主君、お迎えにあがりました。

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(多くの人がいるだろうから。そんな理由で足を運んだのは駅の中、確かに多くの人間が縦横無尽に行き交っているけれど、如何せんそんな数の人間の中に紛れ込みあまつさえたった一人の主の姿を探すなんてことは初めてだった。あの人も違う、この人も違う、左右に視線を振りながら足を進めるうち次第に駅の中へと向かってしまう、そんな太刀を気にする素振りひとつなく通り過ぎていく人々の中にやはり探し人の姿は見つからず。)……これはほねがおれそうだ。(思わずそんな言葉が口からこぼれ出た。土産物を売っているたくさんの店が並んでいる通路に出てみたもののやはりそこも人、人、人。頭一つ抜きんでている分眼下で蠢くたくさんの頭にだんだんと人酔いをしてきそうな感覚を察し、一度外に出ようと振り返って足を止めた。)――こまったな。(前後左右それぞれ道があり、人探しを優先して足を進めていたせいで自分がどちらからどうやってこの通路に辿り着いたのかが分からず目を瞬かせる。困り顔で眉を下げつつ片手で顎を擦って辺りを一瞥、忙しなく行き交う人波の向こう足を止めている姿を見つけてそっと其方へ歩み寄った。)すまない、いまだいじょうぶかな?そとにでるみちをおしえてほしいのだが…。

02/01 14:01*7

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(正午で授業が終わったため、受験の息抜きと称してカラオケにでも行こうと他校の友人との待ち合わせの最中のことだった。示し合わせた時間よりもかなり早く到着してしまって、どうしたものかとセーラー服のスカートを揺らしつつ、人の波に飲まれないよう柱の影にそっと身を寄せる。ころころ床に転がる愛らしい猫の動画を眺めていると、声が掛かり──ぱっと視線を持ち上げる。)……あっ、はい……?ええと……。(よくこんな悪役顔に話しかけたなという戸惑いから、落ち着きなく前髪を撫で付けるようにして視線から逃れたがる。しかし困っているとわかるなり、スマホをスクールバッグに仕舞い込んで向き合った。)大丈夫ですか?顔色があんまりよくないような……。外。どこか目的地とかがあるわけではないですか?すぐ外に出られるところで構いませんか?(返答に合わせて、彼の意向に沿えられそうな行先を選んで歩き出そう。道を示すだけでなく、彼が無事に外に出られるまでは伴うつもり。階段を使うことになり、具合が大丈夫かが心配でちらちらと後ろを伺いながらの案内となる。最終的に真っ先に息を切らしたのはこの娘の方だったかもしれないけれど。)す、すみません……体力がなくて……恥ずかしい。ここで大丈夫そうですか……?(ぜえぜえ肩で息をしながら、心配そうに見上げるか。)

02/01 18:58*9

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(持ち上がる視線におやと目を瞬かせる、初対面だと冷たいと思われがちでさとぼやく兄弟刀を何処と無く彷彿させるようなその顔に自然と頬を緩めるも今は外に出る事を優先させなければと少しだけ表情を引き締めた。向けられる言葉に一度自分の顔へと掌を当ててみるけれど普段より少し体温が低いように感じる程度で顔色の変化は分からない、他人が見てそう感じるのならばそうだろうと今度は意図して眉を下げた。)すこしひとによってしまったかな、こんなにたくさんのひとをみるのははじめてでね。そとにでられるみちをおしえてもらえると…あぁ、すまない。(道順を教わろうと思っていただけに彼女が道案内を買って出てくれている事に一瞬気付くのが遅れる、断る理由も特になく有難く付き添いを頼む事にした。思ったよりも駅の内部に入り込んでいたのだろう通路を歩き階段を使いと足を進めるにつれ籠った空気が流れていく、幾らか気分が良くなる自分とは裏腹に息を切らせた様子の彼女を見下ろす頃には見覚えのある場所に出てきている事だろう。)ありがとう、ここからはわかりそうだ。なにかおれいになりそうなものが……ああ、よかったらこれを。ふうをあけてはいないからね。(そう言って手持ちの鞄から差し出したのは温くなってしまったお汁粉の缶。彼女が受け取るにしろ遠慮するにしろ、ありがとうと感謝の言葉を再び投げ掛けて外の新鮮な空気を吸いに駅の出口へと足を向けた。)

02/01 21:12*13

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(人酔いならば、外に出て空気を吸った方がいい筈だと判じ、すぐに地上に出られる道筋を選んだ。人混みが、はじめて。──東京の外から来た人だろうか、さほど違和感はなく受け入れられた。確かに不慣れであれば、この混雑は圧倒されてしまうだろう。無理もないと。)東京は初めてですか?地下はちょっと空気が悪いですもんね。すぐですから、がんばってください。(掛ける声には心配を滲ませつつ、ようやっと送り届ければ、息を整える合間に長い安堵を吐き出す。)……よかった。それじゃあ、あたしはここで……って、ええっ!?そんな、……あのっ……いえ、ありがとう、ございます。……お気をつけて。(ただ一緒に階段を登っただけで、貰ってしまってもいいものだろうか。しかし差し出されたものを固辞するのも失礼な気がして、そろりと受け取った。猫舌だからちょうどいいくらいの温度だ。甘いものが好きなのかしらとその背を見送り、ヒール高めのローファーを鳴らしながら辿ってきた道をそのまま戻ってゆく。待ち合わせ場所には入れ替わるように友人がたどり着いていたようで、合流するなり手の中の缶に言及してくる。つい数分前の出来事を簡単に説明すれば、「一口ちょうだい」とねだられて、手中のお汁粉を見下ろした。)……あげない。(せっかくお礼として貰ったものなのだし。理由なんてそんなものだろうが、何とはなし譲りたくはなくて、不思議な心地のまま手のひらであたためていた。)

02/02 00:17*20