主君、お迎えにあがりました。

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(彼女が切り取りそうな景色を探して歩く。青空とビル群のコントラスト。暮れなずむ夕陽と誰かの帰り道。路地裏の黒猫。写真というひとつの芸術に対する造詣は深くないが、彼女の作品はそんな疎い一振りにさえ、飽きさせない魅力を有するものだった。本丸襲撃において飾っていたものたちはその多くが焼け落ちた。無事だったもののうちの一葉を胸元に仕舞い込み、今日とて捜索にあたっている。すれ違ったのは単なる偶然に過ぎない。危うく素通りするところを慌てて振り返り、その背に声を投げ掛けた。)なぁ、そこの……あんた!カメラ持ってる、そこの人だよ。……あー、えっと……。(咄嗟に掛けただけの科白だから、正直カメラを持っているかどうかは目視できないままに。当てずっぽうの発言でも、ひとまずは彼女が立ち止まりさえしてくれるならよかった。二言目を全く考えていなかったから、がしがしと後頭部を掻きながら逡巡する間があり、そうして。)……被写体……なんだ……もでる、だっけ?探してたりとかしねーか?(何でもいい、注意を引いて、少しでも関心を抱いて貰えたら。レンズを向けられた過去を思い返しながら、問うてみた。サングラスの奥から、控えめに茜色の双眸を覗かせて。)

02/09 14:49*4

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(ずっと切り取りたい“何か”を追い求めて、シャッターを切り続けている。空と建物の隙間に、伸びる影の狭間に、路地裏の暗闇に――その何処にも答えは無かったのだけれど。そうして日々を過ごすことは最早ライフワークともなっていて、何もない休日ともなれば朝からカメラを携えて外へ出ることは自然な選択だった。そしてそれは、道行く人々に逆らい歩きながら徐にレンズを覗き込もうとした瞬間の出来事。突如よく通る声が背中にかけられたなら、反射的にその足を止めて振り返るだろう。)――……、……私?(声の主たるその姿を見た瞬間、女は思わずカメラを構えそうになった。あまりにもそこにいるだけで絵になるような、そんな雰囲気を持つ美丈夫がそこにいたのだから。既の所で構えはしなかったものの、一拍置いて怪訝そうな声は漸く吐き出される。不躾ながらにもその出で立ちを爪先から顔まで眺めつつ、彼の口から出た単語には不愛想な表情のまま軽く頷いてみせようか。)モデルは、まぁ……してくれるなら有難いけど。……まさか、あんたがしてくれるわけ?(片眉を上げるようにして問うたなら反応は如何なものか。いずれにせよ、生憎この女の中に物怖じという言葉はないもので、一歩彼に向って歩みを進めるだろう。そして見上げながら、片手でカメラを持ち上げ示しては静かに答えを待っていた。)

02/09 18:43*7

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(──やっと追い付けた。しかしこの胸の感慨など伝わる筈もない。相対して、確かに記憶を失っているのだと突き付けられ、右の拳に自然と力が入る。ともあれ求めた人が無事に呼び止められてくれたなら、自身も一歩二歩とおおきく距離を縮め、かろく笑った。出会った頃を思い出すようで、つい懐かしむように瞳が細まるだろう。)おー、そうそう!俺が立候補。割と撮られ慣れてっから、申し分ねえと思うんだけど。(両手を広げるのは、好きなだけ見るようにと促す所作である。写りの良さはあくまで自称で、彼女の腕があってこそとは思うが、必要以上に違和感を与えたくはない。)ついでに、あんたの足にもなれるぜ。ばいくで乗せてってやれるとこなら、どこにでも。(今は駐輪場に預けてはいるが、現代の移動手段として本丸から持ち出した機体がある。まずは出来うる限り、彼女に提供できるものを差し出そう。)……その代わり、俺にちっと時間をくれよ。対価はそんだけ。どーだ?(その報酬としての要求は、不自然なくらい最低限だけれど──この男にとっては、切実に求めている機会だった。口振りだけは軽いが、表情は彼女に迷いが見えれば頼むと頭を下げそうな勢いだ。)

02/09 22:49*12

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(遠慮など欠片も無い、とばかりに距離を詰められたとて、不思議と嫌な気はしなかった。次いで両手を広げるものだから、ついまじまじと見てしまうのはカメラマンとしての性であるのやも。学生服に対して不釣り合いなサングラスには些か首を傾げるものの、そのスタイルも雰囲気も、極めて己の撮りたいイメージに近いような――そんな漠然とした感想を抱いては小さく頷いていた。)まぁ、確かに撮られ慣れてはいそうだけど。……バイク?へぇ、あんたバイク乗るんだ。……ふぅん。(彼が快活に話す中、“バイク”という単語には些か瞠目して脳裏にその車体を想像してみる。乗せてくれるということに関しては勿論のこと、彼とバイクという組み合わせが非常に絵になる気がして、女の口許にはほんの僅かに笑みが湛えられた筈だ。その流れで交換条件が提示されたなら、一拍の後に己のウルフヘアを片手で徐に掻き上げながら彼の方を見遣るだろう。)……私に都合が良すぎる気がしてならないけど……乗った。あんたが悪い奴には思えないし、良いモデルは逃したくないから。(そんな冗談めかした本音を零しながらカメラを首に下げ直し、改めて彼を見る。いそうでいない、そんな雰囲気は意図的に探したとて見つからない逸材だと直感的なものが告げていた。そうしてまたひとつうんと頷いた後、徐に手を差し出そう。勿論、交渉成立の握手のつもりで。)私、滸。本名じゃなくて、作品に名前入れする時はこの名前。……ちなみに、あんたのことは何て呼べばいいの。

02/10 00:18*16

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(どうやらスタート地点には立てたようだ。よっしゃ、と小さく呟いて人懐っこく笑っては、喜びを隠そうともしなかった。)俺にとって不都合もねーよ。撮られるの、結構嫌いじゃねーからさ。撮った写真、見せてくれたら嬉しいってくらいかな。……あんたが気に入った写真……現像?したやつ。(正しくはあんたに、という装飾が付きはするのだけれど。その点はさておくとしても、今日限りにならないようにさりげなく次の機会に繋げようとして。差し出されるのは、己からすれば新しく作品を生み出し、そして力添えしてくれる大切な手だ。先までの強引とも捉えられない態度とは反して、やさしく握り返そう。)んじゃ……滸で!よろしくな。俺は豊前。……九州の地名と同じっちゃねぇ。(真名を伝えられたらどうすると一瞬妙な緊張が走ったが、杞憂だったようだ。知る呼称と重なれば、当然過去には呼び捨てたことはないけれども、親しげな調子の勢いに任せてしまえ。自身の名の響きが正しく伝わるように、訛りはややわざとらしい発音をしたろう。)そうと決まれば、バイク取りに行かねぇと。ちーっとばかし歩いた先の駐輪場に預けてんだ。気になるだろ?(目敏く、己とバイクの取り合わせに関して、先ほどの僅かな表情の変化も見留めているから、笑みに悪戯な色が濃くなる。煩わしいほどの距離ではないからと、彼女にも伴って欲しいと頼みながら、その道中。)……写真、ハマった切っ掛けとかあったりすんの?(何気ない世間話として。問い掛けたのは、何も今抱いた疑問ではなく、前々からあたためていたそれだった。)

02/11 03:40*24

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(わかりやすく喜びを表す様やその屈託の無い態度は、まるで旧知の仲であるかのような柔軟さで。それが悪くない、と思ってしまうのもすっかり彼のペースなのやも、と女は徐に頬をひと掻きしてみせるだろう。)現像した写真くらい、別にいくらでも見せるけど。……ふ、……あんたって、なんか変なヤツ。(今まで写真に対しこんなにも積極的なモデル志望など他に知らず、けれど「見たい」と素直に伝えられることが嬉しいことも事実。そうしてつい可笑しそうに小さく笑いながら、優しく握られる手の感触に茶色い双眸を細めていた。同様に齎された名前を「ん、豊前」と呼び捨てにて繰り返せば妙に口馴染みが良く、訛った響きに対しても納得したように軽く頷いた。そのまま悪戯な音色には片眉を上げるように見遣り。)……まぁね。あんた程の男前の愛車らしいし、撮り甲斐のあるやつだといいけど。(そんな憎まれ口とも取れるようなニュアンスの言葉を返しながら、駐車場までの道を共に歩き始めようか。その最中問い掛けられた内容には、さして疑問も抱かずに前を向いたままで答えていく筈だ。)……人と関わるのが億劫で、景色をぼーっと見てたのが始まり。景色は別に、話さなくてもただそこに在るでしょ。……まぁ、今は人物の写真も――、(そこまで口にして、思わず言葉を切った。確かによく撮っている――いた筈なのだ。仲間と揃っての笑顔、畑で土に塗れた姿、こちらに手を振る影――果たして一体“誰”を撮っていたのか、その記憶は確かにあるというのに具体的なことが思い出せずにいる。靄のかかったような思考に思わず軽く頭を振ったなら、徐に彼の方へと顔を向けて。)……撮ってる、かな。 ……そういうあんたは?そっちこそ、よく撮られてるみたいだけど。

02/12 02:44*31

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楽しみにしてる。……。あ、今のは俺でもわかんぞ。しゃったーちゃんすだった。(約束を取り付けて満足げにひとつ頷いたと思えば、一瞬何かに気を取られたかのように瞬きが増える。しかし違和感は抱けても言及をさせない程度の空白に留め、すぐにくしゃりと相好を崩して見せる。取り戻せる僅かな可能性に縋っている現状で、彼女の笑顔も切り取っておくべきだったのだとひと匙の後悔が胸を焼いた。はぐらかすのも兼ねて、指で四角を形作り揶揄を飛ばした。)はははっ!面構えは俺より色男だよ。つっても、走ってる時のがかっけーかもなぁ……。動いてるもんでも、綺麗に撮れるもんか?(応酬が心地よく、朗らかな笑い声が空に抜けてゆく。己は相棒の疾さを気に入っているが、見目も人の目を惹く程度には魅力的だと捉えている。双眸細める横顔はその車体を思い浮かべているのか、楽しげだ。素人ながらに、動く物の方が枠に収めるのは難しかろうと考えを及ばせながら。)──……そっか。それを芸術に昇華してるんだもんな、大したもんだよなあ。(あんたらしいよ、とは未だ伝えられまい。言葉を交わせば交わすほど、すっかり彼女の中からあの三年が抜け落ちているのだと知らしめられる。手探りなあまり、問い掛けた癖にありきたりな相槌となったか。語り手が譲られれば、一旦腕を組み思案を挟んでから、薄い唇を開く。)俺に“写真”ってもんを教えてくれた人が、よく撮ってくれたんだよ。仲間と馬鹿やって笑ってるところとか、いつまで経っても慣れねぇ畑仕事に四苦八苦してるところとか、遠くから見つけて手を振ったところとか。思い出を残すのに、とっておきの手段なんだって……教えて貰ったんだ。(本丸を歩く度に辿った、仲間たちとの軌跡を並べては、崩さぬ笑みに少しだけ寂寥が滲んだ。)

02/12 23:46*39

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ちょっと、撮られる方は柄じゃないって……。(シャッターチャンス、と揶揄されたことではじめて自然と笑みが零れていることを自覚する。思わず口許を手の甲で隠しながら隣へ視線を滑らせて、もう片手で遮るように手を振ってみせるだろう。)それ、相当な別嬪ね。……そんなの、シャッタースピードを上げれば速いものも止まってるみたいに切り取れるから、平気。(笑い声も応酬も、ピタリと噛み合うようで心地が良い。楽しげな様子はカメラに収めるべきだったやも、なんていうのは秘かな考えだったが、性能に関して得意げに言葉を紡いだなら、己も指で四角を形作っていた。ただ、ぼんやりと投げ掛けられた称賛に対しては「……別に、撮りたいもの撮ってるだけ」と呟くに留まるだろうが。)へぇ……それは、なんていうか……幸せな光景だろうね。多分、撮ってる方が覚えておきたいからそう言ったんでしょ。そんなあんたを撮ることが楽しかったんだろうなって想像ができる。……同じ撮り手として、羨ましいくらい。(静かに瞼を下ろして、ふと夢想する。出会ってたった数分足らずの相手であるのに、彼が口にした光景は不思議と思い浮かべることが出来た。想像の中で幾度かシャッターを切る。そうしてゆっくりと瞼を持ち上げたなら、視線は再び彼の方へと戻されるだろう。)……次、その教えた奴に会ったらツーショットでも撮る? 腕の良いカメラマンなら、ここにいるけど。(涼しい顔のまま己を指差してみせる様は少々饒舌になった延長線か。やがて「……ちょっと話し過ぎた、」なんて呟いて咳払いをしては首から下げるカメラを持ち上げよう。そうして徐に彼の方へレンズを向けたなら、パシャリと一度シャッターを下ろした。)ごめん、試し撮り。……ほら、(後付けの軽い謝罪と共に一眼レフの操作画面を見せたなら、彼の反応は如何に。駐車場までの道すがら、ちょっとした話題の一助くらいにはなるといい。)

02/13 00:48*41

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あんたも映えそうなのに。俺がしゃったー押してやろっか。……なーんで隠しちまうんだよ。もったいねえ。(へったくそな写真になるだろうけどな、と笑ったところで、写真に収めるどころか視界からも逃げられてしまえば、不服げに落として。しかしあくまでも軽い口振り、やや面白がっている節もあるか。「止まってるみたいに……マジかぁ……」とぼやく男は、話を聞けば聞くほど、写真とはただ指先でひとつ押せばいいというものではないとわかり、相槌までも関心しきりである。)そうかな。そうだったらいいんだけど。……まずは滸にも、俺を撮るのが楽しいって思わせてやんよ。(まるで彼女自身の言葉に錯覚してしまいそうな心地になり、面食らって一瞬上手く息を吸えているかわからなくなった。覚えておきたい。忘れたくはなかった。そう思ってくれているとしたら、今も帰りを待つ仲間たちがどれだけ救われるだろう。その横顔は胸中からすれば穏やか過ぎる笑みを湛え、瞬いた次には自信に溢れる明朗なそれとすり替わる。)撮る!とびきりの笑顔期待してっから。(よろしく、と約束の指切り代わりに握り拳を彼女の方に差し出し、軽くぶつけたがる。語らいが弾むのなら、「いーいじゃねぇか!」と喜ぶ他なく、ちょうどその様が彼女に切り取られることになった。)いいよ、好きに撮りな。……あんたには俺はこういう風に見えてんのかな、と思うと不思議な気分。(見せてくれるのなら興味深くしげしげ眺めて楽しみつつ、やがて一旦の目的地へと辿り着く。ちょっと待ってな、と駆け足で立体駐車場の中に姿を消し、少ししてバイクを押し歩いてくる。重厚な黒を基調としたボディに差し色の緑が鮮やかな、スポーツスタイルのオートバイ。サイドスタンドを立てながら、ニンジャと呼ばれている機体なのだと豆知識を披露するだろう。)……ま、とりあえず乗り心地試してみねぇ?写真撮るなら……海の方かな。どうよ?

02/14 01:50*46

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(いくら撮られ慣れていないからとはいえ、勿体ないという言葉にはつい「……うっさい、モデルのくせに」と照れ隠しのような悪態が零れる。そんな戯れの中、感心の滲む声には一転してまた少し口許を緩めていた。どうにも感情を引き出すのが上手い彼のペースのままに、会話は続いていく。)きっとそう。写真撮る奴なんて、自分が撮りたいから、残したいから撮ってる奴ばっかりだし。……なんか、あんたが言うと本当にそう思わされそうな気がする。(隣で彼が何を思っているのか、それを推し量ることはできない。けれど願わくばそうであればいいと珍しくも言葉を重ねていた。次いだ約束にもそれは同じ。)……わかった、任せて。(口許に殊勝な笑みを湛え、彼の拳目掛けて己のそれをぶつける。そうして許可が下りたことを良いことに、「そう、これが私目線のあんた」なんて言いながら、目的地までの時間を過ごしただろう。駐車場にてその場を後にした彼が戻ってきたなら、ふと顔を上げ──そして瞠目を示す。先に語られた通りそれはスポーティで『色男』と称するには十分なものであったし、ニンジャと呼ぶにも相応しいものだと納得もした。けれど、妙な既視感があった。彼がそれを連れている様を、前にも何処かで──、)──えっ? ……ああ、うん、お言葉に甘えて。(漸く弾かれるように顔を上げたなら、既視感の正体を探るより先に首を縦に振った。そして提案された行き先を思い浮かべて静かに瞬きをひとつ。)海か、……うん、良いじゃん。じゃあ……連れてって、豊前。(僅かな笑みを湛えながら、馴染みの良い名を口にする。カメラをケースへと仕舞い込み、落ちぬよう横下げに。寄越してくれるならばヘルメットを受け取って、彼の準備が整い次第後ろへとお邪魔しようか。そして問い掛ける声色は少々恐る恐るといったものである筈だ。)……持つなら後ろのグリップか、あんたの腰か……走りやすいのってどっち?

02/14 07:03*48

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(憎まれ口に何が隠されているか、この男にはお見通し。これぽっちの悪気もなく、愉快そうに笑い飛ばすだろう。)そんな奴ばっかかぁ……いいな。俺はさ、好きなこと楽しくやってる奴を見るのが好きなんだよ。……滸も、そうか?今も、残したいもんを撮れてる?(だからこそ被写体を買って出て、楽しませるつもりでいる。「大船乗ったつもりでいろよ」と胸を張るその裏では、彼女の現状が満ち足りているものなら、無理に連れ戻さなくてもいいのではないかという懸念もあって──隣を伺いながら、首を傾げよう。拳で結んだ約束が果たされるかどうかは、まず彼女の記憶を呼び覚ませるかにかかっている。思い出す切っ掛けとして、少しずつ奥底に眠っていると思われる記憶を刺激するところから始めるべきなのだろう。確信にいきなり触れないのは、余計な負荷をかけない為だ。)……おう。こいつの疾さも実感して欲しいとこなんだが、流石に安全運転で行くぞ。(帰ってきてはじっとその様子を注視していたが、未だ戻る様子はなさそうか。何度か遠乗りに誘ったことも、まだ埋もれてしまっているらしいと判ずれば、フルフェイスのヘルメットを差し出し、跨る際は手を貸した。エンジンをかけグローブをつけている間に、後ろに落ち着いた彼女から疑問が飛べば、軽く振り返った。)走り易いのも乗ってて楽なのも俺の腰だと思うぜ。背中も風避けになるし。……ほら。(とんと腰を軽く叩き、遠慮なく身を預けられるように。)ちゃんと捕まってねぇと落っことすかも。(もちろん冗談であって、そんなことはあり得ないのだけれど。彼女の覚悟が決まれば、自身もヘルメットをつけて緩やかに発進するだろう。景色を置き去りにして、風を切り駆け抜けてゆく。安定した走りは、後ろに人を乗せるのも慣れていると思わせるに十分だったかもしれない。やがて辿り着くのはとある海浜公園だ。)降りれっか?(また手を貸そうと差し出して。)

02/15 01:30*55

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……やりたいことはやってるつもり。……けど、どれも本当に残したいものじゃない。ずっと探してるし、もう見つけてる気すらするのに……撮っても撮っても、何かが違う。 ──って、何であんたにこんなこと話しちゃうかな。困るでしょ、忘れて。(ぽつり、些か低いトーンで心中を吐露しながら、もどかしそうに眉は顰められる。やがてその取り留めの無さから片手と頭を軽く振ってみせては閑話休題とする筈だ。バイクと合流を果たした先、サングラスの向こうから視線を注がれていることに気が付かない程鈍感でもないが、煩わしいと思わないことも実に不思議だった。それどころか彼の手を借りて後ろへと跨った際も、何てことはなく腰に捕まることを提案されたことも、その全てに“そうあること”が自然だと思わされてしまう。故に、さしたる抵抗もせず冗談に対しては口端を上げて。)ははっ……落っことされたら堪らないから、ちゃんと捕まっとく。(手の甲で覆い隠しながらも自然に相好を崩しては、彼の腰を拠り所としよう。そうして走り出したバイクは颯爽と風を切り、二人分の体を難なく運んでいく。その爽快な心地良さ、身を守ってくれている彼の背中──それは女の中にあるひとつの疑問、或いは仮説を生むに値した筈だ。エンジンが停止し、辿り着いた先で手を差し伸べられたなら「ん、ありがと」とその手を取り降車しようか。そうしてヘルメットを外した先、漸く頬を撫でた海風に双眸を細める。)運転お疲れ様。……海、久し振りに来た。(ヘルメットを返却しながら髪を掻き上げ、数度瞬きを繰り返す。そして視線は海辺から彼へと自然に移されて。)……ねぇ、こんなこと言うの、安いナンパみたいで嫌ではあるんだけど。(そんな前置きは唐突であったやも。けれど道中、流れゆく景色を見ながらもずっと頭の中を占めていた疑問を、仮説を、口に出さずにはいられなかった。)──私たち、多分初対面じゃない。……違う?

02/15 07:13*56

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そっかそっか。ぐるぐる自分ひとりで考えてるより、口に出してみた方がうまく整理できることもあんじゃねぇかな。なんでも聴いてやっから、遠慮すんなって。あんたの話なら俺は聴きたいよ。(どちらかと言えば口下手に類されそうな彼女が、胸の内を吐露してくれることが素直に嬉しいのだ。「建設的な助言はできねえけど」と足した言葉の通り、優しく相槌を打って遣ることでしか力になれないとしても。あいも変わらずからっとした笑みのまま、何だって受け止めて見せるだろう。──走らせながら、後ろに乗せている感覚が過去の記憶と等しく、彼女が己の“主”であることを確かにしていた。到着し、ヘルメットを外せば一気に潮の香りがする。手を貸して二人並び立ち、砂利を踏み締めてはやっぱり楽しげだ。労いには軽く片手を挙げる形で応えて。ヘルメットを被る際に外していたサングラスを再び掛けては、)あんな高ぇ建物が立ち並んでんのに、しっかり海はあるんだな。(感じたことが割合そのまま口からこぼれ落ちがちであるから、この呟きもまた大したことのない感想だ。それ故彼女から何か差し向けられれば、うん?と傾聴するべく視線をそちらへ向けて、投げられた推測にゆっくりと双眸を瞬かせた。)……合ってるよ。(彼女から切り出されるのなら、嘘を吐く必要もないだろう。変に誤魔化さずにすんなり肯定する。)滸。俺はあんたを探して、遠くから来たんだ。あんたの帰りを待ってる奴が沢山いる。……つっても、そのことまでは思い出せてねぇんだろ?ゆっくり行こうぜ。(口振りからして全てを思い出せた訳ではないようだし、こればっかりは気が急いても仕方がない。肩をすくめながら、疾さ重視の男にしては徐な提案である。)──これだけは言っとくかな。俺に写真を教えてくれたのは、あんただよ。(彼女が羨ましいと言った相手の、あっさりとしたネタばらし。その割には、大切に、声色に言葉を乗せた。)

02/16 01:54*63

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(口下手で不愛想、それだけで嫌厭する人は必ずいるものだ。そんな対象の女ですら自然と言葉を口にしてしまう──彼はそんな引力のある男だった。聴きたい、という言葉に首肯を示しては「……ありがと」と小さく呟く。そんなやり取りにすら付き纏う既視感は、タンデム中もずっと離れることは無かった筈だ。──到着した先はちょっとした非日常。女もきっと同様に楽しげな空気を纏っているに違いない。)そりゃあそうでしょ、人間が自然に敵う筈ないんだから。(それは数多の光景をレンズ越しに眺めてきたが故の自論だが、今はさらりと口にするただの雑談、本題への枕詞に過ぎない。そうして切り出したのは突拍子もない、勘違いであれば恥ずかしい部類の問いかけであったにも関わらず、返ってきた肯定は随分と真っ直ぐなものだった。自ら問いかけたくせに、女の表情には驚きが孕んでいた。)……あんたが、私を探しに……。(復唱した音色は静かに、ゆっくりと。彼の言う通り、何もかもを思い出したわけではない。ただ、大切に手渡された真実の一端にはアーモンドアイを瞠目させ、どこか納得の色を映しながら唇は綻ぶだろう。)──……なんだ、羨ましいも何も、私の言葉だったってわけ? なら私、あんたやその待ってる奴らのこと、相当忘れたくなかったんだね。(どこかすっきりとした面持ちには自然な笑みが宿る。カメラケースをひと撫でしながら言葉は零れ落ち、やがて再び視線が持ち上がったなら、双眸は真っ直ぐに彼へと向けられる筈だ。)……豊前、あんたを撮らせて。それがきっと思い出すための一番の近道だし……、なんか今、すごく撮りたい気分だから。(そう言いながら半歩後ろへと下がりながら、ケースから相棒たる一眼レフを取り出そう。レンズの蓋を外し少しばかり設定を変えたなら、準備はすぐに整う。「ほら、笑って」そうやってファインダー越しに彼を見つめる女もまた、やわく微笑みを浮かべていた。)

02/16 19:33*65

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事情については、また話す。……説明ってのが、どうにも俺には向いてねぇんだが……あんたの悪いようにはしねえ。それだけは信じててくれ。(大雑把だが、考え無しではない。真摯を滲ませた声色は、彼女の生きる道を左右しかねない存在だと自覚があるからだった。)ま、そういうこったな。……そういや、とびきりの笑顔撮るって約束したよな。思い出したら、ふたり並んで撮ろうぜ。(ぶつけた拳に託した約束は、特に他意なく、単純に彼女の提案が魅力的だったから約したのだったけれど、結果的に彼女が写真に収まることになる訳だ。撮り手がいなくとも恐らく技術で何とかなるのだろうと当たりをつけた男は、純粋に遂げる日を楽しみに笑って。悪びれる様はこれっぽちもないが、こればかりは実際、悪戯心は少しもなかったので。)おっ、いいね。……俺も嬉しいよ。あんたが思い出したいって思ってくれてるなら、安心した。(一つ息を吐いて、思うより肩に力が入っていたことに気が付くか。ぐっと一度腕を伸ばすのは、余計な力みを除くための軽いストレッチとして。自ら言い出した割に、改めて向き合うと不思議とくすぐったくて、言われる前から口許は穏やかに緩んでいる。)好きなだけ付き合ってやんよ。……このポーズとかどーだ?(捜索中に女子高生から教えて貰った、いわゆる“指ハート”を作ってみたりなどして。そうして自然体のまま、彼女に一瞬を切り取られる時間を穏やかに過ごすだろうか。彼女の気の済むまで付き合った後は、目的地を彼女の家の最寄駅にでもして己の相棒を走らせよう。)またな。風邪とか引くなよ!(別れ際、支給された端末で連絡先だけは交換を済ませ、探していたという割には名残は惜しまない。見送ってくれるなら軽く手を振って、そのまま走り去る。お守り代わりの写真を収めている胸元辺りをそっと撫ぜ、暫し夜を駆け抜けよう。令和に降りて初めて、焦燥を忘れて夜を明かせそうだった。)

02/17 02:30*73

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(一見すれば無責任にも思える発言が何故かとても信頼に値してしまう。この得も言われぬ感覚はやはり失っている記憶からやって来るものなのか──そんな思考のままに、視線は真っ直ぐ彼を見据えながら首肯を示そう。)……わかった、あんたを信じる。説明を期待しているわけじゃないけど、あんたには嘘が無いから。(僅かな時間ながら、彼という人と成りはよく理解できていた。それこそ昔から知っているような感覚にも近く、女の言葉にも嘘は微塵もない。次いで持ち出された先の約束に関しては少しだけ双眸を瞠目させて。)そうだった。……じゃあその時は、あの“色男”も一緒にね。(親指でクイと指し示すのは彼の相棒たるバイクが駐車してある方向。ツーショットなんていくらでも、すぐにでも撮れるものだったが、そんな約束が何だかより特別なもののように感じ、彼同様に楽し気な色を纏ってはそんな言葉を口にしていた。)ふふ、……うん、多分思い出したら、もっとあんたのこと撮りたくなる。……今、そんな気がしてるよ。(そうして浮かべた笑みは、きっと今日の中では一番わかりやすい形をしていた筈。ポーズに関して「そんなのどこで覚えたわけ?似合い過ぎ」と軽口を叩きながら、撮影は時間を忘れて行われただろう。散々付き合わせた後、例の如く彼の相棒にて送ってもらった後に礼を口にして。)……ん、また。あんたこそ、ちゃんと髪とか乾かして寝なよ。(まるで旧知の仲のようにそんな言葉を交わしては、本日の締め括りとした筈だ。振り返らずに走り去る様子は、まるで吹き抜ける一陣の風のよう。その姿が見えなくなるまで見送ったなら踵を返し、この不思議な一日を噛み締めるかのようにゆっくりと歩き出した。風は何度だって吹く。再び彼と相まみえた時、記憶の蓋が開き切った時、きっと自分は彼の手を取るのだろう──そんな漠然とした未来を脳裏に描いては、一人夜風を浴びながら帰路につくのだった。)

02/17 21:34*78