主君、お迎えにあがりました。

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……―主さん、(自分たちの主は学生だった。ならば学校をあたっていけば何かしら情報を得ることが出来るのではないか。与えられた端末を駆使して学校をリストアップしていったけれどあまりにも膨大な数で。あとは己の勘を信じひとつずつ気になった学校に張り込むのを続けること数日後。やっと見つけたその人が、数メートル先にいる。自分が知っている審神者より控えめな、それこそ本丸が始動して最初の頃のような引っ込み思案な雰囲気だけれど、確かに自分の主だ。見間違うはずがない。思わず駆け寄ってしまいたくなる衝動を唇を噛み締めぐっと抑え、なんでもないような顔をして歩みを進める。そして横をすれ違う瞬間に、彼女の制服のポケットから気付かれないように手際良くハンカチをくすねれば、それを握り締めて。今落ちているのに気付いて拾いましたと言わんばかりに一度しゃがんでから立ち上がり、彼女の元へと駆け寄った。そしてその肩を控えめに指先でトントンと叩いて、)…すみません。これ、落としませんでしたか?(掌の上に彼女のハンカチを乗せれば、僅かに首を傾けて。)

02/09 15:24*5

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(部活動には所属していない、それ故に授業が終われば勉強のために図書室に残るかまっすぐ家に帰るかの二択だ。今日は後者の日で友人たちとはしゃいだ声で放課後の予定を言い合う同じ学校の生徒たちの波の中、バス停へ向けて足元を見ながらひとりで静かに足を進めていた。一瞬風が吹いて髪が揺れる、自然と閉じてしまう目を開いて再び歩き出して少し、不意に掛けられる声と肩を叩く指に眼鏡の下の目を瞬かせた。静かにそっと振り返る、差し出されている掌にあるそれは確かに見覚えがあって。)えっ……あ、私の。ごめんなさい、落としちゃったみたいで…ポケットに入れてたのにな…。(確かめるように制服のポケットを探ってみると当然そこには何もない、不思議そうに首を傾げながらそっとそれを受け取って表面を軽く叩いた。そうしてポケットへ納めた後はたと顔を上げて申し訳なさそうに視線を揺らし。)えっと、あの、すみません、今のは…他意があるわけじゃなくて…。落ちてたって聞いたので、つい、ごめんなさい…拾って下さってありがとうございます。(無意識とはいえ失礼な動作であったことには変わりなくついそんな言葉が口をつく、一言「ありがとう」と言えば良いだけなのに余計な自己擁護が出てしまう自分に目を伏せた。)

02/10 00:15*15

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(何かきっかけが無ければ声を掛けたとしても警戒されて、それで終い。それは審神者が少しずつ変わっていくのを見て来たからこそ、手に取るように分かった。話しかける理由として自然なきっかけを作り出す、その方法が例え邪道だとしても致し方ないと思ってはいるが――やはり狼狽える姿を見ると良心の呵責に少なからず苛まれるけれど、先ずは糸口が上手くつくれたことに喜ぼうか。)ハンカチもちょっと散歩でもしたくなったとか…なんて。でも良かったです、ちゃんと主さん…っえと、ハンカチの持ち主さんのところに戻れて。(無意識に口から滑り落ちた呼び名を誤魔化し、動揺を表に出すことなく堀川らしい人好きのする笑みを浮かべたまま、手を胸の前で振り、「気にしないで」と添えた。)大丈夫ですよ。全然、気にしてないので。本当に。ちゃんと入れていたものが気付かない間に落ちちゃって、どうして?なんで?ってなったこと、僕もありますから。吃驚しますよね、あると思っていたものがいきなりなくなってたら。……だから大丈夫です。(目を伏せる姿を見詰ながら、少しでも安心してくれたら良いと努めて優し気な声音で語り掛けて。――“僕は本当に吃驚したんですよ。急にいなくなってしまった主さん”声に出すことは出来ない代わりに胸中で呟く。視線を逸らさず彼女を見つめるその面には哀愁帯びた様な将又安堵のような、そんな何とも言えない表情が浮かんでいた。)

02/10 22:44*22

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(白いハンカチは毎日持ち歩いているもので他に同じものがたくさん存在している量販品に他ならない、けれど自分のものだと認識しているからこそ落としてしまったと思っているそれをわざわざ声を掛けてまで渡してくれた彼に感謝を伝えなければと思うも、ついて出る謝罪や自己擁護に対して気を遣わせてしまった事に眉を下げた。様々な事を気にしてしまいがちな自分のフォローをしてくれているような言葉の数々にふと、何か懐かしいものが胸中を過ぎる。首を傾げながら手にしていた鞄の持ち手を強く握り締め。)そんなに浅く、入れていたつもりはなかったのでびっくりしちゃって。無くしちゃったら同じものを同じお店で買えば良いだけだと思うんですけど、…私が選んで私が買ったハンカチはこれだから。拾ってもらってなかったらきっと、家に帰って悲しくなってたかも。(良かったと浅く息を吐く。訥々と言葉を吐く間に少しずつ持ち上がる視線はやがて見知らぬ制服を身に付けた彼の顔まで上がっていく事だろう、見覚えがないはずのその顔に何か既視感めいたものが走り目を瞬かせる。それは彼の顔へ浮かぶ表情のせいであったかもしれないし、ただの気のせいかもしれなかった。それでも口はあっさりと微かに浮かんだ疑問を零す。)……あの、…どこかで会ったこと、ないですか。(記憶の中にあるわけではない、けれど。思わず飛び出た言葉に慌てて片手を振って見せた、変な事言ってごめんなさい、そう添えて。)

02/12 11:53*33

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(邪道はお手の物。正攻法ばかりでは成果を得られないことを知っているからこそ、彼女に明かす事はしない。音に出来ないごめんなさいの一言の代わりにゆっくりと瞬いた―ちゃんとした謝罪は全てを思い出した彼女と無事本丸に戻れてからする、そう決めて。)…ああ、よかった。それなら僕は君が悲しくならないで済んだお手伝いが出来たんですね。僕、こう見えてお手伝いが得意なんですよ。(本丸でもよく言っていた、主さんお手伝いなら任せて、と。そんなに前のことでもないのに懐かしい様な気がして切なくて。眉尻を軽く下げたのだが、零された言葉に目を大きく見開いた。)大丈夫です、変な事じゃないです…!(彼女の謝罪の言葉に対して、食い気味に一歩前へ踏み出し距離を詰めてしまったのは反射的。もしかして驚かせてしまったかもと我に返れば、申し訳なさそうに小さく頭を下げたけれど、詰めた距離分はそのままで。そして彼女の同じ高さにある視線を合わせるように彼女の顔を優し気に細めた瞳で見つめると、一度唾を飲み込んだ後、ゆっくりと口を開けようか。)…どうしてそう思われたんですか?教えてください。僕も初めて会った気がしなくて……なんて、口説いてるみたいですね。あの下心はなくて、純粋に理由が知りたいなって。(少しでも警戒心を弱めて欲しいという思い遣りから苦笑と共に軽口を添えて。―自分に対して既視感を抱いているという事は、切欠になるやもしれない。彼女の一言一句一挙一動を逃さないと言わんばかりに集中しながらも、顔には笑みを携えたまま彼女の言葉を待とうか。)

02/14 08:17*49

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(手伝いが得意、とそう口にする彼は成程確かに、見ず知らずの他人が落としたハンカチをそのまま見捨てる事がない辺りからもきっと世話好きなのだろうと窺える。そんな彼の眼が大きく開かれた事で自分の放った言葉の突然さだとかそんなものに気が付くけれどそれを撤回するより早く何処か前のめりに返された声に僅かにたじろいだ、一歩分縮まった距離、常であればその距離に同じだけの距離後ずさるのだけれど不思議と彼との距離が縮まる事への違和感は込み上げてこない。それは柔らかな視線のせいかもしれないし、どこか懐かしさすら思わせるような声色と雰囲気のせいだったのかもしれないけれど。)……ええと……、自分でも、良く分からなくて…。貴方の名前も思い出せないけど何処かで会った事があるって思って…それで。(訥々と溢す言葉は理論だっているそれではない、思いつく言葉がそのまま口から零れていくようなとりとめもないそれ。上手く言語化出来ないもどかしさが胸中を過ぎり思わず眉間に皴を寄せてしまうけれど何かを思い出せそうで、ついさっき収めたばかりのハンカチをポケットの上から静かに押さえた。合わせられなかった視線を少しずつ持ち上げて海を映したような瞳を見る、確かに覚えがあるのにまるで蓋をされているかのように決定的な記憶は無くて酸欠の金魚のように何度か口を開閉させ。人の目を見る、そんな当たり前の事すらできなかったはずの自分が彼を前にすると当たり前のように動作へ起こせる事に僅かな驚きを抱きながらも思い出そうと静かに見つめた。)……私、貴方を知ってると思う。(溢した言葉から敬語の影が消える、それが自然であるかのように。)

02/15 19:42*59

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(彼女が失った記憶の全てを一気に思い出して欲しいだなんて、そんな欲深な事は望まない。少しずつで良いから散らばった欠片を拾い集め、合わさていければそれで良い。 “終わり良ければ総て良し”―過程がどうであれ、最終的に本丸に戻ってきてくれれば、それで良いのだ。先ずは警戒されないことを第一に僅かでも距離を縮められたらなんて思っていたのに、早々に最初の欠片を拾えたようで胸が高鳴る反面、期待し過ぎてはいけないと自制が働く。高揚を押し留め、努めて冷静にを心掛けていたけれど――交わる視線に、消えた敬語。まるで消える前の審神者がそこに在る錯覚に陥る程―泣きたいような衝動に駆られるのを握り締めた両手の拳に力を入れる事で耐える。そして身体を震わすのは押し留めたはずの期待からか。)僕は…、僕は――…堀川です。堀川国広。(名ひとつ述べるのにこんなにも緊張する。笑顔を維持したいのになり損なった表情は、泣くのを耐えるかのように眉間に力が入った半端なもので、少々無様だったかもしれない。)…僕の話をあなたが信じられるかどうかはわかりません。夢物語だって思われるかも。…けれど、聞いてください。(早鐘を打つ心臓を落ち着けるべく深呼吸をする。同じ高さの視線は真っ直ぐ彼女を捉えたまま、一度瞬き――そして次に瞳を開いた時。彼女が海を映したようだ評してくれた蒼に、強い意志を宿らせていた。)主さん。僕は本丸の皆を代表してあなたを迎えに来ました。(凪いた海のような静けさの中にも確かな響きを持って彼女に告げるのは、此花本丸の堀川国広がこの世に降り立った理由。)

02/16 10:25*64

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(不思議だった。女子校育ちで同じ年頃の、少なくともそう見える異性と話したことなんて数えるほどしかないというのに目の前の彼とは何故だか普通に言葉を交わせているようで。一体どこで出会ったのだろう、記憶の中を探るけれど中学校でも小学校でも彼のような姿は思い出せない。けれど、)――…堀川くん。(穏やかな笑みが崩れて自らの名前を口にする彼の顔が少し歪んだように見える。小さく呟いた彼の名前はそれでもやっぱり不思議と口に馴染んで、声に出した一度目と声に出さない二度目三度目とその呼び名を繰り返した。いつの間にか周りの音は耳に入らなくなっていて、ここが通学路の途中だという事も忘れてしまう。そうして今立っているこの場所に彼と自分ふたりきりのような錯覚さえ覚える中でその瞳と同じく凪いだ静かな声が紡ぐそれに、頭の中で甲高いサイレンが鳴り響いた。聞いてはいけないというように、思い出してはいけないというように。頭の中で響くそれに固く目を閉じた時間はきっと数秒程度だっただろうけれど、体感では何時間もそうしていたような感覚さえあって。突然黙り込んでしまった自分を彼はどう見ただろうか、やがて頭の中のそれが幾らか静かになる頃、はっきりとは分からないけれど彼は自分を"迎え"に来たのだとそれだけは理解出来赤い眼鏡の下で静かに眉を下げた。)……堀川くん、…私、帰らなきゃ。(ようやくそれだけ絞り出す。どこに帰るというのか、発した自分でも家族の待つ家だと断言できないそれはほんの僅かに記憶の蓋が開きかけたことを示唆している。けれど今は、家族の待つ家へと帰らなくては。)……また会えるかな。(そう言って頭を下げ、彼の返事を待つより早くバス停へ向けてと逃げるように駆けだした。)

02/16 23:51*71

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――…はい。(在りし日のことを思い出す。「堀川くん」と、そうやって自分のことを呼ぶ響きは記憶がないと言えども変わらない。胸が熱くなる感覚に、唇を噛み締めた―そうしなければ込み上げてくるものを抑えることが難しいかったから。彼女に呼ばれれことが好きだったとは、失ってから初めて気付いたことだった。本丸の襲撃に耐え、これから立て直して頑張って行こうと決意と新たにしたところに齎された消失。もう会えないのかなんて頭を過った最悪を打ち消し、焦燥感に駆られながらも必死に令和の世で探し回った相手が目の前にいる。改めて彼女の姿を瞳に収めれば、また一歩踏み出し距離を詰めた。)主さん…帰りましょう、本丸へ。皆、あなたを待っています。(切実さを帯びた声音は必死に彼女に語りかけるけれど、固く閉じられた彼女の瞳が開かれたとき、自分の行いが性急過ぎたと気付かされた。思わずその場に立ち竦んでしまった間に駆け出し離れていく彼女の姿。その背に向かって捕まえようと伸ばした手は行き場を失い握り締めた後、力なく重力に従って落とされた。)…っ主さん、(手を伸ばせば触れられる距離だったのに、届かなかった。失態を悔やんだところでやり直せる訳がなく、時間遡行したいと願うのは一種の現実逃避か。耳元を彩る優等生然とした格好とは裏腹な華やかな赤い耳飾りを握り締めるように掴むと大きな溜息と共にその場にしゃがみ込んだ。)…ごめんなさい。僕、上手くやるって言ったのに…。(泣き言めいた懺悔の言葉を零したけれど、いつまでも落ち込んでいる訳にはいかないから切り替えるように両頬を叩けば、ゆっくりと立ち上がり彼女が駆けて行った方向を見据えた。決意を瞳の奥に宿らせ、胸の辺りを握り締めて。)また会えるかな、じゃなくて会います。会いに行きます。主さん、僕はあなたを迎えに来たんだから。

02/17 23:20*79