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(楽しい時間はあっという間だと、嘗てより言われていた言葉を重々理解することになった一日。もうあと少しも歩けば本丸の門が見えてくるだろう、頭上を見上げれば夕日も傾き空の端から夜が少しずつ侵食している様子が見て取れる。彼とふたりきりでの外出はとても楽しかった――楽しかったが故に、本丸へ戻る足取りは重くなっていく。審神者という立場でありながら何たる無様な、なんて脳内の太刀が言うけれどきっと本刃であればゆっくり帰っておいでと笑ってくれるだろう。近付く夜に溶けるような彼を横目に、ふと足を止めて息を吐き出した。あと少し、もう少し。)大倶利伽羅、少し待ってもらっても良いかな。(小さくそう声を掛けた。夜警の用意か遠くにうすぼんやりと本丸の篝火が橙に滲む中、跳ねる心臓を抑えようと深々と息を吐く。少しずつ夜の足音が近づいてくる中、少しでもふたりきりの時間を引き延ばそうと考えて出たのは酷く平凡なもので。)――…今日は少しでも楽しんでもらえたかな、君の誉の褒美だというのに僕の方が楽しんでしまったような気がするけれど。(楽しんでいたのは勿論事実、きっとこんな機会はもうないからと出来るだけ多くの思い出を残しておきたくて。彼の誉の褒美にかこつけてと思わなくはないが何せ審神者という立場なのだから。本丸の門はまだ見えない、せめて夜が空を覆い隠してしまうまではと願わずにはいられない。)

06/25 14:22*16

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(植物園にて、新緑より降り注いでいた木漏れ日はいつの間にか傾き、もうすぐ今日の終わりを告げようとしている。決して多くの言葉があったわけでは無い。けれど、例えば彼女の幼い頃の思い出だとか、季節の花の名前だとか、猫の柔らかな毛並みだとか。そういった些細なものが積み重なり、掛け替えのない時間が二人の間にあったことは紛れもない事実だろう。――帰り道、行きと同様に自らの腕を差し出していたひと振りは彼女の言葉で足を止める。本丸まではあと少し、といったところだが――遠くの篝火を一瞥した後、彼女の方へ向き直るのにそう時間は掛からなかった。まるで都合が良い、とでも言いたげに。)楽しんでいなければとっくに帰っている。……それに、あんたが楽しかったなら、それも俺の褒美のひとつだ。(低く零された一言は何とも回り諄いもの。それでも音色はどこまで柔らかく、ゆっくりと呟き落とされた。宵闇の気配はまるでひと振りの背をせっつくようで、暫しの間の後、まるで観念したかのように薄い唇は開かれていた。)――……、……ひとつ聞く。(切り出した言葉はあまりに唐突だったかもしれない。だが、遮られない限りは彼女の頬へ掛かる髪に手を伸ばし、そっとひと房を耳に掛けただろう。それは此度の逢瀬のはじまりと全く同じ動作だったことを、このひと振りだけはしっかりと記憶していた筈。)誉の数だとか、近侍だとか、憧れだとか。……余計なものを抜いてあんたの時間をもらうには、どうすればいい。(溶けるような黄金色が、彼女の薄紅色を捉えている。射抜くような熱の籠った視線は、彼女が唇を開くまでは決して逸らされはしないだろう。夜の帳は、未だ下りはしない。)

06/25 20:16*28

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(向き直る彼の輪郭が仄暗くなりつつある道中に浮かび上がる、ゆっくりと紡がれたその言葉の糸を推し量るにしても勝手に都合の良い方に捉えても構わないのかと一抹の期待が過り――すぐに打ち消した。それでも喜びをひた隠すためのポーカーフェイスは今日一日で随分と剥がれ落ちてしまったが故、頬や耳に熱が灯り僅かに紅潮するだろうけれど夜闇近付くそこでは然程目立ちはしないだろう。不意に、彼の口から飛び出す言葉に目を瞬かせた。今日は驚いてばかりだなと上げた顔の傍へ手が伸び、髪を掬って耳へかけると途端に熱を持った顔の色味はますます濃くなっていく。無意識にこくり、と唾液を飲み込んだ。)……、そん、(なこと、と続くはずの声は静かに細くなって立ち消える。だって、まるで、彼がもっと自分と一緒に居たいと考えてくれているようだと。何かの冗談だろうかと考えかけて彼がそんな冗談を言いだすような刀ではないと思い直す、は、と喉奥で詰まっていた息を吐き出して離した手の両の指を腹の前で僅かに絡め、)僕は審神者で、君は刀剣男士だ。君だけを特別扱いするわけにはいかない、…君だってわかるだろう?(もっともらしい言葉はけれど、柄にもなく絡め合った指や左右に落ち着きなく揺れ続ける視線の前には説得力の欠片も感じ取ることは出来ないかもしれない。そのままその言葉を真として貫き続けられるほど、今日の女は自身の目指す王子様にはなりきれず。)……僕だって、君とこうして過ごせる時間がこれから先もあれば良いと思うんだ。

06/26 21:11*63

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(零れた音色が、全てを形作る前に掻き消えていく様を、ただ静かに眺めていた。まるで何かを飲み込むかのように、齎される言葉は尤もらしい言葉へと変化していく。彼女の吐く正論の前でも眉一つ動かさない太々しさは、きっと昔馴染みが知ったら苦笑のひとつでも浮かべるに違いない態度だ。)随分と堅苦しい正論だな。……余計なものは抜きだと言った筈だが。(クイ、と己が顎を上げながら話す様は些か反抗的にも映るやもしれない。しかし、その視線は相変わらず彼女から外れることは無い。寧ろ、先程よりも逃すまいとした鋭さを孕み、双眸は僅かに細められていた。)審神者としてのあんたを独占したいとは言っていない。俺は、ただの“あんた”に用がある。(目の前で左右へと逃げる視線、彼女の零す言葉の温度。それらを見逃す程鈍感には出来ていなかった。それもこれも、今に至るまでの間陰ながら彼女を見つめ続けていたが故だろう。耳へ髪を掛けた方の手を伸ばし、その指先で僅かに彼女の頬へ触れる。宵闇交じりの仄暗さの中で、僅かにその頬が朱に染まっているような――そんな気がして。)もう一度、此方をよく見ろ。俺はあんたの本心が聞きたい。……此処にいるのは、ただのあんたと俺だろ。(いっそ痺れを切らして告げてしまおうか――そんな短気は未だ潜ませたまま、打刀は低く呟く。静かすぎるくらいに寡黙な男も、今この時だけは饒舌だった。ここにはお節介な昔馴染みたちも、彼女が憧れる刀派のものたちもいない。気が付けばさらに一歩、二人の距離は詰められていることだろう。)

06/27 01:29*74

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(自らを射抜く金色の視線が突き刺さるようで自然と背筋が伸びる、それでも彼の顔を見るには至らない視線は彷徨うのを止めて僅かに足元へと落ちた。そうでもして顔を俯かせないと彼の言葉に都合の良い解釈を示した脳が、体中の熱を頬へ集めるよう指示を出している事を悟られかねないから。それも彼の指が頬へ触れると隠した意味もなくなってしまうだろうけれど。一歩後ずさりかけた足を引き留め暗くなりつつあるそこで静かに響く彼の言葉に震える息を吐いた、足元を見つめていた視線を少しずつ持ち上げて――そして。)……、都合の良い夢を見ているみたいじゃないか。(呟く、吐く息と同じように緊張に震える指を持ち上げて彼の手へと触れた。熱を帯び朱色に染まった顔は果たして彼に見えてしまっているだろうか、一度目を伏せて再び持ち上げる。夢幻のように彼が消えてしまうことはないけれど。)まるで君が、もっと僕とふたりで過ごす事を望んでくれているみたいで……。(彼の手へ触れていた指を離しそのまま一度顔を覆う、すぐに下ろしてしまうのはそんな事でこの熱を隠しきれるはずがないとすぐに察したから。不意に吹く風が木々を揺らしたかと思うと一歩分距離が近づく、揺れる視線はそれでも彼を見つめて僅かに眉を下げた。都合の良い夢だと思えたのならばきっと女は今すぐにでも胸の奥にひた隠していた想いを伝えていたことだろう、格好良さだとかそんなことは二の次だ。同年代の女性に紛れるには大き過ぎる体躯、フリルやレースやスカートなんかひとつだって似合いやしない女はいつの頃からか同じく似合わない恋と引き換えに格好良さを追求し始めた。けれど恋は落ちるもの、彼の前に立っているのは王子になり切れなかった恋する女だった。)

06/27 20:19*92

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(頬へと伸ばした手の甲に、彼女の細い指先が触れる。瞬間、金色のまなこは僅かに瞠目したものの、薄紅色の瞳がゆっくりと瞬く様から視線を逸らすことはできなかった。頬の熱、微かに震える吐息と指先。それらに期待をするなという方が可笑しいというものだ。浅く吐いた息がもどかしい。――嗚呼、この身が緊張しているのか、とひとり漸く気が付いた。)……望んでいる、と、そう言えばあんたの心が手に入るなら、易いものだ。(触れ合う手が離れ、そのかんばせを覆い隠す。それを良しとしないひと振りは、追い駆けるかの如く彼女の手の甲をやわく掴むだろう。勿論、抵抗や拒否の色があれば無理強いはしない程の力ではあるのだが。手の向こうで此方を見遣る、揺れる瞳が愛おしい。決して言葉にはせずとも、双つの黄金は弓を引くように細く慈しむ視線を向けていた。)……これは夢じゃない。都合の良い、現実だ。(低く呟いた声が、熱で掠れている。もう一歩、許されるならば更に歩みを進めた筈だ。――彼女が格好の良さを求める根底に、その体躯や与り知らぬところでの経験があることは大倶利伽羅にも何と無しに伝わっていた。だが、それだ何だと竜のひと振りは思う。真っ直ぐであるのに妙に繊細であるところも、男性然としているのにどこまでも柔らかい空気も、全て元来の彼女自身のものだと解釈しているからこそだった。砂糖菓子のような存在よりも、流れ落つ清き河が如き彼女ただ一人を求めて、ゆるりと唇は開かれた。)――あんたが好きだ。一人の女性として、一人の人間として。

06/27 22:43*101

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(本当に都合の良い夢を見ているのではないかとついさっき現実だと実感した女は考える、心臓は激しく脈打ち今にも胸の内から飛び出してしまいそうだ。それでも視線は彼から外すことが出来なくて、形の良い唇が緩やかに動く様をまるで引き込まれるように静かに見ていた。僅かに空気が震え彼の姿が一歩分大きく視界に映る、師と仰ぐ太刀と一緒に見掛ける事が多い為か痩せて細い体をしているように思えるその身はけれど確かに刀を振るうための筋肉を備えていて、性差故か生まれ持ったものか筋肉の付きづらい身からすると羨望すら覚えるほど。当然、恋い慕う相手が間近に迫って冷静でいられる程の精神力は持ち合わせておらず、太鼓を打ち鳴らすように響く鼓動から逃れようと一度深く静かに息を吐き――。)……っ、(それは途中で強張った、彼の唇から零れ落ちた言葉は俄かには信じ難く女は間抜けにもその場で彼を見つめたまま何度も瞬きを繰り返す。ひとつ、ふたつ、たっぷりの間を置いた後彼の言葉が脳に染み渡るとこれ以上ないほどに顔は赤く染まった。はくはくと金魚が空気を求めるように、人の身には無意味な口の開閉の後絞り出せたのは日頃刀剣男士たちを率いる時には到底聞かせる事の無いようなか細い声で。)僕、……僕は、あぁ、本当はいけないんだ。僕は審神者で君は刀剣男士なんだから。――でも、……此処にいるのは君と、……私だけだとそう言ってくれるのなら。(目を閉じて、息を吐く。王子様の仮面は剥がれ落ち、情けないと眉を下げながらも静かに女は彼の手へ向けて自らのそれを伸ばした。)……私も、君が好きだよ。一人の男性として、…かけがえのない存在として。

06/29 00:49*138

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(彼女の隣に昔馴染みの姿がある様子は、最早本丸では当たり前の光景のひとつ。――ただひと振りだけは、其れを静かに、されど内にどうしようもない感情を抱えながら眺め続けていた。何故、俺じゃない。そう口に出せる程素直でもなければ、聞き分けが無いわけでもない。ただ、それ故に虎視眈々と待ち続けていたのだ。この身とて主に相応しいのだと、身を焦がす一人の男なのだと、その存在感だけは雄弁に物を言っていたに違いない。――それが、今。内心を吐露した瞬間、ほんの少しだけ高い位置にある彼女のまなこはこのひと振りにのみ注がれている。――嗚呼、何たる。)……良い顔だ。(つい口を吐いた一言は、みるみる内に朱に染まる彼女を見遣ってのもの。それはもう満足気に響いただろう。やがて齎されたか細い声には、一言一句聞き逃さんとばかりに耳を傾けていた。ぽろぽろと剥がれていく仮面が可視化したかのように、一枚、また一枚と本当の彼女が現れる心地。やがて己が手に彼女の温もりが重なった時、金色の双眸は僅かに瞠目を示したことだろう。それもすぐに元に戻っては、噛み締めるかのように緩慢な瞬きをひとつ。)……やっと、言ったな。……その言葉だけを求めていた。ずっと。(はぁ、と吐き出される呼気は溜め息などではなく、甘さを孕んだ感嘆符。そのままもう一歩近づいたならば、二人の距離は殆どゼロとなっただろうか。)今だけは俺だけのあんただ。……文句を言うなよ。(釘を刺すように一言を告げた後、無骨な腕はあっという間に彼女の身を引き寄せてしまうだろう。その距離感は薔薇園での出来事よりも更に近いものとなる筈で、余程嫌がられない限りは、矢張り開放する気は無さそうだった。)

06/29 02:20*146

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(どれだけ抑え込もうとしても跳ねあがる心臓は落ち着くどころか一層激しく脈打つようで、触れる手の温もりは未だに現実味は薄い。本当に、と小さく口の中で呟くと同時に薔薇園で強く感じた彼自身の香がより近付いてくる。あっと思うより早く殆ど無くなってしまう僅かな空間、そうして正面から伸びて来る腕に引き寄せられるまま蹈鞴を踏むような足は半歩前へ。)…っ、……はは、なんだろう、…まだ夢を見ている心地だ。(小さく呟く声は仄かな笑いに語尾が震える、静かに背へ腕を回して抱き締め返すと不思議と跳ね回る心臓は落ち着きを取り戻し始めたようで。永くを生きるであろう彼らからすれば人間の一生など瞬きひとつのようなものだと、心の奥底に沈めたままでいる事を決意していたはずの恋心は彼の言葉ひとつでこうも簡単に浮上してしまう。抱き合い重なる胸の奥とくとくと脈打つ心臓の微かな感覚は彼に伝わってしまうだろうか、ほんの数分前まではこの音ひとつ知られてなるものかと躍起になっていたことが嘘のよう。本丸がもう目と鼻の先であることも己が刀剣男士を率いる審神者であることも忘れて、今はただの恋い慕う一人の女として溶け合う二人分の体温を受け止めるばかりで。)…本丸に戻れば私は審神者で、君は刀剣男士だ。だから、…もう少しだけ。(強請る声はあくまで静かなものではあるけれどほんの僅かな甘さが滲む。夕焼け空はいつの間にか向こう側へと追いやられ、空は濃紺と淡橙が混ざり合う複雑な色合いを広げていく。宵闇に包まれるまであと少し、ほんの僅かに腕へ力を込めた。)

06/30 21:16*179

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(震える声で夢と口に出す彼女は既に腕の中。背へと手が回る頃、逃してやる気はさらさら無いとばかりに抱き締める力を強くした。勿論、彼女を慮った程度の力ではあったが。)……そこまで夢にしたいのか? 生憎だが、もうただのあんたは俺のものだ。諦めろ。(フン、と短く鼻を鳴らして告げる様は、忠犬宛らの刀剣男士たちが知れば憤慨ものなくらいの不遜さで。しかし、重なる心音こそ現実の証。隙間無く寄り添う二人の間で、二つの音はとくん、とくんと耳を打つ。その速度が若干早いことは悟られないといい、というのはひと振りの内心に限った話だろう。)……ああ、わかっている。(甘さの滲む、しかし確固たる口振りに耳を澄ませ、静かに瞼を閉じる。強請られるがまま寄り添うことが出来る時間は短い。人と刀。人間と付喪神。数多の刀剣男士を励起し、従え、戦う審神者という立場。それらを理解しない程浅慮でも無し。ただ、譲る気も無いというのが大倶利伽羅というひと振りの強情な点でもあった。そっと耳打ちをするように唇を彼女の耳朶の方へと寄せ、低く呟く。)――悟られないように逢いに行く。……次の逢瀬は、あんたの部屋でいい。(その意図がどのようなものか、まではきっと語られない。彼女が捉えたいように捉えたならそれでいいとさえ思っている。それが艶っぽいものであっても、穏やかなものでも、大倶利伽羅にとっては望むところなのだから。)……それと、ひとつ断っておくが。(ふと顔を上げ、彼女の頬へ触れながらに切り出す語り口は唐突。一瞬視線を迷わせるものの、すぐ目の前の彼女を見遣る。そして、)恐らくだが、光忠にはバレている。隠しても仕方が無いぞ。(しれっと告げた一言に彼女が如何なる反応を示したとて、少しだけ持ち上がった口端が変わることはなさそうだった。)

06/30 22:47*186

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(夢にしたいなどと誰がそんな事を考えるだろうか、――夢見心地で在ることは否定できない。諦めてきた彼が今は自身と抱き合っているのだから。あと少し、もう少しと強請る合間にも夜は空を浸食していき本丸を示す灯りも強くなる、何時までに戻ると明言はしていなかったがあまり遅くまで外に居れば主主と慕ってくれる刀剣男士たちに心配をかけてしまうかもしれないと審神者としての意識が過る。離れがたさは背へ回した指が彼の服を摘まむ行為に現れる、不意に空気が揺れたかと思うと彼の低い声が鼓膜を震わせ、)…っふふ、擽ったい。わかったよ、君が好きそうな菓子を用意しておこう……人払いくらいの我儘は許してもらえるかな。(きっと彼と過ごす時間は場所を問わず愛おしく尊いものになるだろうと想像に難くない、抱き締める腕を解き熱を持ったままの頬へ触れる掌へ擦り付くように首を傾けるも切り出す言葉に瞬きひとつ。なんだろうかと同じ高さにある目を見れば僅かに振れたそれが自身の目に定まり、そして――)な……ッ、!(硬直。師と仰ぐ刀派の祖が一振りとして特に一目置いているが故、近侍を務める回数の多いその刀に名前こそ出さずとも恋愛相談めいた言葉をぽろぽろと溢していた事もまた事実で赤くなっていた顔が青くなったり赤に戻ったり口角を持ちあげる彼とは裏腹に女は大きく肩を落とした。そうして彼の腕を握り。)よし、戻ろう、大倶利伽羅。師匠は君の馴染みだろう?挨拶をして正式に認めてもらわないとね、大倶利伽羅君を僕に下さい――だと物扱いをしているみたいで嫌だな…あくまで君は刀だけれど僕は君を個人として扱いたい。(人間のエゴと言えばきっとそれまで。己が生き方を歪めはしないけれど彼と共に在る事も諦めない、欲張りこそが人間の象徴なのだから。ふと足を止め彼の手を持ち上げてその掌へ唇を寄せた、どうか。)果てる時まで私と共に在って欲しい。愛しているよ、大倶利伽羅。

07/02 13:45*232

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(背を引く彼女の指が、どうにも愛おしい。離れ難さを感じているのが一方的ではないと解かるだけで、恋い慕う心は掬い上げられる心地だった。故に、密約を囁くように彼女の鼓膜を揺さぶる行為を楽しむ竜が一匹。擽ったがる仕草ですらその一挙一動を目に焼き付けたくて、「……ああ、なんでもいい。あんたと二人なら、それで」なんて言葉は本当に彼女の言葉を聞いているのか、それとも聞いていないのか。――そして頬へ触れる手に彼女が擦り寄る頃、ふと告げた事実によって目の前で巻き起こる百面相にはつい可笑しなものを見る心地で。「おい、落ち着け」と声を掛けるが先か、それとも後か。握られた腕にはつい視線が落ちるだろう。)……は? おい――、(唐突に握られた腕を引かれることに異論はない。ただ、まさか件の太刀に三つ指を突くような事態になるとは思ってもいなかったが故のやんわりとした抵抗の声だった。しかし、それも彼女の言葉を全て聞いた頃には、はぁ、という短い溜息によって消化されてしまう。)……俺は刀だ、扱い方なんかどうでもいい。……だが、あんたがそうやって欲を張る姿は悪くない。だから、好きにしろ。(凛とした佇まいの彼女が己へと向ける欲が嬉しくない筈も無い。諦めたような言葉の中に、分かりづらい喜色は確かに存在していた。 ――斯くして、恋仲となった一人とひと振り。本丸へと戻った後は燭台切光忠への挨拶とやらが有言実行されるに違いない。そしてかの太刀は「良かったね、主。伽羅ちゃん」と柔和に笑ってみせるのだろう。そこへ盗み聞きをしていた鶴丸や太鼓鐘、長船派の面々が次々にやってくる――なんて展開もあるのやも。その喧騒の中から彼女を連れ出した後、男は静かに愛を紡ぐ。)……俺はあんたが果てたとしても、離してやる気はない。――愛している、主。(そっと左手を引き寄せ、口付けたのは薬指。その姿は恋に身を焦がすひとりの男でしかなかった。)

07/03 04:23*250