主君、お迎えにあがりました。

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(休日に一人自由な時間を過ごすとしても、人の多いところに赴く気はあまり起きず。ふと向かったのは閑静な住宅街だった。小高い坂の上は眺めも良く、シャッターを切るには絶好のロケーションと言っても過言ではない。レンズを覗き込み、なんてことはない日常風景を切り取る――その最中、通り掛かった人物が移り込んでいるにも関わらずシャッターを下ろしてしまい、思わず「……あっ、」と静かな声は零れ落ちた。それはきっと静かな場所で相手にも十分に聞こえる程の音量であったに違いなく。)……ごめんなさい、景色を撮ってただけなんだけど……。(気まずそうにぽつりと呟きながらカメラを下げ、指先で頬を掻く。そのままゆっくりと近寄れば、カメラの操作画面にて不可抗力により撮影してしまった相手の写真を見せる。そして『削除しますか?』という画面に切り替えたなら、チラと伺い見るようにして再び口を開こうか。)これでちゃんと消えるから。……不問にしてもらえると助かるんだけど、どう。(その口調も表情も無愛想極まりないものだが、一縷の罪悪感は滲み出ている筈。ただ返答を得るまではその場でじっと待ち続けるだろう。)

02/04 11:08*49

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(詰襟学生服の身なりは便利なもので、大概どの場所にあっても馴染みやすい。未成年という社会的に守られる立場にある事も不審さを軽減させるに一役を買っているだろう。それは一般的な休日であっても同様と考え、隊員のひとりから報告のあった目撃情報を確かめるべくとある住宅街へと向かった。平屋の建物が多く並び、日常の息吹を感じられながらも長閑な地。審神者を見たとは言うが位置は漠然としていて、周辺を暫くはそぞろ歩くことになるのだが、)……?(十字路の一角を曲がった際、何処からか聞こえた音と声に顔を上げた。小高い坂を視線が辿れば、その先に一人の少女を映す。一度立ち止まった足は、坂のふもとへと向かう先を変えた。謝られる理由がわかっておらず暫し黙っていたが、差し出された画面を見てようやく「あぁ、」と唇を割って。)撮影中だったんだね、僕の方こそ邪魔をしてしまってごめん。(唇は弧を描いたまま、彼女を見つめた双眸を柔和に細める。次いで学帽のひさしを軽く持ち上げては、やや身を寄せてその手にある立派な機械を眺めた。)これは君の?(そう問うたのは、ただの興味本位でしかない。カメラ自体はよく知っているが、もっと小さく薄型のものしか見た事は無かったもので。)……あぁ、さっきの写真だけれど。僕はそのままでも構わないし、消してもらってもいいよ。でも、もう一度だけ見せてもらえるかい?(それは彼女からの答えの後か、或いは沈黙の後であったか。“どう”という言葉に明確に答えていなかったと気が付くと、ゆったりとした声が改めて返事を伝えた。)

02/04 13:25*50

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(青空をバックにして写り込んだのは、詰襟に学帽姿という如何にもな学生だった。今時にしては折り目正しい佇まいではあったが、まるでそれが自然かという程に絵になっている――故に訂正に至るスピードもそれなりに早かった筈だ。何せ、不審者扱いだけは避けたいものだから。ただ、画面を見て察したかのように口を割った姿には僅かばかり安堵の息を吐いた。)いや、別に。……許可なく適当に撮影してただけだし、怒られるなら断然私の方でしょ。(謝罪に対し緩く首をを振った後、覗き込まれるままに画面を見せる。問い掛けには「そう、私の」と短い返答を挿み、画面を切り替えてレンズを操作しピントをずらしてみせようか。他ならない、唯一のものに興味を向けられるのは悪くない心地であるからして。)……いいの?なら、好きにさせてもらうけど。 ……ん、ほら、これ。(彼からの許可には些か瞠目を示すものの、存外よく撮れていたが故に有難く頂戴しておこうという現金さ。ただ、彼からの要望には手早く画面を操作して、偶然にも切り取られた写真を見せることとなるだろう。それは坂の上、白いガードレールと青い空、そこに少し逆光気味に佇む彼の姿が収められている筈だ。そのまま指先でトンと画面を示しては、横目で彼の顔を見遣る。)普通の露出度でこれだけ綺麗に映るのは珍しい。……あんた、タイミングが良かったのかも。(そしてほんの僅かに口端を持ち上げたなら、稀な写り具合に女も幾分か上機嫌であることがわかるだろうか。そこから少しばかり言葉を交わすか、それとも写真を眺めるだけか――いずれにせよ漸くカメラを下ろしたなら「……じゃあ、私はこれで」と軽く手を挙げた後に踵を返すだろう。一時の不思議な邂逅を経た後、それからも女は歩き回ってシャッターを切り続けたものの、どうにもこれ以上の出来映えのものは撮影できなかったのだとか。)

02/04 18:53*53

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……おこられる。風景写真も許可が要るのかい?(肖像権などは知る由もない。彼女が言う“怒られる”の相手が不明確であったがゆえに、繰り返す音は疑問を擁していただろう。説明を受ければ納得しようが、どうであれ互いに叱られることはない筈だ。所有物とあってその操作は手慣れて見える。変わる焦点や独特の作動音は如何にも近代めいていて、「わぁ」とのんびりした声で関心するように。)いいとも。よくわからないものが映っているのが不気味じゃなければ。(語尾は少し冗談めいた色で以って。やわく細めた極彩色の瞳も、自虐よりも戯れの其れに近い。液晶を先程の画に切り替えてもらえば「ありがとう」と隣から覗き込んだ。――そこに映るのは、ありふれた風景でありながら綺麗だと思わせる何かがある。くっきりと切り取られた一幕は、本来居てはならぬものも極自然に映し出していた。じぃ、と液晶を見つめる双眸が瞬きを重ねる。)……そうなのかい?タイミング、かぁ……でもこれは、君の腕が良いから、なんじゃないかな。(写真の知識は言わずもがな、芸術の知識など無いけれど。それでも“いい一枚”であるとは、清麿にも分かることだ。穏やかな眼差しに賞賛の色を乗せて微笑む。誰でも当たり前に持っている道具ではないことも理解しているし、そう安いものでもないとも。口角を上げた表情からも、彼女がカメラを好んでいることは明らかで。叶うならば、最近撮った中でこれぞという一枚があれば見せてもらえたなら。全てを過去に変える時の流れの中で、その時を残しておける写真というものの価値を改めて感じ入るだろう。「いい画が取れるといいね」そう言って軽く手を振りながら、背を見送った。そうして暫くは、坂から見える景色を眺めて――やがて静かに足を踏み出し、細道へと消えていくのだった。)

02/05 13:02*60