主君、お迎えにあがりました。

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(彼と出会ってから数日、連日不思議な夢を見る。此処ではない何処か――城のような大きな日本家屋の屋敷や、敷地内のあらゆる場所でカメラを構えている夢だ。レンズの先には見知らぬ男性が何人もいて、皆一様に女の方を見ては屈託ない姿や笑顔を向けていた。彼らのなんてことはない営みを写す、写す、写す。その中に、一際目立つ赤い瞳の男がいる。サングラスが無くともわかる、それは紛れもなく先日邂逅を果たした“豊前”と名乗った彼その人だった。彼と目が合った瞬間、シャッターを切り――そうして夢は醒める、の繰り返し。ピピピ、と鳴り続けるアラームを止めて起き上がると同時、鬱陶しそうに髪を掻き上げた。)……、……豊前。(ぽつりと呟いた名前の主を思い浮かべる。数拍の後再びスマートフォンとの手を伸ばしたなら、迷うことなく件の彼の連絡先を開いた。メッセージアプリか、それとも番号を用いたショートメッセージかを用いて『今日会える?』という何とも唐突な内容を送りつけて、続け様に行き先の住所を送信しよう。――果たして現地集合か、それとも合流した後に再び彼の後ろに乗せてもらうことになるか、いずれにせよ問題なく目的地に辿り着けたならば、カメラケースを肩に掛け直しながら彼の方を見遣る。)突然誘ったのに、ありがと。……ここのロケーション、ドイツのローテンブルグってところの街並みを再現してるらしい。(簡素であるが礼と共に軽く頭を下げたなら、視線は施設内の外観へ。木漏れ日差す西洋風の街並みに双眸を細めながらそんな前情報を呟く。そしてカメラを取り出し準備を整えながら、なんてことはないように言葉を繋げた。)話、改めてちゃんと聞きたいと思ったから。あんたの口から、全部。……悪いようにはしないんでしょ?(そっくりそのまま口にしたのは先日の彼の言葉。僅かに笑みを湛えながら顔を上げたなら、ピアスが揺れてきらりと木漏れ日に反射した。)

02/17 20:24*4

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(主を見つけた、という簡易な報告を自本丸に行ったところ、瞬く間に通知が鳴り止まぬ事態となった。器用不器用や、言動に出る出ないの差はあるにしろ、皆が皆、彼女のことを各々慕っていることが伝わってくる。記憶が戻ればこの画面を見せて遣ろうと口許を緩ませたが、数々の通知のうちの特別な一つを見逃しはしなかった。問題ない旨を伝え、慣れた手つきで住所を検索すれば、女性の支度の時間を考慮して、迎えに伺う時間を伝えた。今日とてしっかりと整備された相棒と共に駆けつけ、行き着いた先──見慣れぬ景色に、サングラスの奥の視線が落ち着かないでいる。)ろーてんぶるぐ……。全然わっかんねぇ。滸にとってどいつ、ってのはどんなとこなんだ?(世界地図で此処だ、と教わってもピンと来ない気がする。手っ取り早く印象を捉えたくて、雑談がてら、所感の共有を求めてみる。)確かに、日本の街並みとはまた違った趣って奴があんなぁ。(色取り取りの建物の壁。程よく不揃いな石畳。古びて色褪せてはいるが、それによる“味”があることも、何となく伝わってくる。今シャッターを切れば、未知に心躍る少年のような横顔が映るだろう。)ああ、もちろん。最終的にはあんたの意思を尊重する。……折角だし、歩きながらでいいか?(それだけは揺るがない、固い意思だ。サングラスを外し、ポケットに仕舞う。緩い着こなしだが、襟を正して──先ずは正しく、名乗り直そう。)郷義弘が作刀、豊前江。あんたが知っておくべき、本当の俺の名だ。俺は……あんたを主としていた、刀剣男士の一振りなんだ。(真摯に向き合ってはいるが、必要以上に緊張を与えない為に、足も一緒に動かすことにしたのだ。石畳を鳴らす足音は気ままに、景色も一緒に楽しむつもりでいる。)

02/17 22:28*6

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(快諾と共に当然の如く迎えの旨を伝えられたなら、その“当たり前”と云わんばかりの対応につい胸が擽ったくなり、徐に指先で頬を掻いた。そうして身形を整えて合流し、彼とその相棒と共に風を切る。その背中は学生とするには些か大人びて見えた──のだが、目的地の景観に対し戸惑いの声を上げる様は一転して年下の少年のようで、女は口許を手の甲で隠しながらも僅かに笑みを孕んだ呼気を零した。)ふ、……しいて言うなら、ビールとソーセージが美味い国。あと、ジャガイモ。景色は私も全然わかんない。(実際訪れたことの無い土地や国に対する印象は専ら食べ物に偏ってしまう気がする。しかし飾らない素直な印象の方が共有できるだろうと、特に深く考えもせずに口に出していた。)……確かに、こういうのを“風流”って言うのかもね。全然違うから、こっちも撮り甲斐がある。(不意に口に出したワードは、夢の影響もあってか妙に耳に残っていたものか。徐にカメラを構え、試し撮りがてらシャッターを下ろす。そこに写る彼がまさに少年のような面持ちであれば、満足そうにひとり頷こう。)ありがと、更に安心した。……ん、いいよ。私も勝手に撮りながら聞くから。(カメラを少し持ち上げながらそう言い添えたなら、彼に倣い石畳を歩き出す。そうして彼が襟を正した時、ふと見上げるように視線を遣りながら、その名乗りを耳にした。──瞬間、強烈な既視感はやってきた筈だ。桜の花弁舞い散る中、同じ名乗りを確かに聞いたその記憶に、思わず一瞬足を止めて瞠目を示す。)──豊前江、(つい復唱した響きは、この数日はおろか、ずっと前から口にしていたような馴染みがある。記憶の蓋が、確かに開きかけている。その感覚を宿したまま、再び歩みは再開されるだろう。今度はこちらから視線と共に疑問を投げ掛けて。)……主としていた、ってことは……今は? というか、そもそもどういう経緯で私は探されてるわけ。

02/17 23:13*10

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(なぁに笑ってんだよ、と口を尖らせるが、不服はあくまでも素振りだけだ。無理に作った表情もすぐ崩してしまうだろう。彼女が笑ってくれるなら、結局悪い気はしないのである。そんな己の単純さを自覚させられてむず痒いというのも不服の中に埋もれていたかもしれない。)っふ、すげー食い気。しっかし、へえぇ……。じゃああんたも実際には行ったことないんだな。この時代なら速ぇ乗り物も沢山あっから、すぐ行けそうなもんだけど。(触れるかどうか一瞬だけ悩んだが、微笑ましさ故に止まらなかった。未だ見ぬ遠い国の断片的な情報を得ながら、少々間の抜けた相槌を打つ。実物を見たことがなくとも、忠実に再現されているのだろうと思わせる街並み──それに対して選ばれた言葉に聞き覚えがあり、片眉を持ち上げる。)……俺もそろそろ呼び名は戻さねぇとな。主って。(話の流れで一瞬留まった足先に揃え、立ち止まった。所々、微かながらに記憶が戻りそうな気配を察するなら、飛び越えていた一線を再びこちらから引く時期かもしれない。滲むのは寂寥ではなく、安堵に近しいだろう。疑問に対しては、時間を貰えたから淀みなく説明が叶いそうだ。)俺たちが揃って暮らしてた、本丸ってところが、敵に襲撃されてな。それが原因かはわかんねぇけど、突然あんたの姿が消えたんだ。調査の結果、令和で暮らしてるっつーから、連れ戻すために俺が寄越された……って感じだな。(一本丸から派遣されるのは一振りのみ。殆ど全員が立候補した為、選ぶのが大変だったと小さく笑う。誰しもが彼女を案じ、戻って来て欲しいと願っている証左だ。)……とはいえ、あんたがこのまま平和に暮らしたいってんなら、俺はそれでもいいと思ってる。(彼女が審神者に戻るのなら、再び危険と隣り合わせの日々となる。選択ははじめから彼女自身に委ねるつもりで赴いた。隣に並びながらそちらは伺わず、未だ前に視線を定めたまま、小さく落とし。)

02/19 13:01*21

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(口を尖らせる様がより無邪気さを演出している、とは言及せず、軽く「別に、何でも」と言い添える。だが、次いだ発言に対し逆に笑われてしまえば不貞腐れるのは此方の番か。)うっさい。……まぁ、機会があれば一度撮ってみたい景色ではあるかな。(拗ねた物言いをぶっきらぼうに響かせ、カメラから景色の方へと視線を移す。そしてふと聞こえて来た『主』とのワードには露骨に顔を顰めて。)……うわ、そんな堅苦しい呼び方されてたの、私。柄じゃない……。(辟易といった様子だが、ただ慣れぬというだけのもの。故に名乗りへの既視感に導かれるが如く、彼の語り出しには自ずと静かに耳を傾けていた。)本丸、襲撃……。 ……そう、確か、廊下の写真が焼けて──、(経緯をなぞるように口に出せば、まるでフィルムを透かしたように脳裏へと浮かび上がり、片手で己の額を覆う。見たことのある景色、感じたことのある喧騒──それは確かに“あの日”の記憶。夢で見たあの場所が、壊れゆく様を確かに知っていた。同時に、本丸に集う数多の姿──刀剣男士たちの顔が浮かんでは、思わず同様に小さく笑いながら唇を開く。)殆ど全員とか……、ほんと、物好きばっか。(額にあった手を下ろし、徐に口許を隠す。ただ、その静謐な言葉が耳に届いたならそっと手を下ろして。)……あんたの手を取らず、ここで生きることを選んだとして……きっと私は普通にカメラを構え続けてるんだろうね。(驚く程平坦に吐き出された言葉はあっさりとしているだろう。その直後「……でも、」と切り出したなら僅かに顔を上げた。)撮りたいものは此処に無い。そんな中、ただ生きるなんて死んでるのと一緒。(はっきりとした口調の言葉は宣言のように。そうして再び立ち止まったなら体ごと彼へと向き直ろう。)……今年も連れて行ってくれるんでしょ、あの場所に。(そう呟く女の瞳はもう迷子ではない。きっと彼の良く知る色を宿している筈だ。)

02/19 23:20*27

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お、じゃあ行くか?いつになるかはわかんねぇけど……まあ、いつかは行けるだろ!多分。俺、飛行機ってのに乗ってみたいんだよ。(全く見通しのつかない口約束ではあれ、願い事は唱えてみたものがちとも言わんばかりに取り付けようとする。彼女が思い出す最中、守れなかった写真についての言及があれば痛ましそうに眉を顰める。これは力不足が招いた結果かも知れない。しかし許されるのであれば、再びを望んで止まないのだ。)俺たちだって、審神者だったら誰もいいって訳じゃねぇからさ。(彼女が望むのなら、このまま見送る覚悟も決めて来たつもりだった。しかし実際、一度失ったその人が手の届く範囲にいると考えると、離れ難く思えて仕方がない。情けない心の内側を隠す為にも彼女の方を向けなかったのだけれど、思うよりもずっと芯の強い覚悟が耳に届いて、ふっと笑い声の孕む息を吐き、口許に弧を描く。)俺は随分、あんたのことを見縊ってたみてぇだな。……当たり前だろ!あんたとしか見られない景色があるんだ。(毎年連れゆくその場所は、誘い文句の軽さの割に、この男にとっては代わりのないものとなっている。伴う人もまた、同様に。記憶を取り戻しても猶、共に歩むと覚悟を決めてくれた彼女に応えるよう、今度は確りと向き合った。)危ない目に遭わさねぇとは言えない。ただ、必ず俺たちがあんたを守り通す。(臨んでいるのは戦いである。此度の襲撃のように、彼女自身が危険に晒される可能性は今後も無くせはしないだろう。真摯な声色で伝う覚悟は、確かに彼女の元に集った刀剣男士の総意だった。)またこれからもよろしく頼むぜ、主。(右手を差し出し、その動作にて改めて彼女の意思を問うとしよう。)一応、色んな口説き文句用意して来てんだけどな。一通り全部聴いてくか?(彼女の双眸から、はっきりと意思を汲み取れる程度には傍にいたつもりの為、握られる前からそんな冗談を軽やかに紡いだ。)

02/21 00:24*35

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ふぅん……いいんじゃない、それ。なら、これも約束ってことで。飛行機からはしゃぐあんたも撮ってあげる。(揶揄うような口振りでカメラを掲げてみせるものの、好奇心が擽られたのは本当だ。きっと本当にできる、そんな予感を胸に抱いていた。そも、彼と出会ってから何かと直感や記憶といった己の深層部分を揺さぶられている。彼が口にした『審神者』という言葉は、その最後の鍵であったように思う。主、主様、主さん──そう呼ぶ数多の声を、女は知っていた。そして彼のことを、知っていたのだ。江のものたちと笑い合う姿を、文句を言いながら畑で苦労している姿を、そして赤いまなこでこちらに笑い掛ける姿を。そして、毎年二人で向かうあの場所でシャッターを切ったこと。面映い思い出に、女の瞳はそっと細められる。)私も、あんたとしか写せない景色がある。……今まで忘れててごめん。ありがと、迎えに来てくれて。(きっと何度も遣る瀬無い気持ちになったことだろう、とは想像でしかないものの、嘘も裏表もないこの男であれば真っ直ぐに追いかけて来てくれたのだろうと思うからこそ、謝罪と礼は自ずと口を吐いた。故に、彼の宣言めいた言葉には確りと頷き、その宝石のような赤い瞳を見つめ返そう。)言われなくても……あんたたちのこと、信じてる。今までも、これからも。……こちらこそよろしく、豊前。(当然の如く信頼を口にしては、彼同様に右手を差し出して握手を交わす──その直後か、冗談にはつい口許へ笑みを宿していた。)……ふ、それ、堂々と言う? 男前の口説き文句、気になるから聴かせて。(近侍を務めることが多かった彼との距離感は気安いもので、軽く顎を上げてはその軽口に乗ってみせる筈だ。やがて自然と握手を解いたなら、再びカメラを構えよう。今度は行きずりのモデルとカメラマンなんかじゃない、己の大切な刀剣男士を写す審神者として、女はまたひとつシャッターを切った。)

02/21 02:32*36

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光栄だ。……謝んなって、あんたは悪くねぇよ。初対面からやり直すってのも目新しくて楽しかったし。ここだけの話、俺たちが知らないあんたのことが知れるかと思ったりなんかもしたしな。そこはあんまブレてなかったけど。(いつしか叶えたい約束も含め、身に余る光栄に双眸を細め、噛み締めるように呟く。此度の件で本丸は混乱したが、気持ちのいいくらいに筋の一本通った姿を改めて見られて、感心もしたのだ。「褒めてっからな?」とは念の為の補足として。)ああ。これで本丸の奴らにも顔向け出来る。大歓迎される心の準備はしとけよ。帰ったらすぐ宴だろうなぁ。(心の底から安堵の籠った長い息を吐き出す。気楽そうに見えて、確かに肩の荷は無意識に感じていたらしい。晴れやかな笑みを浮かべる男の双眸を宝石とするなら、収まるべき場所に収まった穏やかさを改めて湛えているだろう。促され、カメラを向けられるのであれば──一枚目はきっと、満面綻ばせた男の姿。シャッターの合間にこほんと咳払いしては、眉の間に力を込めて、再び真剣な様を繕う。)俺たちにはあんたが必要だ。この平和な時代を守る為にも、改めて手を貸してくれ。(使命感を煽るような一言。もしくは、おどけながら、)一緒に来てくれるなら、俺みたいに撮り甲斐のある奴が沢山いるぜ?(軽く興味を誘うような。或いは──。ここで、一旦距離を縮め、触れないようにはしつつレンズを手のひらで覆ってしまう。こればかりは焼き増しされてしまっては困るとも言いたげに、眉を一瞬だけ下げて、笑った。)あんたがいないところで生きるなんて、俺には考えられねえよ。(さて、どれが正しく本音か、伝わってくれるだろうか。多くの綺麗な景色を、彼女が切り取った写真で見てきた。しかしこの男が何よりも心惹かれるうつくしいものは、目を逸らせないのは、彼女自身の琥珀の双眸なのだと──今まで、伝えては来なかったけれど。)

02/21 22:33*40

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(念押しが無くとも己の頑固さは自覚済み。であればこそ、「まぁ、私は私だし」とあっけらかんと答えていた。まるっきり元に戻ったとはいえ、此度の騒動が大ごとであったのには間違いない。隣で晴れやかに述べる彼の言葉でつい思い浮かべるのは懐かしい本丸の姿だった。)宴……だろうね。……けど、それはあんたもじゃないの?お互い二日酔いには気を付けなきゃね。(軽く首を傾げながら軽口めいた言葉を乗せる。恐らく帰還したあかつきには彼とて放ってはおかれない筈だから。穏やかに煌めく双眸と綻ばせた表情の次に切り取ったのは真剣な様。次いで一転して軽やかな誘い文句にシャッターを切ったなら、レンズを覗いたまま女の口許も自然と綻びを見せた。)成程、正統派ってカンジ。というか、あんたが言うから違和感が無いのかもだけど。(レンズ越しにそんなことを口にしたのは、多分他の誰かが言ったなら異なったニュアンスが乗るに違いないと想像したが故。何を言っても様になるのは、やはりこの男だからこそ──そんな思考の矢先、不意に視界が閉ざされたならレンズから顔を離すのは至って自然な流れだろう。見上げた先には近距離に彼の姿、そして、笑みと共に手渡された言葉にはその瞼でシャッターを切ることも忘れ、女の瞳は瞠目を示す。やがて頬に朱が差す頃、眉は顰められているものの、ふたつの琥珀は尚も彼を見つめ続けていて。)…………その口説き文句は、……ずるいんじゃないの。(そんな悪態が低い声で吐き出される筈だ。それが照れ隠しであることくらい見透かされているのだろうけれど。数拍の後、浅く息を吐き、首から下げるカメラから片手を離し、彼の頬へと指先を伸ばそう。)……私だって、あんたがいないのは、もう無理。(指先が届いていてもいなくとも、女は琥珀の双眸を細めて囁き掛ける。小声で「……なんて、ね」と付け加えたのが照れ隠しだということはすぐに分かってしまうだろうか。)

02/22 00:47*44

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(彼女を連れ帰った後の自身に関しては、日毎、経過報告にてせっつかれ続けていた日々を思い返し一度肩をすくめて。)俺は……歓迎っつか、遅いだの何だの、散々文句言われそうだ。ま、介抱してやっから、あんたは遠慮なく呑んだくれたらいーよ。(にっと勝ち気に笑うこの一振りは、羽目を外しても翌日に残る程、酔わされない自信があるようだ。近侍を任されることの多い身としては、その自覚から他の面倒を見るだけの余裕を保つつもりである。改まってポーズを決めることは目新しかったが、最後の言葉を伝えたいが為の布石に過ぎない。レンズからその瞳を奪い去ることが叶えば、満足そうに口角を持ち上げた。)ずりぃだろ。だから、あんたの返事が決まってから言ったんだよ。──……はは、なーんか照れんなぁ、どうも。(それは危うく行き場を失くしかけた、直向きな感情だった。彼女を審神者に戻すにあたって、手段は選ぶべきではないのだろうが、少なくとも情に絆す選択肢を取るつもりはなかった。彼女の選択の果てに、未だ共に歩む未来が続くのであれば打ち明けようと思っていた心の内側だ。触れる指先を受け入れては己の手を重ね、やわらかく頬を擦り寄せた。無理ね、と貰った囁きを反芻してはにかみを隠せぬ男は、くすぐったそうに笑っている。)いつかは伝える筈の相手がどっか行っちまうから、すげー焦った。んで、今の内に捕まえとこうと思ってさ。あいつらには悪ぃが、ちっとだけ寄り道……でぇとして帰ろうぜ。(本丸には後で簡単に連絡を入れておくとして、このまま直ぐに帰ってしまうのはあまりに惜しい。触れている指先を絡め取り、手を繋ぐようにして、小さく首を傾げる。「だめか?」と問うのは、寄り道の可否と、シャッターを切る手を塞いでしまうことについて許可を貰えるかどうか。覗き込みながら、甘さの滲ませた低い声がねだるだろう。茜色の双眸を蕩かせた、一人の男として。)

02/23 18:19*52

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なら、久しぶりに前後不覚になるまで飲むかも。……介抱、よろしく。(元来人付き合いというものが性分でない女にとって、呑んだくれる経験など本丸の中でだけ。勝気な彼が潰されないというならば、近侍としても大いに頼る気で口端を僅かに持ち上げてみる。──ただ、そんな余裕も彼の一言で簡単に覆ってしまうのだから厄介だ。)……ほんっと、ずるい。そんなの……いくら私でも、都合良く受け取るに決まってる。(尚も悪態めいたその言葉の中に、女の奥の方にしまってあった心が滲む。指先から掌へ、彼の頬の熱が伝わっていく。その感触を確かめるかの如く、女の手もまたやわくその頬を撫でる様に動いた。)私だって、まさかあんたのことを忘れるなんて思ってもみなかった。 けど……うん、好きなやつに捕まえられるんなら……本望かな。(きっと他の誰かであればこうはならなかった。いつの間にか繋がれている手だって、甘く響く声だって、彼だからこそ拒否できない──する筈もないと思わされるのだから、つくづくこの男には敵わないのだと実感する。まるで負けました、と云わんばかりに片手でレンズの蓋を閉め、首からカメラを下ろしてケースの中へとしまい込む。それは即ちOKのサインであるということは、きっと彼にも伝わっているといい。)……写真は本丸で撮ることにする。 今は……デート優先、ってことで。(ぽつりと呟きつつ、覗き込んでくるふたつの茜色を見遣る。その内に沸き上がる愛おしい気持ちを、女は生まれて初めて体感していた。そうして不意に一歩歩み出たなら、距離を更に縮めることは可能だろうか。僅かに彼の頬を掠める様に一瞬唇を寄せたなら、すぐにその一歩を引き下がる。)…………、……柄にも無いことした。(そう言いながら思い切り顔を背けて「……ほら、行くんでしょ」と呟くも、赤く染まる耳の縁だけは隠しようもない。尚も繋がったままの手もまた、じんわりと熱を帯びる筈だ。)

02/24 00:37*56

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(介抱を頼みにされるのも、都合よく解釈されるのも、この男にとっては本望でしかない。好きだと告げてくれるなら、想いを遂げた自覚も湧いてきて浮かぶ幸いもひとしおである。)よし。……別に張り合ってる訳じゃねーけどさ、ちっといい気分。(折角彼女が写してみたい景色が広がっているのに、その邪魔をするのは実際本意ではない。しかし彼女の根幹にあるだろうカメラよりも優先されたことに広がる喜びは事実ゆえ、それを上機嫌に口にする。思い出が形に残らぬ分、心に焼き付けようと誓っていたところ、縮まる距離に反応できなかったのは、その情を映し出すかのような双眸に目を奪われていたからで──。)……ずりぃんはどっちちゃ……。(己の疾さを以てしても、この驚きには追いつけなかった。それはもう目を丸々とさせて、空いている手で口許を抑えるが、その奥から落ちた声は思いのほか低い。朱を差したかのような鮮やかな頬は誤魔化しようもなく、長い溜め息も落ちよう。)……その前に、こっち向けよ。……滸。(折角の景色なのに、いつまでも立ち止まっている道理はない。しかしこのままされっ放しに甘んじるのも看過できない。所謂恋人繋ぎをしている爪先に、やわく力が籠る。じれったそうに呼んだのに振り返ってくれるならそれでいいし、そうでなくとも強いて手を引くなりして此方を向かせたい。揃いも揃って間の抜けた表情を晒しているが、それこそ二人の間で結ばれた主従以外のえにしの証左だろう。壊れ物でも扱うように指先が彼女の顎を持ち上げ、次いで顔を寄せては、その唇を奪ったにも等しかった。一瞬重ねるだけのそれに、慾をぶつけてしまえ。)……じゃ、行くか!主。(何を言われようとも、あんたが悪いと言い張るつもりで、悪びれもしない。一旦は満足したのか、何事もなかったかのようにけろっとした顔で、しかも呼び名も忠臣よろしく繕った上で歩みを再開しようとするけれど。)

02/24 02:55*60

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(上機嫌そうな様子に「何、それ」と笑みが零れるのは軽口の延長線。ただそれはより穏やかで、甘さを滲ませたやり取りとなっただろう。決して絆されたわけじゃない。けれど自然に身体が動いたが故に言い訳も出来ず、彼の方から聞こえる方言混じりの呟きを赤くした耳で聞いていた。やがて焦れる声に応えるべく、ゆっくりと顔を向け──ただそれがあまりに鈍間であれば、彼が手を引く方が早かったかもしれない。いずれにせよ、朱に染まった互いの相貌は奇しくも同じで、彼の未だ知らぬ表情から目を離すことはできなかった。優しい手付きで顎を上げられ、ピアスが僅かに揺れる。そうして瞼が下りた時、重なった唇の感触を女は到底忘れられそうにもない。朱色は引くどころかその色を濃くして、益々眉は顰められていくだろう。)~~……っ、涼しい顔して……。(照れを誤魔化した悪態は、勿論悪びれない様子の彼へ。片手で顔を扇ぎながら何とか平静を呼び戻しつつ、「……ん、行こ」と返答をしながら再び歩き出そう。繋いだ手だけはそのままにして。──そうして散策する街並みは静かだが穏やかで、二人の間では女が記憶を失くしている間の話から他愛もない話まで、二人のペースで言葉が交わされる筈だ。最中、あ、と小さな声を出しては空を見つめながら唇を開いて。)そういえば、豊前と会ってからよく本丸の夢を見てた。最後は絶対にあんたと目が合って、写真を撮ろうとして目が覚める。……今思えば、こんなのあんたのこと意識してなきゃ見ない夢だったな。(毎夜思い出させるように流れていた夢は、今でこそ本当にあった過去の記憶だと認識することができた。そして赤い瞳の彼もまた、こうして繋ぐ手の先にいるのだから腑に落ちたような穏やかな声は零れ落ちる。そして隣り合う彼を見上げては双眸を細め、)……帰ったら、ツーショット。忘れてないから。(そう言いながら、握った手の親指で彼の指をひと撫でした。)

02/24 16:33*61

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(──この瞬間を収めたいと思うのは、カメラを相棒とする彼女の影響だろうか。寧ろ浅はかな男の欲でしかないような。踏み込まなければ見られなかっただろう彼女の知らぬ表情が胸を焦がすのに、あんまり情けない様を見せたくないから平然としたふりをする。自ずと己より動揺している様を見ていると落ち着きも取り戻せて、彼女の頬の代わりに自身の頬を指差しては、愉快そうに笑った。)あんたは茹で蛸みたいになってんぞ。かわいい。(今までは立場を弁えて口にして来なかった言葉も、難しく考えずに落とせるようになったと言える。世間話の延長線みたいに、すぐ其処を猫でも通りがかったかのような何気なさで落とすだろう。歩調は彼女に合わせ、駆けて風を切るのではなく、穏やかな風を感じながら散策を楽しんでいる。居心地の良い静けさながら、不思議と会話が途切れることはなかった。当然聞き覚えのない彼女から切り出される話には、面映そうに頬を掻いて。)……それ、結構前から俺のこと想ってくれてたってふうに聞こえっけど。もしかして、帰って主が撮った写真を見返したら、俺の割合が高かったりすんのかね。そこんとこどうよ?(近侍を務めることが多いとはすなわち共に過ごす時間が多いということでもあるから、至極当然な憶測ではある。夢でさえもカメラを向けてくれると言うのであれば、それが彼女にとって最上の愛情表現と捉えられるのでは──と思い上れそうな気もする。浮かれて調子づく男を止めるのであれば、ひょっとすると今のうちなのかもしれない。)……ああ。俺の相棒も一緒に、とびっきりの笑顔で、だろ?どこに飾ってやろっかなぁ。(違いなく、その切り取られた思い出はこれからの糧となる。合わさる双眸を慈しみに染め、繋ぐ手にやさしく力を込めた。──帰還し、二人とも落ち着けた頃合いに、約束通りの写真を撮ろう。その一葉には、あなたの隣で、幸いに綻ぶ男の姿が切り取られる筈だ。)

02/25 01:51*67

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(頬の赤みを指摘してみせる、その爽快な笑みが一時だけ憎らしい──そう感じるのはこの男にペースを?き乱されているからに違いなく。おまけにかわいい、という評価まで付け加えられたなら「……あんたのせいでしょ」と、まさに茹で蛸のままに言う他無かった。とはいえ、今まで築き上げてきた信頼や安心感が損なわれることはなく、主従関係とは異なる新たな繋がりが齎されたとて、二人風に身を委ねながら静謐な時を楽しむことができていた。ただ、そこに特別な愛情が加わり、雰囲気は随分とそれらしくはあったのかもしれないけれど。話題が夢の記憶についてさしかかれば、次いだ指摘めいた言葉に対して下手な嘘よりも先に素直な言葉が口を吐く。)……そう、って言ったらどうすんの。 というか……仕方ないでしょ、それだけあんたのこと撮りたいって無意識に思ってたんだから。(それ即ち図星である、ということを自ら言うには憚られて、つい可愛げのない言葉を選ぶのは最早癖のようなもの。ただ、不愛想の中に拗ねたような色が滲めば、きっと正しく伝わっていると信じたい。見上げた先で交わる視線──宝石のようで、けれど懐かしい色をしたふたつの茜色には相も変わらず視線を奪われて、まなうらへと焼き付ける様につい見つめてしまう筈だ。)そう、それ。……っふ、いっそ玄関にでも飾るとか。特別なんだってわかりやすくていいんじゃないの。(慈愛の滲む彼からの視線が擽ったくて、笑みを孕んだ呼気は零れ落ちる。そして冗談めかした提案は半ば実行されたとて吝かでは無いのやも。──そうして約束の写真は、彼の相棒と共に二人揃った笑顔で。もし先の冗談が実現されるならば、その写真の隣には本丸の皆を写した新たな集合写真も飾られる筈だ。 指で縁取る先には、いつだって彼がいる。そうやって女はこれからも忘れたくない幸いを切り取り続けていくのだ。いつまでも四角窓のその先に、愛しい茜色を捕まえて。)

02/25 04:30*70