主君、お迎えにあがりました。

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(令和の世では携帯端末を介して得られる情報が多く、足で稼ぐのと平行して主を探していた。イヤホンをしながら端末を触っているのは、いかにも学生らしかろう。そうして話題になっている動画を何気なく再生した折、よく知っている声色が鼓膜を震わせてたときの衝撃たるや。雲を掴むような話が一気に現実味を帯びたのだ。主は確実に、ここにいると。――年若い主が生活しているとすれば学生として過ごしているのではないかと当たりをつけて、通学時間帯の駅を張っていた。何日も掛けてようやく見つけた主が一人になったところを見計らい、偶然を装って声をかける。)こんにちは。こんばんは、かな。……夜たかさん、だよね?(遠慮がちに携帯端末の画面を見せれば、投稿者である彼女自身がよく知っている動画が再生されているだろう。片耳にイヤホンを繋いでいるため大々的に音声は流れていないけれど外れているもう片方からは小さく漏れている。)さっきそこで声を聞いて、もしかしたらと思ったんだ。(方便としての嘘を混ぜながら、再会できた喜びが微笑となって浮かぶ。ファンが有名人に会えたときの反応にも似ているかもしれない。)初めまして、君のファンだよ。(おもむろに片手を差し出して握手を求めてながら、ちょっとしたお願いもしてみよう。)良かったら、少し話せないかな。

02/09 01:01*3

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(誰か、に聞いて欲しくて。とある童話作家の手によって星となった鳥の名を借りて歌うのは、そんな漠然とした理由でしかない。今の少女は一日のほとんどをただの女子高校生として過ごし、平凡な日常に溶け込んでいる。少なくとも、この瞬間までは溶け込めているつもりだった。改札を出たところで、ファンを名乗る青年に話し掛けられるまでは。)はっ!?(その名義は、誰にも明かしたことがないのに。戸惑いから相手の顔をまじまじと見るが、やたら整っていることしかわからず、困惑のまま言葉の発せない唇をぱくぱく動かしている。咄嗟に否定すればいいものを、彼の綻ぶような顔ばせに見入って、何故だか首を横に振れなかった。)……初めまして、ええと……。……う、うれしいんだけど複雑……!だっ、誰にも言わないで、ね……?(喜びも確かにあれど、特定されたという動揺も同じくらい込み上げてきており、定まらぬ感情に目が回りそうだ。そろと伸ばした手は、握手に応える前に彼の端末の画面をまずは触った。「目の前で聴かれるの恥ずかしいから……」という理由で、動画を停止するために。)……少しだけなら、いいよ。……あなたの耳の良さも気になるし。(確かに、友人に別れ際の言葉を投げ掛けはしたけれど、それだけで辿り着けるものだろうか。疑念というよりは興味に近く、し損ねた握手をするべく今度は差し出された手のひらにおのれのを重ねた。握る力は控えめに、少し緊張から強張っている。場所を変えるかどうかは、彼に委ねるつもりで小さく首を傾げた。)

02/09 22:14*11

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(本当に善良なファンだったなら、本人を見かけて声を掛けたりしないのだろう。現に彼女をとても驚かせてしまったと内心反省する。でも、困っている様子が可愛らしいと感じてしまう己もいて、在りし日の主の姿を重ねてしまい寂しさが過ったのは一瞬。)それじゃあ、ふたりだけの秘密だね。君のことを言いふらしたりはしないから安心してほしい。(少なからず喜んでくれているならこれ幸いと、秘密を取り付けてはくすぐったそうに肩を震わせた。――主に会えて、すっかり浮かれていた。伸ばされた手は己のそれではなく端末に触れ、ループ再生していた動画が止まって虚を突かれた形になる。呆気に取られて見開いた目を、すぐに柔らかく溶かして苦笑した。)あぁ、ごめん。君の歌が好きだから離し難くて。(晒しものにしていたつもりはなくても彼女は居心地が悪かっただろうと詫びを入れて、外したイヤホンと共に端末をズボンのポケットにしまい込んだ。改めて差し出した手で彼女を迎えて、かたいその手を優しく包むように、けれども確りと握る。)ありがとう。僕の耳は普通の人とそんなに変わらないだろうし、好きな声が耳に付くのは自然なことじゃないかな。(刀剣男士の身体能力の高さを咄嗟に隠そうとしつつも、彼女の声が殊の外よく聞こえるのは本当のことなのでありのまま伝えた。それから、握っていた手を名残惜しそうに放す。)そこのコーヒーショップか、人に見られたくないならカラオケとかのほうがいい? 時間がないなら君を送りながらでも……大丈夫、家の前まで付いて行ったりしないから。(不安に思うであろう可能性を先に潰しておき、行き先は彼女の希望を聞くべく候補を挙げて、道すがら話を切り出そう。)どうして顔出ししてないのか、聞いていい? どうして不利な形で投稿しているのか。

02/10 18:28*18

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……おっ、同い年ぐらいだと思ってたんだけど、もしかして違う……?(ふたりだけの秘密、なんて甘美な響き、同世代の異性から齎されたことがない。直接歌声について好ましく思われていることも慣れなくて、確認するかのような問い掛けは照れ隠しに等しかった。学生服を纏っているにしては、あんまり大人っぽいというか──掴みどころのない感覚がどうにも身に馴染まず、おずおず伺い見る。)あなたが夜たかの歌を気に入ってくれてるのはよくわかったから、あの……ちょっと心臓に悪いかな……!?でも、うれしいよ、ありがとね……。(差し出されるすべてが、この身に余る。加減して欲しいだなんて贅沢な話だが、心臓は大いに彼の言動を勘違いして跳ね続けている。あくまで好ましく思われているのは歌の方とわかってはいても、少女にとっては経験したことのない非日常の刺激だった。それはもう、頬に熱を誘うに、十分すぎるほど。その指の細さにどぎまぎしながら、握手を終えた手は顔を扇ぐのに使う。)あっ、今、そこのコーヒーショップ、期間限定で動物のドーナツが置いてあって……。時間は大丈夫。今日は配信の日じゃないし。(見掛けて以来ずっと気になっていたので、ちょうどこの機会にとお願いすることにした。あれだよ、と学生服の裾をちょいと引き、そうして期間限定という文字が踊り、動物が描かれている立て看板を指差した。向かう足取りはゆっくりと、カウンターで先に注文をする様式のようだから、最後尾にて立ち止まり。)声と顔立ちが、あってないから。……あなたはがっかりしなかった?(夜たかは囁くような繊細な歌声が特徴と、よく評価される。それはおのれのキツめの面立ちとはそぐわない。ずっとコンプレックスを拭えずに生きてきた。顔を隠すように前髪を触りながら、しかし何でもないことのように問い掛けを落とした。)

02/11 19:38*27

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多分、同い年ぐらいじゃないかな。(見た目だけなら、と余計な部分は伏せておき愉快げに言葉を返した。正確な年齢を確かめてしまえば、こちらも詳しく話さざるを得なくなる。一応は高校生としての設定を組んできたけれど、学校やら部活やらの話になったら遠回りもいいところ。その手の会話はなるべく避けて、主の置かれている状況を確かめていきたい。本来の目的とは別に、彼女の歌を好んで聞いているのは本当である。)えっ、心臓に? ……痛い?(何が心臓に悪影響を及ぼしたのかは後で考えるとして、赤みが増した頬や、熱そうにしている仕草へ気遣わし気な目を向けていた。一過性の症状ならばしつこく食い下がることはせずに、情報通の彼女に付いて行く形で店内へと入っていく。歩調を合わせるのが、とても久しぶりな気がした。)がっかりしたように見えるかい?(質問に対して質問で返すのは意地が悪いと分かっていながらも、その目で確かめてほしくて彼女をじいと見詰める。背の高さが同じぐらいなのでお互いはよく見えるはずだから、目が合っても即座に逸らされても、にこやかな表情を向けていよう。)声のイメージを大事にしたかったんだね。歌姫の凛々しい顔を僕だけが知っているのは、ちょっと気分がいいかな。……君の歌に出会ってから、僕はずっと救われているんだ。(そっと己の胸元に手を添え、視線を落とす。)大事な人と、今は会えなくてさ。さみしくて君の歌に縋ってる。そういうリスナーは多いんじゃないかなぁ。(己の情けなさを、柔らかな語尾ではぐらかした。)

02/12 00:13*29

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(やけに楽しそうな少年にはちょっぴり疑わしげに双眸を細めて見遣ったけれど、妙なところで鈍い辺りは高校生らしい要素、なのだろうか。慌てふためいた早口で大丈夫と三回唱えては、勢いよく首を横に振って。ネガティブな意味ではないと察してくれるように、大袈裟までな言動で示した。)……見えない、けど……。(そろりと持ち上げた視界には、穏やかな顔ばせが映る。体調を慮るような心配や足並みを揃えてくれる気遣いには、落胆などこれっぽっちも窺えなかった。きっと否定して欲しくて問うたのは、自分だってずるい。それにしたって、想像以上の持ち上げられぶりだ。視線ははぐらかさずにいられたが、うたひめ、と唇がなぞった際には、声が半分ぐらいひっくり返っていた。)そ、そんな大層なものじゃないけどね。ありがとう。……さみしいひとを慰めたくて、歌ってるから……よかった。ちゃんと、届いてくれてたみたいで。(重たく沈んでいた心を、自分は彼に掬い上げて貰った。視界が開けた心地がする。そのまま──自然と、胸の内からぽろっと落ちた一言は、なぜだか自分だけのものではないみたいで、違和感に胸の辺りを撫で摩る。「もうじきに会えるといいね」と、月並みの言葉でしかないが、易々と踏み込める領域でもない気がして、か細く、けれど確かに願いとして添えた。)……甘いの、すき?よかったらドーナツ、好きなの選んで。(スイーツは気分転換にもなる筈、というのは単純な思考回路である。列が進みショーケースが見られるようになると、何とも可愛らしい動物を模したドーナツが並んでいた。悩みはするが、熱心に見つめているのは猫の輪っかだ。)

02/12 17:42*36

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(己が様子を確かめてもらえたならば満足げに頷いてみせた。地声と歌声が多少違ってくるように、顔立ちと歌声の印象がぴったり合う人のほうが珍しいのではないだろうか。言葉を尽くして否定してあげたほうが良かったのかもしれないけれど、彼女が抱えている思いは何にせよ尊重したかった。)うん、会えたらいいなって思う。でも、大事な人が幸せならそれでいいかなって。(伺うように向けた視線が捉えた彼女の仕草に、やはり心臓が痛むのだろうかと心配になる。大丈夫と言われてしまった手前しつこく尋ねることはしないが、顔色や体調になるべく注意を払っておこう。)甘いものは好きだよ。へぇ、色んなのがあるんだね……。(立て看板に描かれている以外の動物もあるようで、楽しそうにショーケースを見下ろす。けれどもすぐに、彼女へと目移りしてしまった。)かわいい。(独り言を漏らしながら、彼女の目線を辿っていけば猫の輪っかが並んでいた。そういえば、主は猫が好きだったような。)僕は猫にするよ。あと、そっちの兎も食べてみたい。飲み物は――(コーヒーを好んでいる身だが、主を探しているときに入ったショップで店員から奇妙な目で見られたことを思い出した。)カフェ・ラテにしようかな。(無難な飲み物を挙げておき、あることを声を潜めて持ち掛ける。)お金は僕が出すよ、今だけ格好付けさせて。お願い。(さて、彼女が納得してくれるかどうか。僕から声を掛けたし、会計は一回で済ませたほうが早いし、と何度かアプローチしてみるつもり。)

02/13 00:20*40

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(見返りのない真心を寄せる姿に、彼がどれだけその人を大切に思っているかが伝わってくるようで。どうにかして報われて欲しいと思うあまり、眉を下げながら、これはあたしが思うだけだけどね、と前置いて。)あなたが寂しがってるって知ったら、幸せになんてなれないかも。……その人だって、あなたのこと……同じくらい、大事な人だと思ってるんじゃないのかな。(憶測と、そうであって欲しいという願望も、少しだけ混じる。彼だけが我慢をするような選択をして欲しくはなくて、踏み込まないと決めた筈の癖して、それに反した一歩となってしまったか。撫でていた手で制服の胸元を握った。)よかった。……うんっ、ちょっとずつ個体差あるのもかわいい……ね……?(ちょっと左右の目がずれていたり、見ていても飽きない。呟きに同意を示すべく視線を勢いよく持ち上げたが、一瞬視線がこちらを向いていたような気がした。深掘りをすればそのままおのれの墓と化しそうな予感を微かに察知すれば、ほんのり赤い顔で唇をむずつかせる。こほんと咳払いして、気を取り直し──彼の注文を頷きながら聞いていたけれど、ふと違和感に包まれて。)……コーヒー……。(じゃ、ないんだね。そこまでは言葉にならない。店員に注文だと誤解されて復唱されてしまったのも一因だが、それ以上にない筈の記憶を無理やり引っ張り出してきたような感覚があり──目の奥がずき、と一瞬痛んだからでもあった。会計は申し訳なくて何度も辞退したが、結局折れるのはこちらだろう。ブレンドコーヒーと猫のドーナツを乗せたトレイを運び、選んだのは観葉植物が上手く他からの視界を遮ってくれる席だ。)……ありがとう、結局甘えちゃって……。……あの、(呼びかけようとして、名前を知らないことを思い出す。戸惑う間を置いて。)……あたしたち、本当に初めましてなのかな?

02/14 00:38*44

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(いじらしい前置きに、ゆるく首を傾けながらも聞く姿勢をとる。まさかそんなことを言われるとは思いがけず、声が出なかった。嗚呼、確かにそうだと腑に落ちる。人一倍気を遣う主が本丸の皆を忘れて、ひとり平和に暮らすことを良しとするはずがない。些か感傷的になっていたようだと、改めて気を引き締める。)君のいう通りだとしたら、さみしがってばかりじゃいられないね。(それでも表情は平静を保って穏やかに、彼女の優しさに目を細めていた。仕草や反応のひとつひとつがこれまた可愛らしくて、静かに満面の笑みを浮かべていた。会計前のやり取りを店員や周囲の人にはどんなふうに見えていただろうか、微笑ましい若者二人と捉えられていたならば役得である。)僕こそ礼を言わせてほしい、ありがとう。(彼女と連れ立って席に腰を下ろし、まだ口を付けていない飲み物の交換を申し出ようとした手が止まった。止められた、というほうが正しい。彼女の問いかけをはぐらかすか、好機とするか逡巡する。すぐに返事をしなければいけなかったのに、長めの間を置いてしまった。)"今の君"とは初めましてだよ。でも、僕がコーヒーを好きなのは覚えてたのかな。忘れてくれていても良かったんだけどね。――僕も覚えてるんだ、君の夢。歌が好きだって話してくれたのも、昨日のことみたいに覚えてる。僕は君の夢を壊したくないんだ。今は叶うところに、手が届くところにいるんだよね?(夜たかの知名度や動画の再生数は頭一つ抜けていて、プロデビューを控えているなどと真偽が定かではないネットニュースも見かけた。真面目な顔つきで、時折懐かしむように笑いながら問いかけた。)

02/14 21:29*52

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(飲めもしない珈琲の黒々とした水面を見下ろしている。きっとその苦さは、今噛み締めている感情と似た味をしているのだろう。欠片ばかりが足元に散らばって、なにも形を為さない。それでも、何故だか彼は誰よりも自分の味方なのだと、心の底から信じられる自分がいる。ずきずきと痛みを訴え始めた頭を押さえて。)……投稿した歌の動画がどこかの偉い人の目に留まって、デビューしないかって声を掛けられてるのは確かだよ。でも、返事は未だしてないの。……本当にこれでいいのかな、って思うことがあって。(またとない機会に、理由もわからず悩まされている。その要因が、もしかしたら目の前にあるのかもしれない。)どうして、あなたがあたしの夢を壊すことになるの。あたしの知らない、何を知ってるの?(歌声を辿ってやってきてくれたひと。訳もなさそうに優しくしてくれるそのひとの手を、マグカップに伸びかけていたところを捕まえた。先の握手の時よりもしっかりと、この場に繋ぎ止めて置きたいかのように。)……もしかして、あなたの大事なひと、って。あなたが知っている“あたし”ってこと……?(隠し事も偽りもなく答えてもらうつもりで、真っ直ぐに金色の瞳を向けた。)

02/16 01:14*62

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(つらそうにしている彼女を見て、ただただ心が痛む。恐らく、これは良い兆しなのだ。アーティストとファンという垣根を越えたがったのは、紛れもなく彼女のほう。夢が叶う手前で二の足を踏んでいたらしいと聞けば、勿体ないと思いながらも黙って耳を傾けるに留まる。行き場を失っていた手を不意に捕まえられて、きょとんとした顔をさらしたのも束の間、夜空に煌めく星のような双眸に呼吸がひとたび止まる。やがて降参めいた息を漏らしながら、しみじみと感ずるものがあった。)そういう真っ直ぐなところは変わらない、か。僕が大事に思っているのは、夢を語ってくれたいつかの君だけじゃない。今の君も等しく大事なんだ。僕が知っている君の話をしてあげたいけど、君にどんな影響が出るか分からない。だから、今はひとつだけ教えてあげるね。(許されるのならば手を繋がれたまま、腰を浮かして彼女の耳元に唇を寄せて囁く。)僕が知っている君は、夜たかという名の“審神者”だったんだ。(彼女の様子を注視しつつ、静かに身を引いて座り直した。)続きは、また今度にしようか。どこか二人きりになれる場所で話そう。君の都合が良いときに連絡してくれるかい。(空いている方の手で携帯端末を操作し、連絡先を提示しよう。表示名は『薫』の一文字だけ。)“今の僕”の名前は「くゆる」って言うんだ。気軽に呼んでくれて構わないよ。(連絡先を交換できたなら幸いであるし、一方的に押し付ける形になっても構わない。こちらからの接触はいつでも可能だが、彼女にも心の準備は必要なはずだから。)どちらの君も君であることに変わりない。だから僕は君の力になりたいんだ。君の夢が叶いかけてるなら尚更。必ずしも、どれかひとつを選ばなければいけないということはないはずだから。(今の彼女が過ごしてきた学生としての時間も、歌姫として誰かをなぐさめてきた日々も無かったことにはしたくないと祈るような気持ちで。)

02/16 22:51*69

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(この邂逅によって、何も疑問を持たずに生きてきた筈の日々に少しずつ違和感を抱き始めている。耳に落とされた言葉には、静かに瞠目した。全く認識外の真実に、繋ぎ止めていた手が自然と離れる。与えられたのはほんの一口程度の情報ともなれば、当然物足りずに唇を尖らせて。)……あたし、今もなんともないのに……。……薫は、あたしが呼んだら真夜中でも来てくれるってこと?(なんともない、は嘘だった。血の気が少し失せ、鈍い頭痛が思考を妨げている。だからこんな意味のない甘えたような言葉がつい溢れてしまうのだろう。捉えどころのなさすぎる彼を、少しくらい困らせたいだなんて──主として背伸びしていただろう審神者たる少女が見せた一面かは預かり知らぬところだが、「忘れて。そんなことしないから……」とすぐに自己嫌悪に塗れた一言で濁してしまう。連絡先は素直に交換させていただくとしよう。このまま彼との接点を失えば、何もかも曖昧なまま終わってしまう気がして。)……夢のこと、誰にも話したことがなかったの。“あたし”はきっと、あなたのことをとても信頼してたんだろうね。ありがとう。応えようとしてくれて。(改めて伝う感謝は、未だ思い出せなくても告げておくべきだと感じた。彼がふたりの夜たかをそれぞれ慮ってくれるのは、互いに築き上げた絆があってこそだろうから。言葉にはしたが、想いが乗り切らない気がしてもどかしい。)もし、何かを選ばなきゃいけないなら、きちんと思い出してから決めたい。……それだけは、お願いね。(今はただ、それだけを願いとして告げよう。こればかりは恐らく、彼にしか叶えられないことだろうから。さて、追及は一休みするとして、未だ彼は気分転換に付き合ってくれるだろうか。甘味を嗜み終われば顔色も戻り、寄り道が終われば素直に家路へ戻る筈。帰り次第、臨時で配信を行なって少しだけ歌った。今日出会った、不思議なひとを思い浮かべて。)

02/17 03:12*74

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(使うことはないだろうと思っていた仮初の名をひとたび彼女が音にすれば、刹那に特別な響きとなって耳を打つ。突拍子もない願いだって微笑ましくて、何かを考えるよりも先に首を縦に振っていた。)君が呼んでくれるなら、いつでも。夜更かしは得意だよ。(早起きもね、と冗談半分で付け足しておこう。その気のない言葉であったとしても、彼女とのやりとりは嬉しいものである。青白い顔をしてなんともないと誰が信じられようか。だが、表立って指摘するのは気遣いとは別物であるから、今はまだ見守る形をとる。本当に危ういようならば、病院に担ぎ込めばいいだけの話だ。)“君”の気持ちを僕が決めつけることはしたくない。確かに言えるのは、僕は君を信頼しているということ。……どういたしまして。(感謝の言葉を受け取るには早い気がしたが、そこに彼女の健気さを感じて僅かばかり目を伏せた。)そうだね。知っていることは多いほうがいい。君が思い出すための手伝いを、僕なりに頑張ってみるよ。(過日を知識として与えるだけなら淡々と語れば良いのだろうが、それは彼女が望むものではないと改めて認識する。彼女が後悔をしない選択を選び取れるように尽力しよう。可愛らしいドーナツの一体どこから食べれば良いのやら、掴んだドーナツをくるくる回したりして、随分あっさりと困った様子を覗かせただろう。家の途中まで彼女を送りたいと申し出て、これまた断られても何度かしつこく食い下がった筈。彼女と別れて程なく携帯端末から通知音が鳴り、取り出してみれば嬉しい知らせが届いていた。早速イヤホンを身に付け、道端で配信を視聴し始める。今夜の歌は、いつもより近くに感じた――。)

02/17 20:16*75