主君、お迎えにあがりました。

tkk.png

(偶然出逢った少年と日本刀の展示を巡った後から、瞼の裏から消えない翠がある。それは瞬きのほんの一瞬の間に現れて霧散していく。何度も何度も繰り返すうちに、次第に頭痛に見舞われることが多くなった。痛みは耐えれない程ではないけれど、まるで警告かのような鈍痛が続くと流石に参る。また眠りも浅く、よく夢を見た。―主と呼ばれる自分。異形のモノと応戦する日本刀をはじめとした武器を手に持つ者たち。そしてあの少年によく似た誰か――その夢を見るたびに魘され飛び起きるを繰り返すこと幾晩か。他人を巻き込むのは如何なものかと迷ったけれど解決の糸口になればと、“話がしたい”と先日の博物館近くの公園へと呼びだした。)やぁ、元気か?(ベンチに腰掛けたまま軽く手を挙げて彼を笑顔で迎える。そして自分の横のスペースをぽんぽんと叩き、隣に腰掛けるよう勧めてみようか。)突然呼び出してすまないな。少し、私の話を聞いてくれるか?……正秀に初めて会ったあの日以降、君によく似た人が夢に出てくるんだ。軍服にマントと服装は違うけれど、正秀の瞳と同じ翠をしていた。(声音は軽やかに口元にも柔らかな弧を描かせてはいるものの、眼差しは真剣で傍らの彼の瞳を覗き込むように見詰めて。)これは単なる偶然なのか否か。…君はどう思う?

02/17 23:11*9

sisns.png

(邂逅を果たした後、先ず報告をしたのは己が本丸の親友たるひと振り。「主が見つかったよ、清磨!」と弾ませた声と素の態度は最早取り繕う必要もなく、通話越しに親友の安堵の様子も受け取ることができた。次いで本丸の皆にも報告をしたならば、皆一様に喜びと安堵を示していたことは言うまでもない。特に初期刀から「引き続きよろしく頼む」と託されると一も二も無く力強く頷いた。タイムリミットが近付く中、これからどう行動すべきか――そう思案を重ねていた矢先、彼女の方からの連絡が入ったのだ。驚きこそすれ、断るなどという選択がある訳も無し。呼び出されるままに向かった指定の公園内で、その姿を見つけるや否や小走りで駆け寄るとしよう。)ああ、久し振りだな、季子さん。私は元気だ。あなたも息災だったか?(在り来たりなやり取りを交わしながら、彼女が開けてくれたスペースへと腰を下ろす。話の切り口には「うん?」と耳を傾ける姿勢を示し、そのまま彼女の言葉を聞くものの、その内容に思わず目を瞠っては一拍の沈黙を伴わせる筈だ。)……偶然では、ない。それは確かに私であり、あなたの有する過去の記憶だ。(まるで観念したような、けれど何処か喜びを孕んだような、そんな口振りは何処か遠回しだ。やがて意を決したように顔を上げたなら、徐にその場へ立ち上がる。そうして彼女の目の前に佇み、真っ直ぐに見据えたまま胸に片手を翳して唇を開くだろう。)私は、水心子正秀。新々刀の祖と呼ばれる刀工によって生み出された、太平の世の刀。──そして、あなたの刀剣男士だ。我が主よ。(そう名乗りを挙げたなら、その場へ跪くが如く片膝を突き、彼女へ向かって尚も真摯に語り掛ける筈だ。そこには何の偽りも無い、あるがままの水心子正秀そのひと振りがあるだけだった。)訳あってあなたを探していた。本丸の皆を代表してあなたに会いに、あなたを取り戻す為に、私はここまでやってきたのだ。

02/17 23:46*11

tkk.png

(彼の顔をみると、普段通りに振る舞う中でも微かに安堵を滲ませた肩の力が抜けたのは無意識に。何故か頼もしい存在であるかのように見えて目を細めた。定番の出会い頭の挨拶もそこそこに、早速本題へ移ったけれど――もたらされた言葉には驚きよりも納得が勝った。胸にすとんと落ちる感覚に深い息を吐けば、大きく一度頷いた。)…そうか。(頭を巣食う夢に答えが与えられたおかげか、夜の静寂に落とされた響きは落ちついたものだった。)水心子正秀…私の、刀剣男士…。(瞬きも忘れて見開かれた瞳は彼の顔を真っ直ぐに見据える。夢で見た光景が色付いていく感覚に爪が食い込むほどに拳を握り締め、生唾を飲み込んだ。存在意義を探している際に漠然と抱いていた喪失感の理由が、目の前にある。)…私は過去は振り返らない性質でな。失ったものを悔やむよりも次に手を伸ばす方が有意義だと思う。実際今までそうやって生きてきた。(ひとつのものに囚われていては前に進めないし時間が惜しいと考える切り替えの速さは、美点であり欠点でもあった。淡白だと非難されたことも一度や二度の話ではない。諭すように眉根を柔らかく下げるものの、声音は淡々と続けられる。)今の私はきっと君たちが取り戻したかった女ではないだろう。君たちの記憶がない私など放っておいて、次に行くべきだとそう思う。(見下ろす形となった彼へと向かって伸ばした両手で頬を包みこめば、)だがな、だから諦めてくれと言いたくはないんだ。…教えてくれ、 私はどうすべきか。(自分自身なにが正しいかはわからないけれど、だがここで関係ないと目を逸らしてしまうと自分の存在すら失うような気がして。困惑の色を乗せた瞳を彼の顔を覗き込むように近付けた。)

02/19 15:48*24

sisns.png

(驚きよりも納得を写した面持ちに、動揺の色が宿ったのは水心子にとっても意外なものであったやもしれない。そして彼女が一筋縄ではいかない質であることもまたよく承知しているからこそ、ひと振りはただ静かに瞳を瞬かせるのみ。)……そうだろうな。あなたはそういう人だ。(淡々と述べられる言葉に素直に肯定を示したのは、曲がりなりにも彼女の側にいて、そんな彼女を見てきたからだった。合理的で無駄がなく、それであるのにいつも何かを渇望している。そんな彼女を、皆が主と呼び慕っていたのだ。忘れようもない日々、記憶。故に捨て置けという言葉にだけは「っ、それは、」と即座に反論を口にしようとした。だが、不意に伸ばされた両手で頬を包み込まれたなら、翠の双眸は大きく見開かれるばかり。)我が、主……。(僅かな間の後、ぐっと一瞬引き結んだ唇はゆっくりと息を吐いた。そして意を決したように彼女の両手にやんわりと自らの手を重ね、そのままゆっくりと立ち上がる。視線は同じ高さになり、互いの距離だって然程あるわけではない筈だ。)──私はあなたの安寧を願っている。あなたが幸せであることを。……けれど、あなたの安寧を、幸せを、私が勝手に決めてはならない。 何故なら……私は刀で、あなたは人だからだ。(真っ直ぐに見据える眼差しに写るのは真摯な熱意。そして滲む、どうしようもない寂寥と慈愛だった。)このままこの世にあれば、何者にも襲われず、戦うことも無く、平穏な人生が約束されるだろう。だが私は、私たち刀剣男士は、あなたと共に在ることを望む。共に戦うことを強く望んでいる。あなたと離れたくなどない! ……その上で、どうか選び取ってほしい。それが、人間にだけ許された権利なのだ。我が主、季子よ。(水心子正秀は決して器用な刀ではない。それでもこの役目に選ばれたのは今この為なのだと、ただ切実な、それでいて嘘のない響きで彼女へと語り掛けていた。)

02/19 23:54*30

tkk.png

(次に行けと述べる口で引き止めて欲しいと、相反することを言っていることは理解している。我儘な願いは持論と矛盾していても、止まらなかった。反論を押し留めるかのように伸ばした両手が拒まれることなく、それどころか彼の掌が重ねられると今度はこちらが瞳を見開く番だった。)──…私の幸せ、(幸せとはなんだろうか。真摯な翠から目が逸らせず、困惑に瞳を揺らしながら彼の言葉を反復する。“自分は確かに幸せだったはずだがそれは何故か”“存在意義を得たからだ”“だとしたらそれは何か?”─濁流のように押し寄せる自問自答に飲み込まれそうになったけれど、引っ張り上げるのはまた彼の心からの声だった。ぱっと光が射して目の前が一瞬にして明るくなる感覚、自分の進むべき道が顕になったことに目からゆっくり目を閉じる──瞼の裏に鮮明に思い描くのは、刀剣男士たちの姿。誰よりも自分らしく生きている審神者である自分の姿。なんでこんな大切な存在を忘れてしまっていたのだろうか。胸を締め付ける罪悪感から顰めた眉と持ち上げようとしたが上手くいかなかった唇の端、歪な表情のまま、目の前の存在を確かめるように掴むかの如く指の腹に力を入れた。)……君は真っ直ぐ過ぎるほど真っ直ぐで、いつも眩しいな。水心子正秀。(理想を掲げ努力を惜しまない一振は誰よりも使命感が強い刀だろう。だからこそ嘘偽りがない言葉だと胸に響く─こんなにも求められて、誰が否と言えようか。一度天を仰ぎ深く息を吐き出して、そして息を吸い込むと同時に彼へと視線を戻せば、)…平穏な人生を求める人もいるだろう。ただ私はそれだけではつまらくてな。“人生には驚きが必要だ”だなんて、鶴丸国永ではないんだがな。(白に金色が映える太刀の言葉を真似ればきっと彼も気付くだろうか、審神者季子を取り戻したことを。)私の人生において君たちを失うことがなにより大きい損失だ。

02/21 21:42*39

sisns.png

(真面目過ぎるきらいがあることを、己自身も嫌という程に理解をしている。そういう性質であるからこそ、本丸の皆はこのひと振りに主たる彼女の行く末を託したのだ。決めつけるのではなく、彼女自身に選び取らせる為。故に、賽は投げられた。揺れるまなこを見据えながら呼び掛けることだけが、水心子に出来るただひとつの方法だった。──やがてその瞼が下り、不器用に動こうとする表情とその手の力、そして紡がれる銘に、翠の双眸は大きく瞠目された筈。)……今の、僕の名前──、(思わず呟いた言葉に素の色が乗ってしまっていることは気が付かないまま。そして視線が再びこちらと交じり、続けられるのはとあるひと振りの太刀をなぞらえた言葉。嗚呼、明確に言葉にせずともわかる──我らが主が戻ってきたという事実に、くしゃりと泣き出しそうな表情を浮かべるのもまた、普段はひた隠しにしているつもりの一面だった。)主……、主っ!!(両手を離したと同時、衝動的に彼女を抱き締めたのは完全に無意識によるところ。だが今はそんなことに気が付かない程、ひと振りは全身で喜びを表しているだろう。彼女が苦しくない程度の力ではある筈だが、それでも抱き締める腕を緩めるつもりも無く。)とても心配したんだ……急に消えてしまうから。あなたを探してここまできたけど、僕らを忘れて平和に過ごす姿を見て……この方がいいのかなって、少し、思ってた。(ぽつりと耳元で呟く声色は、それこそ不安げな少年のようなもの。そこで漸く少しだけ身を離し、彼女の顔を再び見遣る。)……けど、やっぱりあなたはあなただね。探求心を忘れない、僕の自慢の主だ!(ひと振りに宿るのは、屈託の無い笑顔。そして心からの言葉はやはり嘘偽りのないものの筈だ。──そこで漸く我に返るのが水心子である。途端取り繕うようにわたわたと動いては「あっ、いや、これはだな……!」などと言いながら距離を取るだろう。)

02/22 00:01*43

tkk.png

(後悔はしない生き方を選択しているはずなのに、どこかで伽藍の心を抱えていた――どうしても切り離せなかった焦燥感と違和感の理由が明らかになった今、気持ちもとても晴れやかだ。失っていた自分の核たる部分を取り戻し、身体は興奮から火照っている。そして目の前で歪んでしまった彼の頬を撫でてしまいたかったけれど、それよりも先に感じる体温。「おっと!」とその勢いに小さく声を漏らしたものの、珍しくほぼヒールがない靴を履いていたこともり難なく彼を受け止めると、あやすようにその背を優しくぽんぽんと叩こうか。)…本当にすまなかったな、水心子。だが私は君のおかげで思い出せて幸せだ。審神者として君たちと共にあることが、私の存在意義だから。(普段はひた隠しにしている彼の素の部分で続ける様に心配をかけたことがありありと見え、自責の念から眉間に皺を寄せた。けれど屈託のない笑みをみてしまえば、つられるように笑みが広がっていって。)私にとって刀剣男士は皆可愛いがその中でも君はいっとう可愛いな、水心子正秀。(距離を取り慌てふためく彼へと手を伸ばして引き寄せるとその動きを封じるように今度はこちらから抱き締め、内緒話をするように耳元に唇を寄せようか。)…なんせ私の若いツバメだものな、正秀は。私より一回り以上歳若く見える少年だったから揶揄ってやろうと思ったんだが、まさかそれでも良いと言うと思わなかったよ。(噛み殺しきれなかった笑い声を僅かに零しながら、楽しさを湛えた瞳は悪戯げに細められた。)本丸に帰るとき一芝居打ってやろうか。蜂須賀と源清麿が卒倒するか……いや、怒られるか。ただでさえ皆に迷惑をかけてしまったから今回は大人しくしておいた方が無難だな。(初期刀と彼の親友の刀の反応が見てみたいと言う好奇心が顔を出し冗談めかした提案は実のところやぶさかではないのだけれど、流石に良心の呵責を感じれば断念の一言を添えようか。)

02/22 23:32*48

sisns.png

(陽気なもの、気さくなもの、無邪気なもの──彼女の帰りを待つ本丸の者たちの中にはそういった質の刀剣男士も数多存在する。対して水心子はといえば、まさに折り目正しく愚直な程に真面目。故に、長く共に過ごした時間がありながら、このように触れる──ましてや抱き締めることなど初めてである筈。勿論押し倒してしまう様な力加減はしていないつもりだけれど、背中を優しく叩かれたならそのまなうらにはじわりと熱いものが滲んだ気がした。)謝らないで、主。結果としてあなたは僕らを選んでくれた。それだけで……それだけで僕は嬉しいんだから。(緩く首を振りながらそう呟くひと振りの表情は実に晴れやかで、嘘偽りのないものだとよく伝わる筈だ。そうして笑顔を浮かべた矢先、遅すぎる取り繕いに追い打ちをかけるかのように“可愛い”と称されてしまえば、思わず尚も後退りをしようとするだろう。)なっ……!か、可愛い……!? わ、私は新々刀の祖として、そのような評価を受ける訳には──っうわ、(動揺をしていたから、というのは言い訳だとして、彼女に簡単に抱き締め返されてしまえば拒否などできる筈も無く、耳元に囁かれるその言葉──再会を果たしたあの日の冗談と悪戯な提案に、つい目を白黒させてしまう。が、こうして好奇心に身を任せるその言動の久しさにはつい双眸を細め、彼女が戻ってきた事実をひとり噛み締めていた。そっと腕を回し再び抱き締めたなら、彼女は果たしてどんな顔をするだろうか。)──いいや、それは名案だ。きっと蜂須賀虎徹は勿論、清磨も目を見開いて驚くだろうが……それも一興、というやつなのだろう? それに、私はあなたの若いツバメ……だからな、我が主よ。(そんな風に耳元へ囁き返したなら、そっと頬を擦り合わせてから少し身を離して彼女を見つめよう。たとえ反論があったとて、そこには「これも役得、というやつだ」と笑ってみせる珍しい姿があるに違いない。)

02/23 22:58*54

tkk.png

(目の前のひと振は自身の理想である姿を目指し続けることに余念がない直向きで律儀な刀だ。そんな刀が親友たる刀の前でしか見せようとしない素の姿が顕になっているのことに気付いていないのか隠さないことも、こんな風に気軽に触れ合ったことがなかったのに躊躇いなく腕が伸ばされたことも、全てが多大なる心配をかけたからと思えば胸が締め付けられるように痛む。謝罪の言葉は尽きないけれど、首を振られれば代わりに感謝を重ねよう。)本当に世話になったな、水心子正秀。礼をしたい。なんでも言ってくれ。私に出来る事なら何でも叶えることを約束しよう。(迎えに来てくれた彼の苦労を思えば、多少の無理難題であったとしても割に合わないぐらいだ。“なんでも”という言葉に嘘偽りはなく、自らの胸をどんっと叩けば大きく頷いた。そして彼らしい反応が懐かしく目を細めながら、取り戻した日常を噛み締めていたのだけれど、不意に腕を回されれば微かに身体を震わせて。こんなにスキンシップを取ることが出来る刀だったかと思えば、些か照れが湧き上がりほのかに頬を染めた。)…今日の君は本丸にいる時より大胆だな。(真面目と言う言葉そのもののような刀だから、持ち掛けた茶番は嗜められると思っていた。だからこそ自ら大人しくしておこうか諦めた訳で。彼からは思い止まって良かったと、そう言われると予想していたのに、耳元を擽る囁きに限界まで大きく目を見開けば、離れていく熱を信じられないものを見るかのように凝視した。そして反芻すればするほど身体の底から沸き上がる喜びに破顔して、)──…っ!君はやっぱり私の刀だな!正秀!蜂須賀と源清麿だけではなく本丸全員を驚かせてやろう!記憶を失っていたなんて事実がどこかに吹き飛ぶぐらいに!(幼子のように瞳を嬉々として輝かせば、向かい合う彼の腕に自らの腕を回し身を寄せつつ「若いツバメらしく頼むぞ」なんて笑みを噛み殺しつつ添えて、)

02/24 16:50*62

sisns.png

(他所の本丸での同位体がどうであるかは知るところではないが、十年もの長きに渡り本丸の長として在る彼女の実力、そして人と成りを水心子は心の底から認めていた。未だ取り繕うことは多いけれど、決して素の自分を見せることが嫌な訳ではない。ただ刀剣男士として、そして何よりも彼女に相応しく在ろうとしているが為なのだ。こうして迎えに来ることだって当たり前だと考えるからこそ、彼女の申し出には思わず目を見開くだろう。)えぇっ!? ああ、いや……ん゛んっ、私はあなたの刀として当然のことをしたまでだ。だが、折角の褒美を無下にすることも失礼だろう……ううむ、考えておこう。(途中咳払いをひとつ零しながら背筋を伸ばせば、褒美に関してもまたきちんと考えようと言ったん脇に置いておく。何事も真摯に向き合いたい質であるからこそ、彼女の言葉ひとつにいつも翻弄される──それもまたお決まりの流れというものだが、それを崩したのは珍しくもこちらの方。大胆と称されたなら、小首を傾げながらも双眸を細め、)そうだろうか? なら……きっとあなたのせいだな。(なんて言い返していた筈だ。そも、彼女の影響が無ければこんな提案にも乗るまい。身を少し離して見た彼女の表情に浮かぶ驚きの色、そして眩しい破顔──それは間違いなく水心子がもう一度見たかった彼女のありのままの姿だった。前のめりに瞳を輝かせる眩さに、つい口許は綻ぶ。そして絡む腕によりもう一度距離が近くなれば、これ幸いとばかりにもう片手を彼女の腰へと回そうか。)ああそうだな、事の顛末には丁度良い。皆が驚き、思わず祝福するような……そんな驚きを本丸へと持って帰ろう。……私に、あなたを愛させてくれ。(その言葉と表情は普段より少しばかり殊勝に、そして男性的な低音の響きによって齎される。彼女という物語を取り戻したひと振りは、この手をもう決して手放さない。彼女の刀である──その誇りにかけて。)

02/25 02:38*69

tkk.png

(何事にも真摯に向き合う真面目な目の前の刀が好ましい。例えば内番を免除して欲しいや欲しいものがあるだとか、どんなことでも良いのに持ち帰って考えようとするさまは、相変わらず彼らしくて思わらず耐え切れなかった息を零した。)いつでも思い付いた時に声をかけてくれ、水心子。(期限はないと言い添えれば、口元に弧を描かせた。―自分の所為と言われれば不服そうに瞳を僅かに細めるものの、内心やぶさかではない。親は子に似るではないけれど、自分の影響を受けた自らの本丸の男士だと実感するというか、長らく共に戦ってきたことを感じられて嫌いじゃなかった。そう言えば政府の職員に「季子本丸の刀剣男士は勢いが良い」と言われたことがあるという記憶が蘇れば、くつくつと小さく笑うのだろう。それでも自分が知っている姿より大胆な一面―腰に手を回されれば、一転動揺したように身体を震わした。見開いた瞳で僅かに見上げる先の翠はいつもと変わらないのに、耳を擽るいつもと違った声音に息を細く吐き出せば掴む腕に力を入れて、囁くように零そうか。)―…君はいっとう可愛いが、私が知っている以上に…格好良いな、正秀。(記憶が戻った今、最後に思い出すのは荒れた本丸の姿だ。立て直しに時間を要するだろうし、生半可ではないことも想像に容易い。けれど消極的に悩んでいるよりも、自分は前向きに考えていきたい。自分に傍らの刀をはじめとした頼れる仲間が沢山いるし、きっと大丈夫だ。未来に心配はない。―記憶を失っていたという非常事態を、詫びの気持ちだけで心配かけてすまなかったと殊勝な態度で終わらせるよりも驚愕を携えた方がきっと刀剣男士たちの心労もましではないかと思う。終わり良ければ総て良しではないけれど、本丸襲撃からの一連の流れを大団円と纏められればそれはきっと“季子本丸らしい”出来事だったと言えるはずだ。)

02/27 23:59*75