ハプニング!わっ!突然足元の小石に躓いて転んでしまった!

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(さて、本丸ごとに個体差というものはあるようで。当本丸の、共に特命調査において尽力した学者先生はどうやら好奇心というものがひとよりも強いようで。一時期恋心というものがわからずに頼ったことを後悔する程度には、自由であった。そんな彼とともに買い出しに出た。というよりは興が乗った彼を止めるために同行したのはいいものの、ふらふらとしたがるその姿にお目付け役も形無しになりがちで、はぐれてしまっていた。)おい、先生?(必要な買い出しを行い、振り向いた時にはその姿がなかった。嘘だろうを顔に描いて慌てた調子であたりを見回すが、目に映る範囲にはその姿はない。思わず舌打ちをして彼の姿を探そうとした。――まさか足元にある小石に躓くだなんて、ましてや転んでしまうだなんて、考えもせず。)…っ、(幸いにしてそれほど人通りの多くない道であったことが幸いした。膝を打ち付けたといえど痛みよりも羞恥のほうが強く出たために、眉間にしわを寄せたまま立ち上がって埃を払う。のちに上げた視線に人影が移る。びしり、と、体が硬直する。そんな錯覚。)

06/09 15:30*52

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(その日、娘は護衛の刀をひと振り連れて万屋街へと遊びに来ていた。基本的にゆるい空気の本丸にはストッパーたる刀剣男士も数多く存在しているが、此度連れ立ったのはまるで友達のような距離感で接してくれる男士――乱藤四郎である。「ねぇねぇ主さん、前に言ってたお店に行こうよ!」なんて手を引かれては、ご機嫌な笑顔で頷き返していた。)うんうん、いいっスね!あそこのパフェ、気になってたから――、(不意に言葉が途切れた理由を、きっと乱であれば認識していたかもしれない。娘のすぐ傍で一人の影が地に膝を突いたのだから。ポカン、と大口を開けた女の間抜けな表情、そして目の前で硬直する彼。動き出したのは辛うじてこの審神者の方が早かったか。)……あ、あ、あの!大丈夫っスか!?え~っと、え~っと…………あっ!!(目の前で身振り手振り、急に騒がしい態度には乱も「主さん、落ち着いて!」なんて一言を零した筈。不意に思いついたようにポケットから取り出したのは人間用の絆創膏だった。)これ、私もそそっかしくてよく怪我するんで……良かったら使ってほしいっス!どうぞ!(ずいと差し出した絆創膏の先で、女はどこか得意げな表情を浮かべているに違いない。「主さん……それ、僕らに意味あるのかな……?」なんてツッコミは耳に入っていない様子だ。)

06/09 15:48*54

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(視界に入ったのは審神者らしき女と、乱藤四郎。戦場であれば気恥しさだなんてもの感じもせずに状況の立て直しを図るのだが、一個人として相対する場となればそうもいかず。もとより対人関係において誤魔化すことが得意なほどに世慣れているというわけでもなし。であるから、状況を動かすのが審神者の声であることには何ら不思議はないはずで。そして慌ただしくなる審神者の態度には羞恥が抜けて呆れが入り込んでくるのだから、人の態度というのは良くも悪くも刀剣に影響を与えるものだった。)おい、落ち着け。(ちら、と、乱藤四郎の方へと視線をやったのはこの審神者大丈夫か、の意を含む。そしてポケットから何やら取り出されたならば、)………どうも…?(そのままつい受け取ってしまったが、ばんそうこうというものは自分たち刀剣に何の意味を成すのだろうか。多少の痛みを訴えてはいるがほっときゃ直るだろう、ぐらいの認識であるあたり自らの肉体そのものに対する頓着は薄い。だが、他者の厚意を無碍にするというのもいささかばつが悪いと考えた結果。)…他言は無用で頼む。…あんたも、怪我には気をつけろよ。(念を押すように羞恥に耐えて願う。彼女の慌てた素振りも絆創膏を差し出すそぶりも、これは確かに怪我をしそうだなと奇妙に納得したとも。この状態の自分が言うな、とも思うわけだが、それはさておくにしても。軽く頬に赤みは残したまま、そそくさと逃げるように立ち去った。その矢先で晴れやかに笑う学者先生に遭遇したならば、いつもの三割増しの語気の強さで怒鳴っていた。)

06/09 16:17*59

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(忙しない態度に対し齎された一言は思いの外落ち着いており、視線の合った乱といえば「ゴメンね、どこかの肥前さん」と保護者面の一言を発する始末。審神者としての威厳はこの時点でゼロにも等しかったが、本より友達や家族くらいの気安さで刀剣男士たちと接する娘にとっては絆創膏を受け取ってもらえただけで重畳であった。良いことをした、と疑いもしないご満悦の笑みのまま、彼の言葉には大きく頷いてみせる。)勿論っスよ!こう見えて口は堅い方なんで、安心してほしいっス!(トンと胸を叩いてみせる仕草は些か大仰なものではあったが、嘘を吐いていないことは十二分に伝わる素直さの筈だ。素早く立ち去る彼の背に向かって大きく手を振る様子も、掛ける別れの声もまた無邪気に大きい。)お気遣いどうもっス~!肥前さんも、どうかお気をつけて~!!(エコーでも掛かるかの如き声量が止み、ブンブンと振っていた手が下ろされる頃、隣の乱が呟いた「主さん、やっぱり絆創膏は無しじゃない?」の一言にはつい目を瞠り、)ええっ、ダメ!? ……ハッ、肥前さんなんだからパフェの割引券とかの方が良かったっスかね!?(そんな姦しい声はいつの間にか大通りの喧騒へと消え行くだろう。――やがて一日の暮れ、本丸へ帰還後。今日の出来事を皆に語って聞かせたとて、此度の邂逅に関しては約束を守り口を噤んでいた娘の姿があったとか。)

06/09 17:13*63