(光のどけき昼の刻。ゆっくり流れる雲を追う視線はぼんやりと宙を漂う。学帽のひさしを軽く持ち上げ空を見上げる姿は、路地内でも街路樹の真下にあるから然程悪目立ちはしていないだろう。――数秒程、そうしていたが。徐に顎を下げ、そのまま視線を下降させた。その理由は、)……鳩、(足元に気配を感じて、その正体を確かめるべく。視界を変えた先に映った生き物の名前がこぼれたのは、凡そ想定外であったから。よくよく見れば一羽どころではなく、そこかしこを我が物顔で散歩する鳩たちがいるではないか。平和だなぁ、とは声にこそせぬが、眺める双眸に思考は滲み出ていただろう。そんな折だ、向かいの誰かと目が合ったのは。平素浮かぶ微笑みの表情は変わらず、)餌をあげたら怒られるのかな?(発した声は、話し掛けるというにはささやかな大きさであった。返事が無くとも、恐らく気にすることもなく。近くの鳩の意識を引こうと、白い指先を招くように動かしてみせる。)この地域で飼っている、ということなのかな。不思議だなぁ……。(人間社会に馴染む鳩を眺めながら、独り言は続く。)
02/01 20:52*12
(“良い天気の日は外に出るべきだ”というのは持論。元より屋内にいるよりも屋外にいることを好んでいることもあり、今日も青天の下機嫌よく路地を歩いて――気の向く儘赴く儘。目的を決めず歩いている最中、ふと少年と目が合った。他人と目があった際普段であれば何事もなかったかのように逸らしてしまうのに、何故か気まずさを覚えなかったのは彼の面に浮かぶ優し気な笑みのおかげだろうか。)………私は怒りはしないが、推奨されることではないだろうな。鳩は人が施しを与えなくても死にやしない。ペットではなくてあくまで野生の鳥だから、雑草でも種子でも食べて生きていける。(予想もしていなかった幼気な子どものような問い掛けに思わず目を見開いて。そして数度の瞬き後、ゆっくりと口を開いた。)この地域で飼っているのではなくて勝手に住み着いていると言った方が正しいかもしれないな。(浮世離れしているとでも言えようか。凡そ自分では思いも付かないその考えが浮かんだことに、感嘆めいた吐息を零せば、瞳を細め口元に弧を描かせた。独り言だろうけど思わず反応せざるを得ない。)私にとっては君の方が不思議だ。面白い考えをするな。純粋無垢と言うか…いや、悪くない。
02/01 23:32*17
(呟きに返ってきたのは沈黙ではなく、冬晴れの空気に凛と響く声。独特の動きで地を歩く鳩の様子を眺める瞳は已然興味を滲ませながら、へぇ、と理解を深めたような応えで。)そうだね、心配する必要はなさそうだ。痩せ細っているどころか、肥えているようにも見える……あぁいや、これは冬毛になっているだけかな。(飢餓を危惧しての問いではなかったが、態々訂正する理由も無い。心優しい解釈に眦を下げ、納得と共にまた独り言にも似た呟きをこぼす。ふっくらとした形の鳩は眺めていて飽きないものだ。しかしその視線がゆるり持ち上がったのは、“君の方が”という所感を耳にしたがゆえに。柔和な様相は崩れないまま、瞬きをひとつ。)……そうかい?(ほんの僅か首を傾ぐさまは、無自覚であることを示している。自らの言動を顧みるように顎に触れて、)動物がこんなにも堂々と街中にいるのが驚きで。僕のいた場所では、こんな光景は見たことがなかったものだから。……飼っていないのなら尚の事、これ程身近で共存出来ているのが面白いなぁって。(その表情や言葉の響きから、けして悪い意味で言われたとは思っていない。ゆえに、胸の内を明かしたのは撤回を求めてではなく、“悪くない”と称されたことへのお返しとして。その証拠に、口ぶりは穏やかなものとなる。足元をうろついていた一羽が離れてゆくと、やや間を置いたのちに学帽を被り直し。)教えてくれてありがとう。それじゃあ、僕はこれで。……あぁ、もうすぐ一雨きそうだから歩くのなら気をつけて。(軽い目礼を交わしたのなら、目的地へ向けて足を踏み出そう。離れる間際に残した助言は、有益な情報をくれた彼女へのお礼となればいい。)
02/02 01:08*23
(口を開いてからはたと気付く。独り言めいていたから、もしかしたら答えを求めていなかったかもしれないと。しかし余計だと切り捨てられなかったことに内心ほっと胸を撫でおろした。)冬毛になっているのは確かだが、肥えているのも確かだろうな。(ありふれたどこにでもいる鳩をまじまじと観察する事などはたしてこれまであっただろうか。共存しているのが当たり前でそれが己にとっての普通、鳩のことなんて考えたこともなかった。―問い掛けには頷きを以って是であることを伝えようか。不躾ではあったものの気を悪くした様子でないことに安堵しながら、彼の言葉に耳を傾けよう。)……―君は、どこか別の世界から来たみたいだな。私の普通は君の普通ではなさそうで…面白いな。世界は広い。(瞬くこと一度二度。一呼吸おいてから感嘆めいた吐息交じりの言葉を零せば、ゆっくりと空を見上げた。普通の物差しなど人によって異なり、千差万別なのが実に興味深い。思わずその姿をまじまじと見つめて。)雨…雨か。わかった!(こんなにも晴れているのにと思わないこともないが、彼の言葉は信憑性が高い気がする。確信は無いけれど信じて損はないだろうと思うのは直感か。去っていく背に「助言感謝する」と投げ掛け見送った後、己も散歩を再開しようか。一先ずの行先は彼の助言を受け、雨宿りが出来そうなところが立ち並ぶ方――そして程無くして降り始めた雨。近くにあった喫茶店に休憩も兼ねて入れば、窓際の席で外を眺めつつ注文したコーヒーを啜って独り言ちる。)…不思議な子だったな。
02/03 02:51*38