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(誉を幾つ取ろうとも、戦いには関係無い――本来であればそういう質であった。しかし、無視できない事情が大倶利伽羅には存在している。とある本丸にて、本日見事に誉が十に到達したひと振りは主と静かに対面していた。)……取ったぞ、十。褒美はあんたとの休暇。それでいい。(この結果は何も初めてではない。初めて十を取った時は現在のように己が内に渦巻く感情を未だ得ていない頃。その次に十を取った時には既に主の事を好いていたし、自覚もしていた。だがその願いは修行への出立に使用したのだった。つまり、このような願い事を口にしたのはきっと初めての事。その表情は涼しげにも思えるだろうが、昔馴染みたちからすれば「あれは緊張している時の顔だ」とすぐに見抜かれる程度のもの。)場所は現世。……俺も場所は見繕うが、あんたの行きたいところでいい。(そう言うなり立ち上がり、執務室を後にする身勝手さはいつものことだろう。廊下をひとり闊歩するその横顔の口端が僅かに持ち上がっていたことを知る者はいない。――時は過ぎ、当日のこと。黒の細みあるスラックスに白のTシャツを併せたシンプルなコーディネートを身に纏った打刀がひと振りは、主と連れ立って現世に赴いていた。)あんた、行きたいところはあるのか。今日は何処でも付き合う。(首を小さく傾げながら問い掛ける音色は些か優しい響きをしている。悩んでいるようであれば「……此処からだと、動物園やプラネタリウムにも行けるが」と助け舟を出すつもりで。そしていつもと違う点はもうひとつ。一歩、いつもより彼女へと近い距離を保っているのだが、果たして。)

06/17 15:13*18

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お疲れ様、良い働きだったと聞いているよ。……褒美がそれでいいのかい?(にこやかに言葉を返す裏側、背にじっとりと汗をかいている事はきっと本人と後ろに控えている近侍しか知り得ない。静かに紡がれるその言葉に自然と気分が高揚するのを抑え込みつつ立ち上がった彼の背へ問を投げ掛ける、それへ返る言葉がない事は百も承知、むしろ今彼が振り返っていたのなら近侍の言葉で平静を取り繕えず狼狽えている情けない顔を見せてしまっていただろう。師と仰ぐ太刀やその系譜の刀達にあれこれと相談をするのはいつもの事、どんな格好が良いかだとかいかにスマートな立ち振る舞いを混乱せずに見せられるかだとか、そんな事を話しているうちに約束の日が訪れた。折角のデートなのに!と我が事のように唇を尖らせる短刀を宥める女の姿は普段と同じ男装で。白いシャツに黒いスキニー、体格隠しか日焼け対策かその上から薄手の黒いロングカーディガンを羽織った姿で隣に立つ打刀へ目を向ける。シンプルな出で立ちが素材の良さを遺憾なく引き立たせているためか見つめている事も憚られ首を傾げるその仕草からほんの僅かに視線を外し)あっ、あぁ、……間を取って植物園なんかはどうかな。この時期なら人も少ないし、運が良ければ野良猫が集まる場所があるんだ。園の人が餌付けをしているらしくてね。(一瞬声が上擦ってしまったのはそう、いつもより優しい声色がいつもより近くから聞こえたから。熱を帯びる顔は赤くなってやしないだろうか?そんな不安を押し込んで、存外近い植物園への道順を示した端末を持ち上げて見せ。)

06/17 22:52*37

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(此度主と対面した際、後ろに控えていた近侍――大倶利伽羅にとっては嫌という程見慣れた隻眼の太刀が寄越した意味深な笑みがいやに忘れられない。まるで試すような、それでいて生温かい視線。緊張を悟られている心地こそ、すぐに踵を返した理由のひとつでもあった。――顔を合わせた主の出で立ちは普段通りのもの。相も変わらず男性然とした身なりを大倶利伽羅は決して疎んでなどおらず、此度も出立前、徐に彼女の耳元へと片手を伸ばし、その耳へ髪を掛けてやりながら「……いいんじゃないか」なんて一言を呟いていた。現世に降り立ったとて彼女を見つめる視線の熱度は変わらない。)……ああ、其処でいい。(簡素な言葉ながらも肯定を示したならば、彼女が示す端末を見遣る。示される場所は然程遠くないのだろう、道順も複雑という訳でもなかった。さて目的地へと歩き出さん――と、その前に。)……そら。(当然のように差し出したのは己の腕。それも五分袖のTシャツから倶利伽羅竜が伸びる左腕だった。わざわざそちら側であったのは有事の際に即時抜刀出来ない旨を慮った結果だったが、そも自ら身体に触れさせようなど、きっと彼女意外にはしない行動の筈。決して無理強いはしないものの、明確な返答か行動が見られるまでは彼女へと向けられる金色の双眸はただゆっくりと細められるのみ。)どうした。行くんだろう、植物園とやらに。(くい、と顎でしゃくる仕草と共に、その言葉じりはどこか殊勝に響く。彼女が己との距離感に多少の戸惑いを覚えていることも承知の上、大倶利伽羅はこの“褒美”を存分に堪能する気しかなかった。)

06/17 23:37*40

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(刀剣男士を束ねる審神者といえどその全てを知っている訳ではないから事前調査は念入りに行っていたがどうやらそれは正解であったらしい、肯定の言葉に内心胸を撫で下ろして道順を確かめようと端末を彼から外して見下ろした。公共機関を使わずとも徒歩で十五分程歩けば見えて来るそうだ、それほど遠くないことと混雑していそうな交通機関を使用せずに済みそうだと安堵の息を吐き出す視界に甘やかな色合いの腕が入り込む、巻き付くように竜が彫り込まれた左腕。その腕が一瞬何を示しているのか分からずに見つめてしまうけれど意図に気付いた途端え、と小さな声が零れた。決して嫌がっているだとか困っているだとかそういう訳ではなく、例えば乱藤四郎や加州清光を連れて買い出しに出た時自分が彼らに行う仕草、それが自分に、ましてや焦がれる彼から向けられている事実を認識するのに二秒ほどかかってしまっただけで。蜂蜜にも似た色合いの瞳を見て、差し出されたままの腕を見て、躊躇う背を押したのは他でもない彼の声。)……着いたら僕がエスコートするよ。(苦し紛れにそんな言葉を口走りながらそっとその腕を取ったのは結局のところ大手を振って彼との距離を物理的に詰められる言い訳に心が揺らぐから、数センチ低い位置で揺れる髪を一瞥して目的地へ向けて足を踏み出した。近い距離に心臓の音が伝わってやしないかと背筋が伸びる、アイビーで覆われた入口の門が見えてくるまで果たしてどんな会話をしたのか高鳴る心臓に掻き消えるようで殆ど記憶にはないけれど。)

06/18 13:43*62

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(此度の逢瀬の数日前、幾つかの場所の候補を見繕ったことは記憶に新しい。けれど、本より行き先は主へ委ねようと思っていたことも事実。しかも此度挙げられた場所はどうにも己の好みに寄っているような気がして――そこまで考え、静かな瞬きと共に思考は放棄した。少しの間の後、己が腕にかかる彼女の手を一瞥し確認する。そして掛かる言葉にはつい口端を僅かに持ち上げた。)……なら、あんたが先導するときは腕ではなく手を取ることだな。(そうでなければ従わない、と言いたげな口振りはほんの戯れだが、目的地に到着した折には蒸し返す気しかない強かさで。そうこうして踏み出した後の歩幅は彼女のペースに合わせていた。数ある刀剣男士たちの中でも群を抜く寡黙さのひと振りは、此度も決して口数は多くない。されど「歩きにくかったら言え」くらいの気遣いは度々口にしていた筈。――やがて入口の門が見える頃、再び顎で指し示しながら「あれで間違いないか」と確認を取る。その後はそのままチケット購入口まで進みさっさと二枚分を購入してしまうだろうが、彼女が何と言おうと「……俺は俺の好きにやる」と言ってのけるのみだ。)……あんた、植物は詳しいのか。俺は知らんぞ。(首を傾けながら問い掛けるのはこの園のこと。現世に来ることが初めてではないにしろ、この手の作法はわからない。数センチの差を見上げながら徐に腕を解き、尚も竜が鎮座する腕を彼女の方へと伸ばした。今度は掌を下にして、まるでお手をする犬であるかのように。)……“エスコート”はあんたがするんだろう?(ふ、と笑みを孕んだ呼気は静かに吐き出される。グローブを纏っていない褐色の指先が、悪戯に小さく手招きをした。)

06/18 15:09*65

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(植物園、動物園や遊園地のように娯楽を目的とした場というよりも学習の場として使用されることの多いそこはあまり人の姿は見られない。前もって調べていた通り街の喧騒から一歩離れたようなその場の空気に浅く息を吐くも確認へ首肯を返すや否や早々に入場券を購入してしまう彼の動きに目を丸めた、何せ女は主として誉の褒美として今日の外出で使用する分は出すつもりであったのだ、「君の褒美なのに」と口にしてみても素知らぬ様子の彼に肩を落としながら腕を解き一歩足を引く。緑に囲まれた空間に立つ色濃い姿はそう、取り繕わずに言うのであれば"格好良い"の一言に尽きる、思わず見とれてしまう視線を無理やり引き剥がして。)詳しい、とまでは言わないけれどそれなりに。審神者になる前…子供の頃は良く訪れたものさ、奥に小さな薔薇園があるんだけれどそこにお姫様がいるんじゃないか、ってね。(差し伸べられた手、竜の巻き付くその腕を見下ろして女がとった仕草は随分と芝居がかったものだった。ロングカーディガンの裾を摘まんで反対の手は胸の前、恭しい一礼の後に下から掬い上げるようにしてチョコレート色の手を取って。恥ずかし気もなく取ったその手を引くようにして踏み出した足は木々の揺らめく園内へと向かい始め、心地好い風が吹き擦れる葉の音を背景に触れ合う手から伝わる体温が心臓を逸らせるよう。動物園のように区切られた空間がある訳ではない園内はただ様々な植物が自由に揺れている、恋い慕う相手の手を取り歩くただそれだけで緊張と歓喜に打ち震える心と身を抑えて一度彼へと目を向けた。)…初めに、僕の好きな場所へ行っても構わないかな。

06/18 21:00*79

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(二人の間にある“褒美”の認識にはきっと些かズレがある。その事実はチケット購入の折に彼女がぽつりと漏らした言葉で明白ではあったが、このひと振りが口を開く筈も無く。――まるで別の国のようだ、とは心内で呟いた独り言。山や森とはまた異なる整然とした緑ある空間で、打刀はただ金色の双眸を細めた。一拍の後一歩後ろにいる彼女へと振り返り、ただその語り口へと耳を澄ませる。)……そうか。……確かに、此処はあんたによく似合う。(いつであったか、本丸の短刀から聞いた異国の王子様とやらではなく、姫の姿を探したという幼い主の姿を想像する。それは今目の前にいる彼女の姿となんら変わりない。己が手を恭しく掬い上げる美しい様こそ、大倶利伽羅が認めた唯一の人。重なった手を優しく握り返しながら「……ああ、それでいい」と呟くその音色は一際甘い響きを孕んでいたことだろう。彼女に導かれるがままに足を踏み入れた先は、様々な植物が肩を寄せ合う庭園が如き空間。静寂に混じる木の葉の音、遠くに聞こえる人々の声。心地良い筈であるのに繋がる掌が無性に熱い。恋の自覚など疾うにした筈であるのに鼓動は高鳴るばかりだった。自然と目を向けた先、不思議とかち合った視線は逸らさずに彼女を見つめるばかり。)ああ、構わない。……あんた、近頃ますます光忠に似てきたんじゃないか。(少々呆れ――というよりは諦めにも似た色で零れ落ちた言葉は彼女の耳にどう届くだろうか。いずれにせよ、彼女が導くままに歩を進めていくことに変わりはないのだが。)

06/18 22:40*85

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(女の生き方を初めこそ戸惑いで受け止めたとしても否定をしないのは刀剣男士たちばかりだった。今だって大仰に掬い上げた手を当たり前のように受け入れてくれるのはきっと自分が主だからに他ならない、そう思うのに耳に届く声がいつもより柔らかく感じてしまうのは希望的観測というものだろうか。思うだけなら良いだろうと上向きになる気分を引き連れて静かな歩道を進む、進む。繋ぐ手の分の距離は存外近く蜂蜜色の瞳に映り込んでいる自分の姿まで見えてしまいそうな気がして心臓が跳ねた、格好がつかないなと胸中で呟くと同時に彼の口から零れ落ちた言葉に一瞬動きを止め――噴き出した。)っはは、そう見えているかい?なら嬉しいな、いつかは本丸の皆をお姫様のようにエスコートして見せるよ。勿論師匠も、君もね。(無意識に握る手に力がこもる、誉の褒美に彼が外出を選んだ事に驚きこそすれどそれは女にとっても好機としか言いようがなく。静かな植物園の中他の客の姿が殆ど見られないのを良い事にほんの少しだけ歩みを緩めた、目的地への案内の為に半歩先を歩いていた体はそうすることで彼の隣に並び立つはず。目的の薔薇園を示すパネルには蔦が絡みつき些か見え辛くなってはいるものの通い慣れた足が迷う筈もなく、やがて見えてくる蔓薔薇で覆われた西洋風の門扉。映画にでも出てきそうなその中に多くの薔薇が咲き乱れている様子が外からでもうかがい知ることが出来るだろう、開放されていても誰もいないそこへ招くように手を引いた。幼い日のようにお姫様を探す為ではなく、恋焦がれるたった一振りと見る薔薇の美しさを胸に刻む為。)

06/19 10:40*100

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(本丸内にて主の端整な面立ちを遠巻きに眺めながら、ひと振りはいつも思う。性別の垣根を越えて個として在ろうとする姿に、恋慕という劣情を抱く己こそが間違っているのではないかと。他でもない自分こそが“女”というものを押し付けているのではないかと。きっと昔馴染みが知ったなら「そんなわけないのに、格好悪いね」と笑うのだろうが、大切にしたいのだから致し方無い。だからこそ、ただ手を繋ぎ、視線を交わし、言葉を受け取ることの幸福感たるや。つい手の甲を口許へ当て、噴き出す気の緩みは彼女にしか見せない一面だろう。)ふ、……見物だな。貞や鶴丸も、あんたの前ではしおらしくなるかもしれん。(同じ伊達家を由来とするものたちの中でも、一際騒がしいふた振りを思い浮かべる。彼女にエスコートされる姿は些か妬けるというものだが、それよりも今は可笑しさが勝った次第だ。自然と普段に比べほんの少しだけ口数は多くなり、段々と縮まる距離感に胸は温かくなるばかり。間違いなく、この時間こそが“褒美”そのもの。その事実は未だ口には出来ず仕舞いだが。――やがて目前に表れた薔薇の園に、金色の瞳は僅かに瞠目する。美しく咲き誇る色とりどりの薔薇たち、そして立ち込める花の香り。一通りを首を回しながら見遣り、在りし日の主の軌跡を辿るように大人しく手を引かれて歩を進めた。)見事なものだ。此処が、あんたがさっき言っていた場所か。(成程、確かに本丸などでは見られない景色はただ美しい。いずれは昔馴染みの兄を自称する光忠がひと振りによって本丸にも薔薇園が築かれるかもしれないが――今はただ足を止め、目の前の花々を甘受するのみ。)……薔薇が似合うな、あんた。(チラと向けた視線の先、薔薇を背にした彼女の姿は一枚の絵画のよう。つい零れ落ちた感想と共に、無意識に手を伸ばした先は彼女の頬だった。)

06/19 12:55*103

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(そうだろう、と笑って見せる、万屋街で黄色い声を一身に浴びている姿すら見掛ける事のある伊達家伝来の刀達をエスコートするのは女にとってひとつの目標のようでもあった。今日はある意味その夢がひとつ叶ったと言っても差し支えないだろうかと彼を薔薇園へ案内する道すがら考える。隣で目を見開くその様子にまるで悪戯が成功した子供のように笑って見せると、薔薇園の中でも一層手入れの行き届いた一角で足を止めた。繋いでいた手を惜しむように解いて、それから。)美しい場所だろう?薔薇の時期は此処が一番好きなんだ、まさか君と見られる日が来るなんて思わなかったけれど。(少しだけはにかんで視線を薔薇へ移す、真紅というよりは濃い桃色の薔薇は大きく咲き誇っていて宛ら貴婦人のドレスのようだ。甘い薔薇の香りに包まれたそこでふと耳に届く彼の言葉に喜びが過る、何せ師と仰ぐ太刀にも似合う花なのだから少しは近付けているのだろうと、そんな思考は伸びて来る腕に一瞬にして真白く染まった。)な、……っ、あ、はは、虫でもいたかな、(一歩身を引くも自然と声は上擦り早口に、まさか触れようとしていたのだろうかと勝手に都合良く解釈してしまいそうな自分を恥じるように頭を数度振った。じわりと熱を持つ頬は遮るものがない今彼の眼前に曝されてしまっていることだろう、"格好悪い"とそんな事を考えながらまた一歩後ずさる――そこに小石があることも、丁度その真横には棘の残る薔薇の植え込みがあることも気付くには一瞬遅れた。ぐらりと傾ぐ体は倒れはしないけれど咄嗟の事に声もない、無意識に片腕は彼へと向けて差し出されていた。)

06/22 00:03*182

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(口には出さないものの、大倶利伽羅も同様の心地であった。まさか恋焦がれる主と連れ立ち、共に花を愛でる日が来ようとは。彼女に導かれるがまま足を止めた場所には、一層美しい薔薇が咲き誇っている。深い桃色をした其れを注視する姿は宛ら麗しの王子とやらであるのかもしれなかったが、竜のまなこに映る彼女は、例えるならば一輪の花だった。花に手を伸ばすなど、それこそ悪い虫の如き行動であったのかもしれない。一歩身を引かれ、指先は空を切る。詰めた距離の分逃げられてしまうことには最早慣れてしまっているからか、表情を変えることは無かった。――が、しかし。)――っ、おい……ッ!(ぐらり、と彼女の体の傾く様がスローモーションに映る。そこからの判断は非常に早いものだった。此方へと伸ばされた腕を掴むことに躊躇は無く、あっという間にそれなりの力で己が方向へと引き寄せていた。いくら数センチの身丈の差があったとて刀剣男士と人間、そして男と女。――気が付いた時には、まるで抱き締め合うかのように互いの身体は密着していた。)…………、……大丈夫か。怪我は。(暫しフリーズしたとて、動揺を悟らせる程雄弁でも無し。沈黙の後、やっと吐き出した一言はそのままの体勢から呟かれた筈。今は顔同士すら近い距離が故、低く囁くような音色で無事を確かめんとする。勿論自ら離れるつもりはさらさら無く、掴んでいる腕もまた、暫くは離してやるつもりなど無いのだが。)

06/22 00:44*183

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(足元が疎かになっていた、それでも傾いだ体が倒れぬようにと片足はしっかりと地を踏みしめていたけれど本能から伸ばした手は彼の腕を掴み――世界が静止した。二本の足で立てている、けれど何故か体は暖かい何かを支えにしていて、そこまでをまるで他人事のように考えていたけれど俯瞰の意識が戻って来るのは存外早く。むせ返るような甘い薔薇の香りの中そこだけが清涼な空気が過るようで、たっぷりの沈黙の後吐き出そうとした言葉は先に零れる彼の言葉に飲み込んだ。離れなければと思えば思う程恋焦がれる相手を意識した体は硬直してしまって、こんな時彼よりも高い上背では顔を隠すことが出来なくて視線は右へ左へ彷徨い。)……、……だい、じょうぶだよ。…ごめんね、こんな格好悪い…。(平静を装おうとする声は同様に震えていて、掴まれたままの腕が熱を持ったように熱い。もう倒れそうにない体はそれでもまだ僅かな距離すら許さないまま、大きく跳ねる心臓の音が伝わってはいないだろうかと過ぎる不安に一度目を閉じ。すぐに開いて空いている手で彼の肩を軽く押すのは出来るだけ赤くなっている顔を見られないように身を離すため、それでも折角の幸運を手放す事は惜しく彼の体が離れていないのであればすぐ傍らの緩やかな波を描く髪の毛へほんの少しだけ頬を寄せる程度は許されるだろうか。)…薔薇の香りに酔ったかな、(どうにも彼の前ではいつもの調子を上手く出せずに赤面の理由を無理やりこじつけて。)

06/23 01:32*217

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(少しだけ高い目線の先で、彷徨う視線が忙しない。きっと動揺しているのだということはよくよく伝わっては来ていたものの、それが恋慕によるものだと都合よく解釈できる程殊勝でも無かった。大方あわや転倒かというこの状況への動転だと解釈しつつ、吐き出された言葉へは緩やかに首を横へと振ってみせる。)……別に、格好悪くはない。怪我が無いならそれでいい。(言葉は簡素であったものの、そのニュアンスは出来るだけの優しさを滲ませていた筈。――と、不意に肩へ感じた軽い力にはつい一瞬眉を顰めただろう。その意図も理解はしているが、太々しくも気が付かない振りをして動く気など更々無く。さて、如何するかな――そんな内心の呟きよりも早く、距離は僅かに縮められていた。それは彼女の息遣いを感じる程で、金色をした双眸は僅かに瞠目させられることとなる。)――……、……なら、もう少しこうしているといい。(こじつけであろうとなかろうと、この機を逃さんとするのがこのひと振り。静かに告げるなり、空いている手を彼女の後頭部へと回し己の方へと引き寄せる。その手はやわく彼女の髪を撫で、二人の姿はまるで寄り添い合う恋仲宛らと言えるだろう。)あんたからも少し、同じ香りがする。(薔薇園の中でも分かる彼女の清涼な空気は、付喪神であるが故にわかるものなのか、それとも元来彼女自身が持ち得る雰囲気によるものか。いずれにせよ、大倶利伽羅は静かに甘受していた。今はその中に少しだけ花の香りが移っているようで、つい追いかけるように彼女の髪へ鼻先を寄せる。)……俺好みだ。(呟いた一言に喜色が混じる様は些か珍しいものかもしれない。再び解放を望まれない限りは寄り添い続るつもりで、今は静かに瞼を下ろすばかり。)

06/23 07:05*223

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(聞こえる言葉は簡素で、きっと何も知らない人間や審神者となって日の浅いものであれば彼が怒っているのかと勘違いしてしまうかもしれない。けれどその言葉の中に滲む確かな優しさを感じ取ってしまえば彼がいかに優しい刀であるかを理解することが出来るだろう、女が彼に恋慕を抱くようになったのはその優しさが一端でもあった。本丸に身を置いている中ではきっと感じる事の出来ない距離、どくどくと大きく震える心臓が彼に伝わってやしないかと思う反面いっそのこと伝わってしまえば良いなどと相反する感情が渦巻く胸中を落ち着かせるべく一息。)……君こそ、師匠に似ているよ。(低く耳馴染みの良い声が鼓膜を震わせ、頬へ上る熱はますますその熱さを増していく。気付けば肩を押していたはずの腕は彼の背へと回っていて、そこに息づく確かな体温をその掌で受け止めていた。風ではない何かに髪の毛が擽られる、それが彼の動きによるものだと気付けば途端に耳の先まで朱が走り無意識に腕へと力が籠り。汗臭くはないだろうかだとか、髪にゴミが付いていないだろうかだとか、過ぎるそんな考えを一瞬で吹き飛ばしてしまうのもまた、彼の一言で。)き、みの、……好みに合っているというのは、その、うれしいけれど。(ところどころ声が裏返ってしまって格好悪さに眉が下がる、それでもきっと何かのきっかけがないうちは女の腕は彼の背から離れる事はないだろう。童話に出てくるようなお姫様を探した薔薇園で、王子様に憧れた女は改めて恋心を自覚する。――やがて腕を離すきっかけはそう、薔薇園の外から聞こえてくる「お姫様いるかな?」なんて少女の声。)……そろそろ行こうか、次は君の好きなところへ。

06/25 13:24*271

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……フン、俺はあんなに気取っていない。(彼女の言葉から脳裏にて邪魔をする太刀の姿を掻き消すように、つい悪態を吐くような一言は可愛げなく飛び出るだろう。しかし、だからといってその距離感も柔らかさも手放すつもりは無く。やがて抵抗される気配も消えたなら、思う存分に彼女の熱を堪能していく。己の一言に動揺し声を上擦らせる様すら重畳、といった具合にひと振りは彼女からは見えぬところで僅か口許を持ち上げていたことだろう。――やがて、外から聞こえてくる声を聞いては「……ああ」だなんて気の無い返事をひとつ。そして朱に染まる肌を見つめたならば偶然を装って耳の縁へ唇を掠めさせ、一歩だけ離れてみせる。)どうした。竜に噛まれでもしたか?(ふたつの黄金を細めて飛び出すそんな冗談も、きっと彼女にしか見せない気安さのひとつ。如何なる非難が飛んできたとしてもそれ以上は知らん顔だろう。そして何事も無かったかのように手を引き、エスコートはいつの間にか再び交代となっている筈。見知らぬ少女の声から逃れる様に薔薇の園を抜け出す様は、宛ら秘密の恋人たち。ガーデンから王子――或いは姫を攫った一匹の竜は呟く。)あんたが案内してくれ。……そこが、俺の好きなところになる。(つまり、あなたの好きにもっと触れたいのです、と。相も変わらずの朴訥さをもって男は一日を堪能することだろう。――ただし、「……それで、野良猫は何処だ」その一言だけは彼女を笑わせたのかもしれないけれど。)

06/25 19:02*273