ハプニング!何処からともなく五匹の小虎が寄ってきた!自分一人じゃ抱えきれない!

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(誰も起きてきていない――厳密には一部の喧しい刀たちが起き出していない早朝は、大倶利伽羅にとって喧騒から逃れられる貴重なひと時でもある。その日はやけに早く目が覚めたこともあり、厨当番とて未だ起きていない様子だった。一人平素の戦装束を身に付け、上着を脱いだ状態で刀を振るうのは日課ではあったが、その後水で顔を洗った後でさえ時間が余る始末。かといって厨に足を運べば雅を詠うひと振りと出会すことは言うまでもない。自然と眉間に力が入ったひと振りは、ただ無言で万屋街へと散策に出ていた。それはほんの気まぐれであったが、静かな通りの一角からある気配を感じ取ればつい足を止めてしまう他無い。しかし辺りを見回したとて気配の主の姿は無く、妙な緊張感は尚のこと続くだろう。)――おい、誰だ。(黒いグローブを身に付けた手が自然と柄に掛かる。低い声は辺りに潜む何かに対して発せられたが、やはり返事は無い。勘違いかと思ったその時――、)…………は、(ぎゃう、と顔を出したのは紛れも無い、五虎退が連れている五匹の小虎。思わず気の抜けた声は小さく且つ短く零れ出した。暫しの沈黙の後、やがて大きな溜息をひとつ零ししゃがみ込んだならば、案の定五匹の虎に囲まれることとなるだろう。脱走か、迷子か。未だ測り兼ねる事態だが、大倶利伽羅に出来ることはたったひとつ。それはこの場から動かないことだけだった。)

06/09 18:59*75

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(まだ、世界が起きるほんの少し前。朝に差し掛かるこの曖昧な時間特有の静けさは、酷く心を落ち着かせてくれるようだった。普段なら本丸で過ごしているけれど、今日は風が心地好さそうだったので外へ。もちろん、不在を驚かせてしまわぬよう『歩いてきます』と書置きは残している。緑の香りを感じながら、進む足はゆったりとしたペース。気が付けば万屋街まで辿り着いていた。まだ営業時間外のため、ひとの姿はまばらのよう。)……?(そんな中、ふいに目に留まった光景にぱちりと瞬きひとつ。しゃがみ込む刀剣男士とそこに群がるような小虎たち。戯れている、にしては、なんだか途方に暮れているようにも見えて、そろりと横から近付いて行く。)あの。何かお困りですか?(窺うように少し身をかがませながら、声を掛ける。寄り添うように彼を囲む小虎たちは懐いているようだったので、無関係の間柄とはちっとも察せていない。)仲良しなんですね。ふふ、毛並みもきれいで……あいたっ(微笑ましげに眺めていると、その内の一匹に軽く頭突きをされてしまった。一歩引いた脛がちょっとだけ痛む。)うらやましいなぁ。わたし、動物に好かれないみたいで……(眉尻を下げて笑む。しかし、突然の身の上話に彼も困惑するだろうと気付くと「それで、わたしは何かお役に立てますか?」と問い直した。)

06/09 19:46*84

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(しゃがみ込んでどれくらいの時が経った頃合いだったか、掛けられた声の方へ導かれるように顔を上げたならば一人の女性がそこにいた。現在の場所と纏う雰囲気から察するに、彼女が審神者であることは理解できただろう。ただ、“仲良し”と称されたことには些か不服であるかのように言葉を返していた。)此奴ら相手でも、慣れ合うつもりはない。……そもそも、此奴らはうちの本丸のじゃない。(否定を並べたあたりで、不意に彼女めがけて頭突きをした小虎へ視線を遣る。告げられた性質に対して、件の虎が彼女へと向ける感情は些か異なる事を感じては、つい余計な一言が零れ落ちるだろう。)……猫にとって頭突きは愛情表現だと聞くがな。(そこまで口にすると虎のうち一匹を腕に抱きつつ徐に立ち上がり、彼女へ向けて顎をしゃくってみせる。要はこの虎の主を共に探せという合図だが、果たしてきちんと伝わるのだろうか。――紆余曲折、無事に虎たちを対象の五虎退の元へと返せた後は、暫しの沈黙の後に大きな溜息を吐いてみせるだろう。)世話になったついでだ。送っていく。(その一言に対しどんな否定があったとしても、彼女に迎えなどが無い限りは「……攫われでもしたら目覚めが悪いんでね」と頑なに譲る気は無く。ただ、それ以降はほぼ沈黙を貫いたことだろう。早朝の奇妙な邂逅を知る者は、五匹の虎たちのみだった。)

06/09 20:28*90

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(慣れ合うつもりはない――それは覚えのある言葉でもあり、本丸問わず彼の根底として侵してはならない領域だと理解しているつもりだった。表現の選択を間違えたと察すると、「好かれている、と言うべきでしたね」と訂正を。けれどどうやら小虎たちは彼の仲間ではない、という事実の方には瞳をまるくして、次いで齎された情報に更に弾くような瞬きが誘発される。)え?そう、……そうなんですか?(仔細を尋ねるより先に彼が立ち上がり、話題は流れてしまう。本題は助力の方なのだからとそれ以上追求はせずに、仕草が言わんとする意図を汲もうと試みるだろう。それでも察しが良いわけではないので、結局此方から尋ねる形で口頭確認となったのは申し訳ない限りだけれど。――どうにかこうにか、小虎を主の元へ送り届けられたのなら達成感に満ちた表情で微笑んで。)ううん!大倶利伽羅さんもおつかれさまでした。(世話だなんて、と口を挟もうとしたけれど。厚意は素直に受け取りたい。だから少し間を置いたのちに、)うん、じゃあ。……お願いしますっ(やさしさに触れると笑顔はもっと明るくなる。無理に話題を振ることはなくとも、話し掛けたいときには言葉を掛けた。返事がなくたって気にしない。そうして本丸まで送って貰えたのなら、「ありがとうございました」と心からのお礼を告げて。其の背を、静かに見送った。)

06/09 22:00*104