主君、お迎えにあがりました。

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(夜ともなれば多少は静かだろうかと思って外に出る、けれど辺りは色とりどりのLEDで照らされた看板が眩く人波が引く気配は見られない。大勢集まり大声で騒ぐ酔っ払い、何事か電話しながら足早に去る人、巡回している警察官。見慣れないそれらに僅かに眉を寄せながらもどこに探し人がいるのかわからない以上避けて通るわけにもいかず、幸か不幸か一般的な日本人男性よりも大きな体躯は酔っ払いの絡む気も失わせるようで眩しさと煩さ以外に問題はなかったけれどその二つが問題で。)……ううん。(結局雑踏から離れてやって来たのは街灯と自動販売機だけが周辺を照らす暗い公園、深夜帯ではない事もあってまだ少し人通りはあれど随分静かに思えて安堵した。一息つこうと自販機の前で悩んで数秒、温かいココアを押したはずだったのだが。)……おや?(出てきたのは無糖のコーヒー、飲めなくはないけれど今の気分ではないそれと自販機のラインナップを交互に、何度も見直した。暗い公園の自販機前、立ち尽くして手元と目の前何度も見比べる姿は少し、怖いかもしれない。)

02/02 00:42*22

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(専門学校生の日常は忙しい。毎日では無いにしろ帰宅が夜になってしまうことだってざらにある上に、課題もそれなりにある。故に、女は未だ眠るわけにはいかなかった。だから無糖のコーヒーでも買って帰ろうか――そんな風に思っていたというのに、手に握られているのは正反対の温かいココアである。)……はぁ~……サイアク、ついてない。(深々と溜め息を吐き、一人ボヤくのも致し方無し。間違いなくボタンを押したというのに異なった商品が出てきたトラブルは女の眉間に深い皺を刻んでいた。公園内の自動販売機で買い直そうと仕方なく道を進んでいく。その先、目的地にて大きな男性が一人佇んでいる姿には思わず足が止まってしまったことだろう。ただ立ち止まっている訳にもいかず、意を決して近寄って行こうか。)……あの、買いたいんですけど。いいですか。(横から声を掛けたと同時、彼が握る缶に自然と視線が落ちる。何処か所在無さげな出で立ちといい、購入後立ち去らないところに違和感を覚え無言で思考を巡らせ――ある仮説を口に出した。)……もしかして、あんた、それ間違って買った?(様子を窺うような声は少し低く発せられて、相変わらず仏頂面のまま。それに対する反応がどうであれ、先ずは交渉を持ち掛けてみようと未開封の缶を彼へ差し出そう。)甘いのが平気なら、交換しない? ……私も間違えて困ってたから。

02/02 01:47*25

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(しかし自分は確かにココアのボタンを押したはず、何度見返しても押したボタンはココアのボタンで手元にあるのは温かいブラックコーヒーだ。隣に並んでいるコーヒーを押せばココアが出てくるのだろうかと安直な考えが頭を過ぎるもののいざ実行に移す気にはなれずにいたところ、不意に横からかかる声に大きく目を瞬かせた。)あぁ、すまない。……ううん……なんというか、わたしはここあをかったはずなのだけれどね、これがでてきてしまって。(彼女の言葉に眉を下げて笑いかける、少し低い声も変わらない表情も本丸で過ごしていれば誰かしらの言動で見慣れてしまうもので特別気にした素振りは無かったけれど差し出された缶を前に僅かに瞠目。確かに彼女の手にあるのは自分が求めたココアのようで、願ってもない申し出に一も二もなく大きく頷いた。上機嫌な笑顔を浮かべて差し出された缶を受け取る引き換えにと自らの缶コーヒーを差し出して。)それじゃあこうかんをおねがいできるかな、きみはにがいものがすきなのかい?すごいな、あまりよふかしをしすぎないようにきをつけるのだぞ。にんげんはからだがしほんなのだから。(小豆長光という太刀から見た人間は皆子どもたちのようなものであるが故、思わずそんな言葉を投げ掛けながら両手でしっかりと缶を握り込んだ。)ありがとう、これでまたがんばれそうだ。よるもおそいからきをつけて。(そう声を掛けて自販機から離れる太刀がうっかり桜の花弁を舞わせてしまわないように意識を向けられたのは幸運であったに他ならず、その分先の人混みに些か落ち込みかけていた足取りの軽さに現れていたかもしれない。)

02/02 20:42*30

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(自ら近寄ったとはいえ、いざ言葉を交わしてみると彼の大きな体躯や低い声がより強調されるような心地を抱き、ついまじまじとその出で立ちを眺めてしまった筈。ともあれ、抱いた違和感の正体に間違いが無いことが証明されたのなら話は早い、彼が缶を差し出すと共にこちらからも缶を差し出そう。そうして受け取ったそれも、差し出したそれも、きっとまだ温かいことは間違いなく。)ん。……別に、好きって訳じゃないけど……苦手ってこともない。コーヒー飲む人間は大抵がそうでしょ。(幾分か高い位置にある彼の顔を見上げながら、ふとそんな雑談めいた言葉を零す表情は相も変わらずに無愛想。次いだ労わる故の助言めいた言葉には「……はあ」なんて曖昧な返答をしたものの、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。)こちらこそ、急に言ったのにありがと。……あんたこそ、それ飲んで早く寝なよ。(人の良さそうな彼に絆されたのか、礼のついでとばかりに柄にも無い言葉を口にしては、誤魔化すように指先で頬を僅かに掻く。むず痒そうに口を閉ざしながらその大きな背中を見送った後、女はふと手元に残った缶コーヒーを改めて見遣った。じんわりと温かなそれに思わず双眸を細め、ふ、と吐いた息は夜の闇に白く立ち昇っていく。)……、……帰ろう。(そんな独り言を静かに口にして再び歩き出したなら、きっと家はもうすぐそこ。その足取りは先程よりもずっと軽く、肩から下げるカメラケースも不思議と重く感じない。そうして漸く家に辿り着いたならば、夜の時間は有意義になる筈だ。さっさと互いはやっつけて早く寝る――奇しくも彼の残していった助言通りに夜は過ぎていきそうで、コーヒーはその中で大いに活躍することは言うまでも無いだろう。)

02/03 19:56*43