主君、お迎えにあがりました。

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(探し物をしている時は、不思議と喉が乾く。令和に降り立ってから、かすかな痕跡を辿るように休みなく歩き回っていたが、目立った収穫はない。気が急いて堪らないが、少し頭を冷やすべきだろう。一息ついた折、目についたのは赤々とした機体。政府による時代講習の賜物か、それとも主から存在を聞いていたか、飲み物を供給してくれるからくりだということは知っている。歩幅おおきく歩み寄れば、着崩した学ランのポケットから支給された小銭を取り出し、投入口に添えた。ためらいなく五百円玉である。)……うーん?(瞳の色が目立たぬようにと借りたサングラスをずらし、色とりどりに存在を主張する面々をまじまじと見比べる。よくわからない。)……なぁ……なあ!どれがお勧めとかあるか?教えてくんねぇ?(ちょうど、通りがかった人影があれば、姿をよく見ずもせずに呼び止める。ちょいと手招きをして、そのまま自動販売機を指差す。「茶以外で!」と笑って付け足すは、物珍しさに挑戦欲がふつふつ沸いてもいたので。)

02/01 00:43*3

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(専門学校へと向かう道すがら、切り取って絵になるような被写体を探しながら歩く癖がある。ありふれた街並みに対し、徐に両の手を掲げカメラを模して縁取りながら辺りを見渡し――たまたまその先にいた美丈夫がフレームへと収まった。そっと視線を上げたその瞬間、向こうの方から掛けられた声には思わず瞠目する他無い。)……、……は? ……私?(縁取る仕草を崩し、怪訝そうな声のままに己を指差してみる。きっと辺りには己以外に人影は無く、彼からの返答があってもなくても答えは間違っていないとわかるだろう。思わず軽く息を吐きながら薄い色に染髪されたウルフカットの髪を掻き上げて、観念したようにそちらへと近づく。そうして仏頂面のまま、視線は自動販売機へと向けていた。)好きなものを買えば。……あんた、学生みたいだけど……どっかのセレブかハリウッド俳優?(チラと横目でその風貌を確認し、ついサングラスから連想した言葉をそのまま並べてみる。その様子は疑いに満ちてはいるものの、警戒というよりは興味に近いものの筈だ。兎にも角にも要望には応えんと視線を戻し片手を緩く持ち上げる。そのまま指先は少しだけ彷徨い、その末に赤いラベルの炭酸飲料を指差していた。)……これにしたら? 甘い炭酸が平気なら、だけど。

02/01 02:58*4

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(呼び止めて振り返る際、その指の形を瞬時に見とめては、問いに頷く代わりに見よう見まねで指で四角を形作り、悪戯に笑って見せて。本来呼び止めた目的も忘れてはいないが、つい間近では見たことのない所作ゆえに興味が惹かれた。作った枠の中を覗き込みつつ、また覚えのない単語が耳に届けば、悩ましそうに唸りながら首を捻る。)あー……ま、そんなとこってことでいいよ。それよりこれってどんな意味があんだ?(語句の意味すらあやふやでは、上手い否定が浮かばず、露骨に話題を変えようと。興味があるのは事実なのだし、拙くともなんとか誤魔化されていただきたいところ。もちろん、尋ねたのは先ほどから模しているだけの四角窓についてだ。そちらは返答があれば感心したような相槌を繰り返すし、なければないでそのまま指先の向ける先を揃えた。赤い缶が落ちてくれば拾い上げ、にっと笑う。)んじゃ、これにする。お礼に一本なんでもどーぞ。好きなのがこの中にあんなら。(残金はまだ一本買えそうなくらいの余裕がある。選んでくれたものとおんなじ色の瞳をゆったり瞬かせつつ、タブを開いて口元へ運ぶ。)ゲホッ、……おー、美味ぇなこれ!あんたもよく飲むのか?(次に何を選ぶかを見守っていたので意識がそちらへ向いており、炭酸ということを失念していて思い切りあおったのでやや咽せた。しゅわしゅわとした感触に瞬きを重ねるも、お気に召したらしい。もし彼女が何かしらを選べば上機嫌に飲み物同士を軽くぶつけて乾杯したがるだろうか。おつりの回収を済ませれば、軽く手を持ち上げて中身の少なくなった缶を振る。)あんがとな、助かった。(小休憩には丁度よいひと時となった。声には委ねた選択以外の感謝をも乗せて、路地裏にでもふらりと消えてしまおう。)

02/01 18:27*8

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(まるで子供の模倣のようにこちらと同じ仕草をする彼は、横目で見たとてひどく整った面持ちであることがわかる。ともすれば、何となく茶を濁されるように肯定された言葉に引っ掛かりは感じず、「……ふぅん、そう」と淡白な返事に留めようか。ただ、フレームを模した四角窓に言及が及べば、肩にかけているカメラの収納バッグを軽く叩いて示してみせた。)これ。……カメラのこと。あんたが絵になったから……つい、ね。(白状するかの如く告げたなら、先程彼に向って四角窓を向けていた理由も伝わるだろうか。しかし少々バツが悪いのも事実、比較的すぐに彼の提案に乗ってしまうべく、再び視線は自動販売機へと向けられる。)……じゃあ、遠慮くなく。私もこれで。(ピ、という操作音の後、彼が選んだものと同じ赤い缶が落ちて来るだろう。隣から聞こえてきた咽せた声と問い掛けに応えるよう体を向け、タブを開きながら再び口を開く。)まあ、飲む方かな。美味いし。 ……っていうか、大丈夫なの。急いで飲みすぎ。(この種類ばかりではないにしろ、思い返してみてもいつも選ぶのは水か炭酸飲料か、といった具合。僅かに首肯を示した後、彼の喉を心配したのは至って自然な流れだった。ただ、同じ缶同士をぶつけての乾杯には黙って応じたものの、そのご機嫌な様子に心配は杞憂だったかと缶をひと口呷る。快活で素直な反応を真っ直ぐに受け取ったからだろうか、その表情は少しだけ綻んでいる筈だ。)いや、別に。私は何も……というか、こちらこそご馳走様。……ありがと。(同様に僅か手を挙げつつも、逆に世話になった気がしてならない為に礼を重ねる。そうしてその背を見送った後、あっさりと姿を消した彼を思い出しては、「……なんか、風みたいな奴」という独り言が零れ落ちた。あっという間の邂逅の末、再び缶を呷りながら一歩踏み出す。フレームに収められない風を背中に感じながら、女は日常へと戻っていった。)

02/02 00:23*21