だった。茜に染む空の下、その人はたしかに其処に居たのだ。)――主、(それしか知らぬのかという程平生から弧を描く唇も、この時ばかりは形を変えた。見紛う筈もない。彼女は、たしかに己の捜し求めた人であった。ただ見送る事しか出来なかった過日を経て、今。大学からやや離れた場所に位置する路地にて、待ち伏せをしていた。人通りは然程多くはなく、その姿を見過ごしてしまう心配はないだろう。腕時計で時折時刻を確認しながら、暫く。もう間もなく授業が終わり、彼女が此処を通る時間だ。学帽のひさしを持ち上げて、周囲を確認する。――その先に見えた姿に、ゆっくりと近付いて行った。)やぁ、こんばんは。突然ごめんね、驚かせてしまったかな。(人ふたり分程の距離を空けて立ち止まり、呼びかける声は努めてやわらかく。浮かぶ微笑も同様であっただろう。彼女の気質を知ればこそ、逃げられるような未来は想定していないのだが、それでも怖がらせたり不安を抱かせるのは本意ではない。変に間を置く事なく再び唇を開き、)君と話がしたいんだ。少し、時間を貰えないかい?(先ずは要件を。窺うように首を傾げながら、学帽の下で瞳を細める。)
02/09 19:53*8
(どうしてこんな時間割を組んでいるのだろう。後悔ではなく素朴な疑問を抱えながら、校門を跨いで帰り道を行く。一年のときは満遍なく組めたはずなのに、三年の今はかなり偏りがあった。今日に詰め込んでいる代わり、丸一日お休みの日もあったりするのだ。)何か考えがあったのでしょうか。(自分のことなのに思い当たる節がないのはおかしな話だが、夕日を眺めていればちっぽけな疑問はあまり気にならなくなる。ふと、うつくしい世界に誰かの影が伸びてきて、両足をそろえ歩みを止めた。)こんばんは。……はい、少し驚きました。(知らない男の子の登場に目をしばたかせ、申し訳なさそうにはにかみながら素直に伝える。)お話しですか? 私は構いませんが、あまり遅いとお家の人が心配しますから少しだけですよ。(口ぶりから、心配される対象が相手の方であると伝わるだろうか。学生姿から年下と認識して警戒する様子や不信感は微塵もなく、まずはこちらから人ひとり分だけ歩み寄ろう。本当に少しなら立ち話で済むのかもしれないが、建前であったり長話になる可能性を考慮して、歩きながらで良いですかとこちらからも問いかけをひとつ。次いで、確認をひとつ。)この辺りではあまり見かけない制服ですけど、わざわざ私に会いにきてくれたんですか?(大学近くの高校はブレザーだったようなと思いながら、全ての学校を網羅しているわけでもないので念のための確認といった風に。)
02/10 00:31*17
(顔も声も、彼女はたしかに捜し求めた主だ。それはどうあっても間違いない。だけれど、己を映す他人行儀な瞳は、知らないものだった。彼女が置かれた状況を事前情報として知っていて良かった、そうでなければどうなっていたか分からない。存外にあっさりと取り付けられた機会には弧を描く唇を弛ませて。)ありがとう。もちろん、夜が更けるまでには君を帰すつもりだから安心して。(心配の向く先が此方であることは理解しているが、敢えてどちらにも取れるように鷹揚に微笑む。一歩縮まった距離を詰めることはせず、歩きながらと提案されたならば頷いてみせた。ゆるやかな歩調で踏み出し。)……うん。君に会いたくて、随分遠くから来たんだ。(ただ目に付いた学生服を真似て用意したものだから、胸中ではそうなのかと新たな情報を刻む。間が空いた返事はそれでも迷いなく、流暢に紡がれる。初対面の異性へ送る言葉にしては随分と重い、気味悪がられても仕方ない程のものだけれど。茜の道を歩みながら、)大学は、楽しい?(まるで進学先の感想を知りたがる学生のような問い掛けは、世間話のような語調で。隣に並ぶ彼女へ時折視線を向けながら、擦れ違う人々の会話を拾っていたことでふと「あ、」と音を零す。そののち。)敬語とか、使ったほうがいいかな?気になるならそうするけれど。(格好だけを見れば己は彼女より年下という認識となる。刀剣男士として言葉遣いで不興を買った記憶はないが、今は一学生であるから一般的な常識に倣うのも一興かと。)
02/10 18:58*19
(少しと言うには長い時間を思わせる表現を、冗談と受け止めて微笑み返す。落ち着いた足取りで二人分の影を並べて歩いていたが、予想外の返答に口元へ手を添えながら驚きの声を小さく上げた。)まあ、そんなに遠くからですか。(具体的に地名を聞いたわけではないけれど、言葉に滲む確かな重みから彼の苦労を推し量る。同時にある疑いが浮かんだ、人違いではないかと。でも、遠方から来た子にそんなことを尋ねるのは気が引けたし、彼の話を聞き終えてからでも遅くはないはず。)ええ、楽しいです。色んな学部がありますから、まだ進学先を決めていないのであればオープンキャンパスに来てみませんか。私で良ければ案内しますよ。(ありがちな世辞であるが、彼が望むのならば喜んで案内役を引き受けよう。土地勘のある自分と変わりなく歩いていく隣の彼をまじまじと見つめて、何度か視線が合わさる度に不思議な子だなと感じる。何かに気付いたような呟きを耳にしてから、まあるくした目を和らげた。)話しやすい言葉が一番です。どんな言葉づかいでも、心が込められていればちゃんと伝わります。あなたは優しいんですね。(気遣いだけは受け取らせてもらい、大丈夫だと笑って見せてみせる。)私は、これが一番話しやすいです。あなたと距離を置こうとは思っていませんから、どうぞ遠慮なく話してください。(初対面だからの口調ではないし、彼の話を聞く心構えは出来ている。こちらから聞いてみたいこともあったけれど、年下に譲るのが年上というものだから。)
02/11 00:38*23
そうだよ。うんと遠くから来たし、君を探す為に随分と歩き回ったものさ。(気遣わしげな声色に気付かぬ筈はない。けれど敢えて大仰に響くような口ぶりで肯定を返すと、冗談めかすように瞳を細めた。そうすることで、彼女も笑ってくれたならいい。)オープンキャンパス……あぁ。あはは、親切にありがとう。気持ちだけ貰っておこうかな。(馴染みの薄い単語を反芻したのち、納得の相槌。彼女からすれば見ず知らずの一男子学生でしかないだろうに。快く案内を申し出てしまう人の好さは、己がよく知る“茴香”のひとひらで、思わずといった調子で笑い声がこぼれた。曖昧な約束を交わすのは好まないから、濁さず穏やかな語調で応える。次いで、)……けれど、案内してもいいと思えるくらい、満ちた時間を送れているんだね。(感慨深く呟いた言葉は、半ば独り言のように唇をなぞり落ちた。鮮やかな夕陽を映す双眸を、僅かに伏せたのは寸秒程度。向けられる眼差しからは逃げる事無く極自然に笑みを返していたけれど。)そう言ってくれるなら、今のままで続けさせてもらうよ。……君の方こそ、とても優しいんだね。(とうに知っている事実を、確かめるように囁いた。やはり、一部の記憶が失われようと彼女は彼女であり――これまでと、今と、どちらが“正しい”かなど判じられないということだ。唇に弧を引いたまま、緩慢な瞬きを幾度か挟み。)最近、君の周りで何か不思議に思う出来事はなかったかな。たとえば……そうだなぁ、記憶が曖昧に感じたり、妙な既視感があったり、とか。
02/11 12:15*26
私を探して……?(きょとんとした顔つきで困惑気味に呟きを漏らすが、軽妙な語り口に釣られて小さく笑う。そんな労力をかけてまで会いにきた相手を見間違えているとは考えにくく、疑いの矢印は自らに向き始めた。見学案内は断られてしまったが、曖昧にせずきちんと意思を伝えてくれた彼に好感を持つ。呟きを拾って良いものか考えあぐねて、黙って頷くのみにした。充足しているのは確かであったから。)ふふっ、あなたに褒められるとなんだか恥ずかしいです。(日頃のようにすんなり受け取って礼を伝えるよりも先に、くすぐったさから笑いが零れていった。彼の穏やかな雰囲気に誘われて、深く考えずに思うまま答えていく。)実は、一年生の後半あたりから最近までのことをよく覚えていないんです。勉強をがんばっていたといえば間違いなくそうなんですけど、そこまで必死に詰め込んだりは……、おかしなことを言ってごめんなさい。(苦笑しつつ軽く頭を下げる。友人にも言えなかった些細な疑問を、どうして彼には話してしまえたのだろう。話し上手で聞き上手というだけではないような、と一層より興味深い目を彼に向けた。)私たち、どこかで会ったことがありますか? 全くの初対面ではない気がするんですが、これも不思議な出来事のひとつでしょうか。(一度おかしなことを言ってしまったのなら、年上らしく振る舞うのは無理がある。許されるのならば知人に接するような距離感で、心配よりか関心の色が濃い問いかけを続ける。)ひとりで遠いところから来るのは、怖くなかったんですか?
02/11 19:41*28
(呟きには「うん」と穏やかに頷くばかり。彼女からすればまるで覚えのない感情を向けられているのだ、驚くのも無理はない。邪険に扱われないだけ良いほうだろう。はにかむような笑い方も、やわらかい声も何一つ変わっていない。“あなたに”という特別感を耳にすれば双眸を細める。)恥ずかしがる必要なんてないのに。褒められるのは苦手?(己の知る主にはそうした面は無かったと思っているが、今の彼女はどうだろうと。たとえ目の前の少女が共に時を過ごした存在でないとしても、知りたいと思えるから。広い路地を歩く足取りはゆるやかなまま、聞き取りへの返答には何か考えるように双眸を伏す。けれどすぐに睫毛を持ち上げたのは、)ううん、僕が聞いたことだからね。それに、僕からすれば「やっぱり」って感じだし……(謝罪には軽く首を振ったのちに、彼女が感じた違和を肯定するように頷く。状況整理に僅かな思案の間を置き、一度言葉を止めた。その続きを紡ぐよりも先に、彼女からの質問を優先する。ゆっくり、深い瞬きをひとつ経て。)……あるよ。(はっきりと、それでいてまろい声が答える。笑顔を湛えて。次ぐ問いには、うーん、と少し悩む素ぶりを見せながら。)考えたこともなかったなぁ。僕は怖いって感覚が薄いのかもしれない。君はどう?冒険は苦手かい?(此方もまた興味を滲ませて問う。そうした会話の折、徐に足を止めたのは閑散とした公園の前。夕焼けを一瞥したのち、)少し、寄り道してもいいかな。(もしも了承を貰えたなら、公園へと足を進めるつもりで。腰を落ち着けるならベンチか、それともブランコか。選択は彼女に任せたい。)
02/12 03:05*32
いえ、苦手ではありませんし嬉しいですよ。ありがとうございます。(ようやく感謝の言葉が出せたなら、僅かな恥じらいは抜けていき笑みだけが残った。今日はアルバイトの予定もなく真っ直ぐ帰るはずだった時間が、心穏やかに流れていくのも彼の雰囲気が為せる技なのだろうか。肯定の声でさえ角がない。)そう、なんですね。(ゆっくりと事実を飲み込めば、驚きよりも納得のほうが上回った。彼の言動は知っている相手に添うもののそれ。なのに自分は彼と会ったことを覚えていないし、彼はそれを責めもしないのがますます不思議だった。)あなたは行動力があるんですね。私はいつか一人で旅行をしてみたいんですが、旅先で何かあったらと踏み切れません。両親は厳しくないんですよ、むしろその逆で……最後にちゃんと話したのはいつだったか。(両親との時間が殆ど無いのは小さな頃からであり、まともな会話が思い出せなくても何の違和感もない。ただ、少し思うところがあるだけ。寄り道には快く応じて、普段は通り過ぎるばかりだった公園の中へ。最初こそ周囲を見渡して遠慮がちだったが、少し歩くうちに嬉々と足が向いたのはブランコのほう。)公園は久しぶりです。誰もいないみたいなので、ブランコに乗ってもいいですか?(世間一般的に大人がブランコで遊ぶのは憚られるが、子供がいない今なら、そして彼なら頷いてくれる気がした。それはどうかと言われたならば、大人しくベンチに座ろうか。)
02/12 12:43*35
(主の知らない一面というものを垣間見るのは、中々どうして楽しいものだ。旅行への憧れを耳にすれば、ふむと考えるように。)たしかに、女性の一人旅は危険がつきものだって聞いたことがあるね。まずは旅に慣れている人と一緒に行ってみたらどうだろう。(興味を持つことは大切だ。他所の世界に触れるという体験も財産になる。それゆえ旅という行為には肯定的に、けれど身の安全を考えての提案をひとつ。両親との話は浅く聞いていたし、彼女が愛されずに育った子などとは思っていない。けれど、「じゃあ、今夜話してみる?」なんて唐突な提案を重ねたのは、主と刀剣男士という間柄にない今だからこそ伝えられると思ったから。向かう先を変え、公園へ入っていく彼女に続いて歩く。心なしか楽しそうに見えたのは気のせいではなかったようで、)いいよ。たまには童心にかえるのも良いものだよねぇ。(なんて、学生姿で言っては説得力も無いだろうが。隣のブランコに腰掛けると、ギィと鉄が擦れる音が鳴る。子供用にあつらえた高さだから、足が余るが気にした様子はなく。)僕はね。君をよく知っているし、君自身が知らない君の秘密を知っているんだ。(足は地につけたまま、両手を組んで夕焼けを見上げる。世間話のような口調だった。)そして、僕が思う君は、きっとその秘密を“知らない”でいる事を厭うと思う。だから、信じる信じないは別として、聞いてほしいんだ。(ゆっくりと、新緑の瞳を見据える。柔和な笑みは、不安を取り除くに足るだろうか。)
02/12 23:42*38
(旅の目的や行きたい場夜は特になく、夢物語にすらならない曖昧な望みであった。彼の親身な助言に目から鱗が落ち、表情をぱっと明るくさせて両の手を静かに合わせる。)経験者がある方と一緒なら、何かあったときに相談できますね。(自分は頼るばかりになってしまうだろうが、もしも気の置けない誰かが共に来てくれるなら楽しいものになるだろう。次なる流れ星のような思いがけない提案が、とっくの昔に諦めてしまった願いを芽吹かせていく。やや間を置いて「今夜は両親が帰ってくるまで待ってみます」と軽やかに返事をした。朝早く夜遅い両親を、子供のころは眠くて待っていられなかったけど、今ならきっと。――誰かの帰りを、どこかで待っていたような。ひどく曖昧な引っ掛かりを密かに感じていた。)ありがとうございます、ふふ。(彼にも子供の時期があったのだろうと可愛い姿を想像して、思わず笑ってしまった。歩いていたときは優しい眼差しが印象的だったが、ブランコに腰を下ろした彼の真っ直ぐな足や肩幅は男の子なんだなと改めて意識させられる。自分もブランコに足を揃えて座り、うっかり落ちたりしないよう左右の鎖を軽く掴んでおこう。)……本当に不思議です。あなたが嘘を言っているようには聞こえませんし、信じてみたいと思う私がいます。聞かせてくれますか、私の秘密を。(茜色の空が宵の口へと移り変わる僅かな時間を彷彿とさせる、神秘的な色を宿した彼の双眸に微笑みを向けた。)それでもし、私がまた驚いてしまっても笑わないでくださいね。
02/13 20:43*43
うん。まずは近い場所から始めてみるのもいいんじゃないかな。日帰りとか。(前向きな返事には提案のし甲斐もある。彼女のこうした素直さや純真さは時に危うくも思えど、そこで囲って保護してしまおうとする性質ではなかった。ゆえに助言は惜しまずに。些か踏み込みすぎな類の話題も、良い方向に捉えて貰えたならにこりと笑みを深めた。「それがいい。何を話したか、今度会ったときに教えて」と、後押しとなれるよう。忘れられた事に何も感じていないと言えば嘘になる。それでも、不思議と気持ちは凪いでいて、穏やかで在れた。だって彼女は、やはり彼女のままなのだ。柔らかな微笑みの内に感じる強さは、やはり“茴香”その人である。)ありがとう。(受け入れ、向き合おうとしてくれるその心へ、いっとうの思いを込めて。次いで、)驚かないほうが難しいと思うから、大丈夫だよ。(にこやかにそう告げては、視線は再び空へと投げられる。ゆるりと瞬き、さて何から話そうかと。)最初に言っておくと、これから話す事を君が覚えていなくても、知らなくても、“そういうもの”なんだと思ってほしい。……気に病む必要はないんだ。無理に信じる必要も。だから、そうだなぁ……並行世界、もう一人の君の話だと思って聞いてくれたらいい。(前提として敷いた断りは、己からすれば本題よりも大切なことだ。ゆえに丁寧に紡いでいって、「ね」と微笑みかけよう。受け入れて貰ったことを確認したなら、唇を開くだろう。)『審神者』は知っている? 平たく言うと、君はその審神者で、僕は君と一緒に働いていたんだ。(――平たくしすぎではないか?と親友の声が聞こえた気がするが、この場にはいないので気のせいだろう。まずは此処を理解してもらわねばと、変わらず穏やかに反応を窺い見る。)
02/14 00:56*45
(次の機会を疑いもせず、ゆったりと頷いた。背中を押してくれた彼に是非とも聞いてもらいたかったし、何の変哲もない話でさえ耳を傾けてくれるだろう。幾重にも重ねられる優しい言葉の前置きは、これから語られる秘密の大きさを思わせる。けれども、不安な気持ちは少しもなかった。俯瞰するようでいて、見守るような姿勢の彼が心強いのかもしれない。微笑みかけられたならば、「はい」短いが元気よく返事をした。)国の平和を守る仕事をするという、あの『審神者』ですか? なりたがる人が多いと聞きますが、誰でもなれるわけではないんですよね。私が審神者……。(彼が語る話の始まりに茫然としてしまう。そんな大役を任せられるとは想像が付かなかった。取り乱さずにいられるのは『並行世界のもう一人の自分の話』だと、極端に言えば他人の話だと余裕を保っていられるからだった。たまに見かけていた、審神者の宣伝文句がおぼろげに浮かんでくる。)――刀剣男士。あなたは刀剣男士と呼ばれている方なんですか?(服装による先入観を一旦横に置いて彼をよくよく見れば、確かにとても顔立ちが整っている。いっそ恐ろしいほどに美しい。知っているうちで近しい感覚は、触れてはいけない芸術品を前にした際の圧倒感か。)
02/14 20:17*51
そう、その審神者。(あたり、と謎解きの答え合わせのような口ぶりで応える。彼女が語る内容は一般人が知り得る範囲のものだが、話をする上ではなんら支障は無い。驚いた様子を見ても当然笑ったりしない。唇の弧は変わらなくとも。)……うん。それも合っているよ。僕は源清麿。好きに呼んでくれて構わないよ。(その眼差しに混じり入る色は畏敬の念か。それを感じ取ったとて、やり取りに変化が生じる事はないだろう。鷹揚に笑んでみせたなら、)ちなみに、審神者は審神者名……所謂偽名を用いるのが一般的なんだ。君は茴香と名乗っていた。(そんな情報を添えながら、足を地につけた状態のままゆらゆら座板を揺らす。繋ぐ鎖を指先で撫ぜるように触れながら、瞬きをひとつ。)詳しい事は話せないけれど、色々あって“茴香”は僕達の前から消えてしまった。行方を追ってみたら、この近くにいるとわかってね。だからこうして会いに来たんだ。……此処は平和で、とてもいい。(主観を交えず感情を差さず、淡々と事実のみだけを並べてゆく。やがて間を挟み、長閑な公園の風景を映す双眸を細めて、しみじみと感じ入るように呟いた。そうして、己の腿に肘をついて頬杖をつく。隣を覗き込むように見つめて、)なにか聞いてみたいことがあれば、答えるよ。(急かす事無く、口調は変わらずおっとりと。)
02/15 01:11*54
(聞きかじりの情報が合っていたようで、ほっと胸を撫で下ろした。ひとつ、またひとつと与えられる内容は未だにピンと来ないままだが、分かりやすく話してくれるおかげで流れは把握できているはず。変わらぬ笑みを湛える彼の様子に、怯んだ心が解けていった。前へ向けていた両膝を横へと動かし、斜めに座るようにして彼のほうを向く。)まるで、危ないところから来たみたいに言うんですね。(素朴な感想を述べてから、ゆるく首を振った。肯定や否定を求めているつもりはなく、ましてや問い詰める意図もない。もし、彼が気を悪くしたならば一言詫びるつもりでいるし、それでもなお穏やかで在るならば敬服の念を抱いて、小さく頭を下げるだろう。)あなた方が日々、守ってくれているから平和なんです。私の秘密を話してくれて、ありがとうございます。(色々あったと伏せられた部分について気になるものの、機密事項に当たるのだろうと何となく察する。それに抵触しない範囲でなら彼は答えてくれるのだろうとも思えば、物怖じせずに聞いてみるのだ。)茴香と名乗っていた私は、あなたをどんな風に呼んでいましたか? 一緒に働いていたのでしたら、お互いに敬意を込めていたのでしょうか。でも、住み込みで働いているのなら他人行儀のような気もしますね。もう少し親しみを込めていたのでしょうか。(無難に「源さん」と適度な距離を保って呼んでいそうではあるが、全く違う風に呼んでいた可能性もある。呼称のみに留まらず、どういう風に呼びかけていたのかを確かめてみたかった。会いに来てくれた彼と自分の関係性を“不思議”で片付けてしまわないために。)
02/15 18:57*58
(真っ直ぐな眼差しも、躊躇せず抱くままの感情を口にする率直さも好ましく思っているがゆえに、微笑に負の変化が差すことは無かっただろう。ただ否定も肯定もすることなく、続く言葉に瞳を細める。)まぁ、僕らはその為だけに存在しているようなものだからね。……こちらこそ、真剣に聞いてくれてありがとう。(重ねる礼の声はぬくもりを伴ってやわらかい。彼女からすればにわかに信じ難い話ばかりだっただろうに、懐疑の言葉ひとつ洩らさず耳を貸してくれたのは、否定されることも覚悟していた分随分とすくわれた心地であった。挙がった質問の内容には、僅かばかり虹彩をちいさくしたけれど。)あはは、そうだなぁ……僕たち刀剣男士は君が思うよりたくさんいるんだ。名前が似通っているものもいてね。区別しやすい部分を呼んでいたように思うよ。僕の場合は「清麿さん」とか。(師から頂戴した一字からつけられたその名は、他刀と混同されることもない。果たして主がそんな事を意識していたかは与り知らぬ部分なので、確かなのはその呼び方くらいのものだ。懐かしむように双眸を伏して、のちに。)君はとても僕たちを大事にしていたから。職場の同僚、というより、まるで家族のようだったよ。……あぁ、そうだ。(ふいに、なにかを思いついたように立ち上がった。緩慢な動作ゆえ驚かせはしない筈だけれど――彼女の前へ歩み跪く。同じくして、恭しい運びでその片手を取ると、両手で包む込んだ。)僕たちが遠くへ行く時には、こうして手を握って見送ってくれたんだ。無事を祈って。……人ではない刀剣男士相手に、おかしなものだと思ったけれど。とても、心優しい“主”だったよ。(浮かぶ微笑みはどこか寂寞を滲ませながら、それでもその瞳を覗く際には穏やかさが戻っている。そうっと手を離したならば再び立ち上がり、)もう陽が暮れるね。途中まで送ろう。(学帽を被り直したのち、微笑みかける。)
02/15 23:59*61
(立ち上がった彼のしなやかな所作に目を奪われて、片手へ伝わる感触に鼓動が跳ねた。何も知らなければ、甘やかなときめきだったかもしれない。自分を深いところから揺さぶり、奥底から湧き上がる熱いもの。目に映る全てがとてもゆっくりに見えた。強く突き動かされる心が口を利く。)清麿さん!(飛び出さん勢いで立ち、今度はこちらが彼の手をすくいあげようとした。叶うならば先刻の仕草を真似て、彼に温かさを返してみたい。そんな寂しい顔をしないで――喉まで出かかった言葉を詰まらせて視線を落とす。彼にそんな顔をさせてしまったのは他でもない自分なのだと分かってしまった。早くなるばかりの鼓動を携えて、恐る恐る彼を見上げる。)……私を迎えに来てくれたんですね。ありがとうございます、清麿さん。(大事なひとに、家族に呼びかけるような親愛な響きをもって、まずは謝罪よりも感謝を伝えることを選んだ。結んだ唇から顔を綻ばせていく。どうして気付かなかったのだろう。帽子や白手袋をはじめ黒を基調とした服装は、彼の戦装束を彷彿とさせるばかり。)皆さんは元気にしていますか。……今すぐ本丸へ帰るべきなのかもしれません。でも、少しだけ待ってもらえませんか。ちゃんと両親と話をしておきたいんです。(申し訳なさを感じながらも、臆することなく願い出る。先程、彼がくれた助言を無駄にしたくなかった。そして、いじけた子供のような自分とけじめをつけ、胸を張って皆の元へ帰りたい。夕日が遠のき夜の帳が下り始めても明るい街並みを彼と歩いて、今日は生家へと戻ろうか。そうして別れ際にはおつかれさまですと労いの言葉に加えて、もう一回だけ迎えに来てくださいと笑顔で手を振っただろう。)
02/16 20:33*67
(声こそ出さなかったものの、彼女が立ち上がった際には大きく瞬いただろう。かつてのように名を呼ばれ、一度離した手に今度は追いかけられて包まれる。伏した睫毛が震えたような気がして、呼び掛ける声が「主?」と呼称を誤魔化すことを忘れる。案ずるような眼差しが、微かに揺らいだのは、)――……主。思い出したのかい?(そのやさしい声音は平和な世にあっても変わらなかったけれど、それでも込められる想いの違いが分かった。蕾が綻ぶような穏やかな笑顔も、慈しみを湛えた新緑の瞳も――嗚呼、彼女が帰ってきたのだと。眩いものを見るように瞳を細めた。)うん、元気にしているよ。だから心配しないで。……焦らなくてもいいんだ。僕はね、君に会いに来たけれど、連れ戻しに来たわけではないんだよ。(眠っていた記憶に急かされるような彼女を前に、努めて静やかに、柔らかに語り掛ける。伝う言葉の本意を語るのは、きっと今ではない。その思いや考えを尊重したいと願う気持ちは、彼女の元へ身を移した時からずっと変わらないこと。ゆえに、両親と話を、という意気込みには快く頷いて「たくさん話しておいで」と背を押すように。茜に染められていた帰路は今や街灯や電光に照らされ始め、公園へ入る前よりも明るくなっていた。真の闇の消えたこの世界で生きる少女と並び歩き、主が離れていた間の本丸の様子を語り聞かせる一方で。その心は晴れやか、というわけではなかった。『迎えに』と乞われたのなら、そうするだろう。真似るように手を振って、その背が自宅へと入って行くのを確かに見届けたのなら、暫し立ち尽くしたまま。やがて鳴り響く端末の音に身動きを取り戻したなら、暗がりの道へと溶けて行った。)
02/16 23:04*70