ハプニング!何処からともなく五匹の小虎が寄ってきた!自分一人じゃ抱えきれない!

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(日の本一の黒田の槍、日の本唯一の位持ちの槍。そう名を轟かせている刀剣男士、日本号は今その巨躯を強張らせ大通りの隅で立ち尽くしていた。往来の真ん中でなかったことが幸いか、足元にはふわふわとした小虎が五匹飛んだり跳ねたり好きなように遊びまわっている。踏みつぶしてしまいかねないほどに小さな虎であるけれど高い位置にある顔は真っ青に血の気が引き呼吸も浅い、そうこの槍は可愛らしい小虎が"怖い"のだ。往来の真ん中でないことは幸いであったが同時に不幸でもあった、槍が恐怖に立ち尽くしている事に誰も気付かずに通り去っていくのだから。穏やかな日差しの注ぐ昼下がり、行き交う人の数は多けれど槍に意識を払うものは見当たらず自分でどうにかするしかないのだとごくり、唾液を飲み込んだ。)お……おい、お前ら。ここにいたって餌もなんもねぇぞ、あっち行け、な?(その声に反応して小虎が鳴く、ひっと情けなくも漏れかけた声をどうにか飲み込んで助けを求めるように視線は右へ左へ流れ。緑色のジャージが特徴的な槍の姿を捉えるも声を掛ける間もなく去って行ってしまう、足元に近づいてくる小虎に一歩、二歩と後ずさり。)

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(虎くんたちがいないんです、と五虎退が泣きついてきたのは先刻のことだった。通りがかりの己に頼るほどなのだから、見知った連れはいないのだろうと推察すれば小虎探しを手伝い始める。その場から大通りに沿って歩き始めたが、大した収穫もないまま隅の方に近づくにつれ五虎退が気落ちしていくのが分かった。)小虎たちは総じて賢いと聞いているよ。そう、心配することはあるまい。(己なりに励ましの言葉を掛けながら、もしかしたら五匹一緒ではないのかもという可能性が脳裏を過りかけたとき。温かな気候とはかけ離れた、顔面蒼白の彼の槍が目に付いた。足元にはじゃれつく五匹の小虎がいる。)日本号と虎――。(ああ、これはいけないな。傍らを俯きがちに歩く五虎退の肩を軽く叩き、そちらを指さした。)あそこに居るのは、君の小虎ではないかね。(パット顔を明るくした五虎退が駈け出せば、小虎たちも気づいて担当の元へ駆け寄っていくだろうか。己は日本号に近づいて、そっと問いかける。)大丈夫かね?(まっすぐ見上げる瞳に好奇の色はなく、気遣うもののそれだ。怪我の有無を問うてるのではなく、心の状態を案じていると伝わればよいのだが。)そこの茶屋で一休みしてはどうかな。緑茶が美味しいんだよ。(店の情報を述べて、同意が得られたなら目と鼻の先にある茶屋へ彼を案内しよう。五虎退には、少し後から来てもらうかと考えつつ。)

06/10 22:20*153

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(じり、じり。そういう遊びと捉えているのかにじり寄る小虎たちは飛び掛かろうとはしない、しかしそれが救いであるかと問われれば答えは否。夜戦時短刀を相手取った時のような緊張感が場を支配していた――筈だった、体重の余り乗らない軽い足音が聞こえてきたかと思うと自らを見つめていた小虎の視線が一斉に其方を向く。顔を上げた先、小虎がこぞって駆け寄っていく小柄な姿はまさに神の如き神々しさを放っているようにも見えた。それほどに張り詰めていた緊張の糸は穏やかな問い掛けの声にふっと緩み、途端に噴き出す冷や汗を袖で拭い少し下に位置する硝子越しの瞳を見返し。)っあ゛ー……、情けねぇところ見られちまったな。あんたん所の虎かい、見つかったんなら何より……、(いつもの調子で返そうとするのは正三位の矜持故、生憎顔は青ざめたままであるしほんの少しだけ語尾が揺れてしまったものだからそれも上手くはいっていなかったかもしれないけれど視界の隅で小虎たちが五虎退の腕や頭に納まっている様を捉えるとそこで漸く本当に肩の力が抜け。向けられている視線や声色の真意に気付かないほど鈍感でもなく、述べられる茶屋の情報に一度首を縦に振った。)……そうするかね、あんた酒は駄目でも茶は飲めるんだろう、一杯付き合ってくれや。(茶屋まで何歩分か、ほんの細やかな移動の合間にそんな声をひとつ掛ける。緊張しきっていた指先は未だに冷たく動きはぎこちない、けれど小虎から救われた礼も兼ねてと。勿論小虎を抱えた短刀もと視線を向けてはさて、八つ時に差し掛かりそうな昼下がりは比較的穏やかに過ぎていく事か。)

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(情けないと彼が言いたくなる気持ちに一定の理解は示すものの、同意はしかねて唯々静かに瞬くばかり。日本号という刀剣男士が、虎に苦手意識ないし緊張感を持って接してしまうのは、元主の逸話を引いているからである。それを知っている己にとっては、ごく自然な現象でしかなかった。五虎退がいる手前、その話を出すのは憚られる。感動の再会を果たしている彼らを見遣り、頷き返した。)そうだね、これで僕は御役御免というわけだ。(茶屋へと案内すがら、掛けられた言葉に苦笑する。)"僕"が下戸なのを知っているんだね。そうとも、君と同じで逸話によるものだ。だがら、君を情けないとは思っていないよ。(彼の誘いに応じる形で、店先の長椅子へと共に腰かけたなら緑茶を三つ注文した。ついでに水差しいっぱいの水と、深さのある皿を数個貸してもらえないかと店員にちゃっかり要求する。万屋街に店を構えるだけあって、物分かりのいい店員は承諾してくれた。)五虎退くん、君もこちらに来たまえ。たくさん歩いて疲れているだろう。(緩やかに手招きすれば、五虎退は小虎を引き連れて遠慮がちに近づいてくる。己は腰を上げて、もう一つ設置されている長椅子へと移り、そこへ五虎退たちを招いた。これで日本号から程よい距離を取りつつ、言葉を交わすことも叶うだろう。五虎退の謝罪から始まる会話は、やがて雑談へと移っていったはず。)

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