(誉を十。指折り数えていたわけでもない。敵を斬った数が多かった証はさほど気にも留めていなかったために誉を意識して管理しているということはなかった。ゆえに、お願いを聴いてもらえる、という段になって初めて瞬きを繰り返し、やがて呟くようにして、)…あんたと出かけたい。…現世でめしがうまいところがあるらしい。(とは、いささか言い訳じみた一言だったろうか。彼女の予定が空く日に予定を委ね、同室の学者先生に常ならぬ様子で幾度も話しかけ――現在。本丸から出て、現世でも評判の通りに顔を出したところだった。何でも、買い食いにも腰を下ろしての食事の席にも秀でているらしい。様々な飲食店や屋台の立ち並ぶ町の一角で流れ出てくる食事の匂いが食欲を当然のように刺激していく。昼飯時というせいもあってか随分と盛況しているようだった。空腹を訴える腹をなだめるようにさすっては。)…万屋街みてぇに同じ顔があちこちにいるわけじゃねぇってのは不思議なもんだな。(現世で慣れないことの筆頭はこれだ。現世に向かうということもあって刀は目立たないようにして、衣服も内番着よりかはいくらか汚れの少ないものに変えていた。とはいえきっちりと首元すらも占めるような格好には馴染みもないものだから、あくまで戦闘服のように汚れたり破れたりはしていない程度のラフな格好にすぎなかったが。)……適当に食べ歩きでも、と思ってたが、先にある程度座って腹満たしてからにすっか?(彼女に同行を頼んだからと言ってこれまでプランを打ち合わせるだとかいう事は一切念頭になかった。ひとりできていれば好き勝手に過ごしていたが、彼女がいれば話は違う。恋しい人の考えを知りたがるだけの単純な気持ちで、無愛想なまなざしを向けていた。)
06/17 00:21*2
(事務仕事を手伝ってくれている松井江から、誉が十個貯まった刀剣男士がいるよと教えてもらった。彼に直接伝えに行き、その場で願いを聞いたならば二つ返事である。)現世で一緒にご飯ね。行けそうな日を確認して、連絡するわ。(執務室に戻って近侍に事情を話せば、この日なら空いてると壁掛けカレンダーのある日付を指さした。デート楽しんでこいよな、なんて屈託なく言われてぽかんとする。)……デート? 一緒にご飯なら後藤くんとだって行く、じゃない。(淡い恋心から思わず意識してしまい、言葉じりが弱々しくなった。頬の熱をどうにか冷ましたのち、改めて彼に予定を伝えただろう。)こっちに来るのは久しぶりかも。(彼と共にやってきた通りには、あちらこちらに食欲をそそる誘惑がたくさんあり瞳を輝かせる。現世も万屋街も人が多いのは同じだが、万屋街は神社や寺院に近しい清らかな雰囲気を感じるのに対し、現世にはそれが全くない。ハイネックのノースリーブニットにスカンツとミュール、日頃のお出かけと変わらない装いに留めれば下手にデートを意識しないで済むだろう、という作戦は今のところ功を奏している模様。)もし逸れても、お互いすぐに見つけられそうね。ここには私の肥前くんしかいないんだもの。ふふっ、そうね。最初は落ち着いて食べましょうか。(彼の無愛想なまなざしも見慣れたものなれど、こればかりはいつも通りと受け流せずに見惚れ、そのまま彼の向こう側のパン屋へ目を向けた。)後ろのパン屋さん、揚げたてのパンを提供って書いてあるわ。いちおしはカレーパンですって。あっ、でもあんパンも美味しそう。(胸元の騒がしさを隠すように少し早口で話してしまったが、パンが美味しそうで迷っているのも本当である。彼さえ良ければ、パン屋で好みのパンを買って店先のテラス席でいただこうか。)
06/17 20:10*29
(逢瀬、と表現するには距離が足りない。進展を求めているというよりはもっと単純に共にいる時間を欲しがっただけだった。その欲望自体、ほかならぬ自分が自覚し許容しているのは恋心があってこそ。人を斬る事でなく、ただともに過ごす時間。万屋街で審神者と刀剣男士として過ごすではなく、現世に向かったのは肥前忠広を知る余人の声を必要ないものとしたが故。)まあ、必要なことってのは大概万屋街で事足りっからな…。(こちらもあまりなれていない場所ではあるが、彼女が瞳を輝かせる姿を見れば場所の選択自体はそう間違っていなかったのだろうと認識して穂のやわらかな安堵が胸元に花咲く。さほど互いに気合を入れ過ぎてオシャレをしているというわけでもなければ、ひとまず会話に不自由するほどに緊張感に見舞われることもなさそうだ。「ほんとうにそれでえいがか?」と心配げに訊ねてきた陸奥守の姿は脳裏で蹴飛ばしておく。)…………、そう、だな。…あんたを探す方が時間を食いそうだ。おれは、あんまり聞き込みだとかは得意じゃねぇし。ああ、それでいくか。(私の肥前くん。何の気なしに告げられたであろう所有格が胸裏を刺激し湧き上がる頬の赤みを呼吸で退け、一つ頷く。多少は肥前忠広という刀剣男士の性質も理解されている万屋街と現世では、聞き込みに苦労するのはこちらの方に違いないと軽く耳裏から頭皮へと指先を差し込んで。)あげたて。いいな、それ。カレーパンって結構場所ごとで違うよな、それにしようぜ。…別に二つ買やいいだろ?せっかく手があるんだし、気になった種類かうとすっか。……半分にわりゃ、多く喰えるだろうし。(半分こ、を所望することに他意はなく、多くの種類を食べたいだけ、のはずなのに。要望する段になって一瞬口籠ってしまった。ともあれ、気になったパンを購入し、風の気持ちいいテラス席までは空腹の助けもあってスムーズに進んでいたはず。)いただきます。
06/17 20:32*30
(返事まで妙な間があった気がした。どちらかといえば落ち着いた話し方をする彼のことだから、たまたま長かっただけだろうと思うことにする。他の刀剣男士相手ならば、例えば近侍ならば気兼ねなく尋ねてみるのだが、惚れている相手にだけ変な遠慮をしてしまうのも世の常だ。)こっちに居る間は傍にいるから、安心してちょうだい。(彼の隣を歩いていれば、もし逸れそうになっても彼の手なり腕なりを掴むことぐらいは出来るはず。探させる手間は掛けさせないと言わんばかりに笑いかける。自分がいいなと感じたものを、彼も同じように思ってくれた。ただそのことがとてつもなく嬉しくて、空腹を忘れそうになる。)二つ買いたいのは山々だけど、まだまだ食べたいものはたくさんあるし……。(最近、食欲が落ちているのが悩みの種だった。半分こなる提案には、目から鱗が落ちる。めでたくカレーパンとあんパンを買って、それぞれ半分にちぎった。手を触れずに済んだ包みの半分を、彼へと差し出そう。)はい、半分こ。それじゃ、いただきます。(きちんと両手を合わせてから、カレーパンを一口。ゆっくり噛んで美味しさに浸る。コク深いカレールーがたまらない。)半分こするのは学生のころ以来だわ。審神者になってからは多分、初めてよ。これはこれでいいものね。一緒に食べてるって感じが、いつもより強い気がするわ。(舌や腹でなく心で感じる幸せが確かに在って、目を細めた。)肥前くんは、普段からよく半分こしてるのかしら? 南海先生や陸奥守くんと?(主とはいえ本丸にいる全刀剣男士の交流事情までは流石に把握しておらず、他愛無く尋ねてみる。)
06/18 11:32*57
(時折彼女の前で妙に言葉に詰まったり沈黙したりすることは今に始まったことではなく、それは概ねどのような感情を表明するのかと一度考えこんでしまっていることに由来する。恥ずかしさを隠そうとしたり、泳ぎたがる視線を軌道修正したがったりと常ならぬ調子は彼女の前では特に多いが、多分人を好きになるとは、そんな常ならぬ調子を多く抱えることでもあるのだろう。彼女が笑いかけてくれるそのさまに言い表せぬほどに喜びを抱いたこともまた。)……、頼り、にしてる。(喜び、気恥しさ。嬉しさ。そうしたものに満たされて小さく頷くそんな言葉なんて、やすやすと口にするわけのない男だというのに。)そりゃあ、そうだが。…まあ、ある程度ならおれの方が胃袋は大きいだろうし。(彼女とは相反して食欲は割合に増している。特に彼女と相対するときにおいては。幸福が箸を進める喜びにも変わるのだから、ひねた脇差の性根とて恋心には素直なのかもしれない。彼女から半分を受け取って、食前の口上を述べたのちにそのまま口をつける。やはりうまい。カレーのルーもパン自体も美味で、自然と口元が喜びを引いている。)初めて?近侍や短刀連中と、よくやってんのかと思ってた。くえる量は減るが、…いつもとは違ううまさが、ある気がする。(審神者になってから初めてであれば、刀剣男士とは初めてということ。よもや自分にそれが与えられるとは思っても見なかったから驚いた風に瞬いて、次いで口にした比較の言葉に無愛想なだけでない感情の発露が滲んでいなければいいのだけれど。)いや。陸奥守とはねぇし、先生は……一回実験に付き合ったが、それっきりだな。(恋心という形容すら定かではなかった頃。自分の感情を見定めるために請うた結果の実験を思い返せば、苦いようなむずがゆいような、奇妙な顔で返答して。)あんた、他に気になってるめしはないのか?(カレーパンを食べ終え、あんパンに手を伸ばしつつ)
06/18 18:14*72
(耳打つ言葉が、胸の奥に熱いものを灯らせる。他ならぬ彼から頼りにされるのは、取るに足らない人間の自分をちょっとだけ誇らしく思えた。笑みに面映さが滲む。たくさん食べる彼の姿を思い出しながら、胃袋の大きさを朧気に想像してみては、そういうものかと性格上すんなり納得してしまう。食事をしているときの彼はどことなく幸せそうで、その姿を見るのが好きだった。)後藤くんもたくさん食べる方だし、他の子も体は小さいけれど食欲旺盛な子が多いわ。林檎とか西瓜は切り分けたりするけど、こんな風に半分こは……やっぱり初めてね。今日は天気もいいし、外で食べてるからきっと美味しく感じるんでしょう。(いつもと違ううまさは、慣れていない現世の新鮮さが手伝っているのではないかと相槌を打つ。半分この経験を何とも言えない顔で話す様に、思わず眉を顰めた。)どんな実験だったのか、聞いてもいい? 話したくなければいいわ、南海先生に聞いたりもしないから。(怒っているのではなく、あくまでも心配している。二振りが合意の上で実験したのなら、主であっても口を出すのはお節介だと分かっていて、控えめに問うた。入れ替わるように投げられた問いかけに答えるべく、ぐるりと周辺の店へ目を向ける。)あっちのコロッケ屋さんと、三つ先のドーナツ屋さんと、その隣のチュロスと――(淀みなく挙げていたが、茶色い食べ物ばかりだと気づいてしまって黙り込んだ。いくらなんでも偏りすぎて恥ずかしくなり、俯いてカレーパンの残りを食べ始める。)
06/19 00:36*91
(男女の別であるのか刀剣男士と人間としての違いであるかはさておくにして、彼女との間にある違いは数多い。それでいいと思っている。自分とは違う存在に対する恋やら愛やらというものが幸せを結ぶのだと気付いていた。)おれの前でもめしを食うのにそう遠慮がちって連中はねぇな。……あんたにはもう、初めてのことなんざないと思ってた。外で食べるってのは…、まあ、いつもと環境が違うってことだな、たしかに。ハレの日より、っつうか。(特命調査を成功させるような審神者であるから、てっきりもうとっくに刀剣男士と交わす初めてというのは自分には残っていないと思っていた。いくらか瞬いてぽつりとつぶやく。特別に関してはその理由も否定できないと頷くも、「それだけじゃあないと思うが」とつづける言葉は独り言めいていて。)……あー……。おれが…、なんつーか。自分の感情ってやつが、よくわかんなかったことがあったんだ。それを先生に相談したら…、本を見て、書かれてる行動をしてみて、それをしてる時の感情だとか、みたときの感情だとかを想像してみたら理解に近づけるんじゃないかって、そういう実験だ。何も危ないことはしてねぇよ。(半分こをしている恋人の書かれた本。先生と半分こをしながら、主としたとき、主がしているのを見たとき、先生とするとき、陸奥守とするとき。間誤付くようにしたのはいい格好をしたがってそれをし損ねただけだった。心配には及ばないと軽く首を振って。)揚げ物多くねぇか?まあ、こういうとこは揚げたてだろうし、きっと格別だよな。(よどみなく上げられた彼女の希望にうなずいて見せを眺めていく先を決める。恥ずかしがる様子の彼女の理由には気づけないまま、期待を寄せるようにしてパンをかじっている。やはりうまい。)
06/19 01:10*93
私のことを買いかぶりすぎじゃないかしら。まだやってないことが、きっとたくさんあるのよ。(明確に何をとはすぐに挙げられないが、未だ知らない物事は多いはず。これからの人生に期待しているかのごとく晴れやかに言った。彼がいつもとの違いを感じる要因は、明確に解き明かしてしまわなくても良いのかもしれない。美味しいと思えるなら、それで十分――ふと、近侍との会話を思い出してしまい、心の中で必死に否定する。デートだなんてとんでもない。実験は南海先生から持ち掛けたのだろうと予想していたため、彼の方から相談したのが意外で目を丸くする。)あら、そんなことがあったのね。肥前くんが、ひとりで思いつめたりしないで良かった。(愁眉を開き、安堵の息を吐く。話し難いであろう実験について、深く追及するのは憚られた。気にならないと言えば嘘になるが、おいそれと触れていいものではない気がするのだ。実験を経て、分からなかった感情が何だったのか、正解ないし納得のいくものが得られていればいいと思うばかり。揚げ物が多いという最もな指摘に、思わず呻き声をあげながら胸元を押さえた。顔を上げられないままカレーパンを食べ終えて、次にあんパンを手に取る。)クレープとかアイスとか、可愛いことが言えなくてごめんなさい。美味しいものって大体は茶色いから、つい……。(あのまま気付かなければ、唐揚げ屋にも行きたいと言っていただろう。あんパンをかじれば程よい甘さとふわふわの食感に感動して、落ち込みかけた気持ちが和らぐ。そろりと伺うように顔を上げた。)肥前くんは、何か食べたいものはないの? 今日はあなたのための日なんだから、私が食べたいものばかり言うのは悪いわ。
06/19 16:53*112
……そうかぁ?…まあ、本人のいう事だから、そうかもしれねぇか。…おれも、………また、あんたのはじめてが見つかるのは、悪かねぇな。(初めての経験というものは重要な物事の様に認識しているから、自分も立ち会いたいという希望を口にするのに迷ってまた一つ迂遠な言い方をした。恋の心を真正直に向ける事など、唇はちっとも慣れてくれない。もとよりさほど口がうまくはないので必然的かもしれないが。)あんたが先生も招いてくれたおかげだよ。…思い詰める間はなかったな、ありゃ…。(嬉々として実感の提案をしていた学者先生の姿を思い返せば少しばかり口元は呆れ交じりの苦笑を彩るも、彼女に向けた感謝はそれはそれとして本物だった。こういう時でないと伝えることがあまりに苦手な性分はいつか改善すべきだとは胸の片隅で思っているのだけれど。彼女が胸元を抑えるそのしぐさ。陸奥守がやっていれば睥睨でもしたそれが彼女がするとなればとたんに微笑ましく愛おしくて、ふは、と、呼気を吐き出すように少し笑った。)いいじゃねえか。俺も揚げものはうまいと思うし、あんたのそういうところはす、……正直で、悪くねぇと思うし。(口走りそうになった好き、の形を少し変える。これは恥じらいだとか以前に、自分ならばこの状況での「好き」をからかいととるだろうという自己認識による。彼女が自分と認識を同じくしているわけではないと理解してなお、その言葉を口にする状況は選びたがっただけのこと。)おれは、此処ならなんでもうまそうと思ってたし、別に気にしなくていいんだが…唐揚げとか、牛串とか、肉まんとか……(指折り数える対象がついつい肉系に寄ってしまう。別に甘いものも嫌いではないのだが、何せ甘いものなら既にもらっているようなものだから。)
06/19 22:56*123
(彼が纏わる初めてのことは、以前にも一度あった。彼への恋心を自覚してから共にした食事である。好きな人と向かい合って食事をするのが初めてで、いつもより時間をかけて食べたあの日が懐かしい。次の初めてが見つかるとすれば、彼がらみの可能性が高いのかもしれない。とても言えやしないけど、そうだったらいいなと目を伏せた。)私はみんなに南海先生のお迎えを頼んだだけよ。あんなところに放っておけないじゃない。ふたりは仲がいいのね、羨ましいわ。(思いつめる前に相談したと捉えて、同室の二振りがすぐに相談できる信頼関係にあるのが伺えた。最後にうっかり本音が零れ落ちていったが、気付かぬまま。自分の偏った食の好みを、悪くないと笑って受け入れてもらえたのは嬉しい。だが、それはそれで恥ずかしかったし、彼が何か言葉を言い換えているのが気遣われたように感じられて居たたまれない。)……そう言ってもらえて、気持ちが少し楽になったわ。ひとつお願いがあるの。今日帰ってから、後藤くんか歌仙くんに何を食べたか聞かれても内緒にしてくれる?(食べかけのあんひパンを握りながら、上目遣いで問いかけた。本丸にいるときは肉や魚と野菜をバランスよく食べるのだけれど、外食となれば偏ってしまうのを近侍と始まりの一振りは知っている。デートだから大目に見るよと彼らは言っていたけれど、デートじゃないと頑なに否定しながら出てきた手前、知られてしまうのはよろしくない。至極、個人的なお願いだった。彼の挙げる食べ物がどれも美味しそうで、ちょっとうっとりしてしまう。)私も唐揚げを食べたいと思ってたの。次はそれにしましょ。(あんパンを食べ終え、お手拭きや空の袋やらをお店のゴミ箱へ捨ててから、唐揚げを探しに再び歩き出そうかと。)それ、持ってきてくれたのね。ありがとう。(目立たないようにしている刀を一瞥して、これも彼なりの気遣いなのだろうと思えば嬉しかった。)
06/20 15:11*136
(彼女が眼前に存在することが幸福で、幸福を噛みしめながらめしを食えば満たされる瞬間が来るよりももっととほしくなってしまう。何かを求めてばかりいるつもりなどはなかったというのに、彼女の前では無欲ではいられないのだから不思議なものだ。)連中に頼んだつっても、あんたの采配があってこそだ。…感謝してる。……羨ましい?(改めていったことはなかったが、他の連中の目がないこともあって素直に言葉を一つ落とす。しかし羨ましいなどという言葉が続くとは思っていなかったのか、仲がいいってわけじゃ、と否定しようとする前にその言葉を拾ってしまったから、そちらの方が気になって首をかしげることになっていた。自分の周りの物事よりも、彼女の感情の方が気になってしまうものだから。)は?…いや、別にあんたのことわざわざ言いふらしたりする趣味はねぇよ。つうか、あいつらわざわざ出かけ先の食事の内容まで気にすんのか?(彼女のお願い事はこちらからすれば考えても見なかった発想で幾度か瞬いたのちに軽く首を振って問題のないようなことを示す。彼女の個人的な願いを聞いたようで、それは心地よさを誘うものであることは事実であれど単純に不可思議な発想だった。そうして彼女と同じころにあんパンの最後のひとくちを口に含んで、捨てるごみは彼女から受け取ろうともしただろう。店の入り口近くにあったこの区画一体の地図を手に取り、複数ある唐揚げの店をどれがいいかと提示しつつも。)必要だろ。(彼女を守るためにも、この時代に合わせるためにも。具体的に内容を口にするわけにもいかないから多少なり素っ気ない物言いにはなっていたが、)…おれが誘ったようなもんだし、…なんかねぇに越したことはねぇが、…いつでも守れるようにしておきたかったんだ。(だから安心してこの時代のこの場所を楽しんでほしい、とは、余人に聞かれぬように声を潜めて。)
06/20 18:12*138
(彼がくれる感謝の気持ちは大事にしたいと徐に頷きかけて、拾い上げられた言葉に動きが止まった。瞼だけが、しきりに動いている。)肥前くんに相談してもらえる南海先生が、羨ましいなって……。私は話を聞いてあげるぐらいしかできないもの。(本当のことは言えない、でも嘘でごまかしたくもない。葛藤の末、一部分だけ本当の気持ちを口にする。自分は確かに彼の主であるが、相談相手には成り得ないのだと薄ら寂しさが胸中を過った。)肥前くんの趣味がよくて助かるわ。あのふたりは特別なのよ。付き合いが長いから、色々と気にしてくれてるの。(決して、目くじらを立てられたり、意地悪をされているわけではないのだと苦笑しながら伝えよう。出先で何を食べたかを気にするぐらいなら、まだいいほうだ。自分の抱いた恋心に、真っ先に気付いた二振りである。今のところは見守ってくれているけれど、歌仙あたりはそろそろ痺れを切らしそうな気がしてならない。素っ気ない言葉の中に、気遣いだけでなく責任や決意のようなものを感じて心惹かれる。囁きに似た声に、鼓動が一度強く跳ねた。顔がじわりと熱くなる。ただただ彼を見つめて、返事もできずに。何もかもの音が遠い。すっかり彼に魅せられてしまい、覚束無い足が何もないところで躓いた。)きゃっ。(体勢を崩してこけそうになり、咄嗟に手を付こうとして――。)
06/21 00:40*150
(しきりに動く瞼の意は何だったか。こころなどにちっとも詳しくはないくせにそんなことに頭の片隅で想いを馳せるのは、ひとえに彼女のことを知りたいからだ。)…そりゃ、……あんたに相談したら、意味ないっつーか…。…いや、あんたが頼りにならないとか、そういうんじゃない。ただ。………(おれはあんたを見ていると鼓動が早くなって幸福な心地を抱く。あんたとずっと一緒にいたいと思う。他の連中があんたに触れてるといらつく。これはなんて言う感情なんだ?と。よもや本人に尋ねるなどという発想にはなれなかったし、今以てなおそんな気持ちにはなれない。ただ、それをすべてあけっぴろげにするために必要な度胸というのにはかけていて、言葉を探すようにしばし唸った。「……どういったらいいんだ」とは、口下手な刀からなる降参宣言めいている。)実際、嫌いって連中もすくねぇだろ。…耳聡いってのもあるんじゃねぇか。(たしかに、と本丸での二振りの様子を思い返しながら軽く肩をすくめて見せながら。彼女の様子の変化にちらりとその相貌を覗きたがる。彼女の様子というものはいつだって気がかりで、――だから、すぐに彼女が躓くことにも気が付いて手を伸ばした。)……あぶねぇな。(ぽつりと落とす。手を引くばかりでは足りないだろうと、彼女を正面から抱きかかえるような姿勢をとって。そうして幾許かして気が付いて、)……――わっ、わりぃ!(慌てた調子で彼女の肩をつかんで距離を開けて謝罪をする。とはいえ押してしまわないように、肩が痛まないようにと気遣った手つきではあったし、顔は髪の片側に勝るとも劣らずに赤くなっていたけれど。)
06/21 01:42*154
(彼が南海先生に持ち掛けた相談内容に、どうやら自分は及ばないらしい。言いあぐねている彼の様子に、もう大丈夫と首を緩く横に振った。)気を使わせてしまったわね、ごめんなさい。今後、私で力になれることがあれば言ってちょうだい。いつでも歓迎するわ。(せめて笑って、この場はまあるく収めてしまおうか。子が親に言えないことがあるように、刀剣男士が主に言えないことのひとつやふたつあっても何ら不思議ではない。それに、自分だって彼に言えずにいることはある。耳敏いと評された二振りは今頃くしゃみをしているかもしれない、そんな想像をしてしまって小さく笑った。――揺らぐ視界に、痛みを覚悟した。前に突き出した手が掬い上げられて、反射的に彼へ強くしがみついてしまったかもしれない。状況を上手く呑み込めたところで、いよいよ息が苦しくなってきた。顔どころか体全体から火が出そうなほどだったし、心臓がとてもうるさくて彼に聞こえてしまうのではないかと焦りが生まれる。自分からはとても動き出せず、彼に肩を掴まれるまで抱えられたままだったのも当然恥ずかしかった。)う、うん。(何に対しての返事だろうか。よく考えずにとりあえず頷いた。ちゃんと自分の足で立てているのを確認して、そのまま顔が上げられない。)……助けてくれて、ありがとう。えっと、その、肥前くんが急にかっこいいこと言うから、すごく驚いて、それでこけてしまって……。(あまつさえ、よく分からない理由をたどたどしく言いながら身を小さくする。)
06/21 13:17*163
別に、そういうわけじゃない。…そのうち、あんたに聞いてほしいこともちゃんと伝えるつもりだ。…その時は、よろしく頼む。(気を遣わせてしまったのはこちらの方だ。いいあぐねて、それでも誤解を与えたくはなくて口にすべき言葉を選びあぐねたのち、彼女が丸く収めてくれたのならば安堵すらしているあたりが陸奥守にもどかしいなどといわれる要因か。それでも、今すぐにとはいかないまでもそのうち。近い未来を約す瞳はどこか真剣さを漂わせるものでもあったろう。そうしていつも通りの空気に戻ったかと思えば主の身が危険にさらされる。そうなれば脇差としては気まずさなど雲のかなたにでも届けてしまうことだろう。とっさに抱き留めた彼女の肩は小さく、腕の中に閉じ込めてしまえそうだった。普段は主として立つ彼女を、今は己が支えている。あたたかな温度がいくら心地よくとも、いつまでもこのままではいられない。)…怪我は。(転ぶ前に気が付いた、手を差し伸べることもできた、と思うが。ひととはか弱いものである。もしも傷でも負わせていたならばと思うと声は緊張を押し隠すが故の平坦さを帯びるだろうが。彼女が無事に両の足で立っていることを確認して、一歩後ろに下がってみせたはいいものの。)は、いや、……はぁ…?(格好いいこと。そのようなことを言った自覚もなければそれで驚かせるとも思わず、ましてや自分の言動が彼女が躓く一端を担うなどとは思ってもいなかった青年は知らず目を丸くしていた。やがていくらかの唸り声をあげたのち、乱暴に頭をかくと。)んなこと、言ったつもりはねぇが、…つもりがなくてあんたが驚くんなら、……ほら。またあんたを驚かせることがあってもすぐに助けられるだろ。(自分ではそのつもりはないが、相手の受け取り方というのは相手次第のことである。再び彼女を躓かせてしまうようなことなどないように、という名目をもって片手を差し出し、繋ごうとする形。)
06/21 22:01*174
(彼の律義さには目を見張るものがあり、真剣な瞳を受け止めて確と頷きを返した。そのうち、遠くない何時かをのんびり待っていよう。悪い知らせではなさそうだとは、はたして予感か期待か。彼からもたらされるものならば、なんだってきっと嬉しいと信じて疑わなかった。自分より少し背の高い彼を、ぬくもりを間近に感じて圧倒的に驚きが勝った。肩に触れられた優しい手の感触は、しばらく忘れられそうにない。)怪我は、してないわ。あなたのおかげよ。(つま先で足元を軽く叩いてみたが、特にこれといった痛みはなかった。彼との距離が少し開いて、心にも同じぐらいの余裕がやっと生まれ始める。呆れたような、要領を得ないと言わんばかりの声から、彼がどんな顔をしているのか何となく想像はつくけれど、いつまでも子供のように俯ているわけにもいかず顔を上げた。)……狙ってかっこいいことを言うようになったら、それはそれで驚くわね。そのときは、私が南海先生に相談しようかしら。(半ば本気で言いながら、差し出される手に尻込みしてしまう。好きな彼と手を繋いで歩くなんて、いよいよデートめいてやしないかと。でも、彼にそんなつもりはないだろうし、恐らく先程以上の驚きは早々ないはず。そおっと、手を重ねよう。)たくさん助けてもらうことになるかもしれないわ。それでも、どうかよろしくね。肥前くん。(面倒になったら離してもいいと言ったとて、何だかんだ面倒見のいい彼は首を縦に振らないだろう。ならば、彼の厚意を素直に受け取っておこう。気を取り直して、唐揚げを探しに行こうか。)唐揚げって大きくて食べ応えがあるものと、小さくて食べやすいものがあるわよね。あなたはどっちが好き?(食べ物の話をする頃には、火照った体も落ち着いているはず。)
06/22 12:44*196
(彼女が頷いてくれるのならば安堵する風に表情を緩めた。そのうち。何かに背を押されるかして結ぶいつかに幸福が伴えばとまでは考えないものの、伝えることを許されるのはそれ自体がきっと喜びだった。よこしまな感情が湧いて出てきたことを自覚すれば情けないとすら頭を抱えたくもなるが、彼女の動きは些細なことでも観察する。どこか自分に不調を隠すようなことがあってはことだったが、どうやら見える範囲では問題はないようだ。)なら、いい。…あんたに、怪我をさせたくはないんだ。(あんたが怪我でもしたら本丸の連中が煩いだろう、だなどと体面を繕うのはやめにして目元に滲ませた安堵のまま、自分自身が抱いているだけの感情を伝えたのは、怪我のない安堵の延長線上か、はたまたこのきっかけを逃さぬよう、これまで表面化させることをためらってきた内心というものをわずかずつにも伝えようとした結果か。)伊達の連中の専売特許だろ。おれには無理だ。…嬉々としそうだな、先生。(格好いいを、そもそも考える事すら必要ないと思っていた男である。自分の恋心を探求した時のように彼女に相談されたら未知の事象への好奇を抑えもしないに違いないと目をそらして。彼女が手を取ってくれたのならば少しばかり肩の力を抜く。)ああ。……つーか、…あんたを助けるのも、守るのも、おれがしたいことなんだから。気にする必要はねぇよ。(刀をおいそれと抜くわけにもいかないのが現世であるから、こうして手を繋いでいることでこそ守れるものというのもあるだろう。少し顔をそらしながらもそんな願望を打ち明けて。)おれは食いでのある方が好きだな。がっつり行きてぇ。小さいのは小さいのでいいんだが。あんたは?(ごろごろとした分厚い鶏肉を想えば食い意地の張った刀は自然と先ほどまでも緊張を置いて声に期待を寄せていただろう。)
06/22 15:54*197
(思いがけない彼の発言がきっかけだったとしても、転びかけたのは自分の不注意に他ならない。心配を掛けさせてしまったと反省しつつ、感謝を伝えることは忘れずに。脇差の刀剣男士は細かなことに気付きやすく、補い助ける性質があるらしい。彼もそうなのだろうと受け止めかけたが、目元に滲む安堵の色から彼自身の言葉だと感じられた。)あなたからそんな風に思われて、私は幸せものね。とても嬉しい。(誰かに大事にされるのは、いくつになってもくすぐったさが付いて回る。主に対してではなく、自分自身に向けられた思いのようにも感じられたのは、恋心による色眼鏡のせいにしておこう。専売特許と長船の祖たる彼が聞いたら、さぞ喜びそうだなとくすくす笑いを漏らす。嬉々としている南海先生も想像に難しくないのがこれまた面白い。)肥前くんって、本当に頼もしいわね。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわ。(彼の在りのままで生まれるかっこよさは、彼自身には分からないものなのかもしれない。逸らされる顔を少しばかり追いかけるようにしながら、繋いだ手にギュッと力を込めてみよう。守られる自分が彼にできることと言えば、一緒にご飯を食べることぐらい。そう思ったら、不思議と食欲が湧いてきた。)はしたないって思うかもしれないけど、私も肥前くんと同じなの。美味しいお店、探しましょ。(程よく肩を寄せたのは、その方が手を繋いで歩きやすいと思ったからだ。)
06/23 00:54*215
(脇差としての性質があったとして、それを器用に生かして立ち回り、さりげなく気づかいをするなどということは同刀種の者たちと比較することすら烏滸がましいほどに苦手な部類であると自己認識している。)……そうなのか?………あんたが、そういう気持ちになってくれたんなら。おれも、嬉しい。(幸せや嬉しさといったものを、自分の言葉なぞで与えられるとは思っていなかった。だから彼女の口からこぼれ出た言葉にいくらか不思議そうに首を傾げはしたものの、それをわざわざ疑うこともなく。疑いたくなかっただけの話ではあるけれど。不器用な言葉尻で喜びを表現したけれど、彼女にどこまでこの幸福が伝わるだろう。仲間たちの話に笑みを浮かべる彼女に、自分が想像したものと同様なのだろうと思えば仲間たちとの日常は根付いているのだと実感する。)おれはあんたの……もんだからな。あんたに頼りにされんのは本懐ってやつだろ。……ああ。(彼女の刀である、と口にしようとして、決して人払いを済ませた一室などではないからと言葉を変えて。彼女の刀と彼女のもの。自分で言葉を変えておいて背中がむずむずとしてしまった。が、それも彼女と手を繋ぐことがかなったことで形を変える。こうしていれば守れるだろうと、心配はないだろうと思ったことも事実。けれど実際に手を繋いだことで節くれだった掌とは反対のやわらかな感触に緊張や羞恥、はては幸福までが湧いて出ていた。)…はしたないってことはないだろ。うまいもんは、いくら食べてもうまいんだからよ。…だな。…揚げ物の匂いがするのは、あっちの方か。(寄せられた方に体が熱くなる錯覚を起こした。一つ呼吸して、寄り添いながら歩いていく。今、自分たちはどんな関係に見えるんだろうか。)
06/23 01:54*218
(明確に気持ちを表してくれたことが、何故だかとても貴重なものを目にしたような気分だった。もし、流れ星を見つけたらこんな気分になるのだろうか。目に映る幸せを焼き付けて、確かめるような問いかけにようやく返事をする。)あなただから嬉しいのよ。あなたは、ちょっと特別だから。(柔らかく結んだ唇に、立てた人差し指を添えた。特別の理由は秘密であると上手く伝わったなら、いたずらに笑って見せようか。)確かに肥前くんは私の、だけど……。(何一つ間違ってはいないのに、妙な後ろめたさと気恥ずかしさが鬩ぎあう。本懐とまで言い切られたならば、黙って頷く他ない。というよりか、何も言えなかったのが本当のところ。自分は彼の主なのだと自身に言い聞かさなければ、身勝手な勘違いを起こしてしまいそうな程に、心が揺さぶられて仕方がなかった。)肥前くんなら、そういってくれるじゃないかって思ってたわ。父さんと母さんに、もっとお淑やかに食べなさいって時々注意されてたの。結果は見ての通りよ。美味しいものは好きに食べてこそよね。(別に食べ方が見苦しいとかではなく、年頃の娘が人目もはばからず大口を開けて食事する様を見かねてのことだったが、大きな唐揚げをちまちま食べてたって美味しくないのだ。彼の鼻を頼りに歩いて行けば、唐揚げの屋台が見えてきた。大ぶりで、食べ歩きに最適な入れ物で売られているのは好都合である。調子のいい店主が、カップルならおまけするよと気軽に話しかけてきたものだから)ええ、そうよ。(おまけに釣られて、とびきりいい笑顔で答えた。同意を求めるように、彼へ小首をかしげてみせる。)ね、肥前くん?
06/23 21:20*237
(気持ちを明らかにすることは慣れていない。それでも、彼女が幸せ者だとまで言ってくれたものだから、言葉にしたいと思ってのこと。決して得意ではないし慣れてもいない。不器用な言葉を並べるも、)……とくべつ、(そんな言葉を賜れば、秘密の裏を知ってなお求めたがる。知らず染まった頬を隠すように開いた襟ぐりを持ち上げて口元を隠してしまうことにした。自分だから嬉しいだなんて、特別だからだなんて、慣れていない。湧き上がる純粋な喜びもまた。恋を得る前であれば卑屈めいた言葉を並べもしたろうが、自惚れたがる思慕の形がそこにはあって。)ああ、おれは、あんたのもので。…それが、おれにはとくべつ、嬉しいことなんだ。(だけど、の言葉尻を否定したがるように静かに頷き、小器用にはなれない言葉を重ねた。主が彼女であるからこその幸福、彼女の刀であることの喜び。ただの人斬りの刀にただ彼女に恋をする男の側面が芽生えたこと。特別の中身を殊更に口にすることはなくとも、落ち着いた声色ながらに確かな熱は滲んでいた。)おしとやかに食べるって、うまい食べ方なのか?食べ方だのマナーだの、小難しいこと考えて喰うのはめんどくせぇ。(旨いものはうまいでいいだろう。そんな風に考える男であるので、おしとやかな食べ方というのはぴんと来ずに怪訝そうに首をかしげていた。やがて見えてきた唐揚げの屋台。店主の調子の良さに思わず眉間にしわが寄ったが、)あ?………あ、お、ぅ。ハイ。(彼女を見る。店主を見る。笑う彼にいい笑顔の彼女に。顔を知らぬうちに赤く染めて片言めいて応じていた。照れ屋な彼氏さんだねえと朗らかに笑う店主が恨めしい。衣のついた鶏肉をフライヤーに投入した店主をしり目に彼女に顔を近づけて。)あ、あんた、あんたなぁ……。(不意打ち交じりに着せられたカップルなどという役柄にその羞恥をはじめとした雑多な感情に震える声は相応しくはなかったろう。)
06/23 23:07*241
(念押しするように重ねられた「あんたのもの」が、心のやわいところをつつく。忠義を示されている言葉にしては、どこか熱っぽい。本丸の刀剣男士たちから真心を尽くされた言葉をたくさん聞いてきたが、こんな響きは初めてだった。これが彼の個性によるものならば主として粛々と受け止めるべきだろう、しかしながら今日まで見てきた彼の姿と結びつけるのは難しい。自分が今まで知らなかっただけ、あるいは初めて見せてくれた一面だとしたら、大事にしてあげたいと思った。)私の肥前くんは、後にも先にもあなただけよ。肥前くんが私のなら、私も肥前くんのってことにはならないのかしらね。私だけ、なんてずるいじゃない。(逞しい手に、彼に守られているという安心感が、頑なに追いやっていた淡い気持ちを連れてくる。審神者になったことを悔いたことは一度もないが、主という立場がこういうときばかりはもどかしい。)お淑やかにしておかないと、誰もお嫁に貰ってくれないらしいわ。でもね、母さんがお淑やかにしてるところを見た覚えがないの。(面白いでしょうと続けて、くつくつ笑った。突然の無茶ぶりでさえ、彼は投げ出さずに応じてくれる。嫌がるなり否定するなりしてくれたなら、この恋も諦めがつくのだけれど、優しい彼だからこそますます好きになってしまう。赤くなっている顔が、ちょっとかわいいと思ったが口にはしない。内緒話をするように、こちらからも顔を寄せていこう。)店主は本気にしてないわ。こういうのは楽しんだもの勝ちなのよ。照れ屋な彼氏さんは、どういう彼女がいいのかしら?(からかい交じりに問いかけてみた。真面目な答えが返ってくるか、さすがに注意されてしまうか。手を繋ぎ、至近距離で会話をしているふたりがカップルではないと言うほうが、よほど嘘くさいかもしれない。彼との食べ歩き、もとい逢瀬はまだまだ続く――。)
06/24 17:21*257
(気持ちを伝えることは容易くはなく、そして二人きりという普段にはないこの環境下で気持ちが滲むことを抑える事もまた容易くはない。これまで仲間内で話す時に彼女に対する気持ちが滲むことこそ多々あれ、彼女の目の前ではこんなふうに曝け出すことはなかったつもり。だというのに。)………っ、……、…そ、うかよ。…おれはあんたのもんだが、あんたのもんはほかにもあるだろ。……だっていうのに。あんたってやつは…ずるいとか。なんだそりゃ。(呆れのような言葉である癖、その顔ににじむ色はといえばむずがゆさや幸福感といったものであるために、この男は言葉よりもそれ以外の方が雄弁であるかもしれない。己にとっての唯一であり、自分が彼女のものである認識には何ら間違いがないだろうという認識は間違いないと思っているが、彼女が自分のもの、などと、それはあまりにも贅沢な話ではないかと。)嫁?あんたが?……結婚とか、考えんのか。…そりゃ、それでもいいって男捕まえたってことじゃねぇか?(婚姻を結ぶのであれば人間同士の方が自然なのだろうか。そんな考えが滲んだせいで、どこか不満そうな色を滲ませていたかもしれない。――彼女は本気にしていないとは言うけれど、あちらが面白がっているのは間違いないのでは。そもそもがこのような嘘を彼女が果たしてどうとらえているのか。)か、あん、だ、……っ、めしを、うまそうにくうやつ…。(ついとばかりに顔を赤く染めてしまって、彼女に向けるための言葉を口に出したくとも言葉が出てこないなどというさまを晒しはしてしまったが、ふいと顔をそらしながらの言葉が彼女にどう響くだろう。わかるはずはないが、今わかられても頭に熱が昇りすぎてしまいそうだ。他人からどんな風にみられるのか。その理解など、彼女の隣にいる事実に比べれば些末事。狼狽え、幸福を感じ、そうして逢瀬は続いていく。)
06/24 20:27*261